星狩る人

仙崎 楓

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一緒に住み始めた矢先に

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ヤバイ、完全に遅刻かも!
 オレは朝の通勤ラッシュ真っ只中の電車に間に合わせるため、大通りの人込みを縫うように駆け抜けた。
「いっ!」
 尻に激痛が走って、オレは思わず背中を反らせて悲鳴を上げた。 
・・・くそう。叶多の野郎、朝から好き勝手しやがって。
多忙続きの叶多の生活は相変わらず不規則で、今日だって帰ってきたのは日が完全に昇ってからだった。
 引っ越したばかりの新しいマンションで一人ぐっすり寝ていたオレは、仕事帰りの叶多に乗っかられて目を覚ました。

「おい、今日は仕事休みか」
「ぅえっ?
 行くよって、わあ!
 もう起きる時間だ!」
 まだ仕事に行っているはずの叶多が目の前に現れたもんだからオレは驚いて起き上がった。
が、叶多のラリアットを喰らって、再びベッドに倒れこんだ。
慌てるオレをよそに叶多は人の悪い笑みを浮かべた。
「どうせ寝坊しそうだったんだから、俺が寝るまで付き合え」
「は?
いやっ、あっ、かなた・・・」
…そして、家を出る時間は大幅に遅れ、今に至る、というわけだ。
 遅刻にならずに済む最後の時間の電車にギリギリ間に合って、オレはホッと胸をなでおろした。
良かった。バイトを始めて早々に遅刻するわけにはいかない。
前の監禁生活とは話が違う。一緒に生活する以上全部叶多に世話してもらうわけにはいかない。
・・・今の状態って俗に言う、同棲、なのかな。
考えるだけで顔が熱くなる。
・・・いやいやそうじゃなくて。
情けないことに、マンションの購入費用は叶多に出してもらった。
オレは絶対にいつか半分払う!と言ったのに、叶多はハイハイと空返事をするだけで全く間に受けていなくて無性に悔しかった。
面子のためだけじゃなくて、撮影旅行のために貯金だってしたいからとにかく金を稼がないといけない。
叶多と対等でいられるような仕事に就きたい。
オレが叶多を助けるって宣言した以上、叶多が頼れるような人間になりたい。


「はーい!
 ともやくんは、なにぐみかなー?」
「うさぎぐみー!」
カシャ!
オレの質問に答えた子どもが笑った(ように見える)瞬間にすかさずシャッター音がスタジオ内に響く。
オレは主に子供をターゲットにしたフォトスタジオでアルバイトを始めた。
カメラを構えているのはオレじゃない。
スタジオで前から働いているカメラマンだ。
求人情報に書かれていた職務内容は、撮影、撮影補助、その他、という条件だったけど、ここでカメラに触れたことはまだ一度もない。
貯金もできないような時給で時間まで拘束されてコンテスト応募に支障が出るのが嫌で、敬遠していた類のバイトだ。
けどもうパパラッチはしないと決めた。
たとえ時間がかかるとしても、コンテストに挑戦し続けてプロになる夢も諦めたりしない。
ようやく休憩時間になって、叶多からのメールがないか携帯をチェックした。
仕事がいつ終わるのか定まらない叶多からいつどういうメールが来るか全く予想ができない。
だから休憩のたびにいそいそと携帯を覗き込んでいると、彼女にべたぼれな新人というイメージがついてしまった。
着信のランプが点滅している。
画面をオンにすると、着信とメールが一件ずつ入っていた。
メールは叶多からで、着信のほうは履歴を確認すると登録していない番号だった。
知らない番号からかかってくる心当たりは、ひとつだけあった。
・・・ひょっとして。
 オレの脈が早まった。
待て、ぬか喜びはダメだ。
こんなあっさり上手くいくわけがない。
迷惑電話かもしれない。
オレはネットで電話番号の検索をかけた。

・・・・・・・・・ヤバイ。
ここに叶多がいたら、泣きすぎだってまた笑われるんだろうか。
震える口元を片手で押さえながら、オレは折り返し発信をタップした。
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