異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。

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異世界編ー瘴気落

決闘(2)

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 なんだかんだで、流され……
 スノー邸の庭に居る。

 「……どうしたものか」
 あの、君主《ははぎみ》の近衛兵《このえへい》がどんな能力でどれだけ魔力が強いのか……
 20代半ばといったところか……

 もちろん、大人相手でもあの学園の生徒たちは引きをとらない。
 もちろん、逆にあの学園の外にも強者はたくさんいるだろう……

 「ライゼス=ゼウスにマーティス=スレイプニル……間違いなくどちらも強敵だぞ、どう切り抜ける小僧」
 そうアストリアが俺に言う。

 「……その状況を作り出した本人が言うなよ」
 そう少しだけ不機嫌そうに返す。

 「なんだ、レス……私は別にお前がマシロ様に嫌われ、二度とこの門を潜れなくなっても良かったのだぞ……むしろ、お嬢も貴様も私に感謝せよ」
 そう笑う。

 「……レスさん……別に無理にこの決闘を受ける必要……」
 そうクリアが心配そうに見ている。

 「……まぁ、この決闘の勝ち負けでクリアの母親に気に入られるとは思ってないが……大事な小説仲間《ともだち》を失うわけにはいかないか」
 そう、広い庭の中央で待つ二人の男のもとへと行く。

 「本当に貴様一人なのか?」
 髪が逆立った金髪の男……
 ライゼス=ゼウス……だったか。

 「……魔王討伐……ブレイブ家の娘以外に別部隊として動いていた学生か……」
 黒の長髪の男……マーティス=スレイプニル……

 「っても、魔王を倒したのは組織の特殊部隊だって話だろ?」
 そうライゼスがレスの活躍を否定するように……

 「……そうそう、俺の能力は防御特化で周りの仲間の助けがあって切り抜けただけで、とてもあんたら二人に……」
 二人の目線が鋭く俺を睨んでいる。
 その目線の圧で思わず口を止める。

 「随分と余裕そうだな……」
 俺のその態度が気に入らないようにマーティスが言う。

 「奴を斬れっ……斬鉄っ」
 細く長い剣がマーティスの手に握られている。

 「そんじゃ……殺さない程度にはしてやるよ」
 空から鋭い光が落ちるとライゼスの右手にいかづちが落ち、
 輝く腕からバチバチと魔力が放電している。

 「なぁ……アストリア、5分耐えれば俺の勝ちとかってルールでいいのか?」
 そう俺の勝利条件を確認しておく……

 「……と、言っておりますがどうします……マシロ様?」
 そうアストリアがマシロにその回答を委ねる。

 「……私は、彼がクリアを守るに相応しいかを見極めたいのです」
 そう……答えではない答えが返ってくる。

 「……だ……そうだ」
 とアストリアは楽しそうに笑う。

 くそ……認められるって……どうすれって……

 「余所見してんなっ……いくぞっ」
 ライゼスの手から雷が飛ぶ。
 今まで見てきた魔法系の能力の中でも凄い速さだ……

 右手を構えると……薄い透明の壁《けっかい》をはり、それを防ぐ。

 「ほぅ……ライゼスのその魔法《いかずち》を防ぐ、それなりの防御結界のようだが……」
 右手を右下に伸ばすように、その長い剣《ざんてつ》を構える。

 「……必殺剣《ざんてつけん》っ」
 刃の動きを捉えることができなかった……
 いつの間にか男は俺の張った結界の前に立っていて……

 俺の結界が粉々に切り刻まれる。

 「くっ……」
 結界が壊されたことでその分の魔力が消耗する……

 「……ぐっ」
 さらに、凄い衝撃が身体を貫くように……
 俺の身体が後ろに吹き飛ぶ。

 「レスさんっ」
 心配そうにクリアが思わず叫ぶ。

 「残念……1分も持たなかったわね」
 そう残念そうにマシロが言うが……

 「……これからですよ、マシロさま」
 そう一人、楽しそうにアストリアが笑みを浮かべる。

 「……ぐっ……容赦ねぇな……ほんと……」
 地面に這い蹲りながら感電する身体を何とか動かそうとする。
 体内に魔力をめぐらせ、感電を中和させゆっくりと立ち上がる。

 「なんだ……って?」
 自分の雷《いかずち》を受けて平然と立ち上がる姿に少し驚きの目を向ける。

 「そっちも2人だ……文句《ずる》はねぇよな」
 俺はそう呟き……

 (フィル……聞こえるか?)
 そう自分の中に住む誰かを呼びかける。

 (こっちも共闘だ)
 そんな呼びかけに答えるように青白く輝く光が俺の胸元あたりから飛び出す。

 光は青白い炎のように姿を変えると……
 そのまま……俺の右手に納まるように武器へと形を変える。

 「死神の鎌……なぜ小僧がっ!?」
 レスが手にした武器を見て、さすがのアストリアも驚いた顔を向けている。

 「……二重能力《セカンドスキル》は希少だぞ……どいつもこいつも簡単に所有しやがって」
 アストリアが少しだけ悔しそうな笑みをレスへ向ける。
 レイフィスの闘券と時戻し……
 そして、ライトの魔法剣と魔眼……
 あのヴァニも能力の進化だけではなく、炎舞の能力を伝承した。
 後は、隣で何気なく一緒に観戦しているお嬢……弓の能力と……能力付与《くちづけ》の能力を持っている。

 「あなたも……魔槍に、その体術も二つ目の能力と呼べると思うけど」
 そう、アストリアの強さをかっているマシロが言う。

 「こっちから……いくぞ」
 攻めに転じるのはなれないが……
 鎌を装備し、地面を蹴り上げる。

 「そんな、動き……そんな捌きで……」
 ライゼスが再び右手を構えるともの凄いスピードの雷が飛ぶ。
 が、俺の目の前で透明な壁がその一撃を止める。

 攻撃《フィル》と防御《じぶん》の魔力は別だ……
 防御に専念しながらも攻撃もできる。

 「ちぃっ」
 ライゼスにその一撃を回避される。
 さすがの身のこなしというところと……
 俺の剣術のレベルが低いというのも影響しているだろう……

 「だったら……」
 鎌が炎に戻ると……俺の周囲に炎の円状壁が広がる。

 右手に結界の魔力を宿すと、行き場を失ったライゼスの頭を掴むと、
 その炎の障壁に叩きつけるように、その魔力の炎がライゼスの身体を焼き尽くす。

 「まず……一人……」
 俺は気を失ったライゼスをそのまま地面に置き、振り返る。

 「……なるほど、だが……俺の剣は貴様には防げない……」
 そうマーティスが長い剣を構えている。

 剣術では適わない……なら……

 「俺は俺の分野で対抗するだけだ……」
 右手を目の前に構える。

 「悪いが……俺の必殺剣で斬れぬものは無い、それはすでに証明済みだ」
 粉々に切り刻まれた結界……
 それでも……俺も……

 「必殺剣《ざんてつけん》っ」
 俺の結界をマーティスの斬鉄が切り裂く。

 「……なぁ……に!?」
 マーティスが目を見開く。

 「悪いが……俺も全力で防げなかったものは無かったんだ」
 そう俺の全魔力の結界を斬った斬鉄の刃が真っ二つに折れる。

 「フィル……いくぜっ」
 青白い光の玉が俺の目の前に浮き上がると……

 「魔王弾《フィルアタック》っ!!」
 もの凄いスピードで青白い光の玉がマーティスの身体にぶち当たる。

 マーティスもその場で動かなくなる。

 「まさか……本当に勝ちよったか、小僧……」
 そう本人も驚くようにアストリアが見ている。

 「……5分もたってないわよ……」
 マシロも驚くようにレスを見ている。

 「……ほら……アストリア……私の王子様……」
 そう誰にもアストリアにも聞こえない声でクリアが言う。



 「失礼したわ……えっと名前は?」
 そうマシロがレスに尋ねる。

 「……レスです」
 そう答える。

 「レスくんか……性は?」
 そう尋ねられる。

 「……いや……名乗ってないんだ」
 多分、答えになっていないが……
 こっちの異世界で俺はその名前を名乗っていない……

 「そっか……」
 マシロは特に気にすることなく……

 「それじゃ、レス=スノーね」
 そう頷くマシロ。

 「……ん?」
 俺は思わずそんな声を漏らす。

 「気に入ったわ……うん、これからもクリアの事を宜しくね、レスくん」
 そう何やら頷きながら……

 「空き部屋あったわよね……彼に準備して」
 そうマシロが通りかかったメイドに言う。

 「……ん?」
 何やらどんどんと彼女《マシロ》の中で話が進んでいる。

 「……ん?って、そうでしょ、レスくんがクリアを生涯守り続けるのだから」
 そう話が進んでいく。

 助けを求めるようにアストリアを見るが……

 ケラケラとただ笑っている。



 『また、いつでも来ていいからね……』
 あの後も、しばらくマシロさんに捕まっていたが、
 なんとか、解放されアクア邸へ帰る。

 気になるのは、逆にクリアが少しだけ不機嫌だった。
 読書会の時間がほとんど無くなってしまったと、
 少し拗ねしまったが、まぁ……母親公認でまた遊びに行けるわけだから、
 また、時間はいくらでも作れる。


 アクア邸の門を潜ると……

 「レスーーーッ大変だ!!」
 顔を真っ青に、ツキヨが俺の帰りを待っていたかのよう駆け寄ってくる。
 ただ事ではない表情で……

 「……ど、どうした?」
 唾を飲み込み、ツキヨに尋ねる。

 「来てくれっ!!」
 そう、何処へ向かうと思えば俺の部屋に連れて来られる。

 「見ろっ!」
 そうツキヨに言われ見る俺の部屋は……

 「……何があった?」
 酷い争いがあったように、部屋のものがほとんどひっくり返っている。

 「……居ないんだっ」
 そう小さな声でツキヨが言う。

 「……ん?」
 ……理解ができないようで、理解ができる……

 「……強盗が入ったのか?」
 でも……俺以外の部屋は綺麗なものだ。

 「……誰かに襲われたのか?」
 部屋のあれ具合……やはり俺の部屋以外は綺麗で、ツキヨも怪我一つ無い様子だ。

 「……どこ探しても……シマエナガさんが居ない……どこに……強盗だか、暴漢だか知らぬが……許されないことだ」
 文字通りに開いた口が塞がらない……

 「聞いているのかっ、レスっ!」
 ……俺は、黙って外出に持ち出した鞄を開けると、ポンとツキヨの胸元にヌイグルミを一つ押し付ける。

 「……な、なんだ……?」
 そう状況を読み込めないようにツキヨが声を漏らす。

 「……シマエナガさんは、優しい飼い主さんのもとで幸せそうだったよ……変わりに家には、皇帝ペンギンさんが来てくれた、ぜひツキヨの師弟につきたいそうだ」
 そう押し付けられたヌイグルミをツキヨは見つめあいながら……

 「……こ、こんな事でシマエナガさん……あ、コウテイ……ペンギン……大層な名前のわりに……なんてかわ……師弟だと……私の指導は厳しいぞ、ついてこられるか」
 ツキヨワールドが広がる。
 そして、俺の帰りも見つけたレインとリヴァーがそんなツキヨの姿を横目に俺に近づき……

 「何事だ……?」
 俺の部屋の有様を見て、レインとリヴァーが呆然と見ている。
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