君と二人の自分

ともとも

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友達

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「ふっふーん! どうだ義人。
友達になってすぐにデートっぽいことしてやったぜ。
すこし僕のことを舐めすぎていたんじゃないか。」

相手が楽しんでいたかもわからないのにすぐ調子に乗る、たぶんこういうところがあるせいでよく失敗するのだろうな。

偉そうに書きながらも自分の不甲斐なさに落ち込む。

「少し前に比べるとと僕、成長してないか?
一人でここまでできたんだぞ!
どうだどうだ。」

いつも煽られているから軽い冗談で煽り返した。
なぜか僕は、二重人格になってから義人に対してメッセージを書く時、一番素の自分になれている気がする。

もっと義人が嫌がりそうなことを書こうとしたがすぐにネタがなくなってしまった。
少ない量だけど一通り書いたら、僕はベッドに寝っ転がった。

どんなメッセージが返ってくるか楽しみにしていると眠気が襲ってきた。
寝たらもしかして交代できるかもな・・・・


今日はご飯を食べている途中で僕の意識は戻った。
「本当にありがとうね~」
おばあちゃんが笑顔を向けてくる。

「ん? おばあちゃんどうしてお礼言っているの?」
「あんたは、元の祐介に戻ったのかい?」
「うん、そうだけど・・・・・」
「そうかい、まぁちゃんとご飯作ったから食べな」
妙におばあちゃんがニヤニヤしていて嬉しそうだった。
すこし気になったが、今日はパンの次に大好物な唐揚げだったのですぐに箸を取って食べた。
中はジューシー、外はパリパリだ。
いつもよりすこし違う味付けになっていた。いつもは醤油がきいている味だけど今日のはすこし控えめであっさりとしていた。
帰りにパンを食べていたからとても食べやすかった。

「美味しいよ今日の唐揚げ!」
「そうかい、それはよかった・・・・・・・
それ、義人君が全部作ったんだよ!」
「ごほっ! ごほごほ・・・・」
食べていた唐揚げが喉に引っかかってむせた。

「えっと・・・・・本当?」
「ハハハ、そうじゃよ。感謝しときなさい」
おばあちゃんの反応からして本当のようだ。
正直、驚きが隠せない。
あの乱暴で気が短くてすぐ問題を起こすあいつが・・・

思い返してみると義人は最近、問題を起こしていなかった。
僕の言うことも聞いてくれるし、友達相談や愚痴も聞いてくれる。

すずずっとおばあちゃんが急須で沸かしたお茶を飲む。

「義人君、今日の料理を手伝ってくれたし私が大変そうに家事をしているといつも手伝ってくれるんじゃよ。あの子は優しいのう。祐介、あんたもいろいろ手伝ってもらってんだろ。たまには感謝してみたらどうじゃ」

義人が僕に変わっている時、どんなことをしているのか知らなかったが、おばあちゃんの言葉を聞いて驚いた。

それと同時にすこし胸が苦しくなった。

あいつもあいつなりに頑張っているんだな。
これ、僕への応援料理かな・・・・・

僕は軽く笑った。

そして自分ノートの最後に一文字付け加えた。

「ありがとう」

素直な気持ちは実際に言おうとすると恥ずかしいものなのだと思った。


いつものように朝、机の上に座っている。そして時計もちゃんとみる。
昨日やってしまった失敗を繰り返さないためだ。あの朝からダッシュはキツすぎる。
辛い昨日の思い出を振り返る。

時間は7時くらいで余裕があった。

ノートを開く。

「チッ」

よし、破ろう
っていうのは冗談。

でも1文字目から舌打ちされて困惑した。
まさかあいつがそんなことを書く日が来るとは・・・・

僕から煽ったのって初めてだったかもしれない。
義人がそんな返答をすることも初めてだ。

「く、悔しい!! まさかお前一人であそこまで行くとは思わなかったぜ。
いや、まあ俺としては、お前がすこしでも成長できてうれしんだけど、なんかこう胸がむかむかするのはなぜだろうな。」

前までの僕と同じ気持ちになっている。
すこし、義人の気持ちを乱すことができて喜んでいる自分がいた。

「でもよく頑張った!  
これからもどんどん仲良くしてやってくれ。
あの子も喜ぶと思うから。
これからもよろしく頼む。」

なんか親戚のおじさんみたいな口調になってるな・・・・・
悪気はたぶんないだろうけど。

「さて、祐介。俺の唐揚げはそんなに美味しかったか?
最後のありがとうってやっぱそのことだよな。
まぁ俺的にはすこしみりんを多く入れて甘くしても・・・・・・・・・・」

バタン!

「さて学校へ行こうか!」

ここから先はノートにぎっしりと自分を自慢するようなことが書いてあったので、無視して学校へ行くこととなった。

さぁ、今日もいい天気だな!

「ってコラ! ちゃんと最後まで見ろ」
まさかの人格が変わって怒鳴ってきた。

「うわぁー、パン!」
台所に置いてあるパンを見てどうにか自分の意識を保つことで人格交代はしなかった。

その次の交代には僕への愚痴がノートいっぱいに書かれていたのはまた別の話である。


昨日の出来事から、よく朝空さんと学校で話せるようになった。

って言っても僕が一方的に喋りかけているだけで朝空さん自身楽しんでいるかはわからない。

それでも、一週間に一回くらいは広場のベンチに座って一緒にパンを食べ、ハトにちぎったパンをあげるのが恒例になってきた。

その時はパンのことなど僕と話してくれて嬉しい。

ただ、君の笑顔はまだぎこちなく見える・・・・・・・

季節は6月の中旬になっていた。
梅雨のせいで湿度が高くなり、ジメジメとした日が続く。
教室で騒いでいる生徒や雨のざあざあと落ちる音などで大きな音を奏でている。

「ああ、また雨だ。いやだなこんな天気」
窓を見ながら翔ちゃんが今日の天気に文句を言う。
「まぁ、そうだよねこんな天気。僕もあまり雨は好きじゃないかな、れすぎたら風邪ひくし」
確かに雨はあまり好きではない。
僕も含めてみんなで雨を嫌う。

「確かサッカー部ってこの雨でも練習するんでしょ。すごいよね」
最近、僕は翔ちゃんに対して尊敬の気持ちをよく表す。友達といい部活といいなんでも僕の持っていない勇気でなんとかする。
本当に凄い人だ。

「そうだな確かに練習するな、この中でも。まぁそれもそれでサッカーが上手くなるから俺はいんだけど。体力とか技術が身につくし」
嫌なことでもこうやってポジティブに考えれるところも憧れる。

「そうだ、優お前もピアノの発表会で反響がすごかったらしいな。俺は部活で観に行けなかったけど次は見たいな!」
「いやそんなことないよ」
恥ずかしいのか顔が赤くなり、頬をかいている。

自信がないようにしているがピアノの前では雰囲気が今とは全然違うかった。
この間、見にいったら感動した。
放課後も家に帰ってがんばっていたのがとても伝わってきた。
思わずピアノが終わった時、叫んでしまったほどだ。

「でも、ありがとう!」
「みんなすごいよね。僕なんて何もしていないのに・・・・」
下を向いて落ち込んだ。
親友と思えるほどの仲だからこそ二人と比べてしまう。

「いや、祐介も成長してるじゃねえか」
「そうだよ裕介も変わろうとしているよ」
二人の言葉に首を傾けた。

「ほら一人でいた朝空さんを祐介が友達になって一人を作らないようにしてるじゃねえか」
「うんうん、そうだよ。気づいてないかもしれないけどそれはすごいことだと思うよ!」
「えっ・・・・・」
しばらく固まっていた。

「お前も変わったな!」
その一言で少し涙が出そうになった。
ちゃんと二人が僕のことを見ていてくれた。
ピアノやサッカーほどのことではないが、二人とちゃんと並べるような成長が僕にもあることを知って感動する。

少し二人に釣り合えるような人間になれて嬉しくなった。


学校が終わるなり、僕は君のもとへ向かった。
夕方にになる頃には雨が止んでいた。曇ってはいたがすこし赤い夕焼けの空も見える。
せっかく雨が止んだということで君と一緒に広場へ行こうと提案する。
「今日もパンを買って広場へ行かない?」
「あ、はい。わかりました」

二人から褒められたこともあり少し調子に乗って今までよりも明るく接していた。

結構、積極的に話していたので、今思うとすこし嫌がられたかもしれない。


そして今、広場の近くにあるパン屋で何を食べるか選んでいる。

何回も来ているが僕は飽きない。パン屋さんは毎回来るたびに違う匂いがする。カレーパンが残っていたらカレーの匂いがするし、出来立てが並んでいたら小麦の匂いがする。

今日は甘いパンが残っていて、小麦と砂糖の混ざった食欲のそそる匂いだ。
しばらく臭いだけ堪能していると声をかけられた。
友達の少ない僕はビクッと肩が動く。

「あの・・・・朝空さんと祐介君だよね・・・・」

振り向くと同じクラスで見たことあるような女性がいた。
名前を思い出そうとしたが、入学してから君と親友二人にしか興味を持っていなかったから覚えていなかった。

ただ男女、分け隔てなく話してくれる優しいイメージがあった。
一度だけ僕も話したことがあると思う。

「仲がいいんだね」
「別にそこまで仲がいいっていうわけでは」
「ハハハ、そうなの? あ、ごめん。自己紹介していなかったね。私は清水陽子です」
「あ、清水さんですか。よろしくお願いします」
「わ、私こそよろしくお願いします」
君はパンが置いてある棚に隠れて恥ずかしがっているように見えた。
「あっ、朝空さんもこんにちは。私達って初めて話すかもね」
「そ、そうかもしれませんです」
緊張しているようで、すこしへんな喋り方になっていた。

「私、ずっと朝空さんと仲良くなりたかったんだ!」
「あ、そうなんですか・・・・」
「その、こんなところで立ち話するのもアレなんで、場所移動しましょう!」
僕が人差し指を立てて提案する。
簡単にパンを決めていつも座っているベンチへ向かった。

クルッポ、クルッポ

パンをちぎって投げいると十羽くらいのハトが集まってきた。
飛んで行くのもいたが、大体小さなパンを突ついて食べている。

ベンチには僕、清水さん、そして朝空さんの準備で座った。清水さんは君と友達になりたいようで積極的に話しだす。

「へぇー、こんなにハトが集まるんだ。かわいいね。二人でよくここへきていたの?」
「ああ、えっと、まあそんな感じです。」
すこし照れるたので頭をかいて答えた。

そして僕はパンをちぎりハトに向かって投げる。

「朝空さんって動物が好きなの?」
「そ、そうですね。一人でいても心を癒してくれて好きです」
「いいよねこういうのってなんか落ち着く」
「そうですよね」
「ペットとかって飼っているの?」
「えっと、私は猫を飼っています。両親が一人で寂しくないやらないようにって」
「いい話だね。私も犬を飼っているんだ。」

二人がペットについて語り始めてなかなか話に入っていけない。

会ってまだ数分くらいなのに清水さんはどんどん仲良くなっていった。
僕が長い時間かけて築いてきた友情に数分で同じくらいのところまできてすごいと感心する。
始めはどんなことを話しているのか研究していた。

けれど僕がここにいる意味がないという感情が芽生えて「用事があるから僕は帰ります」と言って二人から離れていった。


次の日学校へ来た時、二人は仲良く教室で話していた。

まだ君の喋る回数は僕の時と同じで少ないけど、楽しそうだった。

「おーい、祐介どこ見てんだ。もしかして好きなやつでも見とれてんのか?」
翔ちゃんがからかうように言ってきた。
「そんなわけないだろ」
そんな冗談を軽く笑って受け流した。

「おいおい、そんなこと言ってずっと朝空さんの方向いてるじゃねえか。本当は好きなんだろ」
「ふっ、翔ちゃんも恋愛のことになったらしつこいな」
「まあ、俺様はエキスパートだからな」
ぽんっと胸を叩いて冗談で自慢してくる。

「僕もそういう感情はないけど、すこし嫉妬しているかも・・・・」
「ハハハ、そうか。なんかわからないけど祐介も青春してるな!」

本当に恋愛のような感情は僕にはない。むしろ友達が欲しいって思う気持ちの方が強い奴がそんな気持ちは持たないだろう。
でもずっと君を見ていた。
この数週間、君のそばにいて君の友達だったからこそ嫉妬してしまう。

なんだろうなこの感情。
今までに体験したことのない気持ちで、不思議がっていた。

これがたくさん育ててきた子どもが離れていく親の気持ちなのかな・・・・

ただただ僕は悲しかった。

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