星狩る人

仙崎 楓

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矛盾する気持ち

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「おっ。
 オレがいるときに空も帰ってくるとかタイミングいいじゃん」
「何言ってんだよ。
 ちゃっかり帰宅メールよこしてきたくせに」
叶多は家に帰ってオレがいないときは必ずメールをよこしてくる。
“今家に帰った。
 待ってる“
「メール見たならすぐ帰って来いよ」
 オレは帰りがけに買ってきた食材を冷蔵庫に片付けた。
 メールで伝えるよりも直接話したいと思ったけど、足がなかなか家に向かなくて寄り道して帰った。
 たまには一人の時間もいいだろ、と誤魔化すと叶多は不機嫌になった。
「分かってねえな」
そして、ぶつかるようなキスをされた。
 叶多の唇が首筋を伝っていつもの戯れが始まる予感がしたオレは、やんわりと叶多の動きを制止した。
「叶多オレ、フォトコンで大賞獲った」
 叶多は口も目もを大きく開いて暫く動きを止めていた。
「ハワイで撮った火球の写真なんだ。
 ありがと、」
「やったじゃん!!」
 突然大声をあげて感情全開で喜んだ。
勢いは止まるどころかオレの頭をぐしゃぐしゃと撫で回して、軽々とオレを持ち上げた。
「うわっ。
 なな、何だよ、これ!
 降ろせよ」
 叶多の奴、すっげえ笑ってる。
こんなに感情をむき出しにした叶多は初めてだ。
ああ、今カメラを持ってないのが残念で仕方がない。
叶多の興奮が収まる気配は微塵もない。
「何で空はそんなに普通なんだよ。
 嬉しくないのかよ」
「嬉しいよ、そりゃ」
 ようやく床に降ろされたオレは、本題を切り出すタイミングを見計って頭の片隅が妙に落ち着いていた。
「一度は逃した大きな賞をやっとこの手に掴めたんだから嬉しいに決まってるよ。
 ・・・でもオレの夢はこれで終わりじゃない。
 振り出しに戻ったに過ぎないんだ。
 オレはこれからもっと色々な写真を撮りたい」
 叶多の顔からみるみるうちに笑顔が萎んでいく。
 オレが言おうとしていることに勘付いたみたいだ。
「この賞でもらえる賞金を使って世界を旅したいんだ。
 それで、すげえ写真を撮ってくる」
 叶多の顔はオレを抱き上げたときとは打って変わって険しい表情になっている。
「叶多が前、オレに言ってくれたように思いっきりやってくる」
 オレのパソコンで写真を見たとき、手放しで認めてくれて嬉しかった。
だけど今目の前にいる叶多は頷かなかった。
「・・・あの時の正直な気持ちだ。
 今だって空に夢を追いかけてほしい思いは変わらない。
 俺自身も自分のために好きなように生きてるから。
 俺は空と離れるのは嫌だ」
「・・・一緒にいたいなら叶多がオレについてくるか?」
 叶多の表情は曇ったままだ。
「今は、空についていくことはできない」
「そうだろ?
 叶多だって芝居を中途半端にできないもんな。
 オレと叶多は離れてもダメになったりしないと思ってる」
オレは叶多に笑ってほしくて軽くキスをした。
合わさった唇は離れることなくそのまま深い口づけに変わった。
キスで乱れされた呼吸が、強く抱き寄せられたせいで一層苦しくなる。
足元がおぼつかなくなると、床に横たえられた。
いつもの快楽に任せたセックスとは違っていた。
挿入も動きもお互い恐いくらい落ち着いていて、今ひとつになっていることをお互い確認しているみたいだった。
やがて静かな営みが終わると、叶多が独り言のように呟いた。
「空を応援したい気持ちと自分の気持ちが一致しない」
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