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第65話
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そして工藤さんとの電話を終えた私は早速ハルカに頼んで瞬間移動で月城さんの元に向かう。
工藤さんの電話によると彼女は今ダンジョンセンターの入り口近くにて工藤さんと一緒に待っているそうだ。
瞬間移動でダンジョンセンターの近場へと移動しハルカと共に建物へと向かう。
人目がないことを確認し何食わぬ顔でダンジョンセンターへと入る……とそこで一悶着をして起きていた。
「そんなのおかしいんじゃないかしら?」
「部外者は口を挟まないないでもらえるか?」
「すっすいません…それは私の仕事では…」
「上司に歯向かうのか君は? たかがダンジョンセンターのいち職員の分際で」
ダンジョンセンター内は夜も遅いという事で探索者たちの姿もまばら、職員たちの数もかなり少ない。
だからかやり取りをする声はダンジョンセンター内によく響いていた。
一体何事かと思いそちらの方に目を向けてみれば工藤さんと月城さんを発見。
さらにもう一人随分と高そうな黒スーツと黒い靴の男が彼女達と言い争いをしていた。
歳の頃は四十代中頃くらいだろう。
短い黒髪と黒い目の男で太ってはいない、身長は私と同じくらいか。
見た感じは企業のキャリア組みたいである。
……しかし多少なりとも社会で生きてきた私から見れば一目見てきな臭い気配を感じた。
何と言うかね仕事の能力とか実力がある人間というよりは他人を使い潰したり盾にしたりして上に行く事に特化した、そういったいやらしい方面に力を発揮するタイプの人間特有の気配を身にまとっている。
そんな感じだった。
人を騙す悪いタイプの狐とか狸とかっていうのかな、なんかそういうのが人間になったらこんな感じだろうなってやつ?
あとは地面師とか結婚詐欺師とかネット関係の犯罪者とかにそういう人がいるのだよ、テレビとかで逮捕されたその手の犯罪者に雰囲気がどことなく似ている。
工藤さんと月城さんの方に向かいながらそれぞれの会話をちょっと聞いてみる。
「月城さんと私はこれから人に会う約束があるんです」
「そんな約束は知らん、私も忙しいのだ。部下が上司のために働くのは当たり前のことだろう?」
「しかしその仕事は黒山さんが任された仕事のはずで…」
「私に一任された仕事なら私がその仕事を誰にやらせるかも自由なんだよ。だからこの仕事は君に任せる、無論のこと失敗は許さんがな」
「……ッ!」
どうやら月城さん、あの黒山って上司から仕事終わりの土壇場での残業案件を押し付けられそうになっているってところか。
一昔前の企業組織だったら間々ありそうな話だ。
まあ今でも外から内部が見えないタイプの企業組織だったらこういう腐った真似をしてるところはあるのかもしれないけどね。
人間っていうか日本人特有なのか、とにかく古臭い生き物は自分たちが楽をできるシステムに一度染まると時代が変わったと言ってもなかなかその本質を変えられないのだ。
怠け癖が抜けないとでも言えばいいのかな…。
「とにかくこんな面倒…いやっこういう仕事はできるだけ能力のない人間に経験させ少しでも実力をつけてもらわなければならないのだよ。これは私の上司としての愛のある配慮だと思ってもらわなければね」
「そんな…」
「貴方は…」
「……少しいいですか?」
そんな会話に立ち入る私だ。
工藤さんと月城さんは私の存在に気づくと少し驚いていた。
よほど目の前の黒山という男の方に集中してたのだろう。
その黒山はと言うと、私の格好などを見て気を使う必要のない『格下』の人間であると判断したのか、露骨にその視線はこちらを見下したものとなった。
「……君は?」
「この2人と待ち合わせをしていた者です」
「そうか……それで?」
「彼女たちと用事があるのは本当です、これから2人と話をしたいことがあるのでこれで失礼してもいいですか?」
「いいわけないだろう」
黒山は口を聞くのも会話をするのも不快だと言いたげな態度で心底不愉快そうに話を続けた。
「そこのアンジェにはまだやるべき仕事が残っている。定時を過ぎたから帰るなどと…本当に今どきの若い世代、とりわけ女と言うのは……」
親しい訳でもない女性を呼び捨てか、しかも嫌そうにしてるのに下の名前で…。
と言うか月城さんって下の名前アンジェって名前だったのか、どことなく高見さん、高見ルイシュさんに似た気配を感じる。
無論気のせいだろうけど。
どうやら古い世代の人間からの悪い影響を受けまくったタイプの人間なんだろうな。
「それ以上はやめた方が良いかと…」
私はスっとスマホを取り出した。
「先ほどの会話、録音させてもらいました」
「ふんっだから?」
「あまり姑息な真似はしない方がいいですよ、その今時の若い人間というのはすぐにこういうのを音声だったりをネットに上げて訴えますからね。そしたらテレビのニュースとかで後々報道されるかもですね…なにより立派なパワハラとモラハラですし」
「君はまさかこの私を脅しているのか?」
「いえいえまさか、脅してなんていませんよ。ただ気を付けた方がいいとアドバイスをね……貴方が今さっきまで口にしていた言葉を世の中の多くの人たちが耳にした時、どういう反応をするのか、少し想像力を働かせてみればいいかとは思います…」
「………………」
黒山はしばし無言になった。
そしてこちらに聞こえるくらいの音で舌打ちをし、そしてダンジョンセンターの奥へと消えた。
そうそうこういう時に自分の保身を真っ先に考えるからこそ、それなりの立場まで上がって来れたんだろうからね。
これからもできれば大人しくしていてくださいな。
工藤さんの電話によると彼女は今ダンジョンセンターの入り口近くにて工藤さんと一緒に待っているそうだ。
瞬間移動でダンジョンセンターの近場へと移動しハルカと共に建物へと向かう。
人目がないことを確認し何食わぬ顔でダンジョンセンターへと入る……とそこで一悶着をして起きていた。
「そんなのおかしいんじゃないかしら?」
「部外者は口を挟まないないでもらえるか?」
「すっすいません…それは私の仕事では…」
「上司に歯向かうのか君は? たかがダンジョンセンターのいち職員の分際で」
ダンジョンセンター内は夜も遅いという事で探索者たちの姿もまばら、職員たちの数もかなり少ない。
だからかやり取りをする声はダンジョンセンター内によく響いていた。
一体何事かと思いそちらの方に目を向けてみれば工藤さんと月城さんを発見。
さらにもう一人随分と高そうな黒スーツと黒い靴の男が彼女達と言い争いをしていた。
歳の頃は四十代中頃くらいだろう。
短い黒髪と黒い目の男で太ってはいない、身長は私と同じくらいか。
見た感じは企業のキャリア組みたいである。
……しかし多少なりとも社会で生きてきた私から見れば一目見てきな臭い気配を感じた。
何と言うかね仕事の能力とか実力がある人間というよりは他人を使い潰したり盾にしたりして上に行く事に特化した、そういったいやらしい方面に力を発揮するタイプの人間特有の気配を身にまとっている。
そんな感じだった。
人を騙す悪いタイプの狐とか狸とかっていうのかな、なんかそういうのが人間になったらこんな感じだろうなってやつ?
あとは地面師とか結婚詐欺師とかネット関係の犯罪者とかにそういう人がいるのだよ、テレビとかで逮捕されたその手の犯罪者に雰囲気がどことなく似ている。
工藤さんと月城さんの方に向かいながらそれぞれの会話をちょっと聞いてみる。
「月城さんと私はこれから人に会う約束があるんです」
「そんな約束は知らん、私も忙しいのだ。部下が上司のために働くのは当たり前のことだろう?」
「しかしその仕事は黒山さんが任された仕事のはずで…」
「私に一任された仕事なら私がその仕事を誰にやらせるかも自由なんだよ。だからこの仕事は君に任せる、無論のこと失敗は許さんがな」
「……ッ!」
どうやら月城さん、あの黒山って上司から仕事終わりの土壇場での残業案件を押し付けられそうになっているってところか。
一昔前の企業組織だったら間々ありそうな話だ。
まあ今でも外から内部が見えないタイプの企業組織だったらこういう腐った真似をしてるところはあるのかもしれないけどね。
人間っていうか日本人特有なのか、とにかく古臭い生き物は自分たちが楽をできるシステムに一度染まると時代が変わったと言ってもなかなかその本質を変えられないのだ。
怠け癖が抜けないとでも言えばいいのかな…。
「とにかくこんな面倒…いやっこういう仕事はできるだけ能力のない人間に経験させ少しでも実力をつけてもらわなければならないのだよ。これは私の上司としての愛のある配慮だと思ってもらわなければね」
「そんな…」
「貴方は…」
「……少しいいですか?」
そんな会話に立ち入る私だ。
工藤さんと月城さんは私の存在に気づくと少し驚いていた。
よほど目の前の黒山という男の方に集中してたのだろう。
その黒山はと言うと、私の格好などを見て気を使う必要のない『格下』の人間であると判断したのか、露骨にその視線はこちらを見下したものとなった。
「……君は?」
「この2人と待ち合わせをしていた者です」
「そうか……それで?」
「彼女たちと用事があるのは本当です、これから2人と話をしたいことがあるのでこれで失礼してもいいですか?」
「いいわけないだろう」
黒山は口を聞くのも会話をするのも不快だと言いたげな態度で心底不愉快そうに話を続けた。
「そこのアンジェにはまだやるべき仕事が残っている。定時を過ぎたから帰るなどと…本当に今どきの若い世代、とりわけ女と言うのは……」
親しい訳でもない女性を呼び捨てか、しかも嫌そうにしてるのに下の名前で…。
と言うか月城さんって下の名前アンジェって名前だったのか、どことなく高見さん、高見ルイシュさんに似た気配を感じる。
無論気のせいだろうけど。
どうやら古い世代の人間からの悪い影響を受けまくったタイプの人間なんだろうな。
「それ以上はやめた方が良いかと…」
私はスっとスマホを取り出した。
「先ほどの会話、録音させてもらいました」
「ふんっだから?」
「あまり姑息な真似はしない方がいいですよ、その今時の若い人間というのはすぐにこういうのを音声だったりをネットに上げて訴えますからね。そしたらテレビのニュースとかで後々報道されるかもですね…なにより立派なパワハラとモラハラですし」
「君はまさかこの私を脅しているのか?」
「いえいえまさか、脅してなんていませんよ。ただ気を付けた方がいいとアドバイスをね……貴方が今さっきまで口にしていた言葉を世の中の多くの人たちが耳にした時、どういう反応をするのか、少し想像力を働かせてみればいいかとは思います…」
「………………」
黒山はしばし無言になった。
そしてこちらに聞こえるくらいの音で舌打ちをし、そしてダンジョンセンターの奥へと消えた。
そうそうこういう時に自分の保身を真っ先に考えるからこそ、それなりの立場まで上がって来れたんだろうからね。
これからもできれば大人しくしていてくださいな。
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