雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法帝の屋敷

魔法帝の屋敷

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「ええと……誰でしょうか……?」

目の前にはとても気品があり、見るだけでとても眩しい光に包まれているいる人がいる。

たぶん魔法帝だろう。
しかし、すこし前まで会っていた魔法帝とはまた違う気もする。

なぜなら、雰囲気が全然違うからだ。

黒髪のところは変わらない。
でも服装といい、僕に向ける優しい笑顔といい、メガネがないことといい、別人に見えてしょうがない。

「私だよー私! ほら、魔法帝のユリス・アトラテウス! もう忘れちゃったなんて酷いよー」

あれ? なんか口調までおかしくなっている。

ていうか、キャラ崩壊しすぎじゃないですか!?
これ、本当に魔法帝なのか?

「え、ええっと……」
頭の理解が追いつかず、フリーズする自分の体。

「ユリス様、まずは落ち着いてください。いきなりそんな喋り方をしたら驚きますよ!
トモ君はまだ素の魔法帝のことを知らないんですから」
「だから最初は、改まった態度で向き合ってくださいって言ったのに……そりゃ、トモヤ君も混乱しますよ」
「アハハハハ、そうだったねぇ。いきなりこんな姿見たら混乱するかー」

呆れる二人に、立派な体をしながらも猫背になって反省する魔法帝。

(どういうこと、素の魔法帝? じゃあ今までの魔法帝は?)

「ああ、えっとトモ君? 混乱していると思うからいろいろ話すね」

と言いながらも、どう説明するか頭を抱えるミヨ。

「た、単刀直入に言うと、これが本来の魔法帝です。魔法好きで、結構自分勝手な行動を起こして、よく怒られます!」
「そんな風に思われているの!?」
「はい、その通りです」

無表情で二人同時に頷く。

「な、なんだって!」
顔色一つ変えない二人を見て肩を落としてため息を魔法帝は吐く。

「幼い子どものようで驚くかもしれないけど、これが本当の魔法帝だよ」

「幼くないよ!」
「ユリス様、そう大きな声で反論するところが幼いって思われるんですよ……」
「そ、そうなの!」
「はい、その通りです」
ソラさんは軽く魔法帝の肩に手を置いて、子どもを宥めるように撫でる。

「へ、へぇ……そうなんですか……」
もう顔を引きつらせることしかできなかった。

「じ、じゃあなんであんな東大生………こほん、黒い服で僕の知っている魔法帝になろうとしたんですか?」

「いやー、一応国民にはしっかりとした姿を見せないとね! 私も頑張って感情を表に出さないようにしたんだ!」
「確かに、感情は表に出さないようにできているけど、たまにすごい無茶振りをすることはあるよね」
「ハァー、この間のエキシビションマッチなんて、どれだけたくさんの人に迷惑をかけたことか……」
「え、そうだったの! でももっとみんなの魔法が見れるんだよ、絶対楽しいじゃん!」
「運営はユリス様が思っている以上に大変なんですよ。すこしは反省してください!」
「はい……!」

小さくなる魔法帝。

なんだか、完璧だと思っていた人が意外にダメダメという事実に心が落ち着く。
混乱していた自分がバカらしくなり気持ちが晴れた。

「でもなんで、黒い服にメガネに角帽を被るんですか?」
そう質問すると、魔法帝は不気味な笑い声を浮かべた。

「フッフフフ、雷の少年、それはね………
カッコいいからだ!」

腰に手を当てて、胸を張る。

「カッコいいからだ!」

「あ、そうですか」

無言で何もなかったかのように受け流そうとすると、
「なんだい、その反応は!? 
私は何か変なことでも言ったかい?
ねぇ、どうなの? 
私は真面目に聞いているんだよ。そんな軽々しい返事をされるとこちらは困る!
私のように大きくなると服装にも気を配らないといけないから真面目に考えて!」

「ああ、もう! 魔法帝、なんかめんどくさいですよ、とってもめんどくさい人です!」
「それは私のあの姿はカッコ良かったってことなんだよね、そういう解釈として受け取っていんだよね!」
「はいはい、もうそれでいいですから。カッコ良かったです!」

「お、おう、それは良かった!」

褒められるとすこし照れているのがぎこちなくなる。

「トモヤ君、今の魔法帝の服装と前の魔法帝の前の服装どっちがカッコよく見える?」
ソラさんに質問されたので正直に答える。

「それはもちろん、今の服装でしょ!」

ゆっくりとソラさんは魔法帝に駆け寄り、
「ユリス様、これが現実です。これからはあの服装をするのではなく私たちが考えた服装にしましょう」
「え、雷の少年! 今の発言嘘だよね? あの黒い服装の方がカッコいいよね?」
「いえ、今の方が断然カッコいいです」
「そんな……」

今の服装、ソラさんたちがコーディネートしてたんだな。会話を聞いていたら納得できる。
確かに魔法帝はファッションに疎そうな感じがするからな。
あの東大生の姿は変だったし。

「ユリス様、黒い姿で初めて会う人を助けると微妙な顔されるでしょ。それはあなたの服がダサいからです!」
「正直に言い過ぎじゃないかな。私も直球に言われたら悲しんだけど……」

「ですからこの服で人を助けましょうよ、そうすればもっと敬われますよ」
「い、嫌だよ。だってあっちの方がカッコイイから。絶対に変えません!」
「いいですか、あなたはこの国のトップなんです。服装一つでユリス様の名誉にも関わってくるんですよ! ちゃんと自覚してください!」
「絶対、あの服の方がカッコいいから名誉も守ることはできると思うんだけどねー」
「いえ、似合いません」
はっきりと物を言うソラさん。

それからも二人の話し合いは続いた。


本当、僕はどうしてこの部屋に呼ばれたのだろうか。

魔法帝の姿に混乱して、服装の話になり、今はソラさんと魔法帝がどうでもいいことを口論している。

場違い感がありすぎて、すぐにここを抜け出してみんなの元へ帰りたい。

「ごめんね、トモ君。いつものことだから気にしないでって言いたいけど、この状況だと気になるよね」
「ねぇ、僕、なんで魔法帝に連れてこられたの? 今すぐみんなの元に帰りたいんですけど」

僕の質問にミヨは困った顔で頬を掻く。
「大丈夫、あの二人のことだからもう少ししたら話し合いも終わるから。でもトモ君がここへ連れてこられたのは、ただユリス様がトモ君を気に入って、いつもの無茶振りだと思うよ」
「そっか、でもこれって誘拐なんじゃないの?」
「う、うんそうかも……まぁ責任は全部ユリス様がとるから私には関係ないんだけど」
「そこは否定しないんだね……」
「アハハハハ、いつものことですから……」

いつも振り回されているのか、ミヨもため息をつく。


「そろそろ終わりましたか、二人とも」
すこし息を荒げて二人の会話は止んでいた。

「せっかくトモ君がいるんだから、困らせないでくださいよ」

その言葉に我に帰ったのか、ソラさんは深々と頭を下げる。

「すいません! いつものように熱が入ってしまいました。せっかくトモヤ君がきてくださっているのに」

「こほん、すまなかったね。まだ君への提案のことを話していなかった」

咳払いをすると、今度はしっかりと話してくれそうな雰囲気になった。

「雷の少年……ああ、いやトモヤ君だったね。
まずは、私の勝手な行動でいきなり連れてきたことをお詫びする。申し訳なかった」
「あ、いえいえ。こちらはあまり気にしていないので」

思わず、真面目な口調にこちらも恐縮してしまう。

正直、連れてこられたことより、魔法帝のキャラが崩壊していた方が印象的なんだけど……

「じゃあ簡単に言おうか」
すこし目つきが変わる。

「君の怪我はまだ完全に治っていない。そんな状態で任務に行き、死んでしまったら元もこもないと思うんだ。私は、トモヤ君に期待をしているからねぇ。
確かヤーベルさんは全治一ヶ月と言っていたかな?
ここにでもし過ごすことになったらヤーベルさんの回復魔法で毎日治療できる。
たぶん二、三週間ほどで完治すると思うな。
結果的に早く任務に参加することで仲間への心配も減る。

だから、しばらく王城で過ごしてくれないか?」

手を差し伸べる魔法帝。
その横には二人が笑顔で、僕のことを迎え入れる気満々の様子だった。

「あ、もちろん仲間の元へ戻りたいのならすぐに送るけど、私の提案はどうだい?
食事や部屋の準備もしてあるよ、心配なら仲間に連絡して伝えるし……
どうかな?」
「わざわざ、僕がここで過ごしてもいんですか?
しかも一国の城の中で……」
「私たちは大歓迎だよ、トモ君!」
「はい、僕もここにいて欲しいです!」

魔法帝の提案を受けてしばらく考えた。

そして、
「不束者ですが、お世話になってもよろしいのでしょうか? 何も恩を返すことはできませんが……」
「ああ、もちろんだとも!」

こうして僕はお言葉に甘えて、しばらくこの王城で暮らすことになった。

「よし、じゃあ決定ということでいいね」
「はい、よろしくお願いします」

深々と頭を下げ、頭を上げると魔法帝の目はキラキラとしていた。

「そうと決まれば早速、君の雷魔法のことについて聞きたいんだけど教えてもらってもいいかな? 
本当にトモヤ君の魔法は素晴らしかったよ!
見ててハラハラした。
ねぇねぇ、今ここで雷魔法、見してくれないかい?」

元気な声で質問する魔法帝に、
「はいはい、ユリス様。今その話はやめてください。まだ時間はありますから」
「そうです、そんな焦らなくてもこれから数週間はここにいられるので後にしてください」
「ええ! そんな~」

二人に背中を押されて遠ざけられる魔法帝。

「は、はーい……」
しょぼんっとなっていた。

「じゃあソラ。トモヤ君の仲間にこのことを伝えておいてくれないかい」
「分かりました、ユリス様! では、男の子のマネトさんという方に連絡します!」

マネト……大丈夫かな?
セクアナの方が……

引き止める暇もなく、駆け足で走って廊下へ出て行ってしまった。

「ん? どうやって仲間に伝えるんだろう……」
思わず声に漏れていた。

「ふっふん! トモヤ君、その秘密はね、彼の魔法にあるんだよ」
肘を組んで魔法帝の鼻が高くなっていた。

「ソラの魔法はテレパシーだよ! どんだけ離れていてもメッセージを伝えることができるんだ。
あ、そうそう。魔法騎士団試験に合格した時にもらったミーティアがあるよね?
あれが目印なんだ。
その性能を使って誰にでもソラはメッセージを送っているんだ。
これは魔法騎士に任務を伝達するときにも応用できて、とってもソラの魔法は便利なんだ!」
「へぇーすごいですねソラさんも」
「ああ、私の自慢だよ!」

「むっ、ソラだけ褒められてずるい。私もユリス様の役に立っているのに」
ミヨは頬を膨らましてそっぽを向く。

「ミヨにも感謝しているよ。私もためにいろいろ手伝ってくれてありがとう!」
「えへへ」
魔法帝は優しくミヨの頭を撫でると喜んでいた。

ちゃんと、一応、面倒を見ているのだと分かった。
やっぱり偉大な人だ。

「あ、この王城でもいろいろルールがあることを忘れてた。これは結構大事なことだからちゃんと聞いてね。もしかしたら命に関わることかもしれないから!」

ミヨは人差し指を立てて、しっかり僕に話を聞くように誘導する。
やはり王城だから厳しそうな規律があるそうだ。

「うん、じゃあ説明するね! 
一つ目は……」

ミヨの語った規律というのは学校にあるような校則とは違い、身分などの分断に関係することばかりだった。
貴族たちは下の身分の人たちと馴れ合う気がないらしく、しっかりと分けられていた。

なにより衝撃だったのは、ミヨとソラさんが元は、僕と同じ平民だったということだ。

「モンスターに襲われて、唯一生き残った私たちをユリス様は助けてくれたんだよ!
それはとっても嬉しかったな!」

始めは魔法帝は王城で暮らしていた。
しかし、平民を連れてきたという理由で今はこの王城のすぐ横にある屋敷に隔離され、三人で暮らしているらしい。

だからメイドや執事は一人もいないということが起こっている。

といっても魔法帝の存在は大きいので、その分お金もたくさんあるから三人で暮らすには広すぎるほどの豪邸である。
頻繁に王城で会議をすることがあるので外から見るとほとんどひっついているようにも見えるらしい。
でも平民がいることで隔離されているという事実は変わらない。

貴族や王族はやはりプライドが高い。

「最後に一番大切なことを言うよ! 
トモ君がもし、この屋敷を出て王城に入ることがあったらこのローブを深く頭に被ってくれないかな?」
「う、うん。別にいいけど、どうして?」

首を傾げながら疑問に思うと魔法帝が丁寧に説明してくれた。

「一応、トモヤ君は先の魔法騎士団試験ですごい功績を挙げて印象は変わったよ!
でもね、それはこの国に住む町人たちしか伝わっていないんだよ。
貴族や王族はむしろ始め以上にトモヤ君のことを嫌いになっている。
なんか、下人が生意気とか言っていたような気がするな………
だから、もし王城に君が現れた情報が出回ると、差別どころじゃなくて、たぶん暗殺計画を考えることだってある。
君の命が危険にさらされるのは嫌だからね。
このことだけは絶対に覚えておいてね」

強く念に押された。
というか暗殺計画までするなんてよっぽど貴族や王族の中で嫌われているんだな……

なにわともあれ、注意事項はしっかりと聞いて覚えた。

「うん、私たちからは以上だよ! 
ごめんねー、話が長くなっちゃって。少しの間だけど、よろしくね!」

優しい笑みを向けてくれる。

「もしもの時は、私が守るから安心して。私は魔法帝だから!」
「それは心強い」
「私からの話は終わりだ。怪我をしている体なのにわざわざきてくれてありがとう!」
「いえいえ」

用事も済み、すぐに解散となった。

「あ、トモ君! 私はすぐ横の部屋にいるから何か困ったことがあったらいつでも呼んでね!」
「ミヨの部屋か………」
「ん? 何か言った?」
「い、いやなんでもないよ!」
思わず女の子の部屋がすぐ隣にあることを聞いて、気になってしまった。

「あ、ありがとうじゃあ、またね」
「うん、また明日!」

軽く手を振り、それぞれ自室に入った。

これから数週間、僕は魔法帝の屋敷に暮らすことになった。

仲間と逸れたのは少し寂しかったが、新たな出会いもあり、心がドキドキしていた。



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