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❸ ヲタクの貴公子
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「初版本が…ない?!」
街の古本屋に随分前から頼んでいた本が、今更になって手に入らなかった、と(死刑宣告)された。
なんてことだ…この日を待ち侘びて毎日暮らしていたというのに。(涙)
毎日辛くとも生き長らえてきたというのに何たる不幸!
ない物をあると言った店員(バイト)に殺意が湧くも、仕方がない。大人の僕が諦めようではないか…。
とぼとぼと帰路に着く。すると前方から聞き覚えのある声が。
「ハニー!念願の本は手に入ったかーい?」
周りの人が一斉に振り向く。
「ライアン、ハニーって呼ぶの外では禁止って言ったじゃないか、」
「…良いじゃないか。ハニーに間違いないし。」
横を通過した女子二人がニヤニヤしながら見てきた。確実に(あっち)だと思われている。
「ほ、本名で…お願いしますよ。」
「良いの?本名で良いのね?」
ライアンの顔もニヤける。
「権田原 蜂太郎くん。ぷっ」
この国には珍しい…僕の代では珍しい漢字をあてた、ちょっと前に流行った形式。それにしても(蜂太郎)はいなかっただろう。名前を付けたお祖父ちゃんを恨む…。(泣)
「ハチって呼んでよ。ふだんからそう言ってるじゃないか。」
「わかった、わかったよ。で、本は?」
両手の空いた蜂太郎を見てライアンが聞く。
「それが…手に入らなかったんだ…うぅっ」
「な、泣くなよ!たかが本だろ?探せば何処かにあるよ。…なっ!」
「ないよ!ないんだよ!あの古本屋だってここら辺では…本屋の中では取り扱いがいちばんなんだよ!なのに、半年以上待っても誰も売らない…。初版本があるなんて舞い上がって、バカみたいだ。」
「なぁ、その本って、(美☆黒髪きらめき少女~良い香りん~)の第一巻だよね…。」
「そうさ…あの時は全然人気がなかったのに、今では人気に火が付きプレミア物なんだ。値段だけじゃない、今とは違う絵のタッチ、キャラ設定の曖昧さが評価を得ていて、作者の処女作ということもあいまって…その作者の現在連載中の(艶☆金髪さらさら少、」
「わかったわかったわかった。ハチ、周りを見ろ。俺がハニーって呼んだ時より…ヤバいぞ。」
はっ!と我に返り周囲を見渡すと、さっきとは違う嫌な視線を感じる。…やってしまった…(汗)
「ショックなのはわかったよ。それは取り敢えず置いといてだな、これ。ハチのとこにも届いてるだろ?」
ライアンが白い封筒を差し出してきた。
「新花実結舞踏会(にいはなじつゆうぶとうかい)、国挙げての合コンだ。」
「え?」
「ハチも参加だ。俺は桜の招待者、ハチは白百合の招待者になってるはずだ。」
「…ご、合コンなんて、無理無理無理無理、」
「出席しないと捕まるぞ。」
…まさか。
「着て行く物はあるのか?何処のテーラーも激混みだ。早く行かなきゃ半月後に間に合わない。」
「えっ!?そ、そんな急に言われても、」
「向日葵王はいつも(急)だろ?良い服着て、かおりんみたいな女の子探しに行こうやぁ!」
「か、かおりんいるの?!」
白百合の息子 権田原 蜂太郎(ごんだわら はちたろう)は、今日十九歳の誕生日を迎えた。
街の古本屋に随分前から頼んでいた本が、今更になって手に入らなかった、と(死刑宣告)された。
なんてことだ…この日を待ち侘びて毎日暮らしていたというのに。(涙)
毎日辛くとも生き長らえてきたというのに何たる不幸!
ない物をあると言った店員(バイト)に殺意が湧くも、仕方がない。大人の僕が諦めようではないか…。
とぼとぼと帰路に着く。すると前方から聞き覚えのある声が。
「ハニー!念願の本は手に入ったかーい?」
周りの人が一斉に振り向く。
「ライアン、ハニーって呼ぶの外では禁止って言ったじゃないか、」
「…良いじゃないか。ハニーに間違いないし。」
横を通過した女子二人がニヤニヤしながら見てきた。確実に(あっち)だと思われている。
「ほ、本名で…お願いしますよ。」
「良いの?本名で良いのね?」
ライアンの顔もニヤける。
「権田原 蜂太郎くん。ぷっ」
この国には珍しい…僕の代では珍しい漢字をあてた、ちょっと前に流行った形式。それにしても(蜂太郎)はいなかっただろう。名前を付けたお祖父ちゃんを恨む…。(泣)
「ハチって呼んでよ。ふだんからそう言ってるじゃないか。」
「わかった、わかったよ。で、本は?」
両手の空いた蜂太郎を見てライアンが聞く。
「それが…手に入らなかったんだ…うぅっ」
「な、泣くなよ!たかが本だろ?探せば何処かにあるよ。…なっ!」
「ないよ!ないんだよ!あの古本屋だってここら辺では…本屋の中では取り扱いがいちばんなんだよ!なのに、半年以上待っても誰も売らない…。初版本があるなんて舞い上がって、バカみたいだ。」
「なぁ、その本って、(美☆黒髪きらめき少女~良い香りん~)の第一巻だよね…。」
「そうさ…あの時は全然人気がなかったのに、今では人気に火が付きプレミア物なんだ。値段だけじゃない、今とは違う絵のタッチ、キャラ設定の曖昧さが評価を得ていて、作者の処女作ということもあいまって…その作者の現在連載中の(艶☆金髪さらさら少、」
「わかったわかったわかった。ハチ、周りを見ろ。俺がハニーって呼んだ時より…ヤバいぞ。」
はっ!と我に返り周囲を見渡すと、さっきとは違う嫌な視線を感じる。…やってしまった…(汗)
「ショックなのはわかったよ。それは取り敢えず置いといてだな、これ。ハチのとこにも届いてるだろ?」
ライアンが白い封筒を差し出してきた。
「新花実結舞踏会(にいはなじつゆうぶとうかい)、国挙げての合コンだ。」
「え?」
「ハチも参加だ。俺は桜の招待者、ハチは白百合の招待者になってるはずだ。」
「…ご、合コンなんて、無理無理無理無理、」
「出席しないと捕まるぞ。」
…まさか。
「着て行く物はあるのか?何処のテーラーも激混みだ。早く行かなきゃ半月後に間に合わない。」
「えっ!?そ、そんな急に言われても、」
「向日葵王はいつも(急)だろ?良い服着て、かおりんみたいな女の子探しに行こうやぁ!」
「か、かおりんいるの?!」
白百合の息子 権田原 蜂太郎(ごんだわら はちたろう)は、今日十九歳の誕生日を迎えた。
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