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落花狼藉
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俺たちが付き合い始めて1年が経った。
亮とは楽しくて、穏やかな日々を過ごしている。
優子先輩は大学を卒業し、子供のいない親戚が持て余していた、古い工房を土地ごと譲り受け、改装して食器や小物のセレクトショップを始めた。
節約のために俺たちも改装を手伝った。
亮は、2年の終わりに提出した課題が、何とかって賞を獲った。
俺たち3人は毎月、月末の金曜日は、亮の家で夕食を食べる約束をしている。
俺たちが付き合い始めたときに始めた習慣だった。
忙しい森田先輩も、時々顔を出してくれた。
4月の月末の金曜日。俺たちは亮の部屋で鍋をしていた。
「先輩!お店、おめでとうございます!亮。お前の賞もすごいよ!おめでとう!」
3人で乾杯した。
この1年、俺は本当に幸せだった。
優子先輩と亮がそばにいてくれて、本当に穏やかに暮らせていたんだ。
それから何週間か経った。
とある金曜日、俺は亮の家に向かっていて、その角を曲がればもうすぐ亮の家ってところで、後ろから何かを嗅がされ気を失った。
ザーっというシャワーの音で目が覚めた。
ここは?亮の家?
じゃないな…
気付いたら、俺は手を縛られていた。
嫌な予感がした。
「起きた?」
「何であんたがここに?っていうかここはどこ?」
「ここはねー。古いラブホの一室なんだよ…耳の遠いお婆さんが1人、フロントにいるだけだから、便利でさー。叫んでも無駄だからね。おーい!眼を覚ましたぞー」
と言うと、ロン毛とメガネと金髪の男が風呂場にやってきた。
メガネの男は動画を撮っているようだった。
「いや、本物マジで可愛いじゃん」
とロン毛が言った。何言ってんのこいつ。
「もう3回も洗ったから、大丈夫だよな?ベッドに連れて行って、俺、先にいい?」
「いや、ここで俺が一回確かめる…」
「やめろよ…やだ!」
興奮した男は
「お前の好きな、苺味のゴム付けて挿れるからさー」
と言って、新しいコンドームの箱を開ける。
1つそれを自分のに着けると、軽くローションを塗った俺の中に突っ込んだ。
「嫌だ!やめろ!…やだ…やっ!」
「相変わらず気持ち良すぎだぞ、お前…じゃあ向こうに連れて…」
と言った時、部屋の方から別の男の声がした。
「蒼?どこ?蒼!」
亮だ…亮も居たのか…?あの時何が起きたんだろう。
「風呂場にいるよー!今から行くから待っててねー」
と笑いながら、金髪が言った。
「せっかくだから、彼氏にも観てもらおう」
と男たちは俺を抱えて、部屋に連れて行った。
「蒼…」
「亮…」
俺と同じように裸にされ、手を後ろで縛られている。
亮は足も縛られていた。
暴れたんだろうか。俺の鞄から飛び出たであろう、財布やらスマホが転がっている…
「何で亮まで!」
と男を睨んだ。
「お前の携帯のメールで呼び出したら、すぐにアパートから出てきてさ!薬嗅がせて気絶させたんだよ!連れてくんの大変だったけど、お前は俺のもんだって教えとかなきゃいけないと思って…」
「俺はあんたのもんじゃない!」
「俺、大学辞めて、親父の会社入ったんだけど、ずっとお前のこと忘れられなくてさ。今までで1番気持ち良かったんだよ。他の人も試したけどダメでさー。お前以上の人が居なくて、ずっとお前を探してたんだ。そしたら先月末の金曜日に、お前らが一緒に歩いてるの、このロン毛が見つけてさ。後つけさせたら、一緒に部屋に入ってくじゃん?俺カーッとなって、すぐにそこ行って押し込もうかと思ったんだけど、ふと思ったんだよ。それよりもっと良い方法があるって。それで準備して今日決行したってわけ」
先月末の金曜日…
俺はゾッとした。
あの時、部屋には優子先輩もいたからだ。
良かった。あの日じゃなくて。
あの日だったら、先輩もただでは済まなかったかも。
本当に良かった。
「良い方法ってのが、あんたと俺がヤってるとこを、亮に見せるってこと?」
「そう!俺のものに手を出すなって知らしめようと思って。どう?良い考えだろ?」
「もう、あんたの言いなりにはならないよ」
「あんときの気持ちよさ思い出したら、お前も興奮するだろ?」
「そんなもん覚えてないし、あんたなんかには興奮しない」
「あの動画観て、思い出せよー」
「もうあの動画は消しただろ?それにあれは、あんたが無理矢理言わせたんだ。感じてるフリすれば、早く終わると思って、こっちは演技もしてたんだよ!気持ち良くも何ともなかったけどね。誰かは勘違いしてたな?てか俺、そこのロン毛の人知らないけど、なんでお兄さんは俺のこと知ってんの?」
「見せてやれよ…」
「コイツさ。ずっとお前のこと狙ってて、ずっと前から盗撮したりしてたんだぜ?お前のこと、睡眠薬で眠らせて無理やり言うこと聞かせた日から、初めて中に挿れた日、初めて感じてくれた日とか言って、俺を羨ましがらせるために、隠して撮った動画、いっぱい送ってくんのよ。でも俺もお前の顔観て、興奮しちゃってさ。綺麗な顔してるし、声とかもエロいし、何回その動画で抜いたか…消さなきゃいけなくなったって、落ち込んでたから、1本10万で、また送ってやったんだよー」
その時、
「やめてくれ…」
亮が絞り出すように言った。
「やめないよ!ちゃんと見ろよ!」
男が携帯の中の動画を起動する。
「もっとくださいって、言ってみろよ。ほら奥まで当たってんぞ!言わなきゃ動画ばら撒くぞ!」
「せんぱ…い……奥まで、来てる…もっとください」
「やめろ!」
亮が体をよじって体当たりしようとする。
「黙って聞いてろって!」
と明石先輩は亮の腹を蹴った。
「やめて!先輩…亮には手を出さないで!」
「なるほど?今は亮がお前の弱点なんだな。そういや亮。絵、描いてたよな?」
そう言うと亮の後ろに回って、俺に縛っている手が見えるように椅子に座らせた。
「なんか賞も取ったらしいじゃん?お前の指、一本ずつ折ってったら、もう何も描けなくなるんじゃないのか?」
酷すぎる…俺の体温が、一気に下がった気がした。
「俺の指くらいで蒼を離してくれるなら、10本でも20本でも折ってください」
「えーかっこいい!じゃあまずは、大事な利き手の親指から…」
と先輩が手を伸ばそうとしたところで、俺は懇願した。
「やめて…先輩。本当にそれだけはやめてください。俺言うこと聞くんで、それでどうか…」
「そう?嬉しいなー。じゃあ縄解くから、暴れるなよ。その時はそいつの指、全部折るからな?」
と言って俺の手を縛っていた縄を解いた。
「じゃあまず眼を見て、キスしろよ!」
「や…」
「あれ?そんなこと言って大丈夫?亮の指…」
「わ、わかったからやめて」
俺は先輩の眼を見つめてキスをした。
「その眼、俺を見つめるその眼がたまんないんだよ。キスも上手いしなー。お前を知ったら、他のやつはもう無理だわー」
「マジで?じゃあ俺にもしてよ!」
金髪が無理やり俺にキスをした。
吐き気を我慢しながらキスを返す。
「ゾクゾクするな」
と金髪が言う。
先輩はソファに座り、俺に言った。
「ほら!咥えろよ」
「やだ」
「指やられてもいーらしいよー?」
先輩がロン毛に言った。
亮に近付くロン毛に
「まって!わかった。するから…」
と俺は言って、先輩の脚の間に入り、ゆっくりと舐め始めた。
「おぉ…あん時は舐めなくて良いって言ったけど、こんなに上手いんならやっといて貰えば良かったなー!そらキスも上手いんなら、舐めるのも上手いわなー!ほら!手はコイツらのを握ってやれよ!」
俺は無理やり先輩に、右手はずっと動画を撮っているメガネのを、左手は金髪のを握らされた。
もう最悪だ。
「よし。じゃあ準備は出来たから入れてやる!」
俺はベッドに上半身を押し付けられた。
「やめろ。やだ!んっ…いや…」
「嫌って言ったらどうなるんだっけー?もっと突いてください!だろ?ほら!言え!」
「…や……もっと…突いてください……」
「お!気持ち良すぎて言葉も出ないってよ!ほら!お前も見てあげなよ。自分の時より感じてる恋人をさー!」
ロン毛がずっと顔を背けていた亮の顔を無理矢理こっちに向ける。
亮と眼が合った…
「ダメだ!亮、見ちゃダメだ!頼むから、見るな…」
そう言うと同時に、先輩は1度目を終えて、メガネからスマホを取り上げた。
次はメガネか。
1人はスマホで撮影。1人は亮の顔を俺に向ける。そして1人は俺の顔を亮に向ける。そうやって交代しながら、全員1度目を終えた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
疲れた。
そう思っていると、金髪が、
「おい!コイツ恋人が犯されてんの見て興奮してんぞ!」
と亮の下半身を見て言った。
俺も気付いていた。
亮は俺の眼を見たから、そうなったんだ。いつもそうだもんな。パブロフの犬…
冷静に分析している場合じゃない。
なんとか助けを呼べないか?
その時、先輩が言った。
「そいつ連れて来い」
亮を無理矢理ベッドに運び、上向きに寝かせると、
「普段どんな感じでやってんの?ちょっとお前上乗って見せろよ」
とベッドに寝かせた亮の上に、俺を跨がせていった。
「えっ?」
「ほら!そいつの上で腰振れって言ってんだよ!」
先輩は俺を無理矢理亮の上に座らせた。
「やめっ…!」
男4人に抵抗しても、無駄だった。
「あっ…!」
ごめんな、亮。
散々コイツらにかき回された後の俺の中で、亮は何を思いながら、自分の上で腰を振る俺を見てるんだろう…
「だ、だめ…うっ!」
と亮が言ったのと同時に、俺も亮の上に倒れ込んだ。
「はっ!コイツはえーな!そんなんじゃ満足できねーよなー!?」
俺たちのを見ていて興奮したのか、また固くなったそれを俺に突っ込んだ。
ロン毛がまた亮を椅子に座らせて、頭を抑える。
「いや、やめ…やだ…っ!」
仰向けにした俺に、キスをしながら明石先輩は腰を動かし続けた。
抵抗する力もない。
「明石!あの薬やべーな。とまんねーわ!」
と先輩の後で金髪が来た。
2周目までははっきり覚えている。
ふと亮を見た。
頭を抑えられたまま俺を見てる。
眼を合わすと、また大変なことになると思って俺はそっと眼を閉じた。
その後何回、相手させられたのか覚えてない…
そんな時、パトカーのサイレンが聞こえた気がした。
慌てて逃げ出す先輩たち。
最後、明石先輩は亮の耳元で、何かを囁いてから部屋を飛び出して行った。
俺が眼を覚ますと、そこは病院だった。
目覚めた俺の横に、俺を心配そうに見つめる、優子先輩と亮がいた。
「どうして?ここって親父の病院?」
「そう。ここが1番安心かと思って…」
と亮が言うと、
「ごめんね。助けるの遅くなって…ごめんね…」
そう言って先輩は泣いた。
「どういうこと?」
「亮がね…」
と先輩が2日前の夜に起きたことを話し始めた。
あの夜、俺のスマホを使って呼び出された亮も、同じく薬を嗅がされ意識を失った。
ホテルに着いて、縛られている間に意識が戻り、全員が呼ばれてバスルームに行った間に、ズボンのポケットに入ったままの自分のスマホを探して、手を縛られながらもやっとのことで電話した。
それが優子先輩だった。
警察に直接電話しようと思ったが、イタズラだと思われて切られたら困ると、優子先輩に電話をしたと亮は言った。
「拉致された。蒼を助けて。たぶん俺も一緒に拉致されたけど、縛られていて動けないし、ここがどこかもわからない…」
その時、男たちが戻ってくる気配を感じ、通話状態のまま、自分のスマホをベッドの下に隠した。
優子先輩は、それを聞いて愕然としたが、咄嗟に録音し、1番近くの交番に駆け込んだ。
交番の警官もそのやりとりを聞いて、無理矢理拉致され強姦されたことを知り、GPSで場所を特定しようとしたが、
途中で亮のスマホの充電が切れ、場所を探すのに時間を要したと言っていた。
でも何時間にも思えたあの出来事はたった1、2時間かそこらの出来事だったらしい。
病室で警官に話を聞かれた。
聞きにくそうにしていたし、俺も話しにくかったが、ちゃんと捜査をしてくれると言った。
先輩が俺が眠っている間に、昔のことも話したらしい。
その時は、被害にあった全員が、恐怖とトラウマに悩んでいたこと、大事にしたくなくて、示談に応じてしまったことも。
聴取が終わろうとした時、ドアをノックする音がした。
「はい」
入ってきたのは、父さんと母さんと、この病院で研修医として働き始めたばかりの兄さんだった。
警官と亮と先輩は、父さんたちにペコっとお辞儀をして、部屋を出て行こうとした。
「亮くんだったね?君はここにいてもらえるかな…」
父さんは亮を呼び止めた。
他の人が出て行ったその瞬間、母さんは号泣しながら俺を抱きしめた。
兄さんも後ろで、静かに泣いている。
父さんは険しい顔で言った。
「どうしてだ。なぜもっと早く言わなかった!最初の……その時に言ってればこんなことには…」
「父さん、ごめん」
「君は最初の時から知ってだんだな?」
と亮に聞く。
「はい。すみません」
「亮は悪くないよ!亮と先輩はずっと苦しむ俺を支えてくれた。誰にも言わないでって俺が言ったんだ。面白おかしく騒ぎ立てる人もいるかもしれない…1人でも知ってる人が少ない方がいいと思ったから」
「だとしても、私たちは家族だぞ!」
「家族だからだよ!…父さんたちや、病院やそこで働く人、それに患者さんにも迷惑をかけたくなかった…それに、これ以上父さんの期待を裏切りたくなかった。息子たちに医者になってほしいと望んでただろ?兄さんはその期待に応えた。でも俺は美大に行くなんて言い出して、そこでこんな目に遭ったら、そら見たことかって、がっかりさせると思った…」
「蒼。俺はな。お前たちの人生に期待している。確かに医者になって、2人で俺を支えてくれるならそれは最高だが、子供は親の好き勝手に出来るもんじゃない。お前たちが自分の人生を自分で満足いくように送ってほしい。そう期待している…」
父さんも心配してくれたんだな。
「亮くん。君が竹本さんに電話して、助けを呼んでほしいと頼んだそうだね?」
「はい。もっと良い方法があったかもしれませんが、咄嗟に思いついてそうしました」
「ありがとう。君たちがいなければ、蒼はもっと酷い目に遭っていたかもしれない。本当にありがとう…」
と頭を下げた父さんの肩は少し震えていた。
「じゃあ蒼、落ち着いたら、残ってる検査をするからな?」
「うん。あ、父さん!一緒に亮の検査もしてほしいんだ。俺と同じように…亮にも薬嗅がせたって言ってたし、あいつら変な薬とか飲んでたみたいだから、もしかしたら体に変なもん入れられてたりしたら怖いし…」
「わかった。2人とも準備できたら看護師に連絡してくれ」
「ありがとう」
父さんたちが病室を出て、俺たちは2人っきりになった。
亮は隣の丸椅子に座った。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
と亮を見つめる。
「だから、見んなって」
と眼を逸らす。
「パブロフの犬?また大きくなっちゃう?なぁ、こっち見て…」
と俺はキスをした。
「これ以上はここでは無理だから、退院したらね?」
「バカ…」
と顔を赤くしていた。
亮とは楽しくて、穏やかな日々を過ごしている。
優子先輩は大学を卒業し、子供のいない親戚が持て余していた、古い工房を土地ごと譲り受け、改装して食器や小物のセレクトショップを始めた。
節約のために俺たちも改装を手伝った。
亮は、2年の終わりに提出した課題が、何とかって賞を獲った。
俺たち3人は毎月、月末の金曜日は、亮の家で夕食を食べる約束をしている。
俺たちが付き合い始めたときに始めた習慣だった。
忙しい森田先輩も、時々顔を出してくれた。
4月の月末の金曜日。俺たちは亮の部屋で鍋をしていた。
「先輩!お店、おめでとうございます!亮。お前の賞もすごいよ!おめでとう!」
3人で乾杯した。
この1年、俺は本当に幸せだった。
優子先輩と亮がそばにいてくれて、本当に穏やかに暮らせていたんだ。
それから何週間か経った。
とある金曜日、俺は亮の家に向かっていて、その角を曲がればもうすぐ亮の家ってところで、後ろから何かを嗅がされ気を失った。
ザーっというシャワーの音で目が覚めた。
ここは?亮の家?
じゃないな…
気付いたら、俺は手を縛られていた。
嫌な予感がした。
「起きた?」
「何であんたがここに?っていうかここはどこ?」
「ここはねー。古いラブホの一室なんだよ…耳の遠いお婆さんが1人、フロントにいるだけだから、便利でさー。叫んでも無駄だからね。おーい!眼を覚ましたぞー」
と言うと、ロン毛とメガネと金髪の男が風呂場にやってきた。
メガネの男は動画を撮っているようだった。
「いや、本物マジで可愛いじゃん」
とロン毛が言った。何言ってんのこいつ。
「もう3回も洗ったから、大丈夫だよな?ベッドに連れて行って、俺、先にいい?」
「いや、ここで俺が一回確かめる…」
「やめろよ…やだ!」
興奮した男は
「お前の好きな、苺味のゴム付けて挿れるからさー」
と言って、新しいコンドームの箱を開ける。
1つそれを自分のに着けると、軽くローションを塗った俺の中に突っ込んだ。
「嫌だ!やめろ!…やだ…やっ!」
「相変わらず気持ち良すぎだぞ、お前…じゃあ向こうに連れて…」
と言った時、部屋の方から別の男の声がした。
「蒼?どこ?蒼!」
亮だ…亮も居たのか…?あの時何が起きたんだろう。
「風呂場にいるよー!今から行くから待っててねー」
と笑いながら、金髪が言った。
「せっかくだから、彼氏にも観てもらおう」
と男たちは俺を抱えて、部屋に連れて行った。
「蒼…」
「亮…」
俺と同じように裸にされ、手を後ろで縛られている。
亮は足も縛られていた。
暴れたんだろうか。俺の鞄から飛び出たであろう、財布やらスマホが転がっている…
「何で亮まで!」
と男を睨んだ。
「お前の携帯のメールで呼び出したら、すぐにアパートから出てきてさ!薬嗅がせて気絶させたんだよ!連れてくんの大変だったけど、お前は俺のもんだって教えとかなきゃいけないと思って…」
「俺はあんたのもんじゃない!」
「俺、大学辞めて、親父の会社入ったんだけど、ずっとお前のこと忘れられなくてさ。今までで1番気持ち良かったんだよ。他の人も試したけどダメでさー。お前以上の人が居なくて、ずっとお前を探してたんだ。そしたら先月末の金曜日に、お前らが一緒に歩いてるの、このロン毛が見つけてさ。後つけさせたら、一緒に部屋に入ってくじゃん?俺カーッとなって、すぐにそこ行って押し込もうかと思ったんだけど、ふと思ったんだよ。それよりもっと良い方法があるって。それで準備して今日決行したってわけ」
先月末の金曜日…
俺はゾッとした。
あの時、部屋には優子先輩もいたからだ。
良かった。あの日じゃなくて。
あの日だったら、先輩もただでは済まなかったかも。
本当に良かった。
「良い方法ってのが、あんたと俺がヤってるとこを、亮に見せるってこと?」
「そう!俺のものに手を出すなって知らしめようと思って。どう?良い考えだろ?」
「もう、あんたの言いなりにはならないよ」
「あんときの気持ちよさ思い出したら、お前も興奮するだろ?」
「そんなもん覚えてないし、あんたなんかには興奮しない」
「あの動画観て、思い出せよー」
「もうあの動画は消しただろ?それにあれは、あんたが無理矢理言わせたんだ。感じてるフリすれば、早く終わると思って、こっちは演技もしてたんだよ!気持ち良くも何ともなかったけどね。誰かは勘違いしてたな?てか俺、そこのロン毛の人知らないけど、なんでお兄さんは俺のこと知ってんの?」
「見せてやれよ…」
「コイツさ。ずっとお前のこと狙ってて、ずっと前から盗撮したりしてたんだぜ?お前のこと、睡眠薬で眠らせて無理やり言うこと聞かせた日から、初めて中に挿れた日、初めて感じてくれた日とか言って、俺を羨ましがらせるために、隠して撮った動画、いっぱい送ってくんのよ。でも俺もお前の顔観て、興奮しちゃってさ。綺麗な顔してるし、声とかもエロいし、何回その動画で抜いたか…消さなきゃいけなくなったって、落ち込んでたから、1本10万で、また送ってやったんだよー」
その時、
「やめてくれ…」
亮が絞り出すように言った。
「やめないよ!ちゃんと見ろよ!」
男が携帯の中の動画を起動する。
「もっとくださいって、言ってみろよ。ほら奥まで当たってんぞ!言わなきゃ動画ばら撒くぞ!」
「せんぱ…い……奥まで、来てる…もっとください」
「やめろ!」
亮が体をよじって体当たりしようとする。
「黙って聞いてろって!」
と明石先輩は亮の腹を蹴った。
「やめて!先輩…亮には手を出さないで!」
「なるほど?今は亮がお前の弱点なんだな。そういや亮。絵、描いてたよな?」
そう言うと亮の後ろに回って、俺に縛っている手が見えるように椅子に座らせた。
「なんか賞も取ったらしいじゃん?お前の指、一本ずつ折ってったら、もう何も描けなくなるんじゃないのか?」
酷すぎる…俺の体温が、一気に下がった気がした。
「俺の指くらいで蒼を離してくれるなら、10本でも20本でも折ってください」
「えーかっこいい!じゃあまずは、大事な利き手の親指から…」
と先輩が手を伸ばそうとしたところで、俺は懇願した。
「やめて…先輩。本当にそれだけはやめてください。俺言うこと聞くんで、それでどうか…」
「そう?嬉しいなー。じゃあ縄解くから、暴れるなよ。その時はそいつの指、全部折るからな?」
と言って俺の手を縛っていた縄を解いた。
「じゃあまず眼を見て、キスしろよ!」
「や…」
「あれ?そんなこと言って大丈夫?亮の指…」
「わ、わかったからやめて」
俺は先輩の眼を見つめてキスをした。
「その眼、俺を見つめるその眼がたまんないんだよ。キスも上手いしなー。お前を知ったら、他のやつはもう無理だわー」
「マジで?じゃあ俺にもしてよ!」
金髪が無理やり俺にキスをした。
吐き気を我慢しながらキスを返す。
「ゾクゾクするな」
と金髪が言う。
先輩はソファに座り、俺に言った。
「ほら!咥えろよ」
「やだ」
「指やられてもいーらしいよー?」
先輩がロン毛に言った。
亮に近付くロン毛に
「まって!わかった。するから…」
と俺は言って、先輩の脚の間に入り、ゆっくりと舐め始めた。
「おぉ…あん時は舐めなくて良いって言ったけど、こんなに上手いんならやっといて貰えば良かったなー!そらキスも上手いんなら、舐めるのも上手いわなー!ほら!手はコイツらのを握ってやれよ!」
俺は無理やり先輩に、右手はずっと動画を撮っているメガネのを、左手は金髪のを握らされた。
もう最悪だ。
「よし。じゃあ準備は出来たから入れてやる!」
俺はベッドに上半身を押し付けられた。
「やめろ。やだ!んっ…いや…」
「嫌って言ったらどうなるんだっけー?もっと突いてください!だろ?ほら!言え!」
「…や……もっと…突いてください……」
「お!気持ち良すぎて言葉も出ないってよ!ほら!お前も見てあげなよ。自分の時より感じてる恋人をさー!」
ロン毛がずっと顔を背けていた亮の顔を無理矢理こっちに向ける。
亮と眼が合った…
「ダメだ!亮、見ちゃダメだ!頼むから、見るな…」
そう言うと同時に、先輩は1度目を終えて、メガネからスマホを取り上げた。
次はメガネか。
1人はスマホで撮影。1人は亮の顔を俺に向ける。そして1人は俺の顔を亮に向ける。そうやって交代しながら、全員1度目を終えた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
疲れた。
そう思っていると、金髪が、
「おい!コイツ恋人が犯されてんの見て興奮してんぞ!」
と亮の下半身を見て言った。
俺も気付いていた。
亮は俺の眼を見たから、そうなったんだ。いつもそうだもんな。パブロフの犬…
冷静に分析している場合じゃない。
なんとか助けを呼べないか?
その時、先輩が言った。
「そいつ連れて来い」
亮を無理矢理ベッドに運び、上向きに寝かせると、
「普段どんな感じでやってんの?ちょっとお前上乗って見せろよ」
とベッドに寝かせた亮の上に、俺を跨がせていった。
「えっ?」
「ほら!そいつの上で腰振れって言ってんだよ!」
先輩は俺を無理矢理亮の上に座らせた。
「やめっ…!」
男4人に抵抗しても、無駄だった。
「あっ…!」
ごめんな、亮。
散々コイツらにかき回された後の俺の中で、亮は何を思いながら、自分の上で腰を振る俺を見てるんだろう…
「だ、だめ…うっ!」
と亮が言ったのと同時に、俺も亮の上に倒れ込んだ。
「はっ!コイツはえーな!そんなんじゃ満足できねーよなー!?」
俺たちのを見ていて興奮したのか、また固くなったそれを俺に突っ込んだ。
ロン毛がまた亮を椅子に座らせて、頭を抑える。
「いや、やめ…やだ…っ!」
仰向けにした俺に、キスをしながら明石先輩は腰を動かし続けた。
抵抗する力もない。
「明石!あの薬やべーな。とまんねーわ!」
と先輩の後で金髪が来た。
2周目までははっきり覚えている。
ふと亮を見た。
頭を抑えられたまま俺を見てる。
眼を合わすと、また大変なことになると思って俺はそっと眼を閉じた。
その後何回、相手させられたのか覚えてない…
そんな時、パトカーのサイレンが聞こえた気がした。
慌てて逃げ出す先輩たち。
最後、明石先輩は亮の耳元で、何かを囁いてから部屋を飛び出して行った。
俺が眼を覚ますと、そこは病院だった。
目覚めた俺の横に、俺を心配そうに見つめる、優子先輩と亮がいた。
「どうして?ここって親父の病院?」
「そう。ここが1番安心かと思って…」
と亮が言うと、
「ごめんね。助けるの遅くなって…ごめんね…」
そう言って先輩は泣いた。
「どういうこと?」
「亮がね…」
と先輩が2日前の夜に起きたことを話し始めた。
あの夜、俺のスマホを使って呼び出された亮も、同じく薬を嗅がされ意識を失った。
ホテルに着いて、縛られている間に意識が戻り、全員が呼ばれてバスルームに行った間に、ズボンのポケットに入ったままの自分のスマホを探して、手を縛られながらもやっとのことで電話した。
それが優子先輩だった。
警察に直接電話しようと思ったが、イタズラだと思われて切られたら困ると、優子先輩に電話をしたと亮は言った。
「拉致された。蒼を助けて。たぶん俺も一緒に拉致されたけど、縛られていて動けないし、ここがどこかもわからない…」
その時、男たちが戻ってくる気配を感じ、通話状態のまま、自分のスマホをベッドの下に隠した。
優子先輩は、それを聞いて愕然としたが、咄嗟に録音し、1番近くの交番に駆け込んだ。
交番の警官もそのやりとりを聞いて、無理矢理拉致され強姦されたことを知り、GPSで場所を特定しようとしたが、
途中で亮のスマホの充電が切れ、場所を探すのに時間を要したと言っていた。
でも何時間にも思えたあの出来事はたった1、2時間かそこらの出来事だったらしい。
病室で警官に話を聞かれた。
聞きにくそうにしていたし、俺も話しにくかったが、ちゃんと捜査をしてくれると言った。
先輩が俺が眠っている間に、昔のことも話したらしい。
その時は、被害にあった全員が、恐怖とトラウマに悩んでいたこと、大事にしたくなくて、示談に応じてしまったことも。
聴取が終わろうとした時、ドアをノックする音がした。
「はい」
入ってきたのは、父さんと母さんと、この病院で研修医として働き始めたばかりの兄さんだった。
警官と亮と先輩は、父さんたちにペコっとお辞儀をして、部屋を出て行こうとした。
「亮くんだったね?君はここにいてもらえるかな…」
父さんは亮を呼び止めた。
他の人が出て行ったその瞬間、母さんは号泣しながら俺を抱きしめた。
兄さんも後ろで、静かに泣いている。
父さんは険しい顔で言った。
「どうしてだ。なぜもっと早く言わなかった!最初の……その時に言ってればこんなことには…」
「父さん、ごめん」
「君は最初の時から知ってだんだな?」
と亮に聞く。
「はい。すみません」
「亮は悪くないよ!亮と先輩はずっと苦しむ俺を支えてくれた。誰にも言わないでって俺が言ったんだ。面白おかしく騒ぎ立てる人もいるかもしれない…1人でも知ってる人が少ない方がいいと思ったから」
「だとしても、私たちは家族だぞ!」
「家族だからだよ!…父さんたちや、病院やそこで働く人、それに患者さんにも迷惑をかけたくなかった…それに、これ以上父さんの期待を裏切りたくなかった。息子たちに医者になってほしいと望んでただろ?兄さんはその期待に応えた。でも俺は美大に行くなんて言い出して、そこでこんな目に遭ったら、そら見たことかって、がっかりさせると思った…」
「蒼。俺はな。お前たちの人生に期待している。確かに医者になって、2人で俺を支えてくれるならそれは最高だが、子供は親の好き勝手に出来るもんじゃない。お前たちが自分の人生を自分で満足いくように送ってほしい。そう期待している…」
父さんも心配してくれたんだな。
「亮くん。君が竹本さんに電話して、助けを呼んでほしいと頼んだそうだね?」
「はい。もっと良い方法があったかもしれませんが、咄嗟に思いついてそうしました」
「ありがとう。君たちがいなければ、蒼はもっと酷い目に遭っていたかもしれない。本当にありがとう…」
と頭を下げた父さんの肩は少し震えていた。
「じゃあ蒼、落ち着いたら、残ってる検査をするからな?」
「うん。あ、父さん!一緒に亮の検査もしてほしいんだ。俺と同じように…亮にも薬嗅がせたって言ってたし、あいつら変な薬とか飲んでたみたいだから、もしかしたら体に変なもん入れられてたりしたら怖いし…」
「わかった。2人とも準備できたら看護師に連絡してくれ」
「ありがとう」
父さんたちが病室を出て、俺たちは2人っきりになった。
亮は隣の丸椅子に座った。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
と亮を見つめる。
「だから、見んなって」
と眼を逸らす。
「パブロフの犬?また大きくなっちゃう?なぁ、こっち見て…」
と俺はキスをした。
「これ以上はここでは無理だから、退院したらね?」
「バカ…」
と顔を赤くしていた。
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涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
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