雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法騎士団試験

パーティ

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夕暮れ時、長かった魔法騎士団試験が終了してたくさんの人々がそれぞれの村に帰っていた。

一年の中で一番盛り上がるイベントが少し前まで行われていた魔法騎士団試験だ。

王都以外の各地から来る人も多い。

それほど大きな舞台で僕は優勝した。
とても誇らしいことだと思っている。
そして感謝もしている。

たくさんのことを経験できた。
マネト、サナとの出会い。
セイラ姉さんとのお話。
六大天の偉大さ。
セクアナの極めた一つの技。

貴族に対して憎しみを持ったこともあった。
無事に勝つことができてよかっだものだ。

そして、魔法帝というこの国でナンバーワンの魔法騎士。
始めは東大生みたいでちょっと引き気味だったが、とても優しい人だった。
いろいろと世話を焼いてくれて、何度か助けられた。
たぶん魔法帝がいなかったら、これほど満足のいく気持ちにならなかっただろう。

あの時、空から飛んできて、無茶なエキシビジョンマッチを提案したからこそ、今の僕がいる。

これからは期待に応えないとね!

と、しばらく歩く僕の前に三つの影が現れる。

「あっ、みんな……」

サナはセクアナはに肩を貸してもらいながら笑顔で迎えてくれて、マネトは大きく片手を振る。

やっとみんなの前に戻ってくることができた。

少しの時間離れただけなのに、一ヶ月も合わなかったかのような懐かしさを感じる。

自然と僕は駆け出していた。

「お疲れ様」
「うんうん、やってくれると俺は信じていたよ! 改めて、ありがとう!」
「ふん、やはり私と同じでボロボロの体になっているな。勝利の証だ!」

みんなにこやかに迎え入れてくれる。

おもわず頭をかいて照れてしまった。
ここまでぐいぐいと来られるとは思わなかった。
でも悪い気はしない。

「うん、ただいま」
寂しげな小さい声が漏れる。

今日で、二人の笑顔が最後だと思うと悲しくなってしまう。これがもう聞けなくなるのだから。


マネト、彼は臆病で、泣き虫で、お金好き。
初めは少々苦手だった。
そんな彼でも、仲間思いだ。
サナが酷い目にあった時は、臆病な心など忘れて圧倒的強者のクリフと対峙する。
弱い心など感じさせないとても強い人だ。
まだちゃんとした本気を見れていないのは名残惜しい。

一度だけ見れた本気も金のため。
あまりにも変で笑けてしまう。

サナ、彼女は本当に強い。
もちろん天然でドジを踏むことはあるし、可愛いもの好きで少し抜けている。
でも彼女は戦いになると豹変する。
まるでモンスターのように鋭い目をして相手を狩る。
そして、どんなに苦しい場面でも諦めない強い心を持っている。
いつも僕たちのことを思ってくれていて、守ってくれるのは嬉しい。
とても頼もしく、憧れてしまう。

たった数週間の日々だったがとても楽しかった。
魔法騎士団試験が終わった後の祝杯は大切な思い出だ。

セクアナはそれに関して、少し怒っているかもしれないが……

そんな二人とも今日でお別れだ。
だからこそ敬意を込めたい。

サナ、マネトの正面に立ち深く頭を下げる。

「二人とも、今日までありがとう!」
「う、うん。どうしたしまして……
っていうかどうしたのいきなり?
改まっちゃってさ」
「そうだぞ、なんかそんな風に頭を下げられると胸がムズムズする」

寂しげな目で二人を見つめる。

「いや、だってサナとマネトにはお世話になったからちゃんとお礼を言わないといけないって思って。二人とこうしていられるのは今日で最後だから………」

顔を合わせたら泣いてしまいそうになるので下を俯く。


しばらく答えが返ってこなかった。
そのタイミングに応じてゆっくり顔を上げる。

そしたら二人いや、セクアナも合わしてぽけっと首を傾げていた。

「ん、何言ってるの?」
「俺たち、トモヤと何が最後なの?」
「………?」
みんなして困惑していた。

何か変なことでも言ったのかな?

「え、だってもう魔法騎士になって別々に行動するじゃん。だから今日で最後じゃないの?」

「私たちはもう大切な仲間だろ?」
「うん、それはもちろん……?」

首を傾げながら、不思議な対応に困惑するとセクアナのため息が聞こえた。

「トモヤ、話を聞いてた?」
「話って?」
「やっぱりそうか……」
セクアナは呆れたように肩を落とす。

何が言いたいのかわからない僕は戸惑う。

「パーティが組めること知ってる?」
「………えっ! そんなことできるの?」

また深いため息をつく。

「当たり前だよー、もしパーティ組めないなら、私たちもバラバラに行動しないといけないじゃん!
普通、常識的に考えたらそうなるでしょ!」
「はっ、はい……面目ありません……」

さすがというべきか、長い間いるから、僕の事をよくわかっていらっしゃる。

「という事で、二人とはこれからも一緒。
よかったね、フフフさっき泣きそうになってなかった?」

悪い顔をしてセクアナは僕をからかう。

「で、結局なにが最後だって?」
「俺たちと最後なんでしょ?」
「あれれ、どうしたの? 顔真っ赤だよ!」

ニマニマと顔を合わせて笑う三人。

恥ずかしい! 恥ずかし恥ずかし!

一人、回想に入って二人とお別れとか考えていたけど、なんかパーティ組めるってことになってる!?

何この仕打ち!
最悪だよ!

みんなからいじられるし、一人悲しんでるし、結構泣きそうにもなってたのに!

今までで一番恥ずかしい気がするよ!
もぉ、どうすればいいのこの状況!


「うう、お嫁に行けない……」
「もっと一般常識、勉強しな」

両手を顔に覆う僕に、セクアナは肩に手を置いて軽く慰めてくれた。

それから笑われながらも、パーティやこれからの任務のことを話し合っていた。


気づくとルーディニア・コロシアムの外へ出ていた。

夕暮れではあるが少し薄暗くもなる頃。
もう、外の広場には人がほとんどいない。

「これで長かった私たちの試験は終了だな」
「うん、ここには感謝しないとね、こうしてみんなとも巡り合えた場所だから」

女性たちが足を止めると、僕たちもそれに合わせた。

深くお辞儀をする。

「今更だが、トモヤ、クリフに勝利してくれてありがとう。信じてよかった!」
まだ傷ついた体ではあるが、優しい笑顔を向けるサナ。
こう直接言われると、緊張してそっぽを向いてしまう。

「いや、あれは僕一人では成し遂げられなかったよ。サナが懸命にクリフへ立ち向かってくれたから僕は勝てただけ。
あの頑張りがなかったら僕だって負けてたよ!
だからすごいね! サナは調子が一番いい時のクリフと対等に戦えてて」

「それでも、勝利を掴んだのはトモヤだ。私なんてほとんどダメージを与えることができなかった。
だけど、こう褒められるのはなんだが嬉しいな!」

「サナはとてもカッコよかったよ! 私たちずっと近くで見てたから!」
「うん、お、俺もとっても強いと思う!」
「うう、そんなに褒められるのは、少し恥ずかしい……」

顔が赤くなる。
いつものように照れる姿はなんとも可愛いものだ。

「でも、私たちの旅はここからだよ!
魔法騎士団試験は土台に過ぎない。だから気を引き締めないとだよ」

セクアナの言葉にそれぞれ勇気が出る。
みんな真面目な顔になる。
命の危機があるこれからの日々に突入することに覚悟を決めていた。


それぞれ強い意志を持つ中、爆弾発言をする空気の読めない自分がいた。

「まずはあれだね、借金返済!」
僕が禁句かもしれない言葉を言うと、二人の顔がブルーになる。

「そ・う・で・し・た・ね」
オーラの違うセクアナが二人の肩に手を置く。

「さぁ、行きましょうか……」
「は、はい!」
セクアナの不気味な笑顔。
恐ろしい相貌を見て、ロボットのようにガチガチに動く二人。
まるで警察に連行される常習犯だ。

「アッハハハハ!」
その小さな背中に大笑いしてしまう。

「おい、最弱の悪魔!」
一人笑っている中、後ろから聞き覚えのある子どもの声が聞こえた。

僕だけでなく、少し前にいた三人もそれに気づく。

「なーんてね、今年最強の魔法騎士!」
後ろには、小人族であり、僕と激戦を繰り広げたコーウト・ドルトムが可愛い笑顔をしていた。

「か、可愛い!」
それを見て一人の人間が動く。
壊れた体など関係ない。
可愛いもの好きのサナは、まるで猛獣のように早いスピードで駆け出した。
デレデレの顔をして。

「うぐっ、こら! やめて、離れてよ!
僕は、もう子どもじゃないんだぞ!
うゔっ、息が………」

疾走するとサナは彼を抱きしめた。
顔がちょうど胸の間に挟まる。
小さな顔はサナの柔らかい胸に埋まっていた。

窒息させられそうなくらい、深く柔らかい胸に埋まる。

苦しそう……だけど、う、羨ましい!

いいなと思いながら眺めていると、セクアナが虚な目で僕を見ていた。

「いや、別になんとも思ってないよ!」
「ふーーん」

誤解を解くために必死で手を横に振るが微妙な反応だった。セクアナがなにも言わない時が一番怖い。

「サナ、それくらいにしてあげて、この子が可愛い……こほん、かわいそうでしょ!」 
セクアナは可愛がりたいという気持ちを押し込めて注意をする。

「で、でも」
「た、助けてください……」

血の気の引いた顔になった彼がいた。


「やっと……開放……された」
彼は荒げた息を吐いている。

「えっと、改めてだね」
「うん、ぜぇぜぇ。やっと話せる……」

まぁ声まで可愛い。
男の僕でも、ちょっと抱きしめたくなった。

「やめ、やめときなよトモヤ。あんまり近づかない方がいいと思うよ……
この子危険だよ。いきなり大きくなったりするから……」
「それは、これのことかな?」
彼と出会ってからマネトは僕の背中にずっと隠れて怯えていた。

その姿が面白いと思ったのか、彼はいきなり毛を生やして巨大になる。

「ひっ!」
「ガッハハハハ! やっぱ、俺はこっちの方が好きかもな……」
大男の低く、恐ろしい声に変わる。
ビビるマネト。
死んだ目をしているサナとセクアナ。

一人来ただけで、さっきと比べ物にならないくらい賑やかになった。

マネトをおちょくるとすぐに元に戻った。
そして、笑顔が戻る女性のお方。

母性本能というのが出ているのだろうか。
よくわからない。

「じゃあ、ここからはちゃんと」
「これまでの嵐のような盛り上がりで、もうお腹いっぱいです……」
「まぁ、そんなこと言わずにさ! 
僕を痛めつけた仲じゃないか!」

「す、すいませんでした!」
冗談のような本気ともいえる言葉に、腰の骨が折れる勢いで頭を下げた。

「アハハ、冗談だからいいよ!」

なんだか疲れる。

「僕はコーウト・ドルトム!
気軽にドルトムって呼んでね!」
「うん、僕はトモヤだよ。
よろしくね、ドルトム!」
「うん!」

実際に会話をしてみると、とても話しやすかった。
昨日の敵は明日の友、みたいな感じだ。
なんだか親しみやすい。
もしかしたら体が小さいっていうのも関係しているかも。

「って言っても呼び止めたのはちょっと自己紹介したかっただけ」

どの口が言っているのだ、まったく。

「まぁトモヤは魔法騎士になったからいいよね」
「あ、そうだよね僕が勝ったから……」
「むっ、落ち込むなよ少年、哀れみなんていらないぞ」

僕にも罪悪感があり、思わず同情すると、ドルトムはそれを跳ね返した。
心のどこかで、モヤっとする気持ちがあったからその返答は安心した。
あの時、あまり話せなかったからこそ、こうして場でゆっくりと会話ができるのは嬉しい。

ドルトムから明るい声が飛んでくる。
「というか、僕は君をライバルだと思っているよ!
また来年、魔法騎士になって決闘を申し込む! それまでに死んだりなんかしないでよ!」

「んふふ、ライバルか……望むところだよ!
一度勝った相手に負けるなんてあり得ないからね!」

笑顔ではあるが、お互いに闘志を燃やして睨み合った。


「うん、素晴らしいね! やはり、若いというのはいいものだ」

「えっ!」
「はっ!」
「何!」

上を見上げると魔法帝が眼鏡を光らせて見下ろしていた。
そして、ゆっくりと地面に降り立つ。

「君は変身魔法の少年、ドルトム君だね?」

魔法帝と直接話ができていることに唖然として開いた口が塞がらない彼。

「あ、ああう」
「君の魔法、とっても強烈だったよ! すごい技術を持っているね。魔法騎士になってもなんら問題はない実力だったよ!」
「は、ひゃい、ありがとうございます!」

震えた声で話す。

「本当は魔法騎士に任命したいところなのだが、その権限を持っていないんだ。すまない!」
「い、いえ、自分は魔法騎士団試験に合格して立派な魔法騎士になれると思っています。だから来年、自分はもう一度挑戦して、勝ち上がります!」
「いい心がけだと思う! 私は応援しているよ!」

魔法帝の言葉に目を輝かせるドルトム。

「はい!」
大きな返事が聞こえた。

ドルトムへの話が終わったと思うと僕は魔法帝に質問した。
「あの、魔法帝はどうしてここに来ているんですか?」

正直不思議だった。
もう一生お目にかかれないかもと思っていた魔法帝がもう一度、僕たちの前に現れるのだ。

何か大事な理由があるのでは。

「あっ、そうだった。すっかり用事を忘れていた。
雷の少年、ちょっと手を握ってもらえないかな?」
「は、はい?」
何をするのか疑問に思いながら近づく。

目の前には大きく、それでいて綺麗な手が出されていた。

他の四人も僕と距離を取りながらも、気になるのか顔だけ近づく様子が見れた。

そして、僕は魔法帝の手を握る。

シュッ!

握ると自分は空中に浮いていた。
いや、実際には魔法帝が僕の手を握って飛んでいる。
数メートル下にはセクアナ達が見上げていた。

「へっ、えっとこれどうしたらいいの?」
「俺に聞かないでよ!」
「うん、私にもわからないな」
「いいな、僕も魔法帝と空中に行きたい!」
困惑する仲間。

すると、魔法帝は一言。

「雷の少年を少し借りていくよ!」

みんなの目が点になる。

「え、ちょっと、みんな助け……」

言葉を言いかけた時、魔法帝は全力のスピードを出した。

「うぎゃあ、ぐう………」
勢いに耐えることができず、気絶した。



魔法騎士、一日目。
任務、仲間、すべてに希望を感じる日。
僕にとっては特別な日だった。

そんな特別な日だと思っていた。

だが、魔法帝に拉致された。

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