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魔法帝の屋敷
授業
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お昼過ぎになる頃。
僕とミヨは二人長机に並んで、片手にペンを持ち、紙と対面していた。
「はい、これ」
「うん」
二人の間に会話はほとんどなく、真面目に計算だけをする。
だが、決してこの作業が苦だと思わなかった。
一番の理由は僕とミヨの相性がとても良かったからだ。
計算するスピードがほとんど一致し、どちらかが作業を止めて待つということがなく、とても集中できた。
一枚の計算が終わり、僕は紙を横にスライドさせると、すぐにミヨがそれを受け取って計算を始める。
その工程に慣れると、とてもスムーズになった。
効率がよく、やっているだけでなんだか気持ちいい。
「あと半分くらいかな。トモ君、大丈夫?」
「うん、全然平気!」
「あとすこしだから頑張ろ!」
「そうだね」
お互い顔を見合わせず、紙に数字を書きながら喋り合う。
たまにミヨがこうして慰めの言葉をくれるのも嬉しい。
時間はすぐに経過した。
「トモヤ君、ミヨ。もうそろそろ夕食が出来上がるので食堂に来てくれませんか?」
ソラはドアをノックして入る。
しかし、二人があまりに真面目に、そしてコンビネーションよく仕事をこなしている姿を見て静かに見守っていた。
トモヤが資料をスライドすると、ミヨはすぐに受け取って計算する。あまりに息がぴったりな二人を見て、固まるソラ。
なにより計算のスピードがほとんど変わらないことに深く感心していた。
「よし、これが最後!」
「あ、本当!」
最後の書類を終わらすと、僕は確認のために笑顔でミヨに渡す。
ほんの数十分待つと。
「よし、これで完成だね!」
ポンっと音を立ててハンコを押し、高く積まれている書類の一番上へと置く。
「お疲れ様、トモ君!」
「うん、お互い頑張ったね!」
パン!
二人で両手を合わしてハイタッチをした。
熱中していたせいで、すこし息が荒くなっていた。
そんな姿に目を合わせて二人とも笑顔になる。
「えっと、お取り込み中に話すのもアレなんですが………夕食が出来上がるので食堂の方へ……」
二人は両手を合わせたまま、声の主の方へ同時に首を曲げる。
「あ、ソラ! ごめんねー、集中していて気づかなかったよ」
ソラは頬を掻きながら下を向く。
どうやら邪魔したことを後悔しているようだ。
「そ、そうなんだ。二人とも……何というか、息ぴったりだね………」
「ん?」
二人、またシンクロして首を傾げる。
自分では自覚していないものの、側から見れば息が合ってるらしい。
よく分からないが………
お手伝いが終わり、簡単に片付けをしていると物凄く強い風の音がした。
それに応じてソラとミヨは「あっ」と微笑み、何処かへ駆けだしてしまった。
疑問に思いながらも二人についていく。
「おかえりなさい、ユリス様!」
「今日も疲れましたか? たくさんの人を助けましたか?」
顔を輝かせながら大きな玄関に立つ魔法帝をお出迎えしていた。
無邪気な子どものように前のめりになって興味津々だ。
何気に二人は魔法帝のことが大好きなのだろう。
魔法帝も任務が終わり、全員集合ということで食堂に向かった。
「相変わらず、豪華な食事だ……」
テーブルの真ん中にろうそくが立ててあり、その周りにはずらりと肉や魚、サラダやデザートなどが並べられている。
特に大きなステーキがあるのがとても僕の食欲を引き立てた。
思わずよだれがじゅるりと垂れた。
「ではいただきましょう!」
ソラさんの合図でそれぞれ食べ始まる。
今日の出来事、特に魔法帝の任務の話で今回の食事は盛り上がった。
やはり三人はとても仲がいい。
こうして見ていると、父子家庭にも見える。
食事が終わると、ズカズカと足音を立てて魔法帝が寄ってきた。
「トモヤ君、魔法を見してくれるのはいつなんだい?
もう、私うずうずして待てないよ!」
「ユリス様、まずその汚れた服を洗いに出してもらえませんか?
お風呂の後でもまだまだ時間はありますので、それからにしたらどうでしょうか」
ソラは丁寧に皿を片付けながら提案する。
「私、そんな臭うかな?」
「うーん、わかりませんが、お風呂に入ってからの方が、さっぱりするのでいいと思いますよ。その方が授業にも集中してもらえそうなので」
「ん、授業かい?」
僕の発言に魔法帝は首を傾げる。
「まぁ、入浴してくるよ。速く魔法を見して欲しいから」
マッハくらいのスピードで部屋を出て行かれた。
魔法を使ったので食堂に強い風が吹く。
「まったく、ユリス様はせっかちですね」
「好きなことにはいつも、必死になるからなー」
またソラは大量の皿を持ち上げて洗い場に持っていき、ミヨも部屋を出て行った。
僕も自室に戻り、ミヨに渡してもらったバスグッズと着替えを準備した。
そして授業の準備も。
そう、自分は電気オタクとして、僕が学んだ全てのことを魔法帝にを教え込もうとしている。
魔法のことはもちろんだが、雷や電気の素晴らしさ。これをどうしても分かってもらいたい。
ちょうどいい部屋も朝の探検で見つけている。
正面には黒板もあり学校のように講義ができそうだ。
生徒が一人というのはちょっと寂しいものだが……
そしてお風呂上がり。
「えっと、とても気合が入っている様子だね……」
微妙な反応をしている魔法帝が天板に手を置いて姿勢正しく座っている。
お互いお風呂上がりということでパジャマのような軽い服を着ていた。ちゃんと紙とペンも用意して、机の上に置いている。
魔法帝もそうだが、お風呂があまりに気持ちよくて長湯してしまい、未だに体から湯気が立っていた。
「では、講義を始めます!」
僕が先生のように宣言すると、魔法帝が色々とツッコミを入れてきた。
「あの、トモヤ君! ただ魔法を見してくれるだけだよね? それだけなのにどうしてこんなに準備がしてあるの?
私は雷魔法を見るだけでいんだよ!」
その言葉に対して僕は、
「甘い! 生温いですよ魔法帝!」
「え、ええ……」
「こちらとしても、全力で魔法帝の願いを叶えようとしているんです。文句を言わず座りなさい!」
「は、はい………」
魔法帝は静かに座る。
「こほん、では改めて講義を始めます。今日は雷魔法を使うためにイメージしていること、そして自然現象として起こる雷などについてお話します」
「あの、講義は今回で終わらないのですか?」
立場的に上な魔法帝が敬語になる。
「はい、雷や電気は奥が深いのです」
「は、はい」
前置きが終わると、僕は魔法帝に近づいた。
「まずは実践です。たぶん、教えるよりも実際に見た方がわかりやすいので雷魔法をお見せします」
「おお、待ってましたぞ!」
大きく立ち上がり、興奮する魔法帝。
さっきの引き気味のテンションはどこいったのやら。
まぁ、僕の行動のせいではあると思うが。
まずは小さな電気を見せる。
手を軽く開いて、
ビリッ!
しばらく電気を継続して見せた。
「これが電気です」
「はい、質問です!」
「なんでしょう、ユリス君」
魔法帝は手を大きく挙げると、
「雷と電気の違いってなんでしょうか?」
「違いというよりは、雷は電気の一種と言った方がいいかも知れません。色々雷にも種類があるんです」
「ほえ! そんなんだ!」
驚きで変な声が出てしまう魔法帝。
「さて、この電気の発生には色々方法がありまして………」
そこから、黒板に風力発電と水力発電について説明した。
この世界ではこれくらいしか実用できそうじゃないからな。
「と、電気は発生するのです。僕はここら辺のイメージを使って、放出や高度な技に挑戦することができました」
「す、凄い!」
魔法帝は机をバンバン叩いてはしゃいでいた。
まるで小さな子どものように。
魔法帝の理解は早かった。
どんどん質問をしたり、自分なりに説明をしたりして頭にインプットしていた。
さすが東大生……っぽい格好をしていた人。
元から探究心が強くて、気になることをどんどん学ぶ力があるようだ。
授業している時はとても静かに聞いてくれる。
こんなにいい生徒ばかりなクラスだと先生も苦労しないだろうな。
「はい、では次に雷です」
「はい!」
ふぅ、と一息つくと僕は手を天井に向けた。
「一瞬ですよ」
手に力を込めると、
バチ!
一瞬だけ天井から床に対して青い光が現れてすぐに消えてしまった。
「これが小さく縮小した雷になります」
「ああ、君が僕に放ったあの魔法の縮小版だね!
やっぱり改めて見ると怖いねー」
魔法帝は笑顔で言うが、思い出すとアレは僕にとってすこしトラウマだった。
威力最大で溜め、の時間を作っていたのに魔法帝のバリアで糸もたやすく止められる。
僕は落ち込んだ。
「あ、えっとそうでしたね……」
思い出したくない理由もあり、目を逸らす。
そのまま、魔法帝を見ずに黒板に向かうと講義を続けた。
「自然で雷が落ちる時、どんな特徴があるのかわかりますか?」
「雲が分厚い!」
「はい、その通りです! よくわかりましたね!」
「私は一度、雷雲の中を突っ切ったことがあるからねー。やけにあの時は上空に到達するのが遅いと感じたよ!」
衝撃的な話が飛んでくる。
「ふぇ! あ、そうなんですね………」
思わず顔が強張った。
「えっとですね、雷は雲にある氷粒がぶつかり合うことで小さな電気が発生し……」
「雲の中に氷があるの!?」
魔法帝が大きく目を見開いた。
「え、そうですけど」
「じゃ、じゃあ雲は氷によってできていたの!」
「うーん、正確には小さな水と氷の粒子ですね」
「し、知らなかった」
そう思えばこの国には化学が科目になかったな。
元の世界の一般常識とかも教えておく方がいいのかな?
「あの、空気ってどうなっているか分かりますか?」
「そんなこと知らないよ! 私もずっと昔から気になっていたんだけど。もしかして知っていたりする?」
「は、はい一応簡単ではありますが………」
「教えて! あ、教えて下さい、先生!」
キラキラとした目で訴える。
「わ、わかりました」
それを了承すると眩しい笑顔を魔法帝は見せた。
本当にこの人は探究心が強い。
こうやっていろんなことに興味を持ち、解決してたくさんの知識をつけるんだろう。
だから、この人は強いのかも知れない。
みんなからも信頼される魔法帝。
やっぱり尊いな。
ある夜の廊下。
「ふぁ、トモ君と一緒にやった仕事楽しかったな」
ミヨは夜中に起きてしまい、寝付けず廊下を散歩していた。
「あれ、まだ明かりがついている。どうしたんだろう?」
不思議に思ったミヨはドアを開けて入る。
そこには、目にクマをつけながら、必死に紙にメモを取っている魔法帝。
それに対面する形で、眠気に耐えながらも何か大好きなことについて講義をしているトモ君がいた。
「ふ、二人とも何時だと思っているんですか!?
もう2時過ぎてますよ!
一体、何時間ここで勉強していたんですか!
確かに勉強は大事だと思います。
でも、ユリス様は明日も仕事ですよね!
そして、トモ君! 今日、私を手伝ってくれていたのはとても助かったけど、君も病人だよ!
そんな無理したらダメです!
二人とも、早く寝室に行って寝てください!」
「ご、ごめんね。き、気づいたらこんな時間に………」
「アハハハ、すまない。つい夢中になってしまってね………」
「もうボロボロじゃないですか!
さあさあ、お休みしましょう」
ミヨの注意ですぐに勉強会は中断された。
次の日も魔法帝との化学の勉強会は続く。
僕とミヨは二人長机に並んで、片手にペンを持ち、紙と対面していた。
「はい、これ」
「うん」
二人の間に会話はほとんどなく、真面目に計算だけをする。
だが、決してこの作業が苦だと思わなかった。
一番の理由は僕とミヨの相性がとても良かったからだ。
計算するスピードがほとんど一致し、どちらかが作業を止めて待つということがなく、とても集中できた。
一枚の計算が終わり、僕は紙を横にスライドさせると、すぐにミヨがそれを受け取って計算を始める。
その工程に慣れると、とてもスムーズになった。
効率がよく、やっているだけでなんだか気持ちいい。
「あと半分くらいかな。トモ君、大丈夫?」
「うん、全然平気!」
「あとすこしだから頑張ろ!」
「そうだね」
お互い顔を見合わせず、紙に数字を書きながら喋り合う。
たまにミヨがこうして慰めの言葉をくれるのも嬉しい。
時間はすぐに経過した。
「トモヤ君、ミヨ。もうそろそろ夕食が出来上がるので食堂に来てくれませんか?」
ソラはドアをノックして入る。
しかし、二人があまりに真面目に、そしてコンビネーションよく仕事をこなしている姿を見て静かに見守っていた。
トモヤが資料をスライドすると、ミヨはすぐに受け取って計算する。あまりに息がぴったりな二人を見て、固まるソラ。
なにより計算のスピードがほとんど変わらないことに深く感心していた。
「よし、これが最後!」
「あ、本当!」
最後の書類を終わらすと、僕は確認のために笑顔でミヨに渡す。
ほんの数十分待つと。
「よし、これで完成だね!」
ポンっと音を立ててハンコを押し、高く積まれている書類の一番上へと置く。
「お疲れ様、トモ君!」
「うん、お互い頑張ったね!」
パン!
二人で両手を合わしてハイタッチをした。
熱中していたせいで、すこし息が荒くなっていた。
そんな姿に目を合わせて二人とも笑顔になる。
「えっと、お取り込み中に話すのもアレなんですが………夕食が出来上がるので食堂の方へ……」
二人は両手を合わせたまま、声の主の方へ同時に首を曲げる。
「あ、ソラ! ごめんねー、集中していて気づかなかったよ」
ソラは頬を掻きながら下を向く。
どうやら邪魔したことを後悔しているようだ。
「そ、そうなんだ。二人とも……何というか、息ぴったりだね………」
「ん?」
二人、またシンクロして首を傾げる。
自分では自覚していないものの、側から見れば息が合ってるらしい。
よく分からないが………
お手伝いが終わり、簡単に片付けをしていると物凄く強い風の音がした。
それに応じてソラとミヨは「あっ」と微笑み、何処かへ駆けだしてしまった。
疑問に思いながらも二人についていく。
「おかえりなさい、ユリス様!」
「今日も疲れましたか? たくさんの人を助けましたか?」
顔を輝かせながら大きな玄関に立つ魔法帝をお出迎えしていた。
無邪気な子どものように前のめりになって興味津々だ。
何気に二人は魔法帝のことが大好きなのだろう。
魔法帝も任務が終わり、全員集合ということで食堂に向かった。
「相変わらず、豪華な食事だ……」
テーブルの真ん中にろうそくが立ててあり、その周りにはずらりと肉や魚、サラダやデザートなどが並べられている。
特に大きなステーキがあるのがとても僕の食欲を引き立てた。
思わずよだれがじゅるりと垂れた。
「ではいただきましょう!」
ソラさんの合図でそれぞれ食べ始まる。
今日の出来事、特に魔法帝の任務の話で今回の食事は盛り上がった。
やはり三人はとても仲がいい。
こうして見ていると、父子家庭にも見える。
食事が終わると、ズカズカと足音を立てて魔法帝が寄ってきた。
「トモヤ君、魔法を見してくれるのはいつなんだい?
もう、私うずうずして待てないよ!」
「ユリス様、まずその汚れた服を洗いに出してもらえませんか?
お風呂の後でもまだまだ時間はありますので、それからにしたらどうでしょうか」
ソラは丁寧に皿を片付けながら提案する。
「私、そんな臭うかな?」
「うーん、わかりませんが、お風呂に入ってからの方が、さっぱりするのでいいと思いますよ。その方が授業にも集中してもらえそうなので」
「ん、授業かい?」
僕の発言に魔法帝は首を傾げる。
「まぁ、入浴してくるよ。速く魔法を見して欲しいから」
マッハくらいのスピードで部屋を出て行かれた。
魔法を使ったので食堂に強い風が吹く。
「まったく、ユリス様はせっかちですね」
「好きなことにはいつも、必死になるからなー」
またソラは大量の皿を持ち上げて洗い場に持っていき、ミヨも部屋を出て行った。
僕も自室に戻り、ミヨに渡してもらったバスグッズと着替えを準備した。
そして授業の準備も。
そう、自分は電気オタクとして、僕が学んだ全てのことを魔法帝にを教え込もうとしている。
魔法のことはもちろんだが、雷や電気の素晴らしさ。これをどうしても分かってもらいたい。
ちょうどいい部屋も朝の探検で見つけている。
正面には黒板もあり学校のように講義ができそうだ。
生徒が一人というのはちょっと寂しいものだが……
そしてお風呂上がり。
「えっと、とても気合が入っている様子だね……」
微妙な反応をしている魔法帝が天板に手を置いて姿勢正しく座っている。
お互いお風呂上がりということでパジャマのような軽い服を着ていた。ちゃんと紙とペンも用意して、机の上に置いている。
魔法帝もそうだが、お風呂があまりに気持ちよくて長湯してしまい、未だに体から湯気が立っていた。
「では、講義を始めます!」
僕が先生のように宣言すると、魔法帝が色々とツッコミを入れてきた。
「あの、トモヤ君! ただ魔法を見してくれるだけだよね? それだけなのにどうしてこんなに準備がしてあるの?
私は雷魔法を見るだけでいんだよ!」
その言葉に対して僕は、
「甘い! 生温いですよ魔法帝!」
「え、ええ……」
「こちらとしても、全力で魔法帝の願いを叶えようとしているんです。文句を言わず座りなさい!」
「は、はい………」
魔法帝は静かに座る。
「こほん、では改めて講義を始めます。今日は雷魔法を使うためにイメージしていること、そして自然現象として起こる雷などについてお話します」
「あの、講義は今回で終わらないのですか?」
立場的に上な魔法帝が敬語になる。
「はい、雷や電気は奥が深いのです」
「は、はい」
前置きが終わると、僕は魔法帝に近づいた。
「まずは実践です。たぶん、教えるよりも実際に見た方がわかりやすいので雷魔法をお見せします」
「おお、待ってましたぞ!」
大きく立ち上がり、興奮する魔法帝。
さっきの引き気味のテンションはどこいったのやら。
まぁ、僕の行動のせいではあると思うが。
まずは小さな電気を見せる。
手を軽く開いて、
ビリッ!
しばらく電気を継続して見せた。
「これが電気です」
「はい、質問です!」
「なんでしょう、ユリス君」
魔法帝は手を大きく挙げると、
「雷と電気の違いってなんでしょうか?」
「違いというよりは、雷は電気の一種と言った方がいいかも知れません。色々雷にも種類があるんです」
「ほえ! そんなんだ!」
驚きで変な声が出てしまう魔法帝。
「さて、この電気の発生には色々方法がありまして………」
そこから、黒板に風力発電と水力発電について説明した。
この世界ではこれくらいしか実用できそうじゃないからな。
「と、電気は発生するのです。僕はここら辺のイメージを使って、放出や高度な技に挑戦することができました」
「す、凄い!」
魔法帝は机をバンバン叩いてはしゃいでいた。
まるで小さな子どものように。
魔法帝の理解は早かった。
どんどん質問をしたり、自分なりに説明をしたりして頭にインプットしていた。
さすが東大生……っぽい格好をしていた人。
元から探究心が強くて、気になることをどんどん学ぶ力があるようだ。
授業している時はとても静かに聞いてくれる。
こんなにいい生徒ばかりなクラスだと先生も苦労しないだろうな。
「はい、では次に雷です」
「はい!」
ふぅ、と一息つくと僕は手を天井に向けた。
「一瞬ですよ」
手に力を込めると、
バチ!
一瞬だけ天井から床に対して青い光が現れてすぐに消えてしまった。
「これが小さく縮小した雷になります」
「ああ、君が僕に放ったあの魔法の縮小版だね!
やっぱり改めて見ると怖いねー」
魔法帝は笑顔で言うが、思い出すとアレは僕にとってすこしトラウマだった。
威力最大で溜め、の時間を作っていたのに魔法帝のバリアで糸もたやすく止められる。
僕は落ち込んだ。
「あ、えっとそうでしたね……」
思い出したくない理由もあり、目を逸らす。
そのまま、魔法帝を見ずに黒板に向かうと講義を続けた。
「自然で雷が落ちる時、どんな特徴があるのかわかりますか?」
「雲が分厚い!」
「はい、その通りです! よくわかりましたね!」
「私は一度、雷雲の中を突っ切ったことがあるからねー。やけにあの時は上空に到達するのが遅いと感じたよ!」
衝撃的な話が飛んでくる。
「ふぇ! あ、そうなんですね………」
思わず顔が強張った。
「えっとですね、雷は雲にある氷粒がぶつかり合うことで小さな電気が発生し……」
「雲の中に氷があるの!?」
魔法帝が大きく目を見開いた。
「え、そうですけど」
「じゃ、じゃあ雲は氷によってできていたの!」
「うーん、正確には小さな水と氷の粒子ですね」
「し、知らなかった」
そう思えばこの国には化学が科目になかったな。
元の世界の一般常識とかも教えておく方がいいのかな?
「あの、空気ってどうなっているか分かりますか?」
「そんなこと知らないよ! 私もずっと昔から気になっていたんだけど。もしかして知っていたりする?」
「は、はい一応簡単ではありますが………」
「教えて! あ、教えて下さい、先生!」
キラキラとした目で訴える。
「わ、わかりました」
それを了承すると眩しい笑顔を魔法帝は見せた。
本当にこの人は探究心が強い。
こうやっていろんなことに興味を持ち、解決してたくさんの知識をつけるんだろう。
だから、この人は強いのかも知れない。
みんなからも信頼される魔法帝。
やっぱり尊いな。
ある夜の廊下。
「ふぁ、トモ君と一緒にやった仕事楽しかったな」
ミヨは夜中に起きてしまい、寝付けず廊下を散歩していた。
「あれ、まだ明かりがついている。どうしたんだろう?」
不思議に思ったミヨはドアを開けて入る。
そこには、目にクマをつけながら、必死に紙にメモを取っている魔法帝。
それに対面する形で、眠気に耐えながらも何か大好きなことについて講義をしているトモ君がいた。
「ふ、二人とも何時だと思っているんですか!?
もう2時過ぎてますよ!
一体、何時間ここで勉強していたんですか!
確かに勉強は大事だと思います。
でも、ユリス様は明日も仕事ですよね!
そして、トモ君! 今日、私を手伝ってくれていたのはとても助かったけど、君も病人だよ!
そんな無理したらダメです!
二人とも、早く寝室に行って寝てください!」
「ご、ごめんね。き、気づいたらこんな時間に………」
「アハハハ、すまない。つい夢中になってしまってね………」
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