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1.日常
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しおりを挟むその後の握手会では、パフォーマンスでよかったところを褒めたり、MCの内容に触れたり、ウィンクのお礼を言ったりと、総司はイオの全てを褒め称えた。
「もう、僕のこと、甘やかさないでくださいよ」
照れるように笑うイオに、総司はニコニコとしながら、内心はイオの可愛さに咽び泣いていた。
握手会が終わると、今度は撮影会になる。ファンはチェキカメラもしくはスマホで写真を撮ってもらう。
総司はスタッフのチェキカメラに託し、イオのソロシャットをお願いした。途端に、イオは不満気にむくれる。
「僕だけですか?」
「あとでツーショ撮りに来るから!」
「わかりました」
渋々イオは了承し、カメラに視線を移動させる。
「ポーズはどうしますか?」
「イオくんに任せるよ」
「じゃあ……」
イオは少し考えて、右手は力こぶを作るように持ち上げ、左手は腰に手を当てた。いつもより表情は凛々しい。見慣れないポージングに総司は首を傾げた。
スタッフが「はい、撮るよ」と声をかけ、シャッターを切った。フラッシュが光った後、カメラからじじっ…と写真が出てくる。
総司はスタッフから写真を受け取る。まだ写真全体が白く、イオの姿は現れていない。
「それ、元気が取り柄ポーズです」
総司が気になっていたことをイオか教えてくれたため、総司は「なるほど!」と返した。
(元気が取り柄ポーズって、なに……?意味わからないけど、イオくんがドヤ顔してるの可愛いから、何でもいいや)
「次は総司さんも一緒に、ですからね!」
イオに念押しされ、総司は見送られる。
ループした総司は、二回目の撮影のときはイオと同じポーズをして、写真に写った。
「さっきのポーズ、何?」
総司が、三回目の撮影のためにループしていると、七海が声をかけた。
「イオくんなりの、元気が取り柄ポーズ、らしいです」
「元気が取り柄ポーズ」
総司の言葉を繰り返し、七海はふふっと笑いを吹き出した。
「イオくんらしいね」
「ほんと、なにそれ可愛いって感じですよ」
「私もそれしようかな」
七海は手に持った特典券をヒラヒラと揺らす。
「いや、これは俺とイオくんのポーズなんで、ダメです」
総司はむっとした表情を見せた。
普段温厚な総司だが、イオにまつわることには過激になる。それを七海はよく知っていた。
「わかってるって」
七海は宥めるように言い、総司の後ろに並んだ。
撮影会の列は少しずつ進む。時間が経つにつれ、徐々にフロアにいるファンの数は少なくなってくる。特典券がなくなれば、帰って行くからだ。残るはループしているファンサばかりで、いわゆる鍵閉めを狙うファンもいる。
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