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1-2.先生と生徒ごっこ
1 *
しおりを挟む遼は王輝の部屋のリビングでテレビを見ていた。一日の疲れが身体にのしかかるように重く、ソファに身体をあずける。バラエティ番組では俳優や芸能人が楽しそうに話していて、そういえば新曲の宣伝でバラエティ番組への出演が決まっていたと、遼はスケジュールをぼんやり思い出してた。
王輝はさきほど帰ってきたところで、今はシャワーを浴びている。遼は自分の部屋でシャワーを済ませてきていた。自然と瞼が閉じる。甲高い笑い声が子守歌のように聞こえて、遼は意識を手放した。
「佐季」
名前を呼ばれて、瞼を開けた。寝ぼけながらも、目の前に王輝がいることを認識した。まだ乾ききっていないのか、髪がしっとりとしている。
「ごめん、寝てた」
遼はソファに沈んだ身体を起こそうとするがうまくいかない。なぜなら王輝が遼の太ももに跨っているからだ。遼は王輝に見下ろされることになる。そして、遼は王輝の服装に気づいて、一瞬でパニックになった。
「え、それ……、セーラー服?」
「うん、どう?」
「どうって…」
襟つきのセーラー服、赤いリボンが胸元で揺れている。腰から下に視線を移動させると、プリーツが綺麗な紺色のスカートを履いていた。短めのスカートからはほっそりしながらも筋肉がついた足が伸びる。男の身体には似合わないであろう服なのに、王輝には似合ってるように見えるのは、疲れているからだろうか。遼は視覚を処理できなくて、頭がくらくらしていた。
「おーい、どうって聞いてるんだけど」
固まってしまった王輝は、遼の顔の前で手を振った。
普通にセックスするのも楽しいが、たまには遊び心を持ってセックスしたい。王輝が考えたのはコスプレセックスだった。いろんなコスプレがあるが、制服は定番だろうと、雑貨店でパーティー用のセーラー服を買った。値段は安い割に、縫製はしっかりしていた。洗面所で着替えて、鏡で自分の姿を見た王輝は、意外とイケると自画自賛した。学生時代、ふざけて女装させられていた男友達がいたが、それよりは何倍も可愛いと思った。
遼は何も言わず、じっと王輝の姿を見ている。こういうのは嫌いだっただろうかと王輝は心配になる。セックスを断られてしまったらどうしよう。先に確認すればよかったかもしれない。不安のほうが大きくなってきたころ、遼はようやく口を開いた。
「可愛いと、思う…」
恥ずかしそうに答えた遼は、王輝から視線を外してしまった。
遼は似合っていると言うつもりだったが、なぜか可愛いという本音が飛びだしてしまったことに動揺した。でも確かに可愛いと思ってしまった。王輝に向かって可愛いと言ったことが初めてで、照れてしまう。顔と耳が熱い。
まさか可愛いと評されるとは思っていなかった王輝は、かっと顔が赤くなった。嬉しいような、恥ずかしいような、とにかく顔が熱くなる。普段は絶対に可愛いと言われたくないが、今なら許してしまう。
二人とも照れて黙り込んでしまい、テレビの音だけがリビングに響いた。先に言葉を発したのは遼だった。
「触っていいか?」
「っ、うん…」
改めて確認されて、王輝はくすぐったさを感じた。初めてセックスしたときに、一つ一つ確認されたことを思いだす。遼は大きな手を王輝の頬に添え、キスをする。もう反対側の手で、手探りでテレビのリモコンを探しだし、テレビを消した。一瞬で静寂が部屋を満たす。二人はお互い唇をむさぼるように、口づけを続けた。
「一個確認していい?」
遼が口づけの合間に王輝に尋ねた。
「この制服って撮影用じゃないよな?」
「違う違う。俺が買ったやつ。っつーか、俺は仕事道具をこんな風に使わないって」
仕事とプライベートは分けるのは当たり前だし、仕事道具をこんな風に使うなんてありえない。王輝はムッとした表情を見せた。
「そうだよな。高校生のドラマ撮ってたから、もしかしてと思って」
遼は優しくキスをして「ごめん」としおらしく謝った。その優しさに許してしまう自分に、王輝はほだされていると感じた。
王輝はスウェット越しに、遼自身を撫でた。細い指が遼自身の形をなぞるように触れると、遼は熱っぽい息を吐いた。王輝はいたずらに笑い、遼に尋ねた。
「どういう設定がいい?先生がいい?それとも、先輩?後輩?」
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