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第4話
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マティアスはすることもなく、少しぼーっとしていた。すると部屋の外が何やら騒がしいことに気が付いた。
何だろうと思っていると、ドアがノックされた。
「マティアス様、ノーラにございます。」
どうぞと言ってノーラを部屋に通す。
「旦那様とカルラ様が領内お戻りになられました。間もなく屋敷におかえりになるかと思います。」
「わかったよ。ありがとう。」
そういえばそろそろ帰ってくる頃だ。
カルラたちが王都に発ってから20日近く経過していた。途中、王都に到着や王都を出発するという知らせが届いていた。
夕方頃、母さんと兄さんとそろって屋敷の玄関で待っていると、遠くにうちの馬車が見え始めた。馬車はみるみるうちに近づいてきて、あっという間に屋敷の入り口に到着した。
「みんなただいま。問題はなかったかい?」
「ただいま帰りました。」
父さんと姉さんがそれぞれ帰宅のあいさつを告げた。ずっと外にいても寒いため、早々に屋敷へ戻ることもした。
色々と荷物があるらしく、荷物を屋敷に持って入った。どんなお土産があるのかと期待してしまう。
「姉さん、試験はどうだったの?」
お土産も気になったが、それよりも試験結果が気になって仕方なかった。試験結果は試験の2日後に出るため、見てから帰ってくると言っていた。
「合格したわよ。点数とかは出ないからどうだったかはわからないけど。」
姉さんの顔を見る限り問題はあまり解けなかったのだろう。
「今日はブルーノにご馳走を用意してもらっているから期待していいわよ。」
王都出発の連絡とともにカルラの試験結果は早馬でアレクシアやラインハルトには伝わっていた。
マティアスたちは事前に準備されていた、カルラ合格祝いを兼ねた夕食の席に着いた。夕食はカルラの好物や普段の夕食で出されるものに比べ高級な食材が並んだ。
「王都のお土産があるから今から渡すね。」
ハインツの一言にマティアスとアレクシアは「待ってました」と言わんばかりに食いついた。マティアスはあからさまに目を輝かせている。アレクシアは顔に出さないようにしてはいるが、若干声の調子がいつもより高くなっている。普段落ち着いているクラウスでさえ、嬉しそうに笑みを浮かべている。
アレクシアには、王都で流行っているお菓子とハインツが選んだアクセサリーが渡された。あまり、王都に行く機会のないアレクシアは流行りのお菓子をすごく喜んでいた。もともと、王都の商家で育ったアレクシアは流行のもの、特に食の流行に関しては敏感だった。そして、普段からアクセサリーや宝石で派手に飾るようなタイプではないが、ハインツ自ら選んだということもあり、アレクシアは大いに喜んだ。アレクシアの好みを把握したあまり派手ではないデザインの物を選んでいた。
「クラウスにはペンとインクを買ってきたよ。」
来年受験を控えているクラウスには筆記用具がプレゼントされた。王都の職人が作ったペンで、少し値は張るが、書き心地がよく丈夫で長持ちするらしい。普段から勉強を頑張っているクラウスに少しでもいいもので頑張ってほしいということらしい。
「ありがとうございます。これでもっと勉強を頑張ります。」
いつも微笑んでいるクラウスも今回ばかりは目を輝かせてキラキラした笑顔を浮かべている。それを見たハインツも嬉しそうにしている。
マティアスには本が渡された。
「『白の魔法使いと黒の剣士』か」
その日の夜、寝る前に少しだけ読むことにした。
=====================
遠い昔、ある街に、一人の剣士がいた。その剣士は『黒の剣士』と呼ばれ街では少し名の知れた冒険者だった。黒の剣士はいつも真っ黒な鎧に身を包み、真っ黒な兜で顔を隠していた。そのため、誰も彼の顔を見たことはなく、謎に包まれた人物であった。
最近街の周りではトロールが目撃されていた。トロールは巨大な体と怪力を持つ魔物で、切られた腕をつなげることができるほどの再生能力を持っている。駆け出しの冒険者では到底太刀打ちできない。トロールは人を食べる。このままトロールを放っておくと、街で人を襲う可能性がある。街は冒険者組合にトロール討伐依頼を出した。
黒の剣士はトロール討伐の依頼を受け、いつものように街の外に行った。
目撃情報のあった白夢の森に向った。そこには、トロール特有の悪臭が漂っていた。悪臭が強くなる方に進むと、戦闘の音が聞こえてきた。森の入り口の木々がへし折られたそこでは、トロールと4人組の冒険者パーティが戦っていた。いや、戦っているとは言えないような一方的なものであった。冒険者たちは負傷し、ぎりぎり攻撃に耐えている状態だった。
「助けが必要か?」
黒の剣士は冒険者に尋ねた。
「頼む!」
負傷者をかばいながら戦っている冒険者は黒の剣士の申し出を受け入れた。
冒険者が手助けを受け入れると、黒の剣士は剣を抜いた。そして、トロールを頭から両断した。トロールを討伐し終えると、かろうじて立っていた冒険者たちは気が抜けて地面に腰をついた。剣を収めた黒の剣士から黒い霧があふれ出した。その霧は負傷し地面に倒れる冒険者を包んだ。すると、冒険者たちの傷はふさがった。
トロールと戦闘していた冒険者は若手の冒険者で、別の依頼を受けている最中に偶然トロールに遭遇したらしい。森の入り口付近は安全だと思い近づいたらトロールがいたみたいだ。
=====================
「今日はここまでにしよう」
マティアスは途中まで読み本を閉じ、眠りについた。
姉さんが帰って来てからもいつもと変わらない日々が過ぎた。しいて言えば姉さんは入学までも魔法や学園の勉強があり少し騒がしくなった。そうこうしているとあっという間に年があけ、冬がやってきた。
「マティアス、明日領内の村を見て回るけどついてくるかい?」
「うん。けどなんで村へ行くの?」
マティアスはうなずいて答えた。
「冬の間食べる物がどのくらいあるかを見に行くんだ。」
ネルフューア領の冬は気温が下がり、動物が山にこもって冬眠してしまう。冬の間は狩りによる食料の確保が期待できない。食料の備蓄や、この時期収穫される、いもなどの収穫状況を確認するために領内の村を見回ことになっている。
カルラもクラウスもマティアスくらいの時に初めて町に出ている。
翌日、朝早くから馬車に乗って村へ向かった。マティアスは初めて見る光景に目を奪われていた。
「これ全部畑だよ。僕たちが食べている野菜が育てられているんだよ。」
「すごい、広いね。」
マティアスが広い畑に圧倒されていると、徐々に人と家が見え始めた。畑で作業していた人々は馬車が見えると手を止め、馬車の方を向いて挨拶したり、お辞儀をしたりしていた。
「そろそろ、村につくよ。」
屋敷が建っている村、リネット村の居住地に到着した。
馬車から降りるとそこには二人の男が立っていた。一人はおじいさん、もう一人はハインツよりも若い男だった。
「出迎えありがとう。今日は見学に次男のマティアスを連れてきたんだ。よろしく頼むよ。」
「領主様、わざわざ寒い中お越しくださりありがとうございます。初めましてマティアス様、村長のハーゲンと申します。よろしくお願いします。」
「うん。マティアス・ネルフューアです。よろしく。」
この優しそうなおじいさんの方はハーゲンというらしい。俺はもう一人を見つめた。
「こっちは、畑仕事をしている、クルトです。詳しいものを連れてきました。儂と一緒に案内をします。」
「クルトです。よろしくお願いします。なんでも聞いてください。」
ハーゲンの家で話をしたり、村の倉庫に行ったりした後、ハーゲンとクルトに案内されて村の畑を見て回った。
「今はいもを収穫しているところです。今年も育ちがよく、冬を越すには十分な量を収穫できると思います。」
マティアスは初めて収穫の瞬間を目の当たりにして、少し感動していた。
何だろうと思っていると、ドアがノックされた。
「マティアス様、ノーラにございます。」
どうぞと言ってノーラを部屋に通す。
「旦那様とカルラ様が領内お戻りになられました。間もなく屋敷におかえりになるかと思います。」
「わかったよ。ありがとう。」
そういえばそろそろ帰ってくる頃だ。
カルラたちが王都に発ってから20日近く経過していた。途中、王都に到着や王都を出発するという知らせが届いていた。
夕方頃、母さんと兄さんとそろって屋敷の玄関で待っていると、遠くにうちの馬車が見え始めた。馬車はみるみるうちに近づいてきて、あっという間に屋敷の入り口に到着した。
「みんなただいま。問題はなかったかい?」
「ただいま帰りました。」
父さんと姉さんがそれぞれ帰宅のあいさつを告げた。ずっと外にいても寒いため、早々に屋敷へ戻ることもした。
色々と荷物があるらしく、荷物を屋敷に持って入った。どんなお土産があるのかと期待してしまう。
「姉さん、試験はどうだったの?」
お土産も気になったが、それよりも試験結果が気になって仕方なかった。試験結果は試験の2日後に出るため、見てから帰ってくると言っていた。
「合格したわよ。点数とかは出ないからどうだったかはわからないけど。」
姉さんの顔を見る限り問題はあまり解けなかったのだろう。
「今日はブルーノにご馳走を用意してもらっているから期待していいわよ。」
王都出発の連絡とともにカルラの試験結果は早馬でアレクシアやラインハルトには伝わっていた。
マティアスたちは事前に準備されていた、カルラ合格祝いを兼ねた夕食の席に着いた。夕食はカルラの好物や普段の夕食で出されるものに比べ高級な食材が並んだ。
「王都のお土産があるから今から渡すね。」
ハインツの一言にマティアスとアレクシアは「待ってました」と言わんばかりに食いついた。マティアスはあからさまに目を輝かせている。アレクシアは顔に出さないようにしてはいるが、若干声の調子がいつもより高くなっている。普段落ち着いているクラウスでさえ、嬉しそうに笑みを浮かべている。
アレクシアには、王都で流行っているお菓子とハインツが選んだアクセサリーが渡された。あまり、王都に行く機会のないアレクシアは流行りのお菓子をすごく喜んでいた。もともと、王都の商家で育ったアレクシアは流行のもの、特に食の流行に関しては敏感だった。そして、普段からアクセサリーや宝石で派手に飾るようなタイプではないが、ハインツ自ら選んだということもあり、アレクシアは大いに喜んだ。アレクシアの好みを把握したあまり派手ではないデザインの物を選んでいた。
「クラウスにはペンとインクを買ってきたよ。」
来年受験を控えているクラウスには筆記用具がプレゼントされた。王都の職人が作ったペンで、少し値は張るが、書き心地がよく丈夫で長持ちするらしい。普段から勉強を頑張っているクラウスに少しでもいいもので頑張ってほしいということらしい。
「ありがとうございます。これでもっと勉強を頑張ります。」
いつも微笑んでいるクラウスも今回ばかりは目を輝かせてキラキラした笑顔を浮かべている。それを見たハインツも嬉しそうにしている。
マティアスには本が渡された。
「『白の魔法使いと黒の剣士』か」
その日の夜、寝る前に少しだけ読むことにした。
=====================
遠い昔、ある街に、一人の剣士がいた。その剣士は『黒の剣士』と呼ばれ街では少し名の知れた冒険者だった。黒の剣士はいつも真っ黒な鎧に身を包み、真っ黒な兜で顔を隠していた。そのため、誰も彼の顔を見たことはなく、謎に包まれた人物であった。
最近街の周りではトロールが目撃されていた。トロールは巨大な体と怪力を持つ魔物で、切られた腕をつなげることができるほどの再生能力を持っている。駆け出しの冒険者では到底太刀打ちできない。トロールは人を食べる。このままトロールを放っておくと、街で人を襲う可能性がある。街は冒険者組合にトロール討伐依頼を出した。
黒の剣士はトロール討伐の依頼を受け、いつものように街の外に行った。
目撃情報のあった白夢の森に向った。そこには、トロール特有の悪臭が漂っていた。悪臭が強くなる方に進むと、戦闘の音が聞こえてきた。森の入り口の木々がへし折られたそこでは、トロールと4人組の冒険者パーティが戦っていた。いや、戦っているとは言えないような一方的なものであった。冒険者たちは負傷し、ぎりぎり攻撃に耐えている状態だった。
「助けが必要か?」
黒の剣士は冒険者に尋ねた。
「頼む!」
負傷者をかばいながら戦っている冒険者は黒の剣士の申し出を受け入れた。
冒険者が手助けを受け入れると、黒の剣士は剣を抜いた。そして、トロールを頭から両断した。トロールを討伐し終えると、かろうじて立っていた冒険者たちは気が抜けて地面に腰をついた。剣を収めた黒の剣士から黒い霧があふれ出した。その霧は負傷し地面に倒れる冒険者を包んだ。すると、冒険者たちの傷はふさがった。
トロールと戦闘していた冒険者は若手の冒険者で、別の依頼を受けている最中に偶然トロールに遭遇したらしい。森の入り口付近は安全だと思い近づいたらトロールがいたみたいだ。
=====================
「今日はここまでにしよう」
マティアスは途中まで読み本を閉じ、眠りについた。
姉さんが帰って来てからもいつもと変わらない日々が過ぎた。しいて言えば姉さんは入学までも魔法や学園の勉強があり少し騒がしくなった。そうこうしているとあっという間に年があけ、冬がやってきた。
「マティアス、明日領内の村を見て回るけどついてくるかい?」
「うん。けどなんで村へ行くの?」
マティアスはうなずいて答えた。
「冬の間食べる物がどのくらいあるかを見に行くんだ。」
ネルフューア領の冬は気温が下がり、動物が山にこもって冬眠してしまう。冬の間は狩りによる食料の確保が期待できない。食料の備蓄や、この時期収穫される、いもなどの収穫状況を確認するために領内の村を見回ことになっている。
カルラもクラウスもマティアスくらいの時に初めて町に出ている。
翌日、朝早くから馬車に乗って村へ向かった。マティアスは初めて見る光景に目を奪われていた。
「これ全部畑だよ。僕たちが食べている野菜が育てられているんだよ。」
「すごい、広いね。」
マティアスが広い畑に圧倒されていると、徐々に人と家が見え始めた。畑で作業していた人々は馬車が見えると手を止め、馬車の方を向いて挨拶したり、お辞儀をしたりしていた。
「そろそろ、村につくよ。」
屋敷が建っている村、リネット村の居住地に到着した。
馬車から降りるとそこには二人の男が立っていた。一人はおじいさん、もう一人はハインツよりも若い男だった。
「出迎えありがとう。今日は見学に次男のマティアスを連れてきたんだ。よろしく頼むよ。」
「領主様、わざわざ寒い中お越しくださりありがとうございます。初めましてマティアス様、村長のハーゲンと申します。よろしくお願いします。」
「うん。マティアス・ネルフューアです。よろしく。」
この優しそうなおじいさんの方はハーゲンというらしい。俺はもう一人を見つめた。
「こっちは、畑仕事をしている、クルトです。詳しいものを連れてきました。儂と一緒に案内をします。」
「クルトです。よろしくお願いします。なんでも聞いてください。」
ハーゲンの家で話をしたり、村の倉庫に行ったりした後、ハーゲンとクルトに案内されて村の畑を見て回った。
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