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対面
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「・・・・・・気まずい!?」
なぜこうなったのだろう。
いや、僕のせいではあるのだけれどこの状況どうしたらいいの?
僕は今、よくある飲食店の中でドリンクバーを頼んで、ある人と対面している。
そのある人とは昨日初めて話した朝空雪菜さんだ。
鞄を膝の上に置いて、静かにちょこんと座っている。彼女は顔色一つ変えず、体もほとんど動いていない。まるで石像のようだ。顔を下に向けて僕のことを怖がっているように見える。
そりゃ、いきなり誘ってしまったからな・・・・
少し反省する。
かけているメガネに光が反射して僕を威圧しているようだ。
余計喋りづらい。
この状況になってしまった事の発端は今日の朝から始まる。
朝起きると机の上に座っていてノートに何か書いてあった。
「いやぁぁぁ。お前から相棒なんて言葉をもらえるとは思わなかったぜ! まさかお前の言葉で俺が照れる日が来るとはな。
お前がいつも俺を嫌っているような文をメッセージでよく書いていたけど、あれが祐介なりの愛情だったのかな?
まさかのツンデレ ガッハハハハ」
「うわぁぁぁぁ!?」
ノートを破いてやりたかった。
いや、まあ調子に乗ってしまった僕が悪いけど、あいつに初めてからかわれるような文を書かれてイラついた。
ツンデレ?
ふざけるな。いつもどれだけ苦労しているか!
おっといけない、心が乱れた。
続きを読まないと。
「まぁ、からかいはこれくらいにしといてやろう」
チッ。思わず舌打ちをしてしまった。
「本題なんだが、お前自身の力であの女に話せ。自分の力でだぞ。
それのついでに自己紹介だ。それだけは今日中にやれよ。
これさえできればお前としては上出来だ。
早く仲良くなるためにもこれは絶対に今日中だ。
分かったな。
これは友達の作れないお前のためでもあるんだぞ。せっかくの相棒だからな! お前自身を成長させる役目が俺にはある。
なんつって。」
相棒、相棒ってよく書くな。あの時、調子に乗った僕を殴ってやりたい。
義人を調子に乗らしたらろくなことがないからな・・・・
「もしできるなら友達になってください!! って懸命に頼んだら簡単になってくれるかもな。」
話すのが苦手な僕にハードなこと言うな。そんな素直なこと言えるわけないだろ。
明るく接することができる翔ちゃんや義人を羨ましく思う。
「もし会話が止まって拒絶する意思があったら俺と交代できるかもな。その時は任せろ!」
最後に頼りになる言葉を残して終わった。
意外にあいつもいい奴だな・・・・
そう思っていたが、ある文字を見てその感情は無くなった。
ノートの上の部分だけ見ていたが、下にも何か書いてあるのを見つけた。
「もしできていなかったら
お前を殴り倒す」
怖っ!?
これはマジっぽく書かれていて体が震えた。確かに自分を殴ったら痛みがまた僕にも伝わる。
喧嘩だけのイメージが少しなくなりつつあったが、これを見ると体中が恐怖に支配された。
すこしでも、いい奴と思ったあの記憶を消し去りたい。
なによりも一言、話さないといけないと思った。
恐怖もまた、やる気を出すための教育の一つかもな・・・・・
僕は嫌いだけど。
声をかけるのは緊張するな。
でもすこし話せたら交代してくれるのかな?
そういう意味ではすこし頼りになる。
話したらすぐ交代出来ますようにと両手を合わせて願った。
覚悟を決めて学校へと向かう。
意外にもすぐにチャンスが巡ってきた。
橋を渡っている時、すこし前には見覚えのある姿がある。
髪が肩まで伸びているショートカット、すこし自信のないような歩き方。顔を下に向け、すこし猫背になっている。
間違いなく、あの女の子だ。
殴られないためにすぐに近くへ行った。足早に近づいて呼び止めようとする時、タイミングが悪く、翔ちゃんが「おーい」と言いながら走ってきた。
知っている人が来たことで、話しかけるのが恥ずかしくなって結局チャンスは無駄になった。
まだ一日あるし、自己紹介くらいすぐにできるだろう。
そう安心していたが、そんな簡単にできることではなかった。
朝の時間、休憩時間、昼休み、すべての時間どうにか話そうと試みた。
でも彼女は今日日直だったので教室にあまりいなかったり、昼休みには運悪く先生に軽い仕事を頼まれて時間がなくなるなどがあり話せなかった。
いつのまにか、放課後になっていた。
もう無理だしあいつに頼もうか、と思ったが今日は義人と交代しない日だった。
どこまでも今日はついてない。
「はぁー」
教室で一人大きなため息をつく。
女の子の席を見ると、もう姿がない・・・・
体の中からどっと汗が出てくる。
「ヤバイ!! もう帰ってしまった!」
焦った。今までにないほど焦ってしまう。
殴られる殴られる!!
女の子に追いつくため高速で走り、階段を何段も飛ばして降りる。
そして下駄箱についた時、ちょうど靴を取り替えていた。
よかった、間に合った!
心の中でまだ帰っていなかったことを安心した。殴られずに済むかも・・・
ここについた時、ほとんど喋る力が残っていなかった。久しぶりに全力で走った気がする。
それでも彼女を呼び止めるため声をかけた。
「あっ、あの!!」
「・・・あ、あなたは昨日の・・・大丈夫ですか?」
「はぁはぁ、すいません大丈夫です・・・」
会話が終わった。
ここからどうしたら・・・
いきなり自己紹介。いやこんなところでするのもな。
緊張で体からもっと汗が出る。それでも手汗で濡れている拳を強く握りしめた。
「僕と! お茶でもしませんか?」
テンパった声でそんなことを言ってしまっていた。
ナンパのようになった。
走りすぎた疲労、ちゃんと自分からお話しするという緊張などが全て混ざってこんなことを言ってしまったのだろう。
絶対引かれたよな・・・・・
そして現在、よくある飲食店でドリンクバーを頼んだ。
「あの、僕は同じクラスメイトの村上祐介と言います」
「私は、朝空雪菜です・・・・」
小さな声で頭を軽く下げて紹介してくれた。
よし、目的達成!
ノートで約束したことを今、やっと達成できて心の中にあった重りが取れるような気分になった。
それと同時に疲れがどっときた。
もうそろそろ交代できるかな。
あとは義人に・・・・・
そんな言葉を残し交われると思ったが、交代できない。
あれ、あれ? ふん!
もう一度目を強く瞑って交代、人格変化、などと心の中で叫んでみたが何も変わらなかった。
「アハハハハ」
僕は女の子に軽く笑いかけた。
これは安心させるために笑ったのではない。
完全にゲームオーバーになったからもうどうにもならず、自然に笑顔が出たのだ。
「・・・・・・・・気まずい!?」
どうしろと、もう打つ手がない。
ただの無言だ。静かな空間の中、時間だけが過ぎていく。
なんかこの状況、義人に殴られるよりも辛い気がする。
ここまで気まづい空気になるのは僕にとっては初めてだ。なぜならいつも何人かの友達がいて、空気を変えてくれていたからだ。
今は一人。
結果、どうすることもできない。
まだ春という季節なのに汗がドバドバと出てくる。そして顔から垂れた汗が机に落ちる。
気まづくて体が全然動かない・・・・
「あ、あの・・・ 祐介さんでしたよね?」
「は、はい」
ありがたいことに女の子から話してくれた。
あまりの感謝で彼女の周りに光が集まって女神のように見えた。
「祐介さんって・・・・・二つの人格を持っているみたい、ですね・・・・」
「・・・・・・」
しばらく僕は固まっていた。衝撃的なことを言われて頭が追いつかなかった。
そしてだんだん顔が青ざめる。
大切に思ってる二人の友達でさえ思わなかったことを第一声に言われてなんと受け答えすればいいかわからない。
「なんでそう思ったの?」
「あの・・・私、一人でずっと過ごしているから、いつのまにか人の変化に敏感になったんです。で、ですから面白い人だとずっと思っていて・・・・」
「ああ、そうなんだ・・・」
この時、女の勘の恐ろしさを実感した。
少しの間考えた。
会って間もないが、なぜか女の子のことを信じれて、僕は二重人格のことを話した。
「実は僕、二重人格っていう精神病にかかっているんです」
見ると両手を口に当てて気の毒そうにこちらを見ていた。
「た、大変そうですね・・・」
「そうだろ、俺は面白いだろ!」
いきなり義人に変わり、机をドンっと叩いた。
「俺がもう一人の祐介だ。これからもよろしくな! それにしてもお前、静かだな。もっと明るくなれないのか?」
「は、はい。わ、私も頑張ってみます」
いきなり俺に変わったようで驚いていた。
少しだけ祐介の時より声が明るかった。
それだけ言い終わるとすぐに祐介と交代した。
「すいません、すいません。あいつが変なことしませんでしたか?」
義人はろくでもない奴と分かっていたのですぐに謝った。
「全然全然、だ、大丈夫です」
「よかった」
肩を落として安心した。
「フフフ、二人とも面白いですね!」
「・・・・・・・」
しばらく、僕は口が空いたまま閉じなかった。
君の笑った顔、それがあまりに美しくて感動した。
こんな顔もできるんだ。
そのはにかんだ笑顔だけは今日、ずっと心の中に刻まれた。
「それにしても、昨日はどうして声をかけたんですか?」
「ああ、えっと、それはですね・・・・」
君は少し考えてすぐにその答えを言った。
「私の大切な人が、もう一人の祐介さんとそっくりだったのでつい声をかけてしまって・・・・・ 驚きましたよね。いきなりそんなことして」
「確かにすこし驚きましたね、ハハハ」
君が声をかけてくれたのは義人に目的があったからなんだな。
なぜか僕の心は締め付けられて悲しくなった。
「すっ、すいません。祐介さんを傷つけてしまいましたね」
「い、いえ・・・・・」
キーン
話の切りがいいところで五時を知らせるチャイムが鳴った。
窓から外を見るともう太陽が山に隠れようとしていて空が薄暗くなっていた。
「あっ、すいません! こんな時間まで話してしまって。ありがとうございました」
「そんな、私なんかと話してもらえてこちらこそありがとうございます」
「ぼくから誘ったのでお会計は僕がしときます」
「す、すいません。お言葉に甘えさしてもらいます」
横に置いていた鞄を持ち、店を出た。
「それではまた・・・・」
「また・・・・」
軽く手を振ってお互い、反対の道へ帰っていった。
一応、連絡先を交換できた。
予想以上の結果に僕はとても喜んでいた。
夕日が沈む中、体が軽くてとても愉快な気持ちで帰った。
なぜこうなったのだろう。
いや、僕のせいではあるのだけれどこの状況どうしたらいいの?
僕は今、よくある飲食店の中でドリンクバーを頼んで、ある人と対面している。
そのある人とは昨日初めて話した朝空雪菜さんだ。
鞄を膝の上に置いて、静かにちょこんと座っている。彼女は顔色一つ変えず、体もほとんど動いていない。まるで石像のようだ。顔を下に向けて僕のことを怖がっているように見える。
そりゃ、いきなり誘ってしまったからな・・・・
少し反省する。
かけているメガネに光が反射して僕を威圧しているようだ。
余計喋りづらい。
この状況になってしまった事の発端は今日の朝から始まる。
朝起きると机の上に座っていてノートに何か書いてあった。
「いやぁぁぁ。お前から相棒なんて言葉をもらえるとは思わなかったぜ! まさかお前の言葉で俺が照れる日が来るとはな。
お前がいつも俺を嫌っているような文をメッセージでよく書いていたけど、あれが祐介なりの愛情だったのかな?
まさかのツンデレ ガッハハハハ」
「うわぁぁぁぁ!?」
ノートを破いてやりたかった。
いや、まあ調子に乗ってしまった僕が悪いけど、あいつに初めてからかわれるような文を書かれてイラついた。
ツンデレ?
ふざけるな。いつもどれだけ苦労しているか!
おっといけない、心が乱れた。
続きを読まないと。
「まぁ、からかいはこれくらいにしといてやろう」
チッ。思わず舌打ちをしてしまった。
「本題なんだが、お前自身の力であの女に話せ。自分の力でだぞ。
それのついでに自己紹介だ。それだけは今日中にやれよ。
これさえできればお前としては上出来だ。
早く仲良くなるためにもこれは絶対に今日中だ。
分かったな。
これは友達の作れないお前のためでもあるんだぞ。せっかくの相棒だからな! お前自身を成長させる役目が俺にはある。
なんつって。」
相棒、相棒ってよく書くな。あの時、調子に乗った僕を殴ってやりたい。
義人を調子に乗らしたらろくなことがないからな・・・・
「もしできるなら友達になってください!! って懸命に頼んだら簡単になってくれるかもな。」
話すのが苦手な僕にハードなこと言うな。そんな素直なこと言えるわけないだろ。
明るく接することができる翔ちゃんや義人を羨ましく思う。
「もし会話が止まって拒絶する意思があったら俺と交代できるかもな。その時は任せろ!」
最後に頼りになる言葉を残して終わった。
意外にあいつもいい奴だな・・・・
そう思っていたが、ある文字を見てその感情は無くなった。
ノートの上の部分だけ見ていたが、下にも何か書いてあるのを見つけた。
「もしできていなかったら
お前を殴り倒す」
怖っ!?
これはマジっぽく書かれていて体が震えた。確かに自分を殴ったら痛みがまた僕にも伝わる。
喧嘩だけのイメージが少しなくなりつつあったが、これを見ると体中が恐怖に支配された。
すこしでも、いい奴と思ったあの記憶を消し去りたい。
なによりも一言、話さないといけないと思った。
恐怖もまた、やる気を出すための教育の一つかもな・・・・・
僕は嫌いだけど。
声をかけるのは緊張するな。
でもすこし話せたら交代してくれるのかな?
そういう意味ではすこし頼りになる。
話したらすぐ交代出来ますようにと両手を合わせて願った。
覚悟を決めて学校へと向かう。
意外にもすぐにチャンスが巡ってきた。
橋を渡っている時、すこし前には見覚えのある姿がある。
髪が肩まで伸びているショートカット、すこし自信のないような歩き方。顔を下に向け、すこし猫背になっている。
間違いなく、あの女の子だ。
殴られないためにすぐに近くへ行った。足早に近づいて呼び止めようとする時、タイミングが悪く、翔ちゃんが「おーい」と言いながら走ってきた。
知っている人が来たことで、話しかけるのが恥ずかしくなって結局チャンスは無駄になった。
まだ一日あるし、自己紹介くらいすぐにできるだろう。
そう安心していたが、そんな簡単にできることではなかった。
朝の時間、休憩時間、昼休み、すべての時間どうにか話そうと試みた。
でも彼女は今日日直だったので教室にあまりいなかったり、昼休みには運悪く先生に軽い仕事を頼まれて時間がなくなるなどがあり話せなかった。
いつのまにか、放課後になっていた。
もう無理だしあいつに頼もうか、と思ったが今日は義人と交代しない日だった。
どこまでも今日はついてない。
「はぁー」
教室で一人大きなため息をつく。
女の子の席を見ると、もう姿がない・・・・
体の中からどっと汗が出てくる。
「ヤバイ!! もう帰ってしまった!」
焦った。今までにないほど焦ってしまう。
殴られる殴られる!!
女の子に追いつくため高速で走り、階段を何段も飛ばして降りる。
そして下駄箱についた時、ちょうど靴を取り替えていた。
よかった、間に合った!
心の中でまだ帰っていなかったことを安心した。殴られずに済むかも・・・
ここについた時、ほとんど喋る力が残っていなかった。久しぶりに全力で走った気がする。
それでも彼女を呼び止めるため声をかけた。
「あっ、あの!!」
「・・・あ、あなたは昨日の・・・大丈夫ですか?」
「はぁはぁ、すいません大丈夫です・・・」
会話が終わった。
ここからどうしたら・・・
いきなり自己紹介。いやこんなところでするのもな。
緊張で体からもっと汗が出る。それでも手汗で濡れている拳を強く握りしめた。
「僕と! お茶でもしませんか?」
テンパった声でそんなことを言ってしまっていた。
ナンパのようになった。
走りすぎた疲労、ちゃんと自分からお話しするという緊張などが全て混ざってこんなことを言ってしまったのだろう。
絶対引かれたよな・・・・・
そして現在、よくある飲食店でドリンクバーを頼んだ。
「あの、僕は同じクラスメイトの村上祐介と言います」
「私は、朝空雪菜です・・・・」
小さな声で頭を軽く下げて紹介してくれた。
よし、目的達成!
ノートで約束したことを今、やっと達成できて心の中にあった重りが取れるような気分になった。
それと同時に疲れがどっときた。
もうそろそろ交代できるかな。
あとは義人に・・・・・
そんな言葉を残し交われると思ったが、交代できない。
あれ、あれ? ふん!
もう一度目を強く瞑って交代、人格変化、などと心の中で叫んでみたが何も変わらなかった。
「アハハハハ」
僕は女の子に軽く笑いかけた。
これは安心させるために笑ったのではない。
完全にゲームオーバーになったからもうどうにもならず、自然に笑顔が出たのだ。
「・・・・・・・・気まずい!?」
どうしろと、もう打つ手がない。
ただの無言だ。静かな空間の中、時間だけが過ぎていく。
なんかこの状況、義人に殴られるよりも辛い気がする。
ここまで気まづい空気になるのは僕にとっては初めてだ。なぜならいつも何人かの友達がいて、空気を変えてくれていたからだ。
今は一人。
結果、どうすることもできない。
まだ春という季節なのに汗がドバドバと出てくる。そして顔から垂れた汗が机に落ちる。
気まづくて体が全然動かない・・・・
「あ、あの・・・ 祐介さんでしたよね?」
「は、はい」
ありがたいことに女の子から話してくれた。
あまりの感謝で彼女の周りに光が集まって女神のように見えた。
「祐介さんって・・・・・二つの人格を持っているみたい、ですね・・・・」
「・・・・・・」
しばらく僕は固まっていた。衝撃的なことを言われて頭が追いつかなかった。
そしてだんだん顔が青ざめる。
大切に思ってる二人の友達でさえ思わなかったことを第一声に言われてなんと受け答えすればいいかわからない。
「なんでそう思ったの?」
「あの・・・私、一人でずっと過ごしているから、いつのまにか人の変化に敏感になったんです。で、ですから面白い人だとずっと思っていて・・・・」
「ああ、そうなんだ・・・」
この時、女の勘の恐ろしさを実感した。
少しの間考えた。
会って間もないが、なぜか女の子のことを信じれて、僕は二重人格のことを話した。
「実は僕、二重人格っていう精神病にかかっているんです」
見ると両手を口に当てて気の毒そうにこちらを見ていた。
「た、大変そうですね・・・」
「そうだろ、俺は面白いだろ!」
いきなり義人に変わり、机をドンっと叩いた。
「俺がもう一人の祐介だ。これからもよろしくな! それにしてもお前、静かだな。もっと明るくなれないのか?」
「は、はい。わ、私も頑張ってみます」
いきなり俺に変わったようで驚いていた。
少しだけ祐介の時より声が明るかった。
それだけ言い終わるとすぐに祐介と交代した。
「すいません、すいません。あいつが変なことしませんでしたか?」
義人はろくでもない奴と分かっていたのですぐに謝った。
「全然全然、だ、大丈夫です」
「よかった」
肩を落として安心した。
「フフフ、二人とも面白いですね!」
「・・・・・・・」
しばらく、僕は口が空いたまま閉じなかった。
君の笑った顔、それがあまりに美しくて感動した。
こんな顔もできるんだ。
そのはにかんだ笑顔だけは今日、ずっと心の中に刻まれた。
「それにしても、昨日はどうして声をかけたんですか?」
「ああ、えっと、それはですね・・・・」
君は少し考えてすぐにその答えを言った。
「私の大切な人が、もう一人の祐介さんとそっくりだったのでつい声をかけてしまって・・・・・ 驚きましたよね。いきなりそんなことして」
「確かにすこし驚きましたね、ハハハ」
君が声をかけてくれたのは義人に目的があったからなんだな。
なぜか僕の心は締め付けられて悲しくなった。
「すっ、すいません。祐介さんを傷つけてしまいましたね」
「い、いえ・・・・・」
キーン
話の切りがいいところで五時を知らせるチャイムが鳴った。
窓から外を見るともう太陽が山に隠れようとしていて空が薄暗くなっていた。
「あっ、すいません! こんな時間まで話してしまって。ありがとうございました」
「そんな、私なんかと話してもらえてこちらこそありがとうございます」
「ぼくから誘ったのでお会計は僕がしときます」
「す、すいません。お言葉に甘えさしてもらいます」
横に置いていた鞄を持ち、店を出た。
「それではまた・・・・」
「また・・・・」
軽く手を振ってお互い、反対の道へ帰っていった。
一応、連絡先を交換できた。
予想以上の結果に僕はとても喜んでいた。
夕日が沈む中、体が軽くてとても愉快な気持ちで帰った。
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