君と二人の自分

ともとも

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勇気を持って

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無事コンクールが終わった。
優は結果を見ると腰が抜けたのかしばらく立てなくなっていた。

僕と翔ちゃんが力を貸して椅子まで運んだ。

「いやー、まさか腰が抜けるとはな。俺そんなことする人、初めて見た気がするぜ」
「まあまあ、優も頑張ったんだから」
「ありがと、二人とも・・・・優勝できた!」
「うん!」

優がちゃんと歩けるようになるまで、待っていた。
コンクールが終わり優も元気になった頃には太陽が落ちかけていて少しずつ薄暗くなっていた。

「お、もう大丈夫か?」
「うん、ちゃんと気分が落ち着いた」
「そっか・・・・ これからどうする? せっかくだし、どっか食べに行かないか、お祝いにさ!」
「うん、いいね!」
翔ちゃんの提案に賛成しようとしたが、雪菜さんがポツンと立っているのを見つけた。

「ごめん、僕はもう暗くなってきたから雪菜さんを家まで送るよ!」
それを聞いて二人は目を見開いていた。
僕があまり断ることがないから驚いたんだろう。
でも、優しい笑顔を向けてくれた。
「そっか、そうだよね。朝空さんにもありがとうって言っといてくれない? 本当に助けられた」
「うん!」
「おい、祐介。夜暗いからって朝空さんに変なことするなよ」
「しないよ!」
「フハハハハハハ!」
三人同時に笑い合う。

僕は雪菜さんの元へ行き、二人に手を振って別れた。

「雪菜さん、今日は僕に付き合ってくれてありがとう! 優も感謝してたよ」
「い、いえ。私も楽しかったので。ピアノ、とっても凄かったですね!」
「うん、優は凄いよ。あんな綺麗な音を出すなんて」

数週間前に見た翔ちゃんのサッカー、今日、聞いた優のピアノ。
二人が真面目に何かに取り組んでいる姿を思い出すだけで心が暖かくなった。
それと同時に、やっぱり少し悲しくなる。

「二人って本当にすごいからこそ、僕がすこし落ちこぼれのように感じちゃうんだよな・・・・・」
思わず悩み事を口に出していた。

横を歩いていた君の足が止まる。
すこし微妙な空気になってしまった。

「あ、ごめんね。変なこと言い出して・・・・」
頭をかきながら笑い事のように軽く流す。

でも君は真剣に返してくれた。
「あの! 祐介君もすごい人ですよ。ずっと孤独に生活していた私を助けてくれた! 清水さんや祐介君の友達とも仲良くなれました。友達思いでとてもいい人です!」
言い終わると彼女は顔を真っ赤にしていた。
僕もここまで褒められるとは思わず、下を見て赤くなった顔を隠す。

「あ、ありがとう・・・・」
恥ずかしがりながらもお互い横に並んで再び歩き出す。

結構、遠いところだったので、行きしと同じように電車に乗って帰った。
田舎っということもあり、電車にはほとんど人は乗っていなかった。

椅子はほとんど空いていた。でも僕達は椅子に座らず乗った扉に、もたれかかるように立っていた。

動く電車の景色を見ながら静かに移動する。
真っ暗であまりいいものが見えるわけではないが、ぼっと外を眺めていた。

ほとんど会話もなく無言だったが、なぜか君がそばにいるだけで心がほっと安心する。

ゆっくり雪菜さんの方を見ると、たまたま君もこちらを向いて目が合った。
付き合いたての恋人のように目が合っただけで頬を赤らめ下を向く。

何やってんだろう。なんだか胸がドキドキした。

電車のスピードは速くてほんの三十分くらいで着いた。

「ああ、えっと家はどっちかな・・・・」
「あっちです・・・・」
雪菜さんが指を刺した方へ向かった。

なんか見覚えがあるな、と思いながら歩いていると、君と初めて出会った橋の上に来ていた。

「そう思えばここって僕達が初めて出会った場所だよね!」
「そうだね・・・・」
昔話をするように僕は話し出した。

「あの時はまだ高校の入学仕立てだったから今みたいになるとは思わなかったよ。僕はずっとあの三人と一緒に過ごすと思ってたけど、雪菜さんが僕に話してくれた。君のおかげでとっても楽しい生活ができたよ!」
懐かしいく思いながら笑う。

「こ、こちらこそとても楽しいです。でもあの時は人違いで、すいませんでした」
「アハハ、いいよそんなこと。今とっても楽しんだからさ!」

会話をしながらふと、上を向くと満開の星空が煌びやかに光っている。

「うわぁ、上を見てみなよ!」

君もそれを見て、笑う。
星のように純粋なその笑顔に、僕は息を呑む。

「・・・・・・」
静かに空を見て楽しんでいた。
最近、いろんなイベントがあったけれどそれがやっと終わった。

そして最後にはこの満開の星空。
最後にふさわしいとても綺麗な景色だった。

「あ、そうだ。そろそろ帰らないとね!」
雪菜さんの方を向くと、着ている服のスカートを握っていた。
しばらく下を向いて黙っている。

「えっと、どうしたの・・・・・」
すこし変だったので首を傾げて聞いた。
すこし顔が赤くなっているように見える。

「・・・・・・好き・・・・」
「ええっと、右? 家までの道のこと?」
小さな声で聞き取れなかった。

僕の答えにはっと君は顔をあげる。
今度はさっきよりも強くスカートを握りしめる。少し全身が震えているように見えた。

そして僕の目をまっすぐ見る。

「・・・・・・好きです・・・・・・・」

「えっと、月かな・・・・?」
大空に映っている月を見た。確かに星と同様にとても眩しく光っていて綺麗だ。

「う、うん綺麗だね・・・・」
ちゃんと君の伝えようとしたことが聞き取れているのかわからず、苦笑いになってしまう。

「あ、えぇ・・・・・う・・・うん・・・」
悲しそうな表情をしながら応答する。

そして深く二回、会釈をすると走っていった。

「あ、ちょっと雪菜さん!」
叫んだが、声が届かなかったのか止まらず走っていった。

「どうしたんだろう・・・・・・・」

僕は雪菜さんの後ろ姿を呆然と立って見ていた。
追いかけようとしたが、姿は闇の中へ消えていったのでそのまま僕も家に帰った。


「ただいま!」
「おかえり、あんた思ってたより遅かったわね」
「アハハ、そうだねちょっといろいろあったから」
「そうかい。ご飯できてるよ! あったかいうちに食べな」
「うん、わかった」
持っていた鞄を自分の部屋に置いて晩ご飯を食べた。

「うーん、美味しい。いつもありがとね!」
「どうしたんや、いきなり」
「アハハ、なんとなく」
「そうかい。そう思えば最近、義人君と交代せんようになったね。元気しとるかな・・・・」
おばあちゃんに言われて初めて気がついた。

確かに義人との交代がデート以来、減ったと思う。毎日「自分ノート」に相談事や軽い冗談話を書いていたけど返事が来ない。

どうしたんだろうな・・・・

ご飯が食べ終わってから部屋へ戻った。
パンのキーホルダーを見つめながら不思議と思っている。

そしてだんだん寂しくなった。
少し前まではずっと楽しく話していた「自分ノート」には自分のことしか書いていない。

暇だったので少し読み返してみた。

意外に読み返すと、昔の自分の身にどんなことが起こっていたかが面白おかしく書いてあったのでついその文にハマってしまう。

そうだったな。少し前までは義人がヤンキーと喧嘩していたからな・・・・

いきなり僕がヤンキーの前で意識を取り戻した最悪の思い出を振り返る。

「久しぶりに筋トレでもするか!」
僕は腕立て100回
腹筋100回
ランニング10キロ、あ、いや、ランニングはしないか。
つい、うっかりどこかで聞いたことのあるような筋トレをやろうとしていた。

結局、家の中でできる腕立てと腹筋だけやった。

もし喧嘩しても負けないようにしないとね。

この時やっていた筋トレが近いうちに役立つとはまだ知らない。






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