Brain Nunber

藤岡 志眞子

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number.15 多様性への圧迫

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玲子は極秘で自らの脳のCTスキャンを行った。結果、脳の表面に数列が写った。記憶がない時に印字されたのだろう。
すぐにその数列を絵菜の元へ送る。
半日後、第四ロックは解除された。手の込んだことを…小皆教授は生まれてくる子供のためにそうしたのか、それとも計画の阻止のために行っていたのか…。
あのメッセージは小皆教授が送っているに違いない。ブレインナンバーを使わせたくないのであれば、メッセージを送らなければよいはずなのに。自分の子供を利用してまで遂行したい何かがあるのだろうか…?

(ベース)

地下室に降りて二ヶ月半。やっと地上に戻ってきた。ふたりとも疲労困憊で二日二晩眠り続けた。目が覚めたらものすごい空腹に襲われ、残っていた食糧を全て食べ尽くした。
蓮原に連絡して持って来てもらわないと、と思っていたら蓮原がやって来た。

「お疲れ様。絵菜、よく頑張ったわね、次のミッションまで暫く休むといいわ。然も本社に戻って休息できるように話しておいたから、ゆっくり休んでちょうだい。」

助かった、これ以上働いたら何かが切れそうだった。

「午後に奏、然の弟が来るから、絵菜も奏のいる間はゆっくりしてね。」

奏。あいつだったら絵菜もリラックスできるだろう。いい意味であいつは一緒にいると気を遣わない。…たまにイライラするが。

蓮原は持ってきた大きなスーツケースから大量の衣類を出し絵菜に渡した。

「着替えよ。随分長いこと同じ服を着ていたみたいね。お風呂に入って着替えなさい。」

「ありがとうございます。」

絵菜は衣類を抱えて二階の自室に向かった。自室にはお風呂とトイレがある。オレ達が使っている部屋より立派だ。地下室と同じ、スタッフは質素である。
蓮原とふたりになり、話を切り出す。

「ヒントのあの数列、どこで見つけたんですか。」

「…私の脳よ。」

「記憶…ですか?」

「脳の表面に印字されていたの。」

そんなことして大丈夫なのだろうか。

「小皆教授の仕業ですか。」

「多分ね。小皆教授は天才だから…天才過ぎて周りに受け入れてもらえず孤立していたけど。認められてはいない人だったけど、実際ブレインナンバーを作った人だしね。」

…何が言いたいんだ?サイコパスだけど、すごい奴って事か?いや、記憶を消されて子供まで産まされて…クソみたいな奴じゃないか。

「蓮原さんは、小皆教授を慕っていたんですか。」

「覚えてる記憶では、愛してたと思う。」

愛してた…。

「絵菜は本当に小皆教授の子供なんですか。」

「あの独特な計算方法は小皆教授のものだと断言できるし。小皆教授は医療、薬事をする前は数学者を目指してたのよ。その方が良かったのかもしれないわね…」

「ルクシュクが教えただけかもしれない。蓮原さんの子供でもなく、小皆教授の子供でもないかもしれない、ということはないんですか。」

「ルクシュクは紛争地域の国の人で、教育も不十分だったし、数学が得意だったとは聞いてないわ。亡命して、リリーグループにアルバイトとして雇われて…研究室の補助員として働いていたの。言葉も通じないし、簡単な仕事しかできなかったって。」

「ルクシュクと小皆教授の接点は研究室だったんですね。」

「…言葉は通じなくても、ふたりは愛し合ってたし。」

「え、」

「私が研究室にきた頃にはルクシュクは別の国に行ってしまった後だったけれど、ふたりの話は有名でね。海外に行ってからも拙い言葉で連絡を取り合ってたんじゃないかしら?」

「だったら尚更絵菜はルクシュクの子供だったんじゃ?」

「ルクシュクは空爆で怪我をした時、治療の際に細菌感染を起こして、子供が産めない身体になっていたそうよ。それに、」

「………。」

「DNA鑑定で九九,九%、親子と出たわ。父親も、小皆 要士郎のDNAデータと照合し間違いなかった。」

「何のために子供を…。」

「多分だけど、私を実験台として使う前に妊娠がわかったんだと思う。きっと私は堕ろすと言って、小皆教授は…そうではなかった。記憶を書き換えて違う人生を歩んでいたことにして産ませて、産んだ後に更に都合よく書き換えたんだわ。」

違う人生。結婚して、望んでいた妊娠にしたとか?

「子供はいれば将来何かに使えると踏んでいたんだと思う。実際、今大活躍なんだけどね。」

「ブレインナンバーを再始動するために?」

「…再始動。何故かしらね?嫌になって行方を眩ませているのに。」

「何故嫌になったんだ?」

「……何故かしらね。」

何か知ってる。何があるんだ?

「そもそもブレインナンバーの説明をオレ達はされていない。何をする機械なんだ?」

「脳の、使用率向上を試みる装置よ。」

「使用率を上げるのに、なぜ記憶が飛ぶんだ?」

「途中で嫌だと駄々を捏ねられたら迷惑じゃない。」

「そしたらやめればいいだろ?」

「効率よく実験したかったのよ。」

「なら、やりたいと言う奴にやらせればいいじゃないか。なぜ希望しない蓮原さんを実験台に使うんだ?」

「……面倒くさいわね。わかったわ、言うわよ、」

キレた。

「あなたも、ブレインナンバー計画の実験に参加しているのよ。」

「……は、?」

オレ、も?

「グラジオラスにいた時、毒入りの食事を摂っていたと思うけど、毒の中にはブレインナンバーの実験結果と同じ効果が得られる薬もあったの。複数人に投薬して結果が著しく出た者に継続して実験を遂行したわ。そして五人の子供が残った。あなたはその一人、BNC.7よ。」

吹っ切れたように秘密事項をべらべらしゃべった。

「BNC.7…とは、」

「BNCは投薬実験を行った子供の名称。BN.7はカテゴリーナンバー。私達は(奴隷)と読んでいるわ。個性や独創性、価値観や違和感を取り除き、希望の人物に仕立て上げる。そして、八つのカテゴリーに分け働かせるの。その判断は上が決める、本人の意思は尊重されない。あなたは、上の者に従順に従うようプログラミングされたBN.7に振り分けられ、将来他のカテゴリーに、奏と同じく上書きする予定なのよ。」

は。何を聞かされているのか、わからない。
オレも、蓮原と同じで記憶を書き換えられているのか…?

「あなた、グラジオラスにいた時、女の子を妊娠させたわよね?」

「…死んだ女か?」

「死んだ時、悲しかった?」

………。

「BN.7になる前のあなたは、女性に興味がなかった。興味があったのは男性、同性愛者だったのよ。」

「な、何を言って…」

「効果が出ているのか試したのよ。そしたらそのようになった。しかし、BN.7の効果で恋愛感情や悲壮感、罪悪感は全く感じないようになっている。今のあなたには当たり前、これが自分だと思っているかもしれないけど。」

「う、嘘だ。そんなこと…」

「あなたはね、リウが好きだったのよ。」

満面の笑みで話をする蓮原は気味が悪い。
オレは、嫌悪感で死にそうだ。

カタッ

………?

「それ、本当の話…?」

風呂上がりの絵菜がリビングの入り口にいた。
最後の部分だけは聞かれたくなかった…。

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