ドスケベ刑務所♡雄っぱいライフ

ビビアン

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刑務所の1日編

支給品申請①

半日ぶりの一般棟を、俺は一人で歩いていく。
大半の囚人が風呂に入っているか部屋で寛いでいるかしている時間帯なので、だだっ広い廊下は閑散としていた。パトロール役の看守たちが靴音を鳴らしながら歩き回っている他は人の姿がない。

看守たちは、だいたい二人一組か三人一組で行動している。俺ら囚人に比べたら看守たちは全員細身なんだが、万が一小競り合いになったとしても絶対に看守側が力勝ちしそうだと思わせる何かがある。というか実際、規則違反を犯した囚人が看守に引きずられてどっかに行くのを時々見かけるが、囚人側の抵抗が効いていたためしはない。看守たちは全員特殊な訓練を受けているのか、それともあの黒い軍服みたいな制服に仕掛けが施されているのか……。

収監されて一週間。幸いなことに俺は看守たちから格別な罰を受けたことがない。ユウが懇切丁寧に俺を指導してくれているおかげなのと……あと、多分、看守長とやらが不在なせいだ。

カクテルパーティー効果というものがある。大勢の人間がてんでばらばらな雑談を交わしている中でも、自分の興味を引く話題は自然と聞き取れてしまうというアレだ。その効果のせいか、多目的室で大浴場で、今日はやたらと「看守長が……」「コクヨウ様は……」という囁きを耳にした。どれもだいたい畏怖とか恐怖とかそんな感じの感情を伴った声色で、束の間の平穏は有難いけれど彼が帰還してからが怖い、みたいな内容が殆どだった。

そんなことを考えているうちに、ユウが率いる我らが雑居房に到着。夜間は厳重なロックがかかっている分厚い扉が半開きになっていて、中から人の気配がした。

「たでーま」

「お帰り~。ちょうどよかった、シコ。ちょっとおいで」

雑居房に入ると、奥の二段ベッドの下段に腰かけたユウが俺に向かって手招きした。他の囚人はまだ帰っていないようだ。

あそこはユウのベッドで、この房の中で最も私物が多いスペースでもある。広いとは言えない空間に小さなワイヤーラックをうまく取り付けて、目覚まし時計だの小型スタンドライトだの、細々とした生活雑貨をうまいこと収納している。その中でも一番の高級品は、8インチくらいのミニタブレットだった。娑婆だったら型落ちもいいところの中古品だが、ここでは「自分専用の端末がある」ってだけでも大層なことだ。
ユウはそのタブレットを弄っている真っ最中だった。俺は手招きに応じて、ユウの隣に座って奴の手元を覗き込んだ。

そして……絶句した。

「ほら、シコ。これがさっき言っていた支給可能品リストだよ」

ユウは朗らかに言うが、その手元に表示されているリストとやらに並んでいるのは多種多様なアダルトグッズだった。オナホにローターに電マにバイブ。乳首責めグッズが多いのはさすが雄っぱい刑務所といったところか……いや、感心している場合ではない。

「え、ユウ……ユウさん……? 支給可能品リストって、これが……?」

「そうだよー。結構充実しているでしょ」

「充実って、エログッズばかりじゃねえか」

「エログッズだけでもないよ。ほらここ、ノンアダルトの実用品」

下の方へスワイプしていくと確かに普通の日用品コーナーもあった……あった、が……アダルトグッズに比べで種類が少なすぎる。そして妙に高い。プラスチック製の安っぽいマグカップ一つが500ポイントって地味にぼったくりじゃないのか。娑婆の100均で同じマグを見たことがあるぞ。

「実用品以外にも、食事の量をちょっと多くしてもらうチケットとか、髪の毛を伸ばす権利とか、色々とあるよ。後で自分のマイページから見てみなよ。僕のとはちょっと価格設定ちがうけど」

「囚人ごとに値段変わるのかよ」

「僕は模範囚だから色んな割引が多重にかかっているんだ」

なんだそのシステムは。
ユウがぽんと端末を手渡ししてくれたので、俺はおそるおそる支給品リストを上から下まで読んでみた。

……うん。マジでアダルトグッズの通販サイトっぽい。レビュー欄まであるぞ。怖いもの見たさで適当な乳首ローターの高評価レビューをタップしてみたら、熱意の塊みたいな称賛文がびっしりと画面を埋め尽くした。長ぇ。

「そういうレビューを書くとポイントを貰えるんだよ。だいたい10文字につき1ポイントだから、そこそこ稼げる」

と、ユウが補足説明してくれた。俺は曖昧に頷いて、エロエロなレビュー文を三行も読まずに閉じた。

下へ下へとスワイプすると、下着の支給品一覧もあった。そして、俺は、ユウの紐パンは支給品のパンツのなかでもぶっちぎりで清楚な方であるという事実を知った。
やべえ。下着としての機能を果たしている下着がほとんどねぇ。
紐パンは紐パンでも、布地部分がなくて紐しかないような紐パン。てかてかのエナメル製のビキニ。男性向けレディースショーツという自己矛盾の塊みたいなレースのパンツ。メッシュ地のふんどし。ケツを一切隠していないOバックのボクサーパンツ、その他諸々。……地獄か?

「……これ、支給申請しているやついんの?」

「いるよー。僕みたいに常用しているのは少数派だけど、みんな一枚か二枚は勝負下着を持ってるんじゃないかな?」

「マジかよ。こんなところでナニをどう勝負するんだよ……」

「……」

ユウは少しの間目を泳がせて黙った後、クスッとわらった。こいつは時々こういう小悪魔っぽい仕草をする。

「……シコもそのうちわかるよ」

語尾にハートマークがついていそうな甘い声。なんなんだよ。囚人に勝負下着が必要な場面が訪れんのかよこの刑務所には!

俺が恐れおののいているのをよそに、ユウは柔らかい手つきで端末を取り上げると、いくつかのパンツをピックアップ表示させた。

「せっかくだから一枚奢ってあげようか。シコは小尻だから、こういうTバックとか映えると思うんだよねぇ。あ、こっちの超ミニ丈のギャルソンエプロン風のやつとかどう?」

「い、いらねぇ……」

「遠慮しないでいいのに」

「遠慮じゃなくて本気でいらねぇよ! 何が悲しくて部屋長にエロパンツ買ってもらわなきゃならないんだ」

「新入りのために支給品を奢ってあげるのも部屋長の務めなんだよー。パンツが嫌なら、ブラはどう? ほら、こっちもいろんな種類がある」

そう言ってユウは該当ページを表示させて端末をぐいぐい押し付けてくる。こっちもこっちで、大事なところに穴が開いていたり総レースだったりと、一筋縄ではいかないモノばかり。

俺はもう羞恥とか戸惑いとかいろいろな感情をひっくるめてドン引きしていたのだが、これ以上ユウの好意を無下にするのも忍びない気がしてきた。……好意だよな? 俺はユウを信じたい。

「じゃ、じゃあ……これ」

俺は薄目で画面を見ながら、スポーツブラみたいなショートタンクトップみたいな、シンプルなやつを指差した。これなら抵抗なく着用できる気がする。布地面積が広い分サポート力も強そうだし。値段を見ると300ポイント。マグカップより安いってどういうことだよ。
今の俺の所持ポイントは200弱。マグカップどころかブラも買えねえ。けど、五桁ポイントを有する部屋長様にとっては300ポイントなんて端数みたいなもんだろう。

「ん、これね。けっこうカラーバリエーションあるけど、何色が良い? 柄物もあるよ。ヒョウ柄とか」

「オーサカのおばちゃんじゃあるまいし。黒か灰色で」

「はいはい。じゃあ、黒で申請しておくね」

ユウは手慣れた様子で注文画面に進み、決定ボタンを押した。数秒の間があり、『支給申請を受理しました』という表示が出る。刑務所の支給品申請と言ってもほぼ通販だな。

「はい、完了。夕飯が終わる頃には用意されているはずだから、受取窓口まで取りにいこうね」

「そういうシステムなのか」

「うん。追加ポイントを支払って雑居房まで届けてもらう方法もあるけれど、配達人は看守だからね。昔、支給品を運ばせすぎて看守全体から目を付けられて、懲罰房に連れて行かれたっきり消息不明になった囚人がいたらしい」

「ひえー……」

あくまで噂だけどね、とユウは付け加えて端末をオフにした。
ちょうどその時、全館アナウンスが流れた。夕飯の時間である。

俺たちは慌てて食堂に向かった。
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