28 / 28
エピローグ
しおりを挟む元気かな、アイツ。
今度こそ本当の成功を掴むために、どんどん変わっていればいいな。
どんな風に化けても、あの時のアイツなら今も絶対に輝いているはずだから。
忘れるなよ、と言われて渡された時計を覗く。
少し傷はついたけど、壊れることなく正確に時を教えてくれている。
世界を飛び回っている間は、いい写真を撮ることに躍起になっていて、寂しいとか日本を懐かしむ暇なんてなかったのに。
日本行きの飛行機に乗ってから待ち遠しくて仕方がない。
もちろん忘れたことなんて一度もない。
アイツより心を震わせるものには出会えそうにもない。
お前のところに戻るから。
会いたい。
「南叶多さん、舞台で初座長ということで、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
空港のロビーの一角で、叶多の記者会見が行われていた。
初座長を記念した公開会見で、叶多のファンだけでなく空港を訪れた人たちもたくさん目を留めていた。
「今回は恋愛の要素が少ないということで、ファンの方は寂しく思っているようですが、プライベートの恋愛はどうなんでしょう?」
叶多のクールな表情は全く崩れないけど、レポーターもひるまない。
「プライベートでずっとつけられている時計がいつも違う時刻を指してますよね。どこか外国にいる恋人の時刻を指しているんじゃないか、なんて噂も」
叶多は少し驚いた顔をした後、視線を腕に落とした。
「よく御存知ですね。
でも時間があっているかどうかは怪しいです。
世界を思い立つままに飛び回ってるはずですから」
報道陣は熱愛発言を疑ってざわついている。
叶多は構わず続けた。
「空を眺めるたびに思うんです。
この星をアイツも見てるんだろうか。
もしかしたら昼で、青空でもみてるのかもしれないな、なんて。
その可能性のほうが高いけど構わないんです。
アイツがこの空をどこかで見てることに変わりはないから。
薄汚れたこの世界でも、変わらないアイツがどこかで踏ん張ってるんだと思えば、俺は突っ伏さずに生きていける」
カシャ!
「叶多!」
オレは叶多が気づくように二階から大きく手を振った。
叶多はオレを見つけて、目が合った瞬間まぶしそうに目を細めた。
「電話、ほとんど通じねえじゃん。
最後に話したのいつだよ」
「さあ?
だって行くとこほぼ圏外だし」
「あの、南さん。
あの方は…」
リポーターが叶多に尋ねた。
「神原 空です」
叶多からの紹介を聞いて、マスコミや観覧客が一層ざわつき始めた。
「ひょっとして、フォトグラファーの?
先日国際コンペで入賞された方で、以前話題になった南さんの写真集の表紙を撮影されたんですよね」
「空、こっち来いよ。言いたいことがある。
皆も映像界の期待の星をお待ちかねだ」
一番待ってたのは、空港で会見なんかしてるお前だろ、とツッコみたい気持ちを後のお楽し
みに残して、オレは下りのエスカレーターに向かって走り出した。
オレは今日も星を追いかけてる。
これからもずっと。
追いかけて、捕まえて、写真の中に狩りとる。
だってオレは欲しがりやだから。
オレは、星狩る人。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
勘違いへたれアルファと一途つよかわオメガ──ずっと好きだったのは、自分だけだと思ってた
星群ネオン
BL
幼い頃に結婚の約束をした──成長とともにだんだん疎遠になったアルファとオメガのお話。
美しい池のほとりで出会ったアルファとオメガはその後…。
強くてへたれなアルファと、可愛くて一途なオメガ。
ありがちなオメガバース設定です。Rシーンはありません。
実のところ勘違いなのは二人共とも言えます。
α視点を2話、Ω視点を2話の後、その後を2話の全6話完結。
勘違いへたれアルファ 新井裕吾(あらい・ゆうご) 23歳
一途つよかわオメガ 御門翠(みがと・すい) 23歳
アルファポリス初投稿です。
※本作は作者の別作品「きらきらオメガは子種が欲しい!~」や「一生分の恋のあと~」と同じ世界、共通の人物が登場します。
それぞれ独立した作品なので、他の作品を未読でも問題なくお読みいただけます。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる