流されノンケサラリーマンが年下大学生にとろとろにされる話

えつこ

文字の大きさ
30 / 77
5.ごかいめ

3

しおりを挟む


「麻琴?」
 キヨが目を開けると、先ほどまで傍に座っていた麻琴の姿がない。麻琴と繋いでいた手は、空虚を掴む。慌ててベッドから起き上がると、額に乗せていたタオルが布団の上に落ちた。タオルはすっかり温くなっている。キヨが狭い部屋を見渡しても麻琴の姿は見えず、不安で鼓動が速くなる。麻琴を探すために、キヨはベッドから降りて立ち上がった。
「キヨ、起きた?」
 キヨが振り向くと、麻琴がベランダから室内に戻ってきたところだった。手には空の洗濯かごを持っていて、ベランダには洗濯物が揺れている。状況を理解したキヨは安堵し、身体の力が抜け、ベッドに腰かけた。
「まだ寝といたほうがいいんちゃう」
 麻琴は慌ててキヨに駆け寄り、キヨの隣に座る。二人分の体重で、ベッドが沈んだ。
「いなくなったかと思った」
 キヨは早くなった鼓動を落ち着けるために、深呼吸をする。そして、麻琴の存在を感じるために、麻琴の手に自らの手を重ねた。麻琴はそれを愛おしく思いながら、指を絡めるように手を繋ぎ直す。外の空気を纏う麻琴は冷たいが、キヨは心が温かくなった。
「ごめん、洗濯物干してて」
「うん、わかってる」
「ごめんって。不貞腐れんといてや」
 麻琴はキヨの頬を撫で、優しく微笑んだ。
 キヨは麻琴の笑みに、きゅっと胸が締め付けられる。溢れ出す感情に耐え切れなくなり、キヨはついに口を開いた。
「あんまり俺に優しくしないで」
「なんで?」
「……好きになっちゃうから」
「え?」
 麻琴は一瞬聞き間違えたと思った。それくらいキヨの声は消えてしまいそうで小さかった。しかし、キヨがかぁっと頬を赤らめているのを見て、自分の耳は正常だと麻琴は確信する。キヨの反応が可愛くて、麻琴は自然と頬が緩んだ。
「好きになったらあかんの?」
「っ、……わかんない……」
「俺はキヨのこと、好きやで」
 麻琴の突然の告白に、キヨはぱっと視線を上げた。そこには優しい表情で、キヨの言葉を待つ麻琴がいた。
「キヨは?」
「なに、が……?」
「俺のこと、好き?」
「その聞き方、ずるいよ」
「俺結構ずるい男やねん」
 麻琴はふふっと笑いを零した。キヨもつられて笑いをこぼず。すっかり麻琴の虜になっているキヨは観念して気持ちを伝える。
「好き」
「ちゃんと言ってや」
「麻琴が好き、です」
「なんで敬語やねん」
 キヨは照れ隠しで「うるさい」と返す。しかし、心情を吐露することが、これほどまでに恥ずかしいとは想像もしておらず、キヨは耳まで赤くした。
「ってか、ほんまに、え?キヨが俺のこと?好き?」
 ワンテンポ遅れて、今度は麻琴が混乱する。キヨがまさか自分を好きだなんて思いもよらなかった。両想いである実感が、じわじわと湧いてきて、麻琴はにやにやとした笑みをこぼす。
「え、うそ、めっちゃ嬉しい。キスしていい?」
「風邪うつるからだめ」
「あほは風邪ひかへんねん」
「それは迷信、っ……」
 麻琴はキヨの言葉を遮ってキスをした。いきなりのキスに、キヨは肩を跳ねさせ、絡んだ指にきゅっと力が入る。
「キヨ、なんか今日は可愛らしいな」
「そんなことない」
 主導権を握られたキヨはむすっとした。仕返しとばかりに、今度はキヨから麻琴にキスをする。キヨは麻琴の唇を貪りながら、空いた手で麻琴の身体を引きつけ、腰や背中を撫でた。唇を離すときに、ぺろりと麻琴の唇を舐め上げる。熱も相まって、キヨの身体は熱さを増す。ふーっと落ち着けるように息を吐き、欲情をまとった瞳で麻琴を見つめた。
「麻琴、好き」
「俺も、キヨが好き」
 ちゅ、ちゅっと触れるだけのキスを交わしながら、二人は熱い息を吐いた。キスだけでは物足りないとばかりに、指を絡ませ、身体を密着させる。お互いの鼓動が近くなり、呼応するように速くなる。
「元気だったら今すぐ押し倒してセックスしてる」
「キヨが元気になるの、楽しみにしてるわ」
 麻琴は軽口で返すが、腹の奥はきゅんと疼いた。二人はしばらく見つめ合い、気持ちを確かめ合うように、キスを繰り返した。
「ほんなら俺帰るわ。終電なくなるし、明日も仕事やし」
 麻琴は名残惜しいが、繋いだ手を離し、立ち上がる。早く帰らなければ、ずっとここにいてしまいそうで、セックスになだれ込みそうだった。床に置いていたジャケットとコートを着て、麻琴はそそくさと退散の準備を進めた。
「さっきのお粥の残りは冷蔵庫入れてるから。あとゼリーもあるから、お腹空いたら食べ」
「わかった。ありがとう」
「そんな寂しそうな顔せんといてや」
 ベッドに座ったまま、見上げるキヨの頭を撫でる。弱っているキヨが見せる甘えた態度が可愛くて、麻琴はキュンとした。最後に麻琴はキヨの額にキスを落とす。キヨは幸せそうに目を細めた。
「鍵はドアポストに入れとくから、無理したらあかんで。ゆっくり寝ときや」
 麻琴は先ほど掃除をした時に見つけた部屋の鍵を片手に、玄関へと足を向ける。
「麻琴、ありがとう。元気になったら連絡するから」
「待ってるわ。おやすみ」
 会話を交わし、麻琴はキヨの部屋を出た。鍵を閉めた後、ポストに鍵を入れると、麻琴はその場でしゃがみこんだ。はぁと大きくため息をつき、両想いである嬉しさを噛みしめていた。キスで火照った身体に落ち着けと言い聞かせ、立ち上がる。終電を逃せば大変だと、麻琴は駆け足でマンションを後にした。
 部屋に一人残されたキヨは、ベッドに倒れこんだ。先ほどまでの目まぐるしい出来事がフラッシュバックして、顔も身体も熱くなる。風邪を引いていることが恨めしい。晴れて両想いとなったのだから、早く体調を万全にして、麻琴とセックスしたい。キヨは布団に潜りこみ、瞼を閉じた。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...