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第10話
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「エマ~。兄様ですよ~。」
「あうあー。」
はぁ。エマはなんてかわいいんだろう。天使か。いや、天使なのだろう。
マティアスは自分でもわかるほどだらしない顔をしていた。
「はぁ、なんて緩み切った顔をしているの。」
あまりにも顔が緩んでいたため、アレクシアに呆れられてしまっていた。
「それにしてもマティアスは本当にエマが好きね。最近は毎日こうして会いに来てはだらしない顔をしているわね。」
「当然です。エマは可愛い妹ですから。だらしない顔はどうにもなりませんが。」
「そうね、マティアスが生まれたときときのカルラとクラウスもそうだったわね。そんなにだらしない顔はしていなかったけれど。」
やっぱり僕ってだらしない顔になっていたのか。
マティアスはエマに近づけるようになってからほとんど毎日会いに来てはずっと話しかけて、今にも溶けそうな顔で居座っていた。
特に最近はエマが反応を返してくれるのが嬉しく、ベルタの授業やラインハルトとの稽古でどんなに疲れていても一瞬で疲れが吹っ飛び、顔が緩んでしまっている。
「そういえば最近は魔法の授業が始まったみたいね。順調かしら?」
「順調だと思うよ。覚えることが多くて大変だけど、わかることが増えるのは楽しいよ。」
「そう。それはよかったわね。マティアスも来年には適正検査を受けて魔法を使えるようになるわね。」
そう。僕もとうとう5か月後には適性検査を受けて、自分の適性属性がわかる。そして、魔法を使えるようになるのだ。
「母さんみたいに2つ適性があるといいな。いや、稀少属性がいいかな。」
マティアスは適正検査に対して胸を膨らませる。
「そうね、そうだといいわね。でも、適性がすべてではないわよ。まあ、どんな結果になっても私がしっかり魔法を教えてあげるから安心しなさい。それに魔法を極めること自体とても難しいことなのだから。」
アレクシアは微笑みながらマティアス伝えた。アレクシア自身、四大属性をすべて習得するという偉業を成し遂げている。いや、ただ習得し使えるだけならば魔法師団を探せば少なくないだろう。しかし、まるで四大属性すべてが適性属性かの如く使いこなしているのは魔法師団を探してもごく限られた人間だけだろう。
―――
クラウス兄さんが王都から帰ってきた。当然試験は無事にクリアし、来年から王都で暮らすことが決まった。
「クラウスの従者のことも考えなくてはならないな。」
「そうね。カルラはニーナについて行ってもらっているけど。どうしようかしら。」
夕食後、ハインツとアレクシアは学園でクラウスの世話をする従者について話し合っていた。カルラもクラウスも自身のことは自分でできるからつける必要はないのだが、貴族の体裁を維持するため、カルラにはメイドのニーナを付けている。
「カルラは若干心配もあったしニーナを付けたけど、クラウスはこういうのはしっかりしているからね。」
「父様、母様、僕は従者がいなくても大丈夫です。学園にはニーナもいますし。」
クラウスが従者は必要ないと申し出た。カルラに付いていることにしているが、ネルフューア家の従者としてニーナがいる。それに、カルラと違いクラウスはしっかりしているので、ハインツとしては一考の余地があると思った。
「絶対にダメとは言わないけれど、従者はいた方がいいわ。」
しかし、アレクシアだけはクラウスの申し出に反対した。
「ニーナのように従者として出なくてもいいわ。今後クラウスがネルフューア家の長男として生活していくうえでもクラウス専属の従者がいてもいいと思うの。学園の生徒でもいいから従者つけるべきよ。」
「そういうものか。」
ハインツは頭を悩ませた。
ハインツは田舎の平民出身で元冒険者のため、あまりそういった伝手を持っていない。執事のラインハルトとメイドのニーナは元々アレクシアの実家であるアーレント商会で働いていた。今年入ってきたベルタもアレクシアの学園時代の後輩の妹で、ネルフューア家の従者はアレクシアの伝手を使って雇っている者が多い。
「う~ん、どうしようか。」
「できれば今年中に決めたいわね。」
こうして、クラウスの従者探しが始まった。
―――
「ねぇベルタ、適性属性の検査ってどうやってやるの?」
「はい、適性検査の儀では水晶に手をかざすと適性属性がわかります。」
マティアスはいつも通りベルタから魔法の授業を教わっていた。近づいてきた適性属性の検査についての疑問をぶつけた。
「なんで、水晶に手をかざしただけでわかるの?」
「水晶は魔道具の一つで、人の体から発せられる微弱な魔力を感知して検査を行います。まだ詳しい仕組みは解明されておらず、適性検査の魔道具は新たに人の手で作られたものは今のところ存在していません。」
マティアスの疑問になんなく答える。しかし、そんなことではマティアスの疑問は尽きなかった。むしろ魔道具について新たな疑問を生んでしまった。
「魔道具ってなに?作られてないってどういうこと?」
「魔道具とは、魔力を使って魔法を行使するもしくは魔力を利用して何かしらの事象を起こす道具のことです。魔道具の中には魔宝具と呼ばれるものがあります。これはダンジョンなどから見つかる魔道具で、旧時代に作られたとされ、現代文明ではその仕組みを解明するに至っていないものがほとんどです。」
膨らんだマティアスの疑問にも、表情一つ崩さずにベルタは答える。
「魔宝具は量産もできず、珍しいものではありますが、検査用の水晶はいくつも見つかっており、各領地に最低でも1つは置かれています。もっとも、領主ではなく教会などが管理していますが。」
「あうあー。」
はぁ。エマはなんてかわいいんだろう。天使か。いや、天使なのだろう。
マティアスは自分でもわかるほどだらしない顔をしていた。
「はぁ、なんて緩み切った顔をしているの。」
あまりにも顔が緩んでいたため、アレクシアに呆れられてしまっていた。
「それにしてもマティアスは本当にエマが好きね。最近は毎日こうして会いに来てはだらしない顔をしているわね。」
「当然です。エマは可愛い妹ですから。だらしない顔はどうにもなりませんが。」
「そうね、マティアスが生まれたときときのカルラとクラウスもそうだったわね。そんなにだらしない顔はしていなかったけれど。」
やっぱり僕ってだらしない顔になっていたのか。
マティアスはエマに近づけるようになってからほとんど毎日会いに来てはずっと話しかけて、今にも溶けそうな顔で居座っていた。
特に最近はエマが反応を返してくれるのが嬉しく、ベルタの授業やラインハルトとの稽古でどんなに疲れていても一瞬で疲れが吹っ飛び、顔が緩んでしまっている。
「そういえば最近は魔法の授業が始まったみたいね。順調かしら?」
「順調だと思うよ。覚えることが多くて大変だけど、わかることが増えるのは楽しいよ。」
「そう。それはよかったわね。マティアスも来年には適正検査を受けて魔法を使えるようになるわね。」
そう。僕もとうとう5か月後には適性検査を受けて、自分の適性属性がわかる。そして、魔法を使えるようになるのだ。
「母さんみたいに2つ適性があるといいな。いや、稀少属性がいいかな。」
マティアスは適正検査に対して胸を膨らませる。
「そうね、そうだといいわね。でも、適性がすべてではないわよ。まあ、どんな結果になっても私がしっかり魔法を教えてあげるから安心しなさい。それに魔法を極めること自体とても難しいことなのだから。」
アレクシアは微笑みながらマティアス伝えた。アレクシア自身、四大属性をすべて習得するという偉業を成し遂げている。いや、ただ習得し使えるだけならば魔法師団を探せば少なくないだろう。しかし、まるで四大属性すべてが適性属性かの如く使いこなしているのは魔法師団を探してもごく限られた人間だけだろう。
―――
クラウス兄さんが王都から帰ってきた。当然試験は無事にクリアし、来年から王都で暮らすことが決まった。
「クラウスの従者のことも考えなくてはならないな。」
「そうね。カルラはニーナについて行ってもらっているけど。どうしようかしら。」
夕食後、ハインツとアレクシアは学園でクラウスの世話をする従者について話し合っていた。カルラもクラウスも自身のことは自分でできるからつける必要はないのだが、貴族の体裁を維持するため、カルラにはメイドのニーナを付けている。
「カルラは若干心配もあったしニーナを付けたけど、クラウスはこういうのはしっかりしているからね。」
「父様、母様、僕は従者がいなくても大丈夫です。学園にはニーナもいますし。」
クラウスが従者は必要ないと申し出た。カルラに付いていることにしているが、ネルフューア家の従者としてニーナがいる。それに、カルラと違いクラウスはしっかりしているので、ハインツとしては一考の余地があると思った。
「絶対にダメとは言わないけれど、従者はいた方がいいわ。」
しかし、アレクシアだけはクラウスの申し出に反対した。
「ニーナのように従者として出なくてもいいわ。今後クラウスがネルフューア家の長男として生活していくうえでもクラウス専属の従者がいてもいいと思うの。学園の生徒でもいいから従者つけるべきよ。」
「そういうものか。」
ハインツは頭を悩ませた。
ハインツは田舎の平民出身で元冒険者のため、あまりそういった伝手を持っていない。執事のラインハルトとメイドのニーナは元々アレクシアの実家であるアーレント商会で働いていた。今年入ってきたベルタもアレクシアの学園時代の後輩の妹で、ネルフューア家の従者はアレクシアの伝手を使って雇っている者が多い。
「う~ん、どうしようか。」
「できれば今年中に決めたいわね。」
こうして、クラウスの従者探しが始まった。
―――
「ねぇベルタ、適性属性の検査ってどうやってやるの?」
「はい、適性検査の儀では水晶に手をかざすと適性属性がわかります。」
マティアスはいつも通りベルタから魔法の授業を教わっていた。近づいてきた適性属性の検査についての疑問をぶつけた。
「なんで、水晶に手をかざしただけでわかるの?」
「水晶は魔道具の一つで、人の体から発せられる微弱な魔力を感知して検査を行います。まだ詳しい仕組みは解明されておらず、適性検査の魔道具は新たに人の手で作られたものは今のところ存在していません。」
マティアスの疑問になんなく答える。しかし、そんなことではマティアスの疑問は尽きなかった。むしろ魔道具について新たな疑問を生んでしまった。
「魔道具ってなに?作られてないってどういうこと?」
「魔道具とは、魔力を使って魔法を行使するもしくは魔力を利用して何かしらの事象を起こす道具のことです。魔道具の中には魔宝具と呼ばれるものがあります。これはダンジョンなどから見つかる魔道具で、旧時代に作られたとされ、現代文明ではその仕組みを解明するに至っていないものがほとんどです。」
膨らんだマティアスの疑問にも、表情一つ崩さずにベルタは答える。
「魔宝具は量産もできず、珍しいものではありますが、検査用の水晶はいくつも見つかっており、各領地に最低でも1つは置かれています。もっとも、領主ではなく教会などが管理していますが。」
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