耳から溶かして、声で愛して

えつこ

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3話

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「千寿、大丈夫か?」
 合コンが終わる頃、俺はすっかり酔っていた。森田が心配して声をかけてくれるが、意識はぼんやりとしている。峰谷のペースにつられ、明らかにハイペースで飲みすぎた。
 その峰谷はおろおろしながら、俺を心配そうに見ている。あれほど飲んでいたのに、前髪で隠れた顔はよく見えないが、平気そうだ。どうやらザルらしい。
「じゃあ峰谷、頼んだ」
 足元がおぼつかない俺を峰谷に託し、森田と眼鏡と女性四人は夜の街に消えていった。本当なら俺も森田たちに加わっているはずだったのに。俺は情けなく思いながら、峰谷に肩を借りた。
 「お前のせいだぞ」と愚痴るが、峰谷には聞こえなかったようで、首を傾げる。くそ、と足を踏んづけてやろうと片足を上げたが、バランスを崩してしまい、二人でよろけただけに終わった。
 峰谷は「危ない」とか「しっかりして」など言いながらも、俺を支えてくれる。俺よりも背が高く、意外とがっしりしている身体つきに、どこか安心感を覚える。相手が峰谷でなくて、女性ならよかったのに。触れた肌から伝わる温かな体温に、俺は心地よさを覚えてしまい、小さく舌打ちする。
「タクシー呼ぶから、ちょっと待って」
 峰谷はスマホを取り出し、何やら操作する。配車アプリでも使っているのだろうと、眩しい画面と峰谷の横顔を見つめる。顎から耳のラインは綺麗で、鼻は高い。前髪から除く切長の瞳、きめの細かい白い肌。峰谷という思い込み抜きだと、イケメンの部類に入るのかもしれない。途端に興味が湧き、うざったい前髪を除けようと手を伸ばそうとしたら、峰谷の顔がこちらを向いた。
「川元、タクシー来たよ」
「ありがと」
 呂律が回らない有耶無耶のお礼に、峰谷は頷くだけだった。
 俺は重い身体をタクシーの後部座席に滑りこませ、ふぅと息を吐いた。車内は冷房が聞いて涼しい。これで帰れると一安心していると、峰谷が隣に乗り込んできた。一人でタクシーで帰るつもりだった俺は首を傾げた。
「なんで?」
「え?」
「峰谷もいっしょ?」
「途中まで乗ってく。川元の家、◯◯公園の近くだろ」
 峰谷がどうして俺のマンションを知ってるのか、という疑問は、森田に教えてもらったのだろうと自己解決する。
峰谷とドライバーのやり取りを遠くに聞く。襲いくる睡魔に抵抗することなく、俺の眠りに落ちた。





『耳、弱いんだ』
 俺の耳に息が吹きかけられる。音声では感じられない、息が皮膚に当たる感触、息の生暖かさに、背筋がぞくぞくとした。
 しかし、これは絶対夢だ。なぜなら、目の前にいるのは峰谷なのに、声は犬飼のものだった。見たことのない部屋、ベッドの上に俺と峰谷はいて、俺は峰谷に押し倒されていた。
『暑いよね。服脱いだら?』
 俺の肌は汗ばんでいて、確かに暑い。しかし、乳首に貼ったニップレスを見られるわけにはいかない。首を横に振ると、峰谷は俺のTシャツを捲った。Tシャツは胸元まで捲られ、峰谷の視線が肌に刺さり、俺は恥ずかしくなる。
『これは?』
「見るなよ……」
『乳首開発してるんだ?』
 峰谷は口角を上げ、楽しそうな口ぶりだ。前髪の間から見える目は、野獣のように獰猛で、俺の鼓動は速くなる。
『可愛い乳首、見せて』
「は?何言って……?」
『見せろ』
「っ……」
 俺の身体は意思に判して動き、手が胸元に移動する。見た目は峰谷のくせに、声が犬飼のせいで、俺は命令に逆らえなかった。
『それ、剥がして』
 言われるがまま、俺は右の乳首に貼ったニップレスの端を摘まみ、そのままゆっくりと剝がした。ニップレスが剥がれていく微弱な刺激に、声が漏れる。
『声出ちゃうの、可愛い』
 峰谷はふっと笑いを漏らす。しかし、声は犬飼のもので、俺はきゅんと胸が高鳴った。
『乳首、ツンって主張してる』
 峰谷の指が、俺の乳首に触れる。皮膚同士が触れて、熱を持つ。指の腹で、くにくにと捏ねられると、じんわりとした快感が広がった。リアルな感触を不思議に思うが、これは夢なのだから何でもありなんだろう。禁欲しすぎたせいで、変にリアルな夢を見ているのだと思うしかない。


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