雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

医務室

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医務室にて。

「うわっ、これはひどい怪我だ……
よくこんな体で動くことができるね」
「えっ、やっぱりそんな、怪我は酷いんでしょうか?」
「ああ、そりゃもう酷いもんだよ。骨が折れさえしていないけど、ヒビが割れているやら、鞭で打たれた位置は青タンができているやらで、もうたくさんの怪我だからね」
「うわぁ……」

今は魔法帝に紹介された医師の人に検査をしてもらっている。

ヤーベル
彼は魔法帝直属の回復魔導師のようだ。

白髪に白い白衣を着ている。
顔にはフレームの細いメガネをかけ、見るからに安心できる姿だ。
背中掛け椅子に座り、片手にはペンを持っている。
優しく質問するあたり、まるで病院にいるようだった。

なんだか懐かしい。

そして、彼の魔法。それは金色の触手がたくさん出現するというものだった。
それが優しく付着することで体の容態を調べている。

「その綺麗な触手によって、負傷しているところがわかるんですか?」
「その通りだ!」

レントゲンとかがないのにここまでわかるのはすごい。医療技術は思っている以上に高いのかもしれない。
魔法によってそんなことまで、感じ取ることができるのだから。

一人、感心しているとヤーベルさんは顔をしかめた。

「いやー、いくら魔法帝直属の私でもすぐには治せそうにないな。君、平気な顔してるけど酷い怪我だよ。本当若者の力なのか、はたまた意思の強さなのかわからないけど、すごいもだな」
「そ、そうですか……」

俯いて落ち込もうとするがそれを遮ってヤーベルさんは話を続ける。

「でも、安心しな! 魔法帝からもらった薬と私の魔法なら、魔力はすぐにでも戻せそうだ。
でも、君は無理をしたらいけないよ。
この怪我じゃ危険だ。
もし今の体を酷使し続けたら、手足が動かなくなることもある。そんな状態になってしまったらもう私はどうすることもできないからね」
「魔力が戻るなら十分です!     でも、僕の今の状態って結構危ないんですね……」
「そうだな。
ああ、そう思えばあの少女も同じだったな。えっと……確か、サナ君と言ったか?」

まさか、サナの名前が出てきたことに驚く。

「彼女も危ない状態だったがやはりすごいな。私の回復魔法を受けるとすぐに立ち上がって外へ出ていった。
必死だったぞ、ものすごい汗をかきながらも決勝を見ないと、って言っていたのだから」

僕はそこにいなかったから知らない。
知らないけど想像はできる。

仲間のため、僕を信じてくれている気持ち。
それがとても伝わってくる。

「すまない、無駄話が多かったね。君の危害しているところは分かったから回復魔法をかけようか」

ヤーベルさんは僕の前に手を出すと集中する。

そして、
「綺麗!」
思わず声が出てしまった。

静かで、蛍のように輝く小さな光が発生する。
それがゆっくりと動き、僕に吸い込まれる。
体に付着するなり美しい光は、ピカッと煌めいて体内に入っていった。

その光景が約一分くらい繰り返された。

「さぁ、私からはこれで終わりだ!
調子はどうだい?」

終わると、ヤーベルさんはほぐれた笑みを浮かべる。

「は、はい、痛みは大分取れました!」
「そうかい、それは良かった。
繰り返し言うが、無理をしちゃいけないよ。本当なら全治一ヶ月とか言いたいところなんだ。けど、そんなことできないよね?」
「そうかもしれません!」

「この試合はあくまでエキシビジョンなんだ。だから自分の体を一番に考えなさい。
もう君の優勝は変わらない事実なのだから」
「はい、無理はしません。休むのも仕事のうち、ですよね!」

「・・・? ま、まぁそんなものだ」

微妙な空気になった。
どうやらことわざが通じなかったらしい。
沈黙が訪れた。


とその時、軽く地面が揺れた。
「お、遅れた。すまない!」

揺れが止むと、魔法帝の声が聞こえた。

ゆっくりとドアが開く。
「え?」
思わず、その姿を見て絶句する。

まずは魔法帝がいた。
その横には顔面蒼白という今までに見たこともないようなセクアナが抱き抱えられていた。

「えっと……この子は病人なのかい?」
引きつった顔で魔法帝に問うヤーベルさん。

「いや、彼女は素晴らしい回復魔法を持っているから、雷の少年を早く元気にしてもらうために連れてきた……客人というものか?」

魔法帝の純粋な目に、頭を抱えるヤーベルさん。

いったいどう言うことなのだろう?
ってそれよりもセクアナだ!

「ちょっと、席を外していいかい?」
ヤーベルさんはそう言うと、魔法帝を連れて医務室から出ていかれた。

セクアナはベッドに寝かされる。

魂が抜けたように白い顔をしながらもピクピクと腕が動いている。

「いったいこれはどういうこと?」
思わずどっちが病人だ、と突っ込みたくなりながらも寝込んでいるセクアナのベッドに座った。

「まさか、あんなにも、あんなに激しいことをするなんて……」

顔を真っ赤にしながら、激しい呼吸をするセクアナ。
「ほんと、何やってたの!?」

勘違いしてしまいそうな言い方に大きな声が出てしまう。

「ああ、ごめん、誤解しそうなことだったね」
覇気のない声で喋る。

「結局何があったの?」
「それは……」

セクアナが真相を語ろうとした時、外から怒鳴り声が聞こえた。

「まったく魔法帝は馬鹿なのか!
君の本気のスピードに耐えれる人なんて、ほとんどいないじゃないか!
回復魔術師を増やすどころか、病人を増やしてどうするんだ!」
「す、すいませんでした」

ションボリした声が奥の方から聞こえた。

「まぁ、これを聞いたら察せるよね……?」
「う、うん大体分かった」

どれだけのスピードかわからないけど、セクアナは本気の魔法帝の速度を体験した結果、
そのスピードに耐えることができず、酔っているような状態なのだろう。

すぐ戻るとか言っていたけど、魔法帝はせっかちすぎる。

それでも、セクアナは自分自身に回復魔法をかけたようですぐ元気になった。


「よし、私復活!」
酔いが覚めると、さっきまでの姿が嘘のように活発になった。

寝ていたベッドからすぐに起きる。

「元気になったセクアナに一つ質問、魔法帝の速度ってどうだった?」
「せっかく元気になったのに、思い出したくないことをいきなり掘り下げるなんて、意地悪だなー」

からかうように横目で笑みを浮かべる。

「うっ……確かに……
いや、でも気になるじゃん。ナンバーワンのスピードって」
「フフフ、さっきまでの決闘が嘘みたいにいつも通りだね。もっと張り詰めているのだと思った」
「そんな、セクアナがそばに来てくれて安心しているからだよ」
「そっか、それは良かった!」

いつものはにかんだ笑顔が僕の目に入る。

「魔法帝のスピードだよね。多分これは経験しないとわからないけど、走り出したらすぐに気持ち悪くなるよ! 
私はすぐに意識が飛んじゃった!」

冗談のように笑いながら言っているが、魔法帝の力は凄まじいと思った。

「じゃあ、私の役目を果たすね!」
一歩セクアナは近づいて手を出す。

「っ! えっと今回はどうして手を握っているの? いつもどおりで十分なのに」
「んー、実験かな? もしかしたら触っている方が魔法が効くかもしれないし」

恥ずかしがっているのか目を合わせてくれないが、その姿に照れてしまい、僕も顔が赤くなる。

セクアナからいつものように青い霧状のものが発生し、僕の体を癒してくれた。

ふぅ、とセクアナがため息をついた頃には治癒は終わっていた。

「どうかな?」
「うん、いつも通り、とっても楽になったよ!」
「そこは、いつもより良くなったって言って欲しいな」
ムッと頬を膨らませる。
回復は終わったが、まだ手は握られていた。

「フフフ、トモヤの手、ゴツゴツしてる。豆だらけだね!」
「ううん、そりゃクリフとは激戦だったからこれくらいになるよ。刀も潰れたし」

まだ緊張の気持ちがあり、目を合わせられないでいるとセクアナは朗らかな表情で、
「これはみんなからのメッセージだよ!
トモヤ、クリフに勝ってくれてありがとう!
ちゃんと私達はトモヤのかっこいい姿を見ていたからね!」

大切な仲間からの感謝。
大怪我をしてまで戦った理由はその言葉だけで十分だった。

「ありがとう、セクアナ!
応援してくれてありがとうってみんなに伝えてくれないかな?」
「承りました!」

手を握ったまましばらく見つめ合っていた。

ガチャ!

その時、説教が終わったのか魔法帝とヤーベルさんが入ってきた。

「ああ、えっと、すまない。タイミング悪く入ってきてしまった。すぐに出ていくから続けたまえ」
「すまなかった、邪魔をするつもりはなかったんだ。その、キ……いやなんでもない」

「いや、大丈夫です! 私達は別に何もしようとしていないので!」
「そうですよ、二人とも!」

ガチャ!

すぐにドアは閉められた。

二人は真っ赤になりながらたたずむ。
お互いに何も発せず、沈黙が訪れた。

「ああ、そうだ! 私そろそろ帰るっね!
二人にはちゃんと伝えておくから!」
「うっ、うん、お願いします!」

バタバタと音を立てて、小走りになるセクアナ。

「じゃ、じゃあ魔法帝と、との決戦、頑張って、ね!」
「う、うん」

またドアの閉まる大きな音が鳴り、僕の治療は終わった。
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