君と二人の自分

ともとも

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デート

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流れが緩やかな川の岸に二人の男女が訪れている。
一応デートではあるが、義人は女性経験が少なくてこんな場所にしか連れてこれない。

とはいっても悪いとは言えないスポットでもあった。
綺麗な水が流れて近くには森もあり、自然を感じれるところだ。

「ここって・・・・・」
彼女はここにしたことがあるような反応をしていた。

「ここは俺のお気に入りの場所だ。水も綺麗で空気もいいからな」
「私も小学生くらいの時に何度かきたことがあります」
そう言いながら彼女は大きな石の上に座り、ここの景色を懐かしそうに眺めていた。
「お、そうか。いい場所だろ。ガハハハハ!」
笑顔を向けると、静かにうなずいた。

「ここでこうやるのが俺の趣味だ」
そう言って、平べったくて丸い石を手に取る。

「おりゃ!」
腕を大きく振り上げて投げる。

シュッシュシュシュ!

石がものすごく回転して水の上を跳ねる。

「8回か・・・・まあまあかな。昔は二桁くらいできてたんだけどな・・・・」
軽く肩を落とす。

俺の水切りを見ていたようで軽く拍手をしてくれた。

「お前もやってみろよ。ほらこの石」
俺は近くに落ちていた平べったい石を彼女に渡した。

「ええ、でも私なんかがそんなことできるわけないです・・・・」
「いいからやってみろ!」
「は、はい」
始めは躊躇していたが、渋々受け入れて石を強く握った。

「行きます・・・  えい!」

ポチャン

「・・・・・・」
「・・・・・・」

川の中へ落ちただけで、とてもあっけなかった。

「えっと・・・・  やっぱり私にはできません」
「違う、そんな軽く投げるんじゃない! もっとこうやって回転をしっかりかけて投げるんだよ」
なぜか俺はレクチャーしていた。熱血教師のようにとても熱く。

「こうやって、こうやるんだ。分かったか?」
「は、はい・・・・」
「声が小さい。もっと大きな返事で!」
「はい!」
「よし、じゃあやってみろ」
俺は腕を組んで監督のように見ていた。
彼女はもう一度石を強く握りしめる。

「えい!」

ポチャン、ポチャン

「どっ、どうですか?」
「全然ダメだ。もっとスピードをつけないと。あと回転も足りない。ったくしょがないな。俺のをもう一度見とけよ」

ただこの川の景色を見るためだけ来ていたが、いつのまにか水切り教室のように指導していた。
始めに俺が注意した時はびっくりしていたけど、教えているうちにどんどんできるようになり、途中からは生徒のように質問してきた。

なんだろう。これ本当にデートになってるのか・・・・

そして約1時間くらい過ぎた頃だろうか。
「い、行きます。次こそ二桁目指します!」
「おう、さすがは俺の弟子だ。その意気で頑張れ」

「えい!」

「・・・・・」
「・・・・・11回」

沈黙が訪れ、川が流れる音だけが聞こえる。
だが、そのあとの歓喜の喜びはとても大きく騒いだ。

「やったぞぉぉぉ!!」
「はい!」
俺は飛び跳ね、彼女は手を大きく空に上げて笑顔になっている。

「イェーイ! おーい、ハイタッチだろこういう時は!」
「は、はい!」

「イェーイ!!」
パチンと両手が重なり大きな音がした。

「ガハハハハ!」
「ハハハハ」
本当に楽しそうに彼女は笑っていた。

「お前、そんな風に笑えるんだな。いつも無理に作っている笑顔に見えたから、なんか安心したぜ!」
「あっ、いや、これは・・・・」
彼女はすこし照れて背中を俺に向けた。

結果、俺は18回、彼女は11回飛び跳ねることができた。
こうして水切りは終わった。

「よし!」
俺は彼女の肩に手を置く。

「まだまだ行くところはあるぜ。俺についてこい!」
「あ、はい。わかりました」
まだ、照れているのかいつもより小さな声で返事した。

「次は、ここだ!」
指を刺した前にはゲームセンターと書いてある建物がある。さっきとはほぼ真逆の場所だ。

うるさくて、明るい。心が落ち着くこともありえない場所。

今考えると俺のデートプラン最低かもな・・・・

「また、ここもだ・・・・」
独り言のように彼女は呟いた。

俺はそんな言葉など聞こえず、ささっとゲームセンターの中へ入っていく。

中にはたくさんのゲームがあるため、さまざまなギャラリーがいる。

めちゃくちゃガチで太鼓のゲームをやってる奴。
クレーンゲームがうまくて商品を取り集めている奴や、逆に全然取れなくてイライラしている奴。
アクションゲームやメダルゲームを真剣に取り組んでいるせいで無表情な奴など。

しばらくどんなものがあるのか店内を周っていた。
彼女は無言で俺の後ろをついてくる。

俺は急に止まって彼女の方をゆっくりと向く。
「ああ、えっとさっきはすまなかったな。俺が偉そうに水切りを無理やり教えてしまって・・・・」
「ああ、いえ、全然。私も最後は楽しかったので・・・」
手を振りながら否定する。
許してくれても、お詫びに何かしてあげたかった。

「お詫びに、クレーンゲームで何か取ってやるから好きなもの選んでいいぜ」
「え、いやそんなお詫びだなんて・・・」
「俺が言っているんだ。いいから選んでくれ
すいません。それじゃあ・・・・・あれ、取ってもらえますか?」
指を刺した先には両手くらいの人形が置いてあるクレーンゲームがあった。

思わずふっと笑ってしまった。
「おい、本当にあれでいいのか? もっと大きいのでもいんだぞ」
「あれがいいです」
俺の提案も頑なに拒否した。

「ふっ、昔と変わらねえな・・・・」
「ん? 何か言いましたか?」
首を傾げてこちらを向いてきた。

「い、いやなんでもねぇぞ。あれ、でいんだよな」
彼女から逃げるようにクレーンゲームへ近づいた。
俺はワンコイン、機械に入れてゲームを開始する。
って言ってもこういうのは得意だったので簡単に取った。
取れたのは白いウサギだった。

「ほらよ!」
「わあぁぁ! ありがとうございます」
人形を手に取ると目を輝やかした。

俺は温かい目で見守る。
彼女がだんだん人間らしい豊かな表情になってきた。

これ以外にもリズムゲームやメダルゲームなど軽く遊んだ。

そしてゲームセンターから出る頃にはすこし日が暮れていた。
まだ夕焼けっていえるほど空は赤くないが、青色の中に軽く薄い赤の空がある。

帰る前に俺達は高校へ行く箸の上を渡っていた。

もうこの頃には夕焼け空になっている。
空はもちろん、下を流れる水までも赤くなっている。

「あの! 今日はありがとうございました!
たの、楽しかったです」
「ガハハハハ! そうか。それは良かった。これからも俺と祐介がよろしくな」
「は、はい・・・・・・あの・・そのことなんですが、私やっぱり・・・」
彼女が何か話し出していたが、俺はそれを遮ってバカな発言をしていた。

「なぁ、雪菜。この景色懐かしいよな・・・
お前とよく見たな・・・・」
肘を橋の手すりにかけて夕焼けを見ながらふと口からでていた。

「え?」
彼女は目を見開いて驚いている。
「あの・・・・・」
「ああ!?」
今の発言を無かったことにするかのように大きな声を出した。

「俺、今日、用事があったんだわ。今日は楽しかったぜ。また会おうな!」
全力で走って、彼女から逃げる。

ヤバイヤバイ。
とにかく逃げて家に向かって走った。
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