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終わり
李音の恋
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少し落ち着いた俺たちはまた酒を飲みながら話を始めた。
「じゃあ次は俺ね」
と俺が言うと、
「え!? 初めて聞く! やっと教えてくれるの?」
さっきまで泣いてた星矢の表情が変わった。
「かいつまんで話すだけだよ?」
「それって今付き合っている人の話?」
とリオンが聞いてきた。
「そうだね。俺がこの会社に入社して2年くらい経った頃、大学の友達と飲み会があったんだ。男ばっかだったし、仲のいいやつばっかだったから、調子乗って飲みすぎてさ。終電逃して、タクシー乗るか悩んでたら、ちょうど知り合いが運転する車から俺を見つけて、"乗って帰る?"って声をかけてくれたんだ」
「へぇ。それで?」
「それで俺も"いいんですかー?"とか言って、ダル絡みして車に乗せてもらった。そのあとはあんまり覚えてないけど、とりあえずすごく迷惑をかけてしまった記憶があって、後日にお礼とお詫びで食事に誘ったんだ」
「うん」
「その食事の時間がすごく楽しくて、また帰りに"帰りたくない"とか言って迷惑かけちゃってさ。バカでしょ? せっかく車で送ってくれようとしてるのに」
「お前そんなキャラだっけ?」
「おかしいよな。それでどうしようってなってテンパってたらキスされて、"楽しかったよ。この続きはまた今度ね"って言われた。そっから何回か食事行くうちに前より仲良くなって、俺から付き合ってほしいって言ったんだ」
「そんなことがあったのか。俺でさえ知らんかったわ」
「先輩に選んでもらったしきたりリングは外したくないって言ったら、じゃあ一緒につけてもおかしくない物を選びに行こうって言ってくれた。指輪はそれから左に付け替えたんだよ」
「何それー! かっちょいいじゃん」
「向こうは忙しくてあんまり会えないけど、それでも俺のことを想ってくれてると思ってるんだ」
「そっか……幸せか?」
「うん。たぶんね」
「ならいい!」
と言って、星矢はポテチと酒を口にした。
~~~~~~~~~~
帰ろうとして会社のエレベーターを降りた時、あの人からメッセージが届いた。
"まだ会社?"
急いで返信する。
"今出ようとしたところ"
"それは残念。せっかく今着いたのに"
俺の鼓動は一気に高鳴る。
"待ってて。すぐ行く!"
と返信を送ると、
「ごめん。明日までに経理に出す書類作んなきゃいけなくて少しだけやって帰るから先に帰って」
と2人に言った。
「手伝うか?」
と言ってくれた星矢に、
「たぶん20分くらいでできるから大丈夫! 今日はありがとう!」
と手を振った。
「おう。また明日な」
と2人を送り出すと、俺は急いでオフィスへ。
個室の部屋の1箇所だけ、うっすらと灯りが漏れている。
パソコンの光だろう。
部屋をノックする。
「どうぞ」
とあの人の声がして、俺は嬉しくて扉を勢いよく開けた。
「李音。扉、壊すなよ」
と笑ってこっちを見る。
「なんでいるの!? 今日は出張でしょ?」
「早く終わらせて戻ってきた。誕生日に、どうしても直接おめでとうって言いたくて」
「嬉しい!」
俺は椅子に座っているあの人に抱きついて言った。
「おいで」
と膝を手でトントンとたたく。
俺は同じ方向を向くように膝に座った。
「どうしてそっち向き? それじゃ顔が見えないよ」
「うん」
俺は彼に向き合って、膝に跨るように座り直した。
「誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。宮原部長」
「2人の時に部長はやめろよ」
「ありがとう。理玖」
そう言って俺たちはキスを交わした。
会えると思ってなかったのに会えたことが嬉しくて、彼の唇をいつも以上に求めてしまう。
「どうした?」
「嬉しくて……」
「可愛いな」
「本当にありがとう」
「このまま押し倒したいくらいだけど、流石に会社ではまずいよな。明日も仕事あるし、家に送るよ」
「うん」
嬉しさのあまり放り投げたカバンを拾った時、扉の外でカタンと音がした。
「今の……」
「どうした?」
「外で音が……」
「見てくるよ」
部長が見に行ったときは誰もいなかった。
「大丈夫みたいだよ。帰ろう」
2人で部屋を出る時、俺はあることに気付いた。
あの物音は俺の恋の終わりを告げる音だった。
「じゃあ次は俺ね」
と俺が言うと、
「え!? 初めて聞く! やっと教えてくれるの?」
さっきまで泣いてた星矢の表情が変わった。
「かいつまんで話すだけだよ?」
「それって今付き合っている人の話?」
とリオンが聞いてきた。
「そうだね。俺がこの会社に入社して2年くらい経った頃、大学の友達と飲み会があったんだ。男ばっかだったし、仲のいいやつばっかだったから、調子乗って飲みすぎてさ。終電逃して、タクシー乗るか悩んでたら、ちょうど知り合いが運転する車から俺を見つけて、"乗って帰る?"って声をかけてくれたんだ」
「へぇ。それで?」
「それで俺も"いいんですかー?"とか言って、ダル絡みして車に乗せてもらった。そのあとはあんまり覚えてないけど、とりあえずすごく迷惑をかけてしまった記憶があって、後日にお礼とお詫びで食事に誘ったんだ」
「うん」
「その食事の時間がすごく楽しくて、また帰りに"帰りたくない"とか言って迷惑かけちゃってさ。バカでしょ? せっかく車で送ってくれようとしてるのに」
「お前そんなキャラだっけ?」
「おかしいよな。それでどうしようってなってテンパってたらキスされて、"楽しかったよ。この続きはまた今度ね"って言われた。そっから何回か食事行くうちに前より仲良くなって、俺から付き合ってほしいって言ったんだ」
「そんなことがあったのか。俺でさえ知らんかったわ」
「先輩に選んでもらったしきたりリングは外したくないって言ったら、じゃあ一緒につけてもおかしくない物を選びに行こうって言ってくれた。指輪はそれから左に付け替えたんだよ」
「何それー! かっちょいいじゃん」
「向こうは忙しくてあんまり会えないけど、それでも俺のことを想ってくれてると思ってるんだ」
「そっか……幸せか?」
「うん。たぶんね」
「ならいい!」
と言って、星矢はポテチと酒を口にした。
~~~~~~~~~~
帰ろうとして会社のエレベーターを降りた時、あの人からメッセージが届いた。
"まだ会社?"
急いで返信する。
"今出ようとしたところ"
"それは残念。せっかく今着いたのに"
俺の鼓動は一気に高鳴る。
"待ってて。すぐ行く!"
と返信を送ると、
「ごめん。明日までに経理に出す書類作んなきゃいけなくて少しだけやって帰るから先に帰って」
と2人に言った。
「手伝うか?」
と言ってくれた星矢に、
「たぶん20分くらいでできるから大丈夫! 今日はありがとう!」
と手を振った。
「おう。また明日な」
と2人を送り出すと、俺は急いでオフィスへ。
個室の部屋の1箇所だけ、うっすらと灯りが漏れている。
パソコンの光だろう。
部屋をノックする。
「どうぞ」
とあの人の声がして、俺は嬉しくて扉を勢いよく開けた。
「李音。扉、壊すなよ」
と笑ってこっちを見る。
「なんでいるの!? 今日は出張でしょ?」
「早く終わらせて戻ってきた。誕生日に、どうしても直接おめでとうって言いたくて」
「嬉しい!」
俺は椅子に座っているあの人に抱きついて言った。
「おいで」
と膝を手でトントンとたたく。
俺は同じ方向を向くように膝に座った。
「どうしてそっち向き? それじゃ顔が見えないよ」
「うん」
俺は彼に向き合って、膝に跨るように座り直した。
「誕生日おめでとう」
「ありがとうございます。宮原部長」
「2人の時に部長はやめろよ」
「ありがとう。理玖」
そう言って俺たちはキスを交わした。
会えると思ってなかったのに会えたことが嬉しくて、彼の唇をいつも以上に求めてしまう。
「どうした?」
「嬉しくて……」
「可愛いな」
「本当にありがとう」
「このまま押し倒したいくらいだけど、流石に会社ではまずいよな。明日も仕事あるし、家に送るよ」
「うん」
嬉しさのあまり放り投げたカバンを拾った時、扉の外でカタンと音がした。
「今の……」
「どうした?」
「外で音が……」
「見てくるよ」
部長が見に行ったときは誰もいなかった。
「大丈夫みたいだよ。帰ろう」
2人で部屋を出る時、俺はあることに気付いた。
あの物音は俺の恋の終わりを告げる音だった。
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