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除夜の鐘
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ゴーン。
街の中心から少し離れた下町の寺だ。
一年の終わりを告げる聞く除夜の鐘が胸をしんみりさせる。
「あれ、叶多。
本殿はこっちだぜ?」
「初詣は年明けてからだろ。
除夜の鐘打ちに行くぞ」
上を見上げると、少し高台になったところに除夜の鐘が置かれていて、十数人ほどの人が行列をなして、鐘を打つ順番を待っている。
地元の寺とは言っても、顔の知れた叶多が参拝に来てるなんて誰かに気づかれたら絶対大騒ぎだぞ。
横にいるオレはヒヤヒヤしっぱなしだけど、当事者の叶多は堂々としたもんだ。
コソコソするほうが気づかれやすいんだよ。
とか言っちゃってさ。
オレはいつでも寺から退却できるように叶多にぴったりとくっついて歩いた。
本殿から離れたところにポツンと置かれた除夜の鐘は、順番に並びさえすれば自由に打たせてもらえていた。
少し待つだけで、すぐに叶多に順番が回ってきた。
叶多は鐘に向かって合掌した後、橦木の縄をにぎった。
「お前は何を消す?」
「え、消すって?」
「除夜の鐘を打てば、煩悩が消えるって言うだろ」
オレの煩悩?
う~ん。
「時々、恋愛に腑抜けそうになること・・・・・・・・・。
言ったぞ!叶多はっ?」
「後で教えてやるよ」
ゴーン。ゴーン。
叶多が打った鐘の音にすかざず続いてオレの鐘の音が町に響いた。
「で?
叶多の煩悩って?」
叶多はにやりと笑った。
「さあ。
鐘打って綺麗さっぱり消えたみたいだから、忘れた」
はあ!?
くそ!騙された!
「言えよ!
オレだけ恥ずかしいじゃねえかよ!」
今度は叶多はふっと、静かに笑った。
「俺、事務所辞めてきたわ」
突然の報告に、掛けるべき言葉が思いつかなかった。
「大門が捕まって、全然仕事が来なくなった。
事務所としても大門逮捕の片棒担いだ俺はお荷物でしかないからな。
まあ実質クビ」
「ごめん、オレ…」
「違うって。
あのとき空が写真を撮ったから、俺は冤罪を背負わずに済んだんだ。
良かったんだよ。
これで振り出しに戻れた」
「振り出しどころかマイナス・・・」
「これで売れたら本物だと思わないか?」
叶多はにっと笑った。
笑顔は虚勢を張った風でもなく清々しさすら感じられて、オレは少しだけ安堵した。
「良かった。
空について行く~なんて言われたらどうしようかと思ったぜ」
「は?
ついてきて欲しかった、の間違いだろ」
「言ってろ」
冗談を言い合って旅立てることに幸せを感じた。
オレは叶多に出会えてよかった。
「仕事か空かどちらかひとつだけ選ぶとしたら俺は空を選ぶ。
けど今は選ぶ時じゃない。
今辞めると負けたみたいじゃねえか。
今度こそ自分で夢を勝ち取って、堂々と空が一番だって言ってやる」
二人の気持ちが確かな今なら、離れることに必然性すら感じた。
「オレは星を狩るカメラマンだ。
人はお前しか撮らない。
オレにとっての星は空に瞬く星と、叶多だけだから」
本殿のほうで歓声が上がって、叶多は時計を見た。
「年明けだな」
叶多の時計と色違いのオレの時計も同時に年が明けて、一月一日に変わっている。
離れても、同じ時を刻んでいる。
どこにいようと、同じ瞬間を生きていることに変わりはない。
お互い目指すものがある。
無理に合わせる必要なんてない。
大丈夫。さよならじゃない。
道が交わったとき、必ず会える。
お互い好きなことを追いかけるだけだ。
オレは写真。叶多は芝居。
決して、お別れじゃない。
「おめでとう」
新しい年に。
「おめでとう」
一緒にいられる今に。
街の中心から少し離れた下町の寺だ。
一年の終わりを告げる聞く除夜の鐘が胸をしんみりさせる。
「あれ、叶多。
本殿はこっちだぜ?」
「初詣は年明けてからだろ。
除夜の鐘打ちに行くぞ」
上を見上げると、少し高台になったところに除夜の鐘が置かれていて、十数人ほどの人が行列をなして、鐘を打つ順番を待っている。
地元の寺とは言っても、顔の知れた叶多が参拝に来てるなんて誰かに気づかれたら絶対大騒ぎだぞ。
横にいるオレはヒヤヒヤしっぱなしだけど、当事者の叶多は堂々としたもんだ。
コソコソするほうが気づかれやすいんだよ。
とか言っちゃってさ。
オレはいつでも寺から退却できるように叶多にぴったりとくっついて歩いた。
本殿から離れたところにポツンと置かれた除夜の鐘は、順番に並びさえすれば自由に打たせてもらえていた。
少し待つだけで、すぐに叶多に順番が回ってきた。
叶多は鐘に向かって合掌した後、橦木の縄をにぎった。
「お前は何を消す?」
「え、消すって?」
「除夜の鐘を打てば、煩悩が消えるって言うだろ」
オレの煩悩?
う~ん。
「時々、恋愛に腑抜けそうになること・・・・・・・・・。
言ったぞ!叶多はっ?」
「後で教えてやるよ」
ゴーン。ゴーン。
叶多が打った鐘の音にすかざず続いてオレの鐘の音が町に響いた。
「で?
叶多の煩悩って?」
叶多はにやりと笑った。
「さあ。
鐘打って綺麗さっぱり消えたみたいだから、忘れた」
はあ!?
くそ!騙された!
「言えよ!
オレだけ恥ずかしいじゃねえかよ!」
今度は叶多はふっと、静かに笑った。
「俺、事務所辞めてきたわ」
突然の報告に、掛けるべき言葉が思いつかなかった。
「大門が捕まって、全然仕事が来なくなった。
事務所としても大門逮捕の片棒担いだ俺はお荷物でしかないからな。
まあ実質クビ」
「ごめん、オレ…」
「違うって。
あのとき空が写真を撮ったから、俺は冤罪を背負わずに済んだんだ。
良かったんだよ。
これで振り出しに戻れた」
「振り出しどころかマイナス・・・」
「これで売れたら本物だと思わないか?」
叶多はにっと笑った。
笑顔は虚勢を張った風でもなく清々しさすら感じられて、オレは少しだけ安堵した。
「良かった。
空について行く~なんて言われたらどうしようかと思ったぜ」
「は?
ついてきて欲しかった、の間違いだろ」
「言ってろ」
冗談を言い合って旅立てることに幸せを感じた。
オレは叶多に出会えてよかった。
「仕事か空かどちらかひとつだけ選ぶとしたら俺は空を選ぶ。
けど今は選ぶ時じゃない。
今辞めると負けたみたいじゃねえか。
今度こそ自分で夢を勝ち取って、堂々と空が一番だって言ってやる」
二人の気持ちが確かな今なら、離れることに必然性すら感じた。
「オレは星を狩るカメラマンだ。
人はお前しか撮らない。
オレにとっての星は空に瞬く星と、叶多だけだから」
本殿のほうで歓声が上がって、叶多は時計を見た。
「年明けだな」
叶多の時計と色違いのオレの時計も同時に年が明けて、一月一日に変わっている。
離れても、同じ時を刻んでいる。
どこにいようと、同じ瞬間を生きていることに変わりはない。
お互い目指すものがある。
無理に合わせる必要なんてない。
大丈夫。さよならじゃない。
道が交わったとき、必ず会える。
お互い好きなことを追いかけるだけだ。
オレは写真。叶多は芝居。
決して、お別れじゃない。
「おめでとう」
新しい年に。
「おめでとう」
一緒にいられる今に。
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