雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法帝の屋敷

仲間と再会

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魔法帝はご機嫌で空を飛んでいた。

「明日は休みだ! トモヤ君にもっと魔法を見してもらわないといけないね!
あと数日でお別れになっちゃうから……」

ゆったりと、風を仰いでリラックスしていた。

「んー、それにしても背後からすごい魔力を感じるなんて、よっぽど私も疲れているんだな……
私以外に空を飛ぶ人なんて、あまり見かけないからね」

気にせず空を飛び続けると、

「届け………届けぇぇぇえええ!」

後ろから叫び声が聞こえ、だんだん大きくなっている。

「え……これ、本当のやつなの……?」

恐る恐る振り返ると、全力で水を噴射している女性がいた。

「うわぁ!? 女性!」
驚いた時、もうセクアナは目の前まで近づいていた。

いくら魔法帝であっても、衝撃的な出来事が起こると体が追いつかない。

「ぐはぁ!」


セクアナが魔法帝に衝突し、なすすべなく二人は落下したのであった。




今日も毎日の日常を送る。

朝食を食べ終わると、ミヨと一緒に財務会計。

息の合うコンビネーションでテキパキと作業に打ち込んだ。


空は夕方に差し掛かり、今日の仕事が終わろうとしていた時、事件が起こった。

バリンバリン、ガッシャーーン!


どこの部屋からかわからないが、ガラスが割れてもの凄い音が響く。

「え、えっ……何? 何が起こったの?」

僕は首をキョロキョロしながら狼狽えていると、ミヨは肘を顎に当てて、何かを考え込んでいた。

「ユリス様かな……ぼーっとしていて窓に衝突したとか……」
「魔法帝でもそんな破天荒なドジするの!?」

「もしかしたらだよ。今までにはなかったけどユリス様ならやりかねないからねー」

その言葉に「ああ!」と納得する自分がいた。

「行こ! 一応、ユリス様に回復魔法をかけなければならないかもしれないから」
「そうだね」

駆け足で部屋を出た。


事故現場に着くと案の定、割れたガラスが散らばり、ひどい有様だった。

これはソラさんに怒られそうだな……


苦笑いをしながら、魔法帝を見ようとすると自分の動きは止まった。

魔法帝はある人の下敷きになっていた。

青いショートヘアーの髪。
まん丸とした綺麗な瞳。
透き通るような白い肌。

セクアナだった。

何があったのか知らないが、髪がボサボサになっており、顔色が悪く見えた。

でもそんなことは関係ない。
どんな姿でもいい。

離れていた時間はすこしの間だったのに、僕はとても懐かしく感じた。
だんだんと心が暖かくなり、笑みが溢れる。

とても嬉しい。

「セクアナ……」

僕が小さな声を上げながら歩み寄る。
すると、魔法帝の上にのしかかっていたセクアナはゆっくりと目を開ける。

「うん……? トモヤ……」
「うん、そうだよ。僕だよ、久しぶりだね!
セクアナ!」

目を合わせ、しっかりと僕の姿を認識したセクアナは、勢いよく飛び起きる。

「えっ、どうしたの?」

僕の言葉なんて耳にも入れず猛スピードで寄ってきた。

「トモヤ! 大丈夫? 怪我とかしてない?
貴族の人たちに暴力を振るわれたりしてない? もしかして、言葉で追い詰められて精神的にしんどいとか!」

「うにゅう……? セクアナ……久しぶりに会えたのにいきなり、体中をまさぐらないで。
大丈夫、魔法帝とミヨとソラがしっかり守ってくれたから!」

会うなり、セクアナはいきなりほっぺを触ったり、上半身を手探りで調べたりする。

「あ! ごめん! そうだね、久しぶりに会えたんだからね」
「なんだか、そういう心配性なところ、セクアナもお母さんに似てきたよね」

「えー、そうかな……まぁ、褒め言葉として受け取ります!」
「そうしていただけたら嬉しいです」

「アハハハハ!」

二人、顔を見合わせて笑った。

「えっと、じゃあ、改めて、トモヤ!
会えて嬉しいよ!」

満面の笑顔でいうセクアナに、僕の顔が赤くなる。

「うん、僕も嬉しい……」

横を向きながら言う。
久しぶりのセクアナがとても懐かしく、それでいて綺麗だったのでしっかりと目を合わせられなかった。



そんな二人の姿をある少女は心を痛めていた。
胸を押さえ、苦しい顔をする。

(やっぱり、トモ君にもそういう人はいるよね……
一緒に戦えるなんて、私じゃ敵わないな……)

「ミヨ、顔色が……」

いつもとすこし違うことに気づいたソラが気遣おうとする。

「あ、ううん……なんでもないよ……
急な出来事に気が動転しているだけだから……」

ミヨの小さな体が小刻みに震えていた。

「そうなの? ならいんだけど……」
「アハハ、ソラは心配性だなぁ」

ミヨは苦しい気持ちをどうにか我慢し、笑みを向けると、ソラは静かに俯いた。
二人に重い空気がのしかかる。


「こほん!」

いつの間にか魔法帝は立ち上がっており、咳払いをする。

そのすこし威圧的な声に僕とセクアナは息を合わせたように、同時に肩が動く。

セクアナは自分のやった行いを思い出すと、顔が真っ青になっていた。

「あ、あの……魔法帝様、すいませんでした!」

すぐに魔法帝の方へ向き直り、何度も何度も頭を下げる。

「ああ、別に私は気にしていないよ……」

魔法帝は頬を赤くしながらクネクネと体を捻り、
「どちらかといえば、君の魔法についてもちょっと興味が湧いてしまってね……もっと……もっと私に素晴らしい魔法を見してくれないかい!」

ああ、ダメな魔法帝だった……

僕たち三人はため息をつき、セクアナは何を言われたのかわからず、フリーズする。

いつもの如く、ソラがこの場を収めてくれた。

魔法帝を止めるだけでなく、僕がどんな暮らしをしていたかなど的確に説明してくれた。
その話を聞いて、不安に思っていたことが全て解決。
セクアナは一息ついて安堵する。

「こほん、話は戻るが、さっきはすこし迷惑をかけてすまなかった」
「い、いえ……私の方から行ったことなので謝るのはこちらの方なんですけど……」

まだ、魔法帝のことを知らないセクアナは緊張気味だった。

そんな対応をすこし緩和するためにソラが、
「セクアナさんと仰いましたね?
今日の起こったことは……まぁ、よくあることなので、それほどお気になさらないでください……」

「そ、そうなんですか?
というか、よくあるって……そっちの方が問題なんじゃ……いつも後始末とか大変ですよね?」
「苦労しています……」

ソラは視線を逸らす。

その表情を見て、セクアナも何かを感じたようだ。

「なんだか、私も分かる気がします……」

(マネトさんやサナをまとめるの、大変だったな……)

この二人も、何か違う意味で繋がったようだ。
自然と手を握り合っていた。


「なんだか、二人はもう仲良くなってる見たいだね」

横にいるミヨに話しかけると、
「そうだね……」

覇気のない、ミヨの返事が聞こえた。
いつもより素っ気ない気がする。

すぐに顔を伏せるミヨ。

と、そんな暗い空気の中、魔法帝たちの話は
進んでいた。

「私以外でここに来れたわけではないので、できれば仲間もこちらにお呼びしたいのですが……」

「ああ、それは勿論大歓迎だよ! 
魔法が翼とか鳥とかそういう人たち以外で空を飛んでる人、初めて見たからね!
空を飛ぶほどの大魔法を完成させたお仲間も、さぞ強い魔法を持っているんだろうね!
速く見たいよ!
連れて行くから場所とかを教えてくれないかい?」

爽やかに笑いながら手を差し伸べる魔法帝。

「は………い、嫌!」
「う~ん? なんだろう、すこし前にこんな酷い扱いを受けた気がするんだが……」

セクアナは反射的に手を払っていた。

自分のやった過ちに気づくと、また何度も頭を下げて謝っていた。

「まぁ、でも君の気持ちは分からんでもないからね。一度、風圧に耐えられずに気絶させてしまったから……」

「はい、すいません。まだ恐怖心がありまして……」

僕はこの会話を聞いてニヤニヤしていた。

これでも、魔法帝には色々教えたからな。
その問題は対策済みなんですよ。


「安心したまえ、お嬢ちゃん! その問題は対策済みなんだよ!」

魔法帝は堂々と胸を張り、声高らかに宣言した。

この方法を考えたのは自分なんですけど……


外に出ると、魔法帝はセクアナを抱え込む。

「この対策はある少年との出会いから始まったのである。ずっとずっと、私は悩んでいた。全力で空を飛ぼうとする……」
「あの、早く出発してもらっても……?」

「………聞いてよ!」
「えぇ!」

「もう、ユリス様! 困っていらっしゃるので早く!」

ソラの注意を受けて、
「はいはい、わかりました。昔からの悩みだったから説明したかっただけですよ!」

魔法帝の周囲に風が集まると、分厚い風の球体によって覆われる。

エキシビジョンマッチで魔法帝と戦闘した時に発生させた、あのバリアだ。

「これによって風の抵抗はゼロになるんだ!
出発するよ!」

ゴオオオオォォォォ!

飛び立って行った。


数分すると、三人……いや四人いた。

「トモヤ、久しぶりだな! 元気にしていたか!」
サナが髪を揺らしながら魔法帝から降りる。

その後ろではキラキラした目で、
「久しぶりのトモヤだぁ! 怖い人ばかりで俺、死ぬかと思った!」

涙目になりながら縋り付いてくるマネト。

「怖い人だとは失礼だぞ! これでも僕はマネトの前では変身しないように意識していたのに」
魔法帝の隣で、かつ同じ景色を見ながら飛べたのが嬉しかったのか、ほっぺを赤くしたドルトムがいた。

「え、なんでドルトムまでいるの?」
「ライバルに向かって失礼だぞ、トモヤ。
これでも助けるために協力してやったんだから!」
「そうだったんだ。ありがとな、君も手伝ってくれるなんて」
「ああ、なんてことないぞ!」

人数が増えて、賑やかになる。


ここへみんなを連れてくると、魔法帝は何かを考え込んでいた。

「話によると矛盾することがあるのだが、私たちはちゃんと、ミーティアに連絡をしたはずだったような……どうして連絡を把握できなかったのだろう? どう思う、ソラ?」

「そう考えればそうですね。連絡をしたことを知っていればこんな大ごとにはならなかったですね」
「確かに」
集まっていたみんなが、それに同意する。

そこでソラが危ない発言をする。

「僕が魔法で確かに送ったはずですが……
マネトさんに」
「……え!」

一気に冷たい視線が一人の男に向けられる。

「そう思えばある時からミーティア、見せてくれなくなりましたよね……マネトさん」
「私たちがここまで苦労したのだ……まさか、ミーティアを売ったなんてことないよな?」

マネトはそっぽを向く。
顔からだくだくと大量の汗が滲み出る。

女性陣、二人の顔が特に怖いな。

「なんのことかな……」
白状しないマネト。

「まぁ、僕は色々楽しめたから全然いんだけど」
ドルトムは気にせず問い詰める側から抜けた。

問題は、
「どうなんですか? マネトさん……」
「はっきりしたらどうだ!」

苦し紛れの笑顔をマネトは作ると、

「………閃光!」

「あっ、逃げたよ! 追いかけて、サナ!」
「当たり前だ! あいつ一人のせいで私たちは色々追い回されたのだからな!」

「助けてぇぇぇぇぇ! トモヤ!」
自業自得だ。


馬鹿騒ぎして二人の鬼からマネトが捕まえられて、静かになると、魔法帝が話し出した。

マネトは、全身を震わせながら大泣きして、ドルトムの横に小さくなる。

子どもは女性から人気だとかで、言い逃げ場所とのこと。

何気に仲良いな、ドルトムとマネトって。


「一応、トモヤ君はもう十分に怪我が治療されている。
すぐにでも任務へ出発することはできるだろう。君たちが来たってことはトモヤ君を連れ戻しに来たってことだよね?」

「はい、そうですね……色々問題はあるんですけど、このまま過ごすと、お金も無くなって、魔法騎士になったのに飢え死にしそうですからねぇ……」

「ええ!? なにその独特な問題!
あれ? お金はどうしたんだい?」

「無くなった」

サナとマネトが口裏を合わせて言う。

「こ、こういうことです……」
拳に力を入れ、どうにか怒りを抑えているセクアナ。
僕やドルトムでさえ、二人に冷たい視線を向けていた。

「何というか、大変だね……」
「ユリス様がそのセリフを言わないでください」

魔法帝の言葉にソラがつっこむ。

なかなか話が進まらない。

ソラの言葉に顔をひきつらせながらも、
「ま、まあ、えっと……私の言いたいことなのだが、トモヤ君を明日まで、預からせてもらえないだろうか? 数週間だけだが、私たちも色々お世話になったもので……」

「へぇ、そうなんですか! トモヤが……
意外ですね!」
「意外とは……?」
「アハハ……」

セクアナを睨むと、笑って流された。

「それなら、分かりました! トモヤをよろしくお願いします!」

セクアナ以外も賛成してくれた。

話が終わると、魔法帝に捕まる。


帰る前にドルトムが僕に寄ってきた。

「ね、ねえねえ、魔法帝と過ごす日々ってどんなだった?」
興味津々で目が輝いていた。

一瞬、言葉に詰まるも、
「とてもカッコよくて、楽しかったよ!」

「ふーん、いいな……羨ましい!
……トモヤだけずるい、恨んでやる!」
「アハハ、それは怖いな」

「だから僕は今から修行するよ。強くなってトモヤをボコボコにして恨みを晴らす!
だから、もう僕は行くよ
来年、必ず再戦を望むから覚悟して!」

「そっか、もう行くんだね……じゃあ、また来年か………
言っとくけど、実践で戦う方が実力は上がるんだよ!    負ける気なんてないから!」

「僕もだよ!」

「ドド、ドルトムキュン! もう行くぞ……さあ、私の胸にくるのだ!」

荒い息を吐きながら楽しみにしているサナの声が聞こえた。

「じゃあね」

ドルトムは行ってしまった。

小さな背中がゆっくりと消えて行く。

「うん、僕のライバル……また、会おうね」

静かなそよ風が、僕の髪を揺らした。



「あ、ドルトムキュンはこっちだよ! どうしてマネトの方に行く!」

「ツーン……」
「なっ! 私、嫌われたか……」

「みんな、乗ったかい?」

大きな腕を持つセクアナは、魔法帝の方を向く。
「突撃したことなど諸々、色々迷惑をかけてすいませんでした」

「気にしないでくれ、これ以上にトモヤ君は色々私たちにくれたのだから」

「それは、なんだか嬉しいですね」

まるで自分のことのようにセクアナは、はにかんだ。

「もし私に叶えられることがあれば、なんでも言ってくれ」
「いいんですか?」
「ああ、なんなりと」

「じゃあ、明日からすぐに任務を入れてもらえればなんですけど……」
「そんなことでいいのかい?」
「はい」
「君は努力家だね」
「あ、ありが……」

途中で、ドルトムも会話に入る。

「あ、あのあの……僕も魔法帝とお話ししたいのですが……」
「ああ、なんでもいいよ」

「なら、私も、この国の最強の方にお話を色々と伺いたいのだが」

「お、俺はど、どんだけお金をもらえているのか知りたいよ! こんなに大きな屋敷に住んでいるなら気になる!」

「みんな、待って順番に!」
セクアナがまとめようとするけど、それも虚しく、

それぞれが、ガヤガヤガヤガヤと喋りだす。


「魔法帝、大変だね……」
横にいるソラは呆れながらも笑っていた。

「これがユリス様の力なんですかね?」

ドルトムはもちろん、いつも緊張するサナでさへ、積極的に話している。


そんな光景に、話しづらそうにしていたミヨが、
「いつも迷惑をかけるけど、それとは比べものにならないくらい、ユリス様にはいい所があるからね。私は一番尊敬しているよ!」

魔法帝を見て、ミヨが笑顔になっていた。


「あ、行っちゃったね」

魔法帝は空高く飛び立った。
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