君と二人の自分

ともとも

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仲違い

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少し意識が戻るようになったのは誰かの声を聞いた時である。
「祐介、祐介。ちゃんと話聞いとうか?」
あれからずっと下を向いていたが、その声によって顔が上がる。

眩しい光が照らされて、それがあまりに眩しくて思わず目を瞑ってしまった。

そして目を開けた時、正面にはおばあちゃんがいた。

「えっとここはどこ?」
「はぁー、あんた何言っとるんや? ここは遊園地の中の休憩所だよ。今から取り調べみたいなことを聞くらしいけど・・・・」
「ああ、えっと。そうなんだ・・・・   ごめんね、おばあちゃん。迷惑かけてしまって」
「ハハハ、私の孫は何を言っとるんや。子どもをしつけるのが親の仕事じゃよ。別に迷惑なんて思っとらん」
「フフフ」
僕も無理矢理、笑顔を作る。

ガチャっとドアが開いて警察の人が入ってきた。

ギギギっと椅子を引いて僕と対面するように座った。
そして優しい口調で僕に問いかけた。
「なんで、こんなことをやっちゃったのかな?」
「・・・・・・」
僕は固まってしまって何も言えなかった。

言い訳もできないし、なによりも警察沙汰になることをしてしまったということがとてもショックだった。

「何も言えませんか・・・・・」
「あの、すいません。うちの孫は別に悪気があってやったとは思いません。ですので、どうか許してもらえませんか・・・・」
僕の気持ちを察して、おばあちゃんが深く誤ったことですぐに取り調べは終わった。

「すいません、少しプレッシャーを与えすぎたようで・・・・また次の機会にしましょうか!」
警察官は紙とペンを用意して、それにおばあちゃんが住所と電話番号を書いて今日は終わった。

取り調べが終わっておばあちゃんがここまできた車に乗る。

ブーンと車を走らせ、おばあちゃんは無言で運転していた。
僕は何も考えずただぼうっと外の暗闇に包まれている景色を見ていた。

この時、静かに何も聞かず、ほっといてくれたことがとても嬉しかった。

しばらく走っているとまさかの発言をされた。

「女の子を助けたのかい?」
まるで僕の心を見透かすかのように優しい笑みを向けながらおばあちゃんは言った。

思わず僕は目を見開く。
ここまであたる女の勘は驚きを超えて、恐ろしく感じた。

「え・・・  何で?」
聞き返すと、大きな声でおばちゃんは笑った。

「フハハハ! 何でって、最近のあんたの姿を見てそう感じただけだよ」
「ふーん・・・そうなんだ・・・・」

僕、変な行動でもしてたかな。
どんな姿か少し気になった。

「祐介、いつもばあちゃんはあんたの味方やから何でも相談してくれよ!」

静かな車の中、その言葉は僕の心の中にいつまでも根強く残った。


次の日、学校からの処分を恐れながら重い足取りで向かう。

今日の天気は僕の気持ちとは正反対に快晴だった。
この眩しい光が何だか苦しい・・・・

しばらく歩いていると同じ学校の生徒を見つけた。
いつもならなんとも思わないのだが、今日はちらちらと僕の方を見て嫌な視線を向けてくるから、何なのか気にしてしまう。

そして、橋を渡る頃には歩いて登校する生徒が増えていて、ほとんどの人が僕に白い目を向けてくる。

どうしたのだろうと不思議がりながら歩き続けるとある陰口が聞こえてきた。

「おい、あれって暴力事件を起こした奴じゃねえか?」
「しかも一年っていうのがなんか生意気だよな」
「いや、でもあんなひょろひょろな感じの奴が五人もなぎ倒せるか? 無理だろう・・・」
「あの人ってあれでしょ、女性にも平気で殴って怪我をさせた人だよね。最低な男だよ」
「クズだな」
「一緒の学校に来ないでほしい」

昨日、遊園地で起こした事件がもう学校中に知れ渡っていた。
たぶんあの時、スマホかなんかで誰かが映像を撮ってネットに流したんだろう・・・・

嫌でも、そんな陰口が聞こえてくる。

そんなものをずっと聞いていると人間不信になってくる。
頭を抱えて耐えていたけど、だんだん耐えられなくなって、きちんと呼吸ができなくなっていた。

下駄箱へ行く。
僕のシューズがなくなっていた。
誰が何のためにどこへやったのかわからない。

僕は職員室でスリッパを履いて教室へと足を運んだ。
教室に入っても僕への態度は酷いものだった。

ほとんどの生徒から睨まれる。
そして登校してきた時と同じように陰口をされる・・・・

落ち込んでいるとみんなが雪菜さんの席に集まっていた。君は昨日、眼鏡を潰されたから何もしていなかった。
みんなの顔を見たらすこし気持ちが落ち着く。

胸を撫で下ろして、みんなのそばに行く。
「お、おはよう」
すこしぎこちない笑顔を向けながら、挨拶する。

しかし思いもよらぬ言葉が返ってきた。

「何、お前・・・・ あんな事件起こしといてどうしてそんな軽い挨拶ができるわけ・・・・」
翔ちゃんが睨んで怒っていた。
「え・・・・・」

その態度にまた視界に黒いモヤがかかる。

何言ってるの、という風に一歩前に出ると優と清水さんが「ひっ」と怯えた声を出す。

なんで、みんなどうしたの・・・・・
なんでそんな顔するの・・・

一人苦しみながら心の中で叫ぶ。

「し、しばらく近づかないでくれ・・・・」
翔ちゃんはすこし弱気な言い方だったけど、それを聞いて体が絶望に支配される。

逃げるように優と清水さんは自分の席に戻り、翔ちゃんは僕を知らない人のようにスッと横を通っていった。

「お前も僕から離れていくのか・・・・」
苦しい顔をして君にそう言って席に戻った。

畳み掛けるように苦しみは続く。
自分の席に座ると、次は運動部のイケイケ系の人が数人きた。
「なぁお前、調子に乗るんじゃねぇぞ! 女性も含めて怪我させてよ。本当に人間か?」
「おい、なんか言えよ」
まるでこの学校から追い出すような罵声を浴びせてくる。

そんなことよりも大切だった友達に裏切られたことの方が印象強く、この人達の声が耳を通らなかった。

「おい、聞いてんのか!」
バンっと机を叩く。
そしてこの人達はあるものに目をつけてニヤリと笑みを浮かべる。

「おい、なんだよこのパンのキーホルダー」
その言葉にはさすがに反応してしまった。
一人を見ると鞄からブチンと無理に外してキーホルダーを盗っていた。

「おい、返せ!」
ドスの聞いた声を出して胸ぐらを掴んでいた。

教室にいる女子の「キャー」という悲鳴が響いた。

「これは僕の大切な人から貰ったのもだ。だから返せ!」
激怒したが、面白そうに僕を煽る。
「お、どうした殴るのか! 俺にも暴力を振って奪うのか? ハッハハハ」

「あ・・・・」
理性がちゃんと戻り、彼を掴んでいた手を離した。

その隙を狙って彼はキーホルダーを窓の外へ投げてしまった。

「あ、すまん。おもわず投げちゃった!」
まるで反省する気がないように軽く謝る。
それにまた怒りがこみ上げてきた。

「おい、何やってんだ! もう時間だぞ。早く座れ!」
もう少しで殴りそうだったところを翔ちゃんが注意してくれた。

そのまま、先生が来て朝のホームルームが始まった。


先生が話をしている時、僕は「自分ノート」
を開いていた。

怒り、悲しみ、苦しみ、憎悪
溜めていた感情、全てをノートに書いて義人へぶつけていた。

そして、先生に呼ばれて処分を言われようとする時に意識がなくなった。
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