星狩る人

仙崎 楓

文字の大きさ
25 / 28

決着

しおりを挟む
叶多が何か言いいかけたのと同時に突然ドアが開かれて、焦ったオレたちは咄嗟に机の下に身を潜めた。
「今日もつつがなく進んでいるかね」
聞き覚えのある低い声だ。
足元しか見えないけど、叶多の表情から判断すると予想は確信に変わった。
大門だ。
あともう一人いるのが分かる。
これが滝だったらビンゴだ。
「叶多が変な男と付き合っているようで、気にはなっているんだが」
「ご安心ください。 
二人が親しいことを逆手にとって、逆に寝首をかいてやりましょう。
警察に足をつかまれたときはこのデータを叶多の携帯に入れれば、影武者の出来上がりです」
声で滝だと分かったけど、オレは滝の策略を聞いて身を固くした。
滝がオレにしていた話にはさらに裏があったんだ。
「叶多が大門先生への献金と偽って大勢から金を集めていたことにするんです。
叶多は裏切り者の支援者」
「最近はよく噛みつかれていたからね。
 換え時とは思っていたんだよ」
 滝と大門はは賄賂の罪を全部叶多に被せるつもりだったんだ。
カシャ!
オレは机の下から這い出して、滝と大門に向かってカメラを構えた。
「滝が違法献金リストを持ってるとこ、おさえたよ。
 このスクープ写真を公表されたくないなら、二人共叶多から手を引け」
「貴様、どこまでしぶといんだっ」
滝がオレにつかみかかろうとしたとき、机の下から叶多の腕が伸びた。
滝の足を叶多がつかんで、滝は派手にひっくり返った。
叶多もゆっくりと姿を現して、オレの横に並んだ。
「下剤ぐらいじゃ、懲りなかったみたいですね」
「………あれ、やっぱりノロじゃなかったんだな!
 しばらく仕事干されて大変だったんだぞ!」
「何言ってるんですか。
 人の成功奪った人間ごときが」
叶多の表情は冷たく、怒りでギラギラと目を光らせている。
「自分の力で戦わなかった人間のメッキはすぐにはがれる。
もう終わりだよ、アンタ」
滝は開き直っていて、無駄に格好つけて立ち上がると叶多を鼻で嘲笑った。
「ふ、終わりなのは君も同じだろう叶多君。
 これで大門先生が表舞台から消えれば君の芸能界生命は絶たれるよね。
 しかも枕営業のおまけつきだ。実は迷ってんじゃないの?
 分かるよ、富と名声を失うのはこわいも」
オレはカメラをしっかりとにぎりしめて、滝に向かってジャンプした。
見事な飛び蹴りが決まった。
「叶多とお前を一緒にすんな」
オレに蹴られた拍子に滝の手から転がり落ちたリストを叶多が拾い上げた。
「さっきの交換条件を忘れたのか。
 僕たちを脅すなら、お前の受賞は消えてなくなる。
 写真を公表すれば、叶多君の枕営業は日本中に知れ渡ることになる。
 つまり叶多君のことなんか貴様はどうでもいいんだな」
滝は床に倒れこんだままこちらを睨みつけながら、血の混じった唾を吐いた。
「叶多から手を引くなら公表しない。
 言っただろ。賞なんかはもうどうでもいい」
「交換条件って、まさか写真辞めるって言ってた事か?」
叶多が眉をしかめた。
「渡しなさい」
 ずっと無言を貫いていた大門が口を開いた。
「よく考えるべきだ、叶多」
大門の重々しい声に圧力をかけられても叶多は怯まなかった。
「これでやっとアンタと縁が切れるのに渡すわけねえだろ。
 せいせいするね」
大門を真っ直ぐに見据える叶多からは何の迷いも感じられなくて、清廉とした表情をしていた。
「俺のために空が諦めるなんてふざけんじゃねえ。
 足手まといになるくらいなら、何のためらいもなく全て曝け出してやるよ。
このリストは警察に提出する」
 そのとき、大門先生!と叫びながらスーツ姿の若い男が入ってきた。
大門に間もなく警察が来ることを告げ、早く逃げるように大門を急かした。
大門が逃げ込んだ車の姿が消えたのと寸分違わないうちにパトランプを点灯させたパトカーが数台会場の前に集まってきた。
「叶多・・・ごめん。
 オレのために」
「何だよそれ。ちがうっつーの。
 警察が来たのも机の下に潜ってる間に、オレが通報したからなんだよ」
「それなら、喜んでいいのか?」
「当然だ」
 どんどんパトカーが増えていく様子を並んで見ていたオレと叶多は、肩をくっつけたまま壁にもたれてずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
そして同時に大きなため息をついた。
それが可笑しくて、オレたちは目を合わせて一緒に笑いながらハイタッチをした。
 賄賂の現場にいた証人としてオレたちも調書を取られることになって、パトカーに乗って警察署に行くことになった。

オレのほうが叶多より早く取り調べが終わって、オレは先に外へ出た。
電車はまだ動いてるだろうか。着物で電車に乗るのは目立ち過ぎるかな。
先に家に帰って飯でも作って叶多を待ってよう。

それで叶多が帰ってきたら、もう一度話をするんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

勘違いへたれアルファと一途つよかわオメガ──ずっと好きだったのは、自分だけだと思ってた

星群ネオン
BL
幼い頃に結婚の約束をした──成長とともにだんだん疎遠になったアルファとオメガのお話。 美しい池のほとりで出会ったアルファとオメガはその後…。 強くてへたれなアルファと、可愛くて一途なオメガ。 ありがちなオメガバース設定です。Rシーンはありません。 実のところ勘違いなのは二人共とも言えます。 α視点を2話、Ω視点を2話の後、その後を2話の全6話完結。 勘違いへたれアルファ 新井裕吾(あらい・ゆうご) 23歳 一途つよかわオメガ 御門翠(みがと・すい) 23歳 アルファポリス初投稿です。 ※本作は作者の別作品「きらきらオメガは子種が欲しい!~」や「一生分の恋のあと~」と同じ世界、共通の人物が登場します。 それぞれ独立した作品なので、他の作品を未読でも問題なくお読みいただけます。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

処理中です...