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number. 22 Lucky
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目が覚めると見慣れない天井があった。
高く、紫色の細長いガラスの飾りが螺旋状に吊るされている。真ん中には証明が付いていて光が反射して紫色の光がキラキラしている。
ここは、どこだろう。
大きなベッド…クリーム色のシルクのシーツに枕、羽布団が掛けられていた。着ているナイトドレスも薄紫色のさらさらしたシルク製。部屋全体は円形で、真ん中にベッドがあるのみ。頭の方にアーチ型の大きな窓があり、紫色のカーテンが掛かっていた。
窓と反対、足元にはドアのない出入り口。ソファが置いてある白を基調としたリビングが見えた。
ベッドから降りて足元にあったサンダルを履く。コツコツと音をさせながらリビングに行く。誰もいない。
リビングも同様天井が高く、色は違えど同じような照明が二箇所吊るされていた。左側は床から天井、左端から右端全面ガラス張りの大窓がある。部屋の白さと日の光で目が開けられないほど眩しい。
レースのカーテンをめくり外を見る。相当高いようで、眼下に見える街並みはうっすら雲がかかっていた。
寝室の出入り口右にキッチンと小さなダイニングテーブル、椅子二脚。キッチンの横にふたつの扉。ひとつはトイレとお風呂に繋がっていて、もうひとつの扉は大きく重厚な造りで扉横には小さなモニターが付いていた。出口はここか?ほかに扉は見当たらない。
扉には取手はない。手を付き押してみる。もちろんびくともしなかった。
モニターに付いているボタンを押してみた、無反応。
…?
ピンポーン
!
扉が内側に開く。現れたのは背の高い、きれいな顔の男の人。…誰だろう?
「よく眠れた?昨日のパーティ、疲れたでしょ?食事を持ってきたから一緒に食べよう。」
…パーティ?
男の話では、私はこの人と結婚をしていてこの部屋で暮らしているという。
外に出たいと言ったら、外は大気汚染が深刻で今は出られないと言った。食事も建物内のレストランが作って毎食届けてくれるし、衣服も新しい物をスタッフが用意してくれるということで、この部屋から出る必要はないと言った。
そんなことが起こっていたのか…?私はいつからこのような生活を…?
記憶がないと伝えたら、昨日のパーティで私は倒れたと聞かされた。ちょっと前のことを忘れてしまったんだね、と笑いながら言われたが、ちょっと前どころか男のことも、それ以前のこともさっぱり覚えていない。
「大丈夫、心配いらないよ。ゆっくり思い出していけばいいから。」
優しい言葉に聞こえたが、記憶喪失の私に慌てることなく冷静でいられるこの男は、何なんだろう…。
男は困惑する絵菜を抱きしめキスをする。だんだんと激しくなっていき、そのままソファに押し倒された。
前にも、あったような気がする…
夫というこの男に抱かれながら、違和感と恐怖に苛まれた。
(数日前、ロサ製薬 社長室)
「赤居 美島は君の母親だ。」
「…存じております。」
「そうか、なら話は早い。私は美島の世話をしたかった。しかし、小皆教授が消えたことにより不可能になった。タンクから出られたとしても、元の美島ではない。なので、せめて美島の息子、君の世話をしたい。そして、私にプレゼントを贈って欲しい。」
「………。」
「私は結婚しているが、子供に恵まれなかった。養子を考えたこともあったが、妻が許さなくてね。美島に養子に出した子供がいることは知っていた。出会えたら妻を説き伏せて養子にしようと思っていたのだが、とうとう見つからなくてね。でも、今、目の前にいる。まさか、グラジオラスにいたなんて…お兄さんによく似ているけど、一卵性だったのかな?」
「似ているでしょうか、全く別物ですよ。」
「…嫌だったのなら申し訳ない。」
「いえ。…あの、改めてリリーグループにいられなくなった僕を、匿ってくれてありがとうございます。ブレインナンバーの知っている限りの情報は提供いたします…その、プレゼントとは情報以外のミッションをするということでしょうか?」
「かんたんだ、絵菜と子供を作って欲しい。」
「…子供が欲しいのですか。」
「君は美島の血を引き、絵菜は天才研究者の小皆教授の娘の子供になる。私の養子にしてロサ製薬の後継者にしたい。…君が希望するのなら、君の次になる予定でも構わないよ。」
「絵菜は小皆教授の子供なのですか?」
「そうだよ。知らないで一緒にいたのか?ちなみに母親は蓮原 玲子だ。絵菜は優秀な遺伝子の持ち主なんだよ。」
男に興味なさそうな態度をとっていたのに、しっかり子供を作ってたなんて。やっぱり蓮原さんも、天才といわれた小皆教授も人間なんだな…。
好きな女の子供と、優秀な遺伝子を受け継ぐ希少な子供。その間に生まれる子供を育てたい…か。
…まぁ、作るのは僕だけど、育てるのは梅田さんだ。
「わかりました、プレゼントいたします。」
「君はお兄さんと違って正常みたいだから、女に対しての嫌悪感はないよね?」
兄がゲイだったことも知ってるのか。知らないのは本人だけなのかな…笑える。
「はい。女の子は、好きです。」
「そうか、なら頑張ってくれ。ひとりでいいから。妊娠したら君は自由だ。」
楽勝。
「ありがとうございます。」
ロサ製薬の本社ビルに隣接するホテルの一室で新婚生活(?)はスタートした。
地下室で理性が吹っ飛び、大切なキーパーソンに身体的精神的に大きなダメージを負わせてしまった。冷静になってからとんでもないことをしてしまったと後悔したが、もう遅い。地下室に降りて絵菜を診る。…駄目だ、ショック性の記憶喪失、高熱と脱水症状を長い時間放置したことによる衰弱がみられる。
蓮原さんに連絡しようにも連絡したら僕が危ない。どうしよう…。
ふと、棗の件を思い出した。すぐに絵菜を抱えてクルマに乗り込み梅田邸に急いだ。携帯電話を捨て、耳下に埋め込まれたチップをナイフで無理矢理取り除く。思ったより出血し、梅田邸に着く頃には痛みと大量出血で意識は朦朧としていた。
空き地にクルマを停めて梅田さんの帰宅を待ち、家に灯りが付いたのを確認して尋ねた。血塗れの知らない男が訪ねてきたら怪しいに決まってる…侵入して脅して匿ってもらおうかと思ったが、そんな体力はもうなかった。駄目が元々、インターホンを押す。暫く応答がなかったので無理か…と諦めた時、門が開き梅田さん本人が出てきた。
「グラジオラスの、奏君だよね?」
僕のことを知っていた。事情を話し、クルマに絵菜がいることも伝えた。すると、自ら絵菜をクルマから下ろし、絵菜と僕を家に招き入れてくれた。
梅田邸に置いてもらい、耳下の怪我の手当もしてくれた。ほどなくして僕達の失踪がリリーグループに知れた。このまま梅田邸にいるのは危険、と梅田さんが部屋を用意してくれた。なぜここまでしてくれるのだろう…。
その理由はさっきの通りだ。
僕はロサ製薬のため、いや、梅田さんのためにほんの少し協力することにした。このミッションが終われば自由を手にできる。ずっとリリーグループにいたらなし得なかったことだろう。
僕はラッキーだ、最高だ。
自由になったら何をしよう…?
生まれて初めて、自分の未来について考えた。
高く、紫色の細長いガラスの飾りが螺旋状に吊るされている。真ん中には証明が付いていて光が反射して紫色の光がキラキラしている。
ここは、どこだろう。
大きなベッド…クリーム色のシルクのシーツに枕、羽布団が掛けられていた。着ているナイトドレスも薄紫色のさらさらしたシルク製。部屋全体は円形で、真ん中にベッドがあるのみ。頭の方にアーチ型の大きな窓があり、紫色のカーテンが掛かっていた。
窓と反対、足元にはドアのない出入り口。ソファが置いてある白を基調としたリビングが見えた。
ベッドから降りて足元にあったサンダルを履く。コツコツと音をさせながらリビングに行く。誰もいない。
リビングも同様天井が高く、色は違えど同じような照明が二箇所吊るされていた。左側は床から天井、左端から右端全面ガラス張りの大窓がある。部屋の白さと日の光で目が開けられないほど眩しい。
レースのカーテンをめくり外を見る。相当高いようで、眼下に見える街並みはうっすら雲がかかっていた。
寝室の出入り口右にキッチンと小さなダイニングテーブル、椅子二脚。キッチンの横にふたつの扉。ひとつはトイレとお風呂に繋がっていて、もうひとつの扉は大きく重厚な造りで扉横には小さなモニターが付いていた。出口はここか?ほかに扉は見当たらない。
扉には取手はない。手を付き押してみる。もちろんびくともしなかった。
モニターに付いているボタンを押してみた、無反応。
…?
ピンポーン
!
扉が内側に開く。現れたのは背の高い、きれいな顔の男の人。…誰だろう?
「よく眠れた?昨日のパーティ、疲れたでしょ?食事を持ってきたから一緒に食べよう。」
…パーティ?
男の話では、私はこの人と結婚をしていてこの部屋で暮らしているという。
外に出たいと言ったら、外は大気汚染が深刻で今は出られないと言った。食事も建物内のレストランが作って毎食届けてくれるし、衣服も新しい物をスタッフが用意してくれるということで、この部屋から出る必要はないと言った。
そんなことが起こっていたのか…?私はいつからこのような生活を…?
記憶がないと伝えたら、昨日のパーティで私は倒れたと聞かされた。ちょっと前のことを忘れてしまったんだね、と笑いながら言われたが、ちょっと前どころか男のことも、それ以前のこともさっぱり覚えていない。
「大丈夫、心配いらないよ。ゆっくり思い出していけばいいから。」
優しい言葉に聞こえたが、記憶喪失の私に慌てることなく冷静でいられるこの男は、何なんだろう…。
男は困惑する絵菜を抱きしめキスをする。だんだんと激しくなっていき、そのままソファに押し倒された。
前にも、あったような気がする…
夫というこの男に抱かれながら、違和感と恐怖に苛まれた。
(数日前、ロサ製薬 社長室)
「赤居 美島は君の母親だ。」
「…存じております。」
「そうか、なら話は早い。私は美島の世話をしたかった。しかし、小皆教授が消えたことにより不可能になった。タンクから出られたとしても、元の美島ではない。なので、せめて美島の息子、君の世話をしたい。そして、私にプレゼントを贈って欲しい。」
「………。」
「私は結婚しているが、子供に恵まれなかった。養子を考えたこともあったが、妻が許さなくてね。美島に養子に出した子供がいることは知っていた。出会えたら妻を説き伏せて養子にしようと思っていたのだが、とうとう見つからなくてね。でも、今、目の前にいる。まさか、グラジオラスにいたなんて…お兄さんによく似ているけど、一卵性だったのかな?」
「似ているでしょうか、全く別物ですよ。」
「…嫌だったのなら申し訳ない。」
「いえ。…あの、改めてリリーグループにいられなくなった僕を、匿ってくれてありがとうございます。ブレインナンバーの知っている限りの情報は提供いたします…その、プレゼントとは情報以外のミッションをするということでしょうか?」
「かんたんだ、絵菜と子供を作って欲しい。」
「…子供が欲しいのですか。」
「君は美島の血を引き、絵菜は天才研究者の小皆教授の娘の子供になる。私の養子にしてロサ製薬の後継者にしたい。…君が希望するのなら、君の次になる予定でも構わないよ。」
「絵菜は小皆教授の子供なのですか?」
「そうだよ。知らないで一緒にいたのか?ちなみに母親は蓮原 玲子だ。絵菜は優秀な遺伝子の持ち主なんだよ。」
男に興味なさそうな態度をとっていたのに、しっかり子供を作ってたなんて。やっぱり蓮原さんも、天才といわれた小皆教授も人間なんだな…。
好きな女の子供と、優秀な遺伝子を受け継ぐ希少な子供。その間に生まれる子供を育てたい…か。
…まぁ、作るのは僕だけど、育てるのは梅田さんだ。
「わかりました、プレゼントいたします。」
「君はお兄さんと違って正常みたいだから、女に対しての嫌悪感はないよね?」
兄がゲイだったことも知ってるのか。知らないのは本人だけなのかな…笑える。
「はい。女の子は、好きです。」
「そうか、なら頑張ってくれ。ひとりでいいから。妊娠したら君は自由だ。」
楽勝。
「ありがとうございます。」
ロサ製薬の本社ビルに隣接するホテルの一室で新婚生活(?)はスタートした。
地下室で理性が吹っ飛び、大切なキーパーソンに身体的精神的に大きなダメージを負わせてしまった。冷静になってからとんでもないことをしてしまったと後悔したが、もう遅い。地下室に降りて絵菜を診る。…駄目だ、ショック性の記憶喪失、高熱と脱水症状を長い時間放置したことによる衰弱がみられる。
蓮原さんに連絡しようにも連絡したら僕が危ない。どうしよう…。
ふと、棗の件を思い出した。すぐに絵菜を抱えてクルマに乗り込み梅田邸に急いだ。携帯電話を捨て、耳下に埋め込まれたチップをナイフで無理矢理取り除く。思ったより出血し、梅田邸に着く頃には痛みと大量出血で意識は朦朧としていた。
空き地にクルマを停めて梅田さんの帰宅を待ち、家に灯りが付いたのを確認して尋ねた。血塗れの知らない男が訪ねてきたら怪しいに決まってる…侵入して脅して匿ってもらおうかと思ったが、そんな体力はもうなかった。駄目が元々、インターホンを押す。暫く応答がなかったので無理か…と諦めた時、門が開き梅田さん本人が出てきた。
「グラジオラスの、奏君だよね?」
僕のことを知っていた。事情を話し、クルマに絵菜がいることも伝えた。すると、自ら絵菜をクルマから下ろし、絵菜と僕を家に招き入れてくれた。
梅田邸に置いてもらい、耳下の怪我の手当もしてくれた。ほどなくして僕達の失踪がリリーグループに知れた。このまま梅田邸にいるのは危険、と梅田さんが部屋を用意してくれた。なぜここまでしてくれるのだろう…。
その理由はさっきの通りだ。
僕はロサ製薬のため、いや、梅田さんのためにほんの少し協力することにした。このミッションが終われば自由を手にできる。ずっとリリーグループにいたらなし得なかったことだろう。
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