田舎貴族の魔道具開発

宮古 そら

文字の大きさ
5 / 11

第5話

しおりを挟む
「ねぇ、村には僕と同じくらいの子供はいないの?」

大人に囲まれて少し飽きてきたマティアスはクルトに尋ねた。

「え、マティアス様と同い年の子供なら男の子が一人いますよ。いつも畑の近くで遊んでいるのでどこかにいると思いますが。」

クルトはマティアスの急な質問に驚きながら答えた。クルトの解答にマティアスは喜んだ。
少し歩いていると棒切れを振っている、マティアスくらいの少年がいた。

「あそこにいるのが先ほど話していた子供です。名前は、」

クルトが途中まで言いかけたところで、少年がこちらに走ってきた。

「お前、見ない顔、クルト、この子誰?」

「こら、失礼だろカミル。」

マティアスがあっけにとられていると、慌ててやってきた少年と同じ黒髪の男がカミルを叱る。
カミルの父親は僕らに頭を下げているが、父さんが大丈夫と言ってこの場は収まった。そんなことより、僕は初めて見る同い年の子供に嬉しくなる。

「よくわからない。マティアス、何歳?俺は4歳。」

「嘘つくな!まだ3歳だろ。すみません。マティアス様とは同じ年で今年4歳になります。」

カミルはまたも父親に頭を小突かれている。むっとした表情を浮かべるカミルに父親とクルトは頭を抱えている。

「大丈夫だよ。僕はマティアス。3歳だよ。」

「そう。俺はカミル。何して遊ぶ?」

マティアスはカミルの遊びの誘いにテンションが上がった。遊んでいいかの確認のために父さんの方を向く。

「ごめんね、そろそろ次の村に向かわなきゃいけないんだ。カミルもすまないね。」

父さんから残酷な事実を突きつけられた。どうやら今日回るのはここだけではないようだ。

「わかりました。ごめんね、カミル」

僕がカミルに向かって謝ると、カミルはうなずいて、父さんの方を向いた。

「わかった。マティアスは(ゴツン!)」

カミルはまた頭を殴られた。カミルが父親の方を見ると、きっとにらまれた。そして、カミルの父親はこちらにペコペコしている。

「わかりました。マティアス様は次いつ来るますか。」

「うーん。明後日より後かな。また遊んでくれるかな。」

カミルは拙いながらも大人たちの真似をして敬語でハインツに話しかけた。カミルに目線を合わせてハインツが答えた。

「わかった(ゴツン!)」
「わかりました。」

カミルはまた頭をたたかれた。それより、僕は父さんの答えが気になった。

「そうだね。そろそろマティアスも大きくなったし、この村までなら自由に来ていいことにしようか。リネット村までなら歩いて10分くらいだからね。」

不思議そうにしていたのがわかったのかハインツはマティアスに向かっていった。今まで屋敷内だった行動範囲がリネット村まで広がったことにマティアスは喜びを隠せなかった。

「じゃあ、カミル今度遊ぼう。」

「ん、また来るといい。」

カミルと別れた他の畑を見て回った後、僕たちは村長の家に戻った。

「領主様、マティアス様、本日はありがとうございました。」

「こちらこそありがとう。これからもよろしく頼むよ。」

「うん、僕もまた来るよ。」

村長の家で挨拶を終えた僕と父さんは馬車に乗り次の村に向かった。その後、2つの村を見て回ったけど、僕は疲れて帰りの馬車では眠ってしまっていた。

眠りについたマティアスは馬車に揺られ、いつの間に屋敷に到着していた。

「マティアス、今日見た村はどうだった?」

「畑が広くてすごかった。」

馬車を降りて屋敷までの道のりで、まだ目覚め切っていないマティアスにハインツが話しかけた。

「マティアスもネルフューア家の人間として、、、」

寝ぼけながら僕は父さんの話を聞いていたけれど、あまり聞こえなかったし、よくわからなかった。

「マティアスも少しずつ勉強していきなさい。」

そんな様子の僕を見た父さんは少し早かったかと笑いながら言った。


村への外出を自由にできるようになった僕は何度か村に通っていた。カミルと仲良くなり、村での遊びを教えてもらった。最初は、敬語を使った方がいいか悩んで変な口調で話しかけられた。カミルには友達になりたいからいつも通りの話し方でいい伝え、今ではお互い変に気を遣うことなく話せている。
そんな日々を過ごしていたある日、

「カルラが学園に入学したら、ニーナにはカルラのメイドとして学園について行ってもらうから、4月から新しいメイドがやってくるからよろしくね。」

貴族の子は学園の入寮の際、従者を一人つけることが認められている。カルラは一応身の回りのことは自分でできるが、見栄や実力を誇示するため、多くの貴族の子が従者をつけている。それに加え、カルラの日ごろの行いから、ニーナをつけることにしていた。その代わりといっては何だが、新しく人を雇うことになっていた。

「ニーナは4月からは王都でカルラのことをよろしく頼むよ。来年にはクラウスも入学するだろうからその時もよろしくね。」

クラウスの時は新しく従者は連れて行かず、ニーナにカルラとクラウスの二人を任せることになる。

「新しく来るメイドはもう決まっているのですか?」

クラウスがハインツに尋ねる。

「うん。この前の入学試験の時に僕とニーナで会って来たよ。」

「今年学園を卒業する子で、私の知り合いの妹よ。」

どうやら、新しいメイドは母さんの学園時代の後輩の妹で、今年学園を卒業する人らしい。頭が良くて、魔法も上手らしい。優しい人だといいな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...