星狩る人

仙崎 楓

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最高のものに出会えた瞬間

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 星を狩りたい。
いつ現れるかも分からない一瞬の輝きをこの手の中で永遠に留めていたい。

 うっすらと日の出をほのめかした太陽に瞼を撫でられてオレは目を覚ました。
体を動かした瞬間に寒さを感じて腕を両手でさすった。
横にいたはずの叶多はいつの間にか運転席側に戻って寝息を立てている。
オレが触れることのできる、唯一の星。
見ているだけだともったいなくて、何度かシャッターを切った。
叶多は目を開けようとしない。
凍え死にそうな車の中でよく熟睡できるよな。
オレはカメラだけ手に持つと、叶多を起こさないようにそおっと車から降りた。
強い海風が吹き付けてきて、咄嗟にたじろいだ。
オレは上着のファスナーを閉めると、海に向かって歩き始めた。
昨日叶多と歩いた砂浜は、足跡ひとつない無垢な状態にリセットされている。
辺りは東から少しずつ赤らみ始めて、海も同じ色に染め上げていた。
波打ち際に腰を下ろしてカメラを構えた。
昨夜とはうって変わって穏やかな音色で波が行ったり来たりを繰り返している。
オレは日の出を撮影しようと思い、東の空に向かってカメラを構えた。
ふと、目の端にチカッと何かの光が映り込んだ。
流星だ。オレは瞬時に察知した。
カメラの調節ダイヤルを素早く回して、光の方向にレンズを向けた。
オレが連射を始めたのと同時に光の筋は激しい閃光に変わり、辺りは一気に明るくなった。
「えっ」
必死に写真を撮り続ける。
強い光は最後にぱんと大きく広がって、一瞬で消失した。

必死に写真を撮り続ける。
一瞬の奇跡だった。カメラの液晶を覗き込んだ。小さな液晶ではちゃんと確かめられなくて、ずっと画像を見ていた。
集中しすぎて、叶多が近くまで来ていることにも隣に座られるまで全く気がつかなかった。
「いい写真撮れたか」
「!叶多」
叶多がオレの横に腰を下ろした。
「何だアレ?
今の凄かったな」
「多分、火球。
 コンテストに出す最有力候補」
「へえ」
カメラのモニターに映し出された写真を覗き込んできた叶多の髪とオレの髪とが触れ合った。
「ごめん、起こしちゃってたんだ」
「別に」
叶多はオレの頭を引き寄せると自分の鼻を額にくっつけてきた。
昨日風呂に入っていないから接近しているのが気まずくて、オレは叶多の手を持ち上げて身体を捩った。
そのとき、朝日を反射した叶多の腕時計が眩く輝いた。
「その時計、キラキラだな」
「あ? ああ。
 星みたいだな、と思って買った」
 確かに、モスグリーンの文字盤には小さなダイヤがたくさんちりばめられていて、真っ暗な森の中で夜空を見上げたときに似ていた。
「こんな風に俺はなるんだと思ってた」
 叶多は瞳を閉じて愛おしそうに時計に頬を擦り付けた。
「叶多・・・芸能界を辞めてもいいって言ってたけど、今でも芝居は好きなんだよな?
続けたいなら戻れよ」
「空も戻ってこい」
「え?」
「俺たちも、もう一回始めよう」
そういえばお互い、まだ気持ちを言葉にしていなかった。
オレの答えを待つ叶多の熱っぽい視線で体が焦げていく。
返事にに迷う余地なんてなかった。
「よろしく。
オレも、叶多といなきゃダメなんだ」
全てを言い終わらないうちに強く叶多に抱きしめられて危うくカメラを落とすところだった。
「もう二度と離さない」
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