咲き誇る陰で、

藤岡 志眞子

文字の大きさ
17 / 40

17 レオ様

しおりを挟む
「ごきげんよう、」

「ご、ごきげんよう…。」

ガーデンパーティから十日後。牡丹の名家、ディゴリー家の長男誕生パーティに招待された二人はよそよそしく挨拶を交わした。
今日のコーラルのドレスは黄色のタイトなドレス。蜂太郎は母親に見繕われた白と緑の細いストライプのスーツ。胸元には玄関ポーチで配られた黄色のガーベラの花が飾られている。コーラルも手元にピンクのガーベラを持ち、所在なさげにくるくると弄ぶ。

「ディゴリー様、五十歳手前の待望の男児なんですって。六人も女の子で…」

そんな話が後ろのマダム達から聞こえてきた。

「ハチ…蜂太郎様はご兄弟はいらっしゃるの?」

公然では丁寧な言葉遣いを心掛けなければならない…窮屈だ。
あれから一回、あのカフェに行く約束をしたが僕の大学の講義が延びて行くことは叶わなかった。そのことで怒っているのでは?と、ビビっていたけど、そんなことはない…みたい。

「僕にはひとり十歳離れた兄がいて。今年二十九歳です。」

「お兄様がいらっしゃるの?ご職業は何を?」

「大学病院で医者をしております。」

「…え?医者ってそんなに若くしてなれるものなの?(医者って爺になってなれるものよね?←勘違い)」

「兄は僕と違って優秀で、医学部も四年で卒業しまして。父の勤める大学病院で医者をしております。」

「そうなの…ご、ご結婚は?」

「大学を卒業してすぐに結婚しまして。今は五人の父親です。」

「あら、子沢山ね。蜂太郎さんとは似ているのかしら?」

「い、いえ…あまり。実は、兄は母さんの連れ子で…。お父さん似、と本人も言っております。」

「ご、ごめんなさいね。変なこと聞いちゃって、」

「いえ、有名な話ですよ…白百合では(笑)。コーラルさんはご兄弟はいらっしゃるんですか?」

「あ、姉が(デブスの。)ひとりいるわ。こっちも、いろいろあって出戻ってきてね。せっかく結婚したっていうのに困ったものだわ。」

…私が結婚しないとダメなのよね。

…僕が結婚しないと駄目なんだよな。

沈黙が流れ、お互い持ったグラスに口を付ける。

「コーラル!?」

会場中響くような大声でコーラルの名前を呼ぶ声がした。声のする方を振り向いたコーラルの表情が、固まった。




「レオナルド…、」

レオナルド…?

「コーラル!まさか会えるなんて!久しぶりだなぁ、随分大人になって。綺麗だよ。」

綺麗だよ、なんてサラッと言えちゃうこの男は…?

「大人になったなんて…。まだ二年じゃない、いつ帰国したの?」

帰国?

「一昨日ね。連絡するより先に会えるなんて。ほら、俺ディゴリー様の息子さんと仕事をすることになったって。先月手紙を送ったじゃないか。」

手紙。

レオナルドという青年は僕よりいくらか背が高く、綺麗な金髪に緑色の目。鼻が高く、いつかの、船が沈没する映画の主人公のような名前と見た目であった。

イケメンだ…。

会場中の女性達もガン見している。しかし、コーラルさんとの関係を知っているようでコソコソ眉根を寄せて噂話をするような感じはしなかった。

「読んだけど、ご長兄の誕生パーティには待に合わないみたいなことも書いてたじゃない。」

「それが船が順調に進んでね。思ったより早く着いたんだよ。」

そういってガバッとコーラルさんを抱きしめた。レオナルドの肩越しにコーラルさんと目が合った。気不味そうな表情をしていたが、目は嬉しそうだ。

誰なのだろう。

「レオナルド…ゆ、ユリア様はどちらにいらっしゃるの?一緒に来てるんでしょ。」

「ユリアは…俺の帰国が待てない、と一年後に婚約破棄を願い出てきてね。だから、俺はフリーだ。」

「え!?そ、そんなこと聞いてないわ!ユリア様だってふつうに学校に来ていたし、」

「そうか、ユリアはコーラルと同じ学校だったね。でも心配いらないよ、来年卒業だろ?もし気不味かったら転校するか、それか…」

「?」

レオナルドがコーラルさんに膝まずき、王子様のようにコーラルさんの手を取った。

「コーラル、俺と結婚しないか?」

衝撃的な展開とは裏腹に、しん、と静まり返った会場の人々はふたりではなくレオナルドの背後にいる僕に一斉に視線を向ける。

何いぃぃぃいぃっ!?

「…は。」

コーラルさん…そのイケメンと婚約しちゃうんですかぁあぁ!?




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。 今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。 家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。 だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?

#秒恋9 初めてのキスは、甘い別れと、確かな希望

ReN
恋愛
春休みが明け、それぞれに、新しい生活に足を踏み入れた悠里と剛士。 学校に向かう悠里の目の前に、1つ年下の幼なじみ アキラが現れる。 小学校時代に引っ越した彼だったが、高校受験をし、近隣の北高校に入学したのだ。 戻ってきたアキラの目的はもちろん、悠里と再会することだった。 悠里とアキラが再会し、仲良く話している とき、運悪く、剛士と拓真が鉢合わせ。 「俺には関係ない」 緊張感漂う空気の中、剛士の言い放った冷たい言葉。 絶望感に包まれる悠里に対し、拓真は剛士に激怒。 拗れていく友情をよそに、アキラは剛士をライバルと認識し、暴走していく―― 悠里から離れていく、剛士の本心は? アキラから猛烈なアピールを受ける悠里は、何を思う? いまは、傍にいられない。 でも本当は、気持ちは、変わらない。 いつか――迎えに来てくれる? 約束は、お互いを縛りつけてしまうから、口にはできない。 それでも、好きでいたい。 いつか、を信じて。

国宝級イケメンとのキスは、最上級に甘いドルチェみたいに私をとろけさせます♡ 〈Dulcisシリーズ〉

はなたろう
恋愛
人気アイドルとの秘密の恋愛♡コウキは俳優やモデルとしても活躍するアイドル。クールで優しいけど、ベッドでは少し意地悪でやきもちやき。彼女の美咲を溺愛し、他の男に取られないかと不安になることも。出会いから交際を経て、甘いキスで溶ける日々の物語。 ★みなさまの心にいる、推しを思いながら読んでください ◆出会い編あらすじ 毎日同じ、変わらない。都会の片隅にある植物園で働く美咲。 そこに毎週やってくる、おしゃれで長身の男性。カメラが趣味らい。この日は初めて会話をしたけど、ちょっと変わった人だなーと思っていた。 まさか、その彼が人気アイドル、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーだとは気づきもしなかった。 毎日同じだと思っていた日常、ついに変わるときがきた。 ◆登場人物 佐倉 美咲(25) 公園の管理運営企業に勤める。植物園のスタッフから本社の企画営業部へ異動 天見 光季(27) 人気アイドルグループ、dulcis(ドゥルキス)のメンバー。俳優業で活躍中、自然の写真を撮るのが趣味 お読みいただきありがとうございます! ★番外編はこちらに集約してます。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/693947517 ★最年少、甘えん坊ケイタとバツイチ×アラサーの恋愛はじめました。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/411579529/408954279

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...