街コン!〜十日之菊〜

SHIZU

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不香の花

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「クリスマスどうする?」
新が言った。
今日も仕事終わりで、4人で飲んでいた。
「今年、24日は土曜日か…」
聡がスマホのカレンダーを見た。
「2人はデートだろ?」
と俺は向かいに座った、2人の顔を見た。
「もう今更わざわざデートとかしないですよ!」
「確かに。いつもと同じ、家で酒飲んで、音楽番組の特番でも観るかなー。新の好きなHIASOBI出るって言ってたし…な?」
「そだねー」
すると優子さんが言った。
「じゃあさ、4人でクリスマスパーティーしよ!」
「お店でですか?」
新が聞く。
「上だろ?奥は工房だけど、上は先輩の家なんだ」
「へー。便利ですね!」
「だから!しよ!部屋はいくつかあるから、帰るの面倒になったら、そのまま泊まってってもいいし!」
「パーティーしたいです!料理は聡が作ってくれるよな!」
「新はじゃあ、酒担当な」
「うん。美味しいワインがあるって、こないだ総司に教えてもらったから、それとか持ってくー」
「総司くんも誘えばいいんじゃない?」
と優子さんが言った。
「その日、翼が誕生日なんだって。だから2人でお祝いするって言ってました」
「じゃあ4人で先輩の家に集合だな」
「俺たちの教室が終わった後、食材買いに行くか。新も付き合えよ?」
「おー!」


クリスマスイブの日。
昼間は教室で、2人はペアのマグカップを作ることにした。
その後は買い出しに出掛けて行った。
俺はケーキ担当だ。
もちろん作るんじゃなくて、買いに行くんだけど。
近くのよく行くケーキ屋さんで、ショートケーキを予約していた。
上にサンタが乗ったやつ…
上のサンタは新に食べさそう。
「ただいまー」
「あ!お帰りー!早かったじゃない?」
優子さんはそう言いながら、飾り付けをしていた。
「みんな予約ばっかだったから」
「そっか。他どうする?何か準備することあるかな?」
「……」
「蒼?どうしたの?」
「先輩。俺先輩のこと、出会った時から好きでした。というか今も好きです。知ってたでしょ?」
「うん。知ってた」
と言ってへへっと笑った。
「何で今更言ったのかわかんないですけど、何となく言いたくなって…」
「うん。ありがとう」
「だからと言って、俺と付き合ってとか、そんなこと言いませんから…」
「うん。わかってる。私も蒼のこと大好きだよ。きっと、隆平さんに出会えてなかったら、私は蒼と付き合ってたかもなーって思ったことあるよ」
「…今からでも遅くないんだけどなー?」
「ふふ。今好きなのは私じゃないでしょ?」
聡のこと言ってるのか?
確かに好きだけど、新が傷付くなら、俺はあいつの側にはいられない。
「まぁ、気が向いたら言ってくださいよー。先輩ならいつでも大歓迎なんで。それ俺やりますよ。上に付けるんでしょ?」
「ありがとう」
その時、優子先輩の電話が鳴るのと同時に、聡が帰ってきた。
「あ。私電話出るから、鍵開けてあげて」
俺は玄関の扉を開けた。
店の前には白い車が停まっている。
「え?車?」
と聞くと
「そう。会社の。荷物運ぶのに便利だから、今日借りた」
と聡は言った。
「本当は色々メニュー考えてたけど、今日は雪降るくらい冷えるって言ってたんで、鍋しようと思って。いいですか?」
「いいじゃん!ちなみに何鍋?」
「海鮮。すき焼きもいいかなーって思ったけど、新の実家が北海道で、こないだ聡くんと食べなさいって、まーまーの量のカニ送ってきたらしくて。それがいまだに冷凍庫を圧迫してるから、あれ食べてくれると助かるって、今家に取りに帰ってる」
「カニ…良いじゃん!先輩も好きだから喜ぶよ」
「あとブリも買ってきた!鰤しゃぶもしよう!〆は雑炊で」
「いいね…無敵だね。そういえばその後、新とはどう?」
俺はトランクから、荷物を降ろしながら聞いた。
「まぁ、仲良くやってるよ。ご覧の通り…」
「それなら良かったよ」
「俺、ちゃんと新に話したんだ。蒼のこと…」
スーパーの袋を降ろそうとした俺を、後ろから抱きしめて聡が言う。
「は!?何を!?てか、こんなとこで何してんだよ!」
「実は新以外にも好きな人がいるって…」
「なんでそんな余計なことを…」
「余計じゃないよ。俺が悩んだ時、いつも助けてくれた人だからって言ったら、蒼さんでしょ?って言われた。いつも鈍い新も気付くくらいだから、俺、相当わかりやすかったのかな」
と笑っている。
「…新はなんて?」
「俺も蒼さん好きだよ!大人で優しくて、いつも見守られてる気がする。だから気持ちわかるよって、言ってた」
「や、まあ、ありがたいけど、それはまた違う問題というか、なんというか…」
「これでいいんだよ。俺が蒼を好きだからって、新への気持ちが減ったり、おろそかになるわけじゃない。それなのにコソコソしたりする方が、よくないと思って伝えた。それだけ」
「うん。お前らが納得してるなら、それでいいよ。それはそうと荷物運んで。準備始めよう」

俺たちは鍋の用意をして、リビングのカセットコンロに鍋を移した時、新と先輩が上がってきた。
「カニ、久しぶりだ。新は北海道出身だったんだな?」
「そうなんですよー。大学からこっちなんです。毎年、カニとか鮭とか送ってくるんですけど、1人で食べれる量じゃないんで、聡にも手伝ってもらってるって言ったら、聡の分もプラスで送ってくるようになって…意味わかんないでしょ?」
「子供思いなんだよ。良い親じゃん」
と俺は言った。
みんなで鍋を囲む。
楽しかった。
嫌なこと、忘れるくらい…

4人で、ご飯の後は歌番組を見ていた。
最近流行りの歌は、あんまりわからない。
そう思った時、
「続いては9年ぶりに活動再開した、signの皆さんでーす!」
と司会のアナウンサーが言う。
俺と聡は顔を見合わせた。
「活動再開、おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「9年前の活動休止から、今回の再開までどう過ごされていましたか?」
「そうですね……」
どうやらボーカルの人は、当時メンタルが弱り、歌詞が書けなくなって、歌も歌えなくなったらしい。ギターのリーダーも、父親が体調を崩して、家業を手伝うことになり、活動休止にしたということだった。
「色々大変だったんですね…そんな紆余曲折を経て、パワーアップして帰ってきたsignの皆さんが、新曲を2曲披露してくれるそうなので、楽しみですねー!では準備お願いします…」
彼らの新曲は、悩んでいる人々の背中を押す、真っ直ぐな応援ソングと、心を締め付けられるような、切ない恋の歌だった。
「確かにパワーアップしてるね」
と新が言った。
「新、このバンド知ってるのか?」
俺が聞くと、
「うん。昔、凄い流行ったというか、人気だったんですよ!SNSで知り合った大阪の高校生4人でバンド組んで、卒業と同時にデビューしたんですけど、大学卒業するまで顔出しはしないでおこうって、メディアには出なくて。でも人気はあったのに、その1番良い時に活動休止だったから、まーみんな色んなこと言ってましたけどね。ギャラで揉めたとか、クスリにハマって入院したとか。僕はボーカルの人の声が好きで、あと歌詞もどっか懐かしい感じもあるけど、みんなどこか共感出来ちゃうみたいな。当時、僕、ライブも行ったんですよ。活動再開かー。嬉しいなー!あ!次HIASOBIだ」
全然知らなかった。
亮もあの歌詞に共感して、聴いてたのかな。
忘れる時間が欲しい…か。
そのためにあいつは留学した。
その歌詞の通り、亮は俺を忘れて、他の誰かを見つけた。
俺は忘れたふりをして、他の誰かに亮の面影を探した。
そうして、時々帰国するあいつと体を重ねては、どっかで俺のところに戻ってくることを、期待していたんだろう…
やっぱずるいのは俺だな…
トイレに行って部屋に戻ると、グラスにワインが注がれている。
「ケーキ食べよ!」
と先輩が冷蔵庫から持ってくる。
4等分にしたケーキの1つに、あのサンタを乗っけた。
「これ新のだなー」
と俺が前に差し出すと、
「え!良いんですか?サンタもらって」
と喜んでいる。
その顔を見た俺たち3人が、動物園の赤ちゃんパンダを見た時のような微笑みに包まれたのは、言うまでもない。
新のこともやっぱり好きだな。
これは愛とか恋ではなくて…
聡が言っていた意味がわかる。
純粋で素直で一生懸命な新を見てると、自分も同じようになれる気がする。
ケーキを食べ終わると、聡が軽くつまみを用意してくれた。
ワインや他の酒を飲みながら、つまみを食べてダラダラする。
「なんかもう、正月みたいだなー」
と俺は呟いた。
「確かに!2人はお正月実家帰るの?」
と先輩が聡たちに聞いた。
「俺は特に予定ないです」
と聡が言う。新は、
「2月に兄の結婚式で帰るので、お正月は帰らないつもりです」
と言った。
「じゃあまた大晦日に集まって、年越ししようよ!」
そう先輩が言うと、
「いえーい!」
とほろ酔いの新は手を挙げて喜んでいた。
しばらくして、新は酔っ払い、聡は送っていくと言った。
「蒼はどうする?」
と聞かれて、
「俺も帰ります。家そんなとぉくないし…」
と答えた。
「そう?蒼も結構酔ってるみたいだけど、大丈夫?途中で寝ちゃって凍死しないでよ?自転車でこけるとかもやめてよ?」
「大丈夫!自転車押して帰るから!また明日」
「あんたは明後日だけどね」
「じゃあ、明後日!」
と先輩の家を後にする。
自転車を押して帰っていると、ふわっと白いものが落ちてきた。
俺の手の上で、じわっと溶けていく。
「雪かぁ…ホワイトクリスマスだな…」
時計はもう0時をまわっていた。
家に着くと、エアコンのスイッチを入れる。
みんなで楽しく、わいわいするのは楽しかったな。
ただ、そのあと1人になった時の、この虚しさがたまらなくなる…
とりあえずシャワーを浴びて、焼酎のボトルとグラスを持ってソファに腰掛ける。
一口飲んだとこで、アパートのインターホンがなった。
こんな時間に誰だ?
モニターを見るが誰も映ってない…
「えっ…こわ!」
扉を1度開けてみた。
ドアの横に何かが立て掛けてある。
開けてみると絵が入っていた。
「この絵…まさかっ!?」
俺は慌てて玄関の外に出た。
周りを見渡すと、白い雪の合間に、後ろ姿の黒いコートの人影が見える。
俺は駆け寄りながら
「亮!」
と叫んだ。
名前を呼ばれて振り返ったその人は、俺があまりにも薄着で追いかけてきたことに驚いて、自分のコートを脱いで俺に着せてくれた。
あぁ…この匂い…
「家、とりあえず入ってよ。説明して…あの絵のこと…」
「いいのか?」
「いいよ。じゃないと風邪ひくよ」
部屋に入って、ソファに座った亮の前に新しいグラスを置き、俺と同じ焼酎を注ごうとした。
「同じでいい?」
「いや、今日はコーヒーで…」
淹れたてのコーヒーを、俺は亮の前に置いた。
亮が俺の家の前に置いて行こうとした絵は、昔、日本で初めて個展をした時に展示してあった、俺の眼の絵だった。
「どうしてあの絵、家の前に?」
「もう…俺には必要ないから…というか持ってるべきじゃないと思って…」
亮は俺の眼を見ないまま、手を温めるために握ったコーヒーカップに、視線を向けながら淡々と言った。
その言葉が、かつて別れを告げられたあの時より、俺の心を苦しめるのは何故だろう。
その答えはすぐにわかった。
9年前のあの日、俺に別れを告げた亮の中には、俺がまだいたからだ。
でも今日、ここに来た亮の中には、俺はもう…
そういえば、あの日もクリスマスだった。
「どーして、俺に?要らないなら、他の人にあげるとか売るとか…捨てるとか出来るのに」
「そうだな」
「なにより俺にくれるなら、どうして直接渡さないで、玄関に置いた?」
「…今日はイブ…もう、クリスマスになったけど…こんな日だから、蒼が1人でいるとは限らないだろ?もし部屋に他の誰かがいたら困ると思って。でも外に置きっぱなしにも出来ないと思ったから、ついチャイムを鳴らしてしまった」
「……どうして必要ないなんて、持ってるべきじゃないなんて言うんだよ…」
「お前に、真剣に愛する人が出来て、昔の男が自分の恋人の絵を書いて、それをずっと持ってるなんて悪いだろ?本当は売るとか、あげるとか、捨てるとかも考えたけど、でも俺の手では出来なかった…だから蒼に渡して、お前の手で好きにしてもらおうと思った」
亮はぬるくなってきたコーヒーを、一口飲んでからカップをテーブルに置いた。
「やっぱ、お前ずるいよ」
「ごめん。俺、ずっと怖かった。いつかこんな日が来たら俺はどうなるんだろうって…」
「どうなるもなにもないだろ?お前はずっと思い続けてた人の為に、こっちに帰ってきたんだろ?俺に好きな人ができようが、その人とどうなろうが、亮には関係ないだろ」
「そう…だな。…じゃあ俺、行くわ。コーヒー、ごちそうさま。遅くにごめん。お幸せに…」
コーヒーを飲み干した亮が、俺にそう告げた。
亮がこのまま立ち上がって、玄関を出て、その誰かのところに行ってしまったら、代わりに抱かれることも、一緒に酒を飲むことも、街で偶然会っても、笑いかけてもらうことすらなくなるような気がした。
それは耐えられないな…
俺は、立ち上がろうとした亮の肩を両手で掴んで、そのままソファに押さえつける。
今日、初めて亮と目が合った。
俺は亮に、息もつかせぬほど、激しくキスをする。
「蒼、ダメだ。もうこんなこと出来ないよ」
「散々俺のこと、誰かの代わりに抱いといて、何を今更…そんなこと言っても、偽善なんだよ。もうどこにも行けないくらい、俺のこと忘れられなくなるくらい、めちゃくちゃにしてやる!」
俺は着ていたトレーナーを脱いで、亮の目を見たあと、キスをしながら、ズボンの中に手を突っ込んだ。
「あ…おい。ダメだって…」
起き上がりながら亮は言ったけど、その言葉を俺は無視して、亮のズボンと下着を無理矢理下ろして咥えた。
「だ、だめだって…お前にはもう…」
そう言ってても、亮が感じているのがわかった。
しばらくするとあの独特な香りと味が広がる。
俺はそれを飲み込むと、グラスに残っていた焼酎を飲み干した。
「ん…お、お前、飲んだのか?」
「そだよ」
俺は舌をべーと出して、口の中を見せる。
おれは座ったままの亮の上に跨った。
「お前にはもう…って何?お前にはもう何も感じないって?」
「そうじゃなくて…」
俺は自分のを触りながら、亮を攻め始めた。
耳が感じるのは知ってるから、耳たぶの甘噛みと、あちこちにキスをしながら、耳元で音をさせたり、吐息混じりに喘いでみたりする。
「それ、ちょっともうムリ…」
そして胸元には、を残した。
俺と居た
俺は固くなった自分のを、亮のに擦り合わせる。
「あっ…ほんとに、ダメだって…」
「見て。すごいよ……だって、ほら…亮の…またこんなに大きくなって固いの…」
「もう、やめて、くれ…」
「やめていいの?もうすぐ、出ちゃうんじゃない?」
「…ん」
亮がいきそうになったのがわかったから、俺は動きを止めた。
「はぁ、はぁ…」
「やめてっていうからやめたよ?続けて欲しい?」
「いや、やめて」
俺はまだ、触れさせたままの状態で聞いた。
「ほんとにぃ?やめていいの?」
「…あぁ」
「本当の本当にぃ?」
と言ってまた少し擦り合わせ始めた。
「…んっ」
「ほら言って。本当はどうして欲しい?」
俺は亮の眼を見つめて聞いた。
俺の眼を見た亮が、出す答えは聞かなくてもわかる。
「続けて、欲しい…」
「じゃあ俺が気持ちよくしてあげる…一緒にいこ?」
それからはもう、亮のタガも外れて、俺たちは夜明けまで絡み合った。


「お前、こんなことしていいの?」
太陽が昇ると、昨日降ってうっすらとだけ積もった雪が、キラキラ光っている。
「雪、あんまり積もらなかったな…まぁ、この辺じゃ、クリスマスに雪降るのだって、珍しいもんな」
「なぁ。こんなことしていいのかって…」
「んなの、良いわけないじゃん!今までずっと、誰かの代わりでも、亮が幸せならって思ってたし、亮の顔見るまで応援するつもりだったよ。俺のことはもう忘れて、お前が好きな人と一緒になれるなら、俺が邪魔するわけにいかないって思った。思ったけど…」
この時、俺は初めて亮の前で泣いた。
「けど…?」
と俺の頭を撫でる。
「けど、あのまま玄関を出て、他のとこに行ったら、もう2度と会えないような気がしたから、たとえ偶然会えたとしても、もう話すらできないかもって思ったら、そんなの嫌だって思った…」
だから最後に、俺のことを忘れられなくなるくらい、誰と過ごしていても、思い出さずには居られないくらい、亮の中に強く、俺の存在を残そうとした。
「でも、お前にはもう、本気で向き合える人が、出来たんだろ?」
そういえば、昨日から、亮はおかしなことを言っていた。俺に誰かいるような…
聡のことか?でもなんで…
「誰のこと言ってる?」
「誰かは知らない。何ヶ月か前から、蒼が楽しそうだって。新しい恋を見つけたみたいだって…」
「誰が言ったの?」
「優子先輩…」
やっぱり…
「他には、何て言ってた?」
「今度はたぶん本気かもって…それ聞いて俺、1か月帰国を早めた…」
「なんで?」
「本当はあの絵を渡して、俺がずっと好きだったのは蒼だって言いたかった。ずっと気付いて欲しかった。誰かの代わりに、蒼を抱いてたんじゃない。俺にそんなこと出来るわけないよ……でも昨日見ちゃったから、お前が恋人に、後ろから抱きしめられてるとこ…」
「先輩の家の前?」
「うん。優子先輩には、時々相談してた。蒼のこと、やっぱり忘れるなんて出来なかったって。そしたら、いつまで待ってても仕方ないから伝えなさい。本当に手遅れになる前にって…クリスマスは先輩の家に集まるからサプライズで登場すれば?って言われたんだ。着く前に先輩に電話したら、家の前に蒼と…恋人っぽい人がいて、後ろからハグされてるの見た。だから急遽、仕事の予定が入ったことにして、行かなかった…」
「何でもっと早く言わないんだよ!いくらでもタイミングはあったのに…」
「9年前、別れようって言ったのは俺だから…ずっと一緒にいる約束も、お前を守るっていう誓いも、全部投げ出して海外に逃げたのに、忘れられないから、また俺のそばにいろなんて、言えるわけないよ。でもそのせいで手遅れになった。せめて相手が優子先輩なら、俺も救われたのにな…」
亮は泣きそうな声で、そう呟いた。
「昨日、お前が見た人は、確かに俺の好きな人だよ。でも恋人ではない…」
「だけど向こうも蒼が好きなんだろ?俺にはそういうふうに見えた」
「そうだな。だけどお互い1番じゃない…」
俺と聡の関係は、単純な順番の話ではないけど、今説明しても、理解が得られるかはわからなかったからそう言った。
「あいつのおかげで、俺も大切なものに気付いた。あの頃、俺は先輩のことも亮のことも好きだった。どちらが1番とかじゃなくて、どちらも同じくらい大切にしたいって思ってた。そして今、俺がそばにいたいし、いて欲しいのは亮なんだ。それを気づかせてくれたのが、昨日一緒にいた人だよ」
「蒼、ごめん…」
「俺たち、だいぶ遠回りしたな…」
俺は亮の手を握って言った。


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