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第89話
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お腹を押さえ、うずくまり呻く黒山。
私はその様子を見ていた、しばらく待つと多少は元気を取り戻したのか黒山がこちらを睨みつけて大声で何やら喋り始めた。
「こっこここんな暴力をしてただで済むと思うなよっ!? これは犯罪だ、暴行罪だぞぅ分かっているのか貴様ぁあっ!?」
「………………」
コイツ…自分は今さっき人に向かってスキルぶっ放してきたくせしやがって。
よくもまあそんなことが言えたもんだよ…。
「ならさっきのスキルはなんだ…今の日本の法律なら何の理由もなく人間に、いやったとえ理由があったとしても他人にスキルを発動することは基本的に犯罪になることはわかってるよな?」
「黙れっ! 馬鹿か貴様は、私と貴様では立場が違うと言ったはずだ。私の方はいくらでも罪をもみ消すことが出来る、そして貴様は貴様が犯した罪も犯していない罪でもでっち上げることすら簡単なんだよー!」
「……ゲスが」
私は黒山の横顔を蹴り飛ばした。
ちょうど蹴りやすい位置にあったからだ。
「きっ貴様、また暴力を振るったなっ!? これ以上罪を重ねるなどどういうつもりだ!」
「どういうつもりも何もない、私はただお前の言う私の罪をでっち上げるだの自分の罪をもみ消すだの、そういう下らないことをしようだなんて思わないように少々厳しく教育をしてあげようとしているだけだが?」
「貴様 ……気でもふれたのかっ!?」
黒山を更に蹴り飛ばす。
吹っ飛ばされて転がりながらもこちらを睨む黒山のその目には殺意が込められていた。
「くっくそが、クソがっ! これだから社会の底辺でしか生きられないクズは、自分の気に入らないことがあるとすぐに暴力に訴える。人間の姿をした猿が、恥ずかしいと思わないのか!? 生きている事自体が社会の恥なゴミ共がっ!」
ごちゃごちゃとうるさいな~と思いながら黒山の方に数歩を近づく私だ。
「…暴力を振るわれるのは嫌か?」
「あっ当たり前だ! バカが貴様は!?」
「…何で嫌なんだ? 痛いからか?」
「お前、私を舐めてるのか……?」
「黒山、いまお前が受けている暴力はお前が月城さんにしたものなんだ、違うのは立場を使ったかどうかくらいか…それはな、暴力と全く同じものなんだよ」
「何を言ってるんだ貴様は…」
何も理解できないという訳か。
仕方がないので少し教えてやろう。
「相手が碌に反撃する力もない、それを分かっていながら一方的に相手だけを攻撃する。お前が月城さんにして、そして今…私にされている事はそういう事だろ? そんな低度の事もお前は分からないのか?」
「ふざけるなぁあっ! 私があの月城と言う女にした行動と貴様の振るうこの暴力が同じだと!?」
同じなんだよ。
自分が相手から反撃されない、否定されない、抵抗されない。
そうわかっている相手に一方的に自分の我だけを押し付ける、それが暴力と言わないで何と言うんだ。
「あの月城は、この私が目をかけてやったのにそれを袖にした! 更に貴様と言う金づるを利用する事にすら異を唱えた! そんな役立たずの駒《こま》など使い捨てにして何がぶっ!?」
あっふざけた事を叫び出したのでまた顔面を蹴り飛ばしてしまった、しかも強めに、ちょっと反省。
「黒山、確かにお前は立場のある人間だ。だったら覚えておけよ、お前が言う社会的な立場というのは抜き身の刃物と同じ凶器なんだぞ」
「立場が凶器……だと?」
「現にお前は立場を利用した一方的な圧力が月城さんをどれだけ追い詰めたと思っている? 彼女がどれだけ苦しんだか何一つ理解できないのか?」
悪意を持って振るわれれば暴力だろうが立場だろうが相手を傷つけ、苦しめ、そして時には命すら奪う。
社会的な立場というのはそれだけ恐るべき凶器なのだ、こういう人間はその凶器を何の危険性も理解せず平然と振り回し、人に突きつける。
そして弱い立場にいる人たちの人生を踏み躙《にじ》る……。
「黒山……この質問にだけは答えてくれませんか?」
私は腰を下ろし、黒山と目線をできるだけ合わせてから質問をした。
「お前はその立場と根回しや権力やコネとやらで、一体どれだけの人間を不幸にしてきたんですか?」
「くっくだらない……邪魔だから排除してきた人間の数などいちいち数えると思うか!?」
「…………そうですか」
私は力を込めた右ストレートを黒山の顔面にかました。
やつの体が面白いようにトイレの床を転げまわる。
私も社会人にだったから黒山みたいな人間には見覚えがある。
なぜお前らみたいな人間は人を不幸にして何も感じないんだ。
なぜ平然と人を追い込んで笑っていられる。
なぜ当然のように他者に苦労を強いて自分は楽な道を歩いて行ける。
なぜ人の人生を踏みにじって…平然と自分は真っ当な人間ですみたいな顔ができるんだ。
抗えない立場で故意に相手を貶めて人格を否定し、自分たちにとって都合の良い人間に作り変える手法は追い出し部屋だけじゃない、今の社会ではいくらでも聞く話だ。
ひと昔前に横行した違法取り調べや今もある体育会系学校のノリや企業組織の一般的な良識を無視した独自ルール、ブラック企業の圧迫面接や異常な新人教育などなど。
その人間のこれまでの人生を否定し、強制的にカーストの最底辺に叩き落とし、思考さえ奪い働くだけの人形に作り変える。
そんな真似をなんの罪の意識もなく行う人間がこの社会の上の方にはいる。
そんな重い罪を皆がしてたから、それまでも続けてきたから、それが伝統だからとまるで至極当然の事だと舐め腐った事を口にする人間がいる。
…本当はただ自分より上の人間にゴミのような忖度をしてるだけのくせに。
そんな人間にずっと問いたかった言葉をこの黒山に聞いた。
「…お前らは『人の人生』を何だと思っているんですか?」
私はその様子を見ていた、しばらく待つと多少は元気を取り戻したのか黒山がこちらを睨みつけて大声で何やら喋り始めた。
「こっこここんな暴力をしてただで済むと思うなよっ!? これは犯罪だ、暴行罪だぞぅ分かっているのか貴様ぁあっ!?」
「………………」
コイツ…自分は今さっき人に向かってスキルぶっ放してきたくせしやがって。
よくもまあそんなことが言えたもんだよ…。
「ならさっきのスキルはなんだ…今の日本の法律なら何の理由もなく人間に、いやったとえ理由があったとしても他人にスキルを発動することは基本的に犯罪になることはわかってるよな?」
「黙れっ! 馬鹿か貴様は、私と貴様では立場が違うと言ったはずだ。私の方はいくらでも罪をもみ消すことが出来る、そして貴様は貴様が犯した罪も犯していない罪でもでっち上げることすら簡単なんだよー!」
「……ゲスが」
私は黒山の横顔を蹴り飛ばした。
ちょうど蹴りやすい位置にあったからだ。
「きっ貴様、また暴力を振るったなっ!? これ以上罪を重ねるなどどういうつもりだ!」
「どういうつもりも何もない、私はただお前の言う私の罪をでっち上げるだの自分の罪をもみ消すだの、そういう下らないことをしようだなんて思わないように少々厳しく教育をしてあげようとしているだけだが?」
「貴様 ……気でもふれたのかっ!?」
黒山を更に蹴り飛ばす。
吹っ飛ばされて転がりながらもこちらを睨む黒山のその目には殺意が込められていた。
「くっくそが、クソがっ! これだから社会の底辺でしか生きられないクズは、自分の気に入らないことがあるとすぐに暴力に訴える。人間の姿をした猿が、恥ずかしいと思わないのか!? 生きている事自体が社会の恥なゴミ共がっ!」
ごちゃごちゃとうるさいな~と思いながら黒山の方に数歩を近づく私だ。
「…暴力を振るわれるのは嫌か?」
「あっ当たり前だ! バカが貴様は!?」
「…何で嫌なんだ? 痛いからか?」
「お前、私を舐めてるのか……?」
「黒山、いまお前が受けている暴力はお前が月城さんにしたものなんだ、違うのは立場を使ったかどうかくらいか…それはな、暴力と全く同じものなんだよ」
「何を言ってるんだ貴様は…」
何も理解できないという訳か。
仕方がないので少し教えてやろう。
「相手が碌に反撃する力もない、それを分かっていながら一方的に相手だけを攻撃する。お前が月城さんにして、そして今…私にされている事はそういう事だろ? そんな低度の事もお前は分からないのか?」
「ふざけるなぁあっ! 私があの月城と言う女にした行動と貴様の振るうこの暴力が同じだと!?」
同じなんだよ。
自分が相手から反撃されない、否定されない、抵抗されない。
そうわかっている相手に一方的に自分の我だけを押し付ける、それが暴力と言わないで何と言うんだ。
「あの月城は、この私が目をかけてやったのにそれを袖にした! 更に貴様と言う金づるを利用する事にすら異を唱えた! そんな役立たずの駒《こま》など使い捨てにして何がぶっ!?」
あっふざけた事を叫び出したのでまた顔面を蹴り飛ばしてしまった、しかも強めに、ちょっと反省。
「黒山、確かにお前は立場のある人間だ。だったら覚えておけよ、お前が言う社会的な立場というのは抜き身の刃物と同じ凶器なんだぞ」
「立場が凶器……だと?」
「現にお前は立場を利用した一方的な圧力が月城さんをどれだけ追い詰めたと思っている? 彼女がどれだけ苦しんだか何一つ理解できないのか?」
悪意を持って振るわれれば暴力だろうが立場だろうが相手を傷つけ、苦しめ、そして時には命すら奪う。
社会的な立場というのはそれだけ恐るべき凶器なのだ、こういう人間はその凶器を何の危険性も理解せず平然と振り回し、人に突きつける。
そして弱い立場にいる人たちの人生を踏み躙《にじ》る……。
「黒山……この質問にだけは答えてくれませんか?」
私は腰を下ろし、黒山と目線をできるだけ合わせてから質問をした。
「お前はその立場と根回しや権力やコネとやらで、一体どれだけの人間を不幸にしてきたんですか?」
「くっくだらない……邪魔だから排除してきた人間の数などいちいち数えると思うか!?」
「…………そうですか」
私は力を込めた右ストレートを黒山の顔面にかました。
やつの体が面白いようにトイレの床を転げまわる。
私も社会人にだったから黒山みたいな人間には見覚えがある。
なぜお前らみたいな人間は人を不幸にして何も感じないんだ。
なぜ平然と人を追い込んで笑っていられる。
なぜ当然のように他者に苦労を強いて自分は楽な道を歩いて行ける。
なぜ人の人生を踏みにじって…平然と自分は真っ当な人間ですみたいな顔ができるんだ。
抗えない立場で故意に相手を貶めて人格を否定し、自分たちにとって都合の良い人間に作り変える手法は追い出し部屋だけじゃない、今の社会ではいくらでも聞く話だ。
ひと昔前に横行した違法取り調べや今もある体育会系学校のノリや企業組織の一般的な良識を無視した独自ルール、ブラック企業の圧迫面接や異常な新人教育などなど。
その人間のこれまでの人生を否定し、強制的にカーストの最底辺に叩き落とし、思考さえ奪い働くだけの人形に作り変える。
そんな真似をなんの罪の意識もなく行う人間がこの社会の上の方にはいる。
そんな重い罪を皆がしてたから、それまでも続けてきたから、それが伝統だからとまるで至極当然の事だと舐め腐った事を口にする人間がいる。
…本当はただ自分より上の人間にゴミのような忖度をしてるだけのくせに。
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