Brain Nunber

藤岡 志眞子

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number.24 Noradorenaline/Dopamine

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菊本社長もBrain numberの被害に遭っていた。
もしかしたら、全社員もそうなのではないか?全社員…いや、会社以外の人間も?
小皆教授と交流のある人物、企業をさらった。製薬会社、大学医学教授、アスリート協会、政治家、発明家、芸能事務所…、芸能事務所?
なんだ、このバラエティに富んだ交友関係は。
とにかく、Brain  numberの成分入りのサプリメントがキャンペーンや贈答品などで配布されている可能性がある。配布された者が定期購買している例も多数あった。
もしかして、量販店や薬局で販売されているサプリメントも…?
収集し切れない……。
ブレインナンバーに気を取られ、いちばん食い止めなければいけない案件が野放しになっていた。薬の作用は服用を止めれば薄れていって元に戻る。しかし、依存性のある成分が含まれていたとしたら断薬は容易くはない。
ふと、ブレインナンバーのタイムリミットを見る。
六百三十二日と七時間二十八分。
二年切った。ブレインナンバーが解除できれば何か変わるのか?できなかったら何が起こるのか…。
頭がパンクしそう。


(ロサ製薬 別館)

夫の名前は奏(かなで)。仕事は製薬会社のサラリーマンと聞いた。しかし、大気汚染が深刻で会社に出勤することができず、今は家で仕事をしている。
初め気付かなかったが、リビングにはロフトのような二階スペースが存在していて、梯子を下ろして行き来できるようになっている。奏はその二階で仕事をしている。奏が仕事をしている時はソファに座りテレビを観たり、二階にある仕事スペースの本棚から本を借りて読む、振りをしている。挿絵がある物を選んでいるが、途中から話がわからなくなるので最近はテレビだけの生活になっている。
暇だ。以前もこんな生活をしていたのだろうか。そんな事をもやもやと考えながらトイレに向かう。用を足して立ち上がると自動で流れる。ふと、壁に設置されたボタンの横に赤いランプが付いているのに気付いた。
昨日は緑だったんだけどなぁ…?
その時は不思議に思ったが、トイレを出たら忘れてしまった。
夕方になると、仕事を終えた奏がリビングに降りてくる。そして一緒に食事をしてそれぞれお風呂に入り、寝る前に少し話す。寝室に行き毎晩セックス(というらしい。)をする。
はじめは慣れずに恥ずかしいし痛かった。だけどだんだんそれらは薄れて快感やよろこびに変わっていった。疲れていたり、なんだか億劫な時もあるが、奏は構わず毎晩二、三回は繰り返す。しんどい…。
何のための行為なのかわからないが何か必死で、そんな奏に協力しようと私も頑張っている。
一緒に過ごしていくうちに、私は奏を目で追うようになった。見つめるようになった。笑って欲しくなっていた。
奏も私を見ていることがよくあるし、最初の時より笑顔が増えた。夫婦ってこういうことか。
幸せだぁ…。


「奏、絵菜が明日排卵日だ。今日から一週間、頑張れよ。」

「はい。」

「精力剤、いるか?」

「いりません。」

梅田さんからの電話は毎回下品だ。…少し気を遣ってもらいたい。
共同生活を始めて二ヶ月。一ヶ月でデキると思っていたのに、デキなかった。中に出したら妊娠するんじゃないのか?そう言ったら排卵日を教えると言われた。妊娠しやすい日にちなのだそう。…へぇ。
後は月経という日が三日から一週間、月に一回あるからその日は避けるようにとも言われた。してもデキない日なのだろうか。女の身体は複雑だ。
一日中テレビの前にいる絵菜を見て、暇な人生を送ってるな、と呆れて見ていたが、最近は気にして見るようになっている。…なんか、気になる。
ちょっとした仕草や表情の変化が気になる。
見ているとなんだかモヤモヤやイライラしたものが消える。
見続けていると触りたくなって、キスしたくなる。
別に苦しんだり痛がったりしている訳でもないのに下腹が熱くなる。…僕は病気か?
この前も一緒にソファに座ってフェイクニュースを観ていた。少しずつ寄ってくる絵菜を受け入れ抱きついた状態のまま二、三時間過ごした。今までは隣りに誰か座っていると早く席を立ちたくなったのに…。


(…恋?)

自分で言って全否定したが、その単語がしっくりきていることにショックだった。
僕の初恋…。初恋ってふつうは何歳なんだろう。
遅い方なのかな…みんな恋をしたらどうしているんだろう?
き、嫌われたらどうしよう?いや、そもそも子供を作るために共同生活をしているだけで、任務が終わったら別々だ。
別々…?…もう、会えない?
生まれてくる子供に会えない?いや、会わなくていいだろう、僕が育てる訳じゃないんだし。
でも、絵菜はどうなるんだ?ひとり?
…三人で一緒にいるのは駄目なのかな。

ちょっと待て。
あれ、僕…おかしいぞ?


恋には幸せと感じる成分の分泌を促す効果がある。
薬の効果でもなく、他者からの影響でもない変化が、奏の脳内で爆発し始めていた。





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