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同級生
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「びっくりしたよね。いきなり裕杜どこ!って叫び出したら」
俺の左に座って、ビールを注ぎながら森川さんは言った。
「この間も叫んでました。森川さんが海外から戻られる前の日の夜」
「そうなんだ……はい、乾杯」
グラスを俺の前に差し出す。
俺はそのグラスに自分のグラスを当てた。
「乾杯」
「森川さんの下の名前、裕杜だったんですね」
「そう! あれ? 言ってなかったっけ? 樫尾くんの下の名前……あれ? 俺も知らないわ」
「樫尾怜です。怜でいいです」
「わかった。じゃあ怜くんね。俺も裕杜でいいよ! そういやさっき、何か言いかけなかった?」
「あ、えっと……もし答えたくなければ、それでもいいんですけど……」
「うん」
「環とはいつから知り合いなんですか?」
「環? 高校のクラスが一緒だったんだ」
「ってことは俺とも同い年なんですね」
「え? 同い年? へぇ! 環、そういうの全然教えてくんなかったなー」
「お2人は……」
「ん?」
「いや、いいです」
「なんだよぉ。せっかく俺も怜くんと友達になりたくてお話しようと思ったのに。いいよ。なんでも聞いて」
「じゃあ……裕杜くん。左の目と耳が少し悪いって環に聞きました。生まれつきですか?」
「違うよ。元々は聴こえてたんだ。今は左目は明るさは感じるくらいで、耳はプールや水の中にいる時に話しかけられた時みたいな、もごもごした聴こえにくさかな。はっきりとは聴こえないけど、なんとなくで。あとは軽く唇を読んだり。補聴器してるし、まあ右は全然なんともないから、遠くからとか左から小声でとかじゃなければだいたい聴こえるよ」
「いつからですか?」
「高校生の時に事故に遭ってね」
「そうなんですか」
「学校の帰りに交通事故で」
学校帰りの交通事故。それって……
「もしかして、環のおばあさんの手鏡……割ったのって森川さん?」
一瞬驚いて、彼は言った。
「そんなことまで知ってるんだ! じゃああいつの力のことも?」
「はい。聞きました」
「そうだよ。俺が割ったんだ」
「当時は仲が悪かったんですか?」
「悪いとかじゃなかったかな。あいつは誰に対しても同じ態度で、穏やかで。というより、感情を出さないというか。無な感じ。何を考えてるかわからない。でも感じが悪いとかじゃなくて。伝え方が難しいけど」
「それなのになぜ?」
「だから何考えてんのか知りたかったのかも。あいつが何をされたら嬉しくて、何を恐れて、何を嫌うのか。かまってちゃんだったんだな、俺」
と笑った。
「だから気を引くというか、ちょっとからかうっていうか。そしたら手鏡割っちゃって。俺は悪くない!みたいな最悪な言い訳して……その日の帰りだった。俺が事故に遭ったのは」
グラスにまだ残っていたビールに注ぎ足しながら言った。
俺の左に座って、ビールを注ぎながら森川さんは言った。
「この間も叫んでました。森川さんが海外から戻られる前の日の夜」
「そうなんだ……はい、乾杯」
グラスを俺の前に差し出す。
俺はそのグラスに自分のグラスを当てた。
「乾杯」
「森川さんの下の名前、裕杜だったんですね」
「そう! あれ? 言ってなかったっけ? 樫尾くんの下の名前……あれ? 俺も知らないわ」
「樫尾怜です。怜でいいです」
「わかった。じゃあ怜くんね。俺も裕杜でいいよ! そういやさっき、何か言いかけなかった?」
「あ、えっと……もし答えたくなければ、それでもいいんですけど……」
「うん」
「環とはいつから知り合いなんですか?」
「環? 高校のクラスが一緒だったんだ」
「ってことは俺とも同い年なんですね」
「え? 同い年? へぇ! 環、そういうの全然教えてくんなかったなー」
「お2人は……」
「ん?」
「いや、いいです」
「なんだよぉ。せっかく俺も怜くんと友達になりたくてお話しようと思ったのに。いいよ。なんでも聞いて」
「じゃあ……裕杜くん。左の目と耳が少し悪いって環に聞きました。生まれつきですか?」
「違うよ。元々は聴こえてたんだ。今は左目は明るさは感じるくらいで、耳はプールや水の中にいる時に話しかけられた時みたいな、もごもごした聴こえにくさかな。はっきりとは聴こえないけど、なんとなくで。あとは軽く唇を読んだり。補聴器してるし、まあ右は全然なんともないから、遠くからとか左から小声でとかじゃなければだいたい聴こえるよ」
「いつからですか?」
「高校生の時に事故に遭ってね」
「そうなんですか」
「学校の帰りに交通事故で」
学校帰りの交通事故。それって……
「もしかして、環のおばあさんの手鏡……割ったのって森川さん?」
一瞬驚いて、彼は言った。
「そんなことまで知ってるんだ! じゃああいつの力のことも?」
「はい。聞きました」
「そうだよ。俺が割ったんだ」
「当時は仲が悪かったんですか?」
「悪いとかじゃなかったかな。あいつは誰に対しても同じ態度で、穏やかで。というより、感情を出さないというか。無な感じ。何を考えてるかわからない。でも感じが悪いとかじゃなくて。伝え方が難しいけど」
「それなのになぜ?」
「だから何考えてんのか知りたかったのかも。あいつが何をされたら嬉しくて、何を恐れて、何を嫌うのか。かまってちゃんだったんだな、俺」
と笑った。
「だから気を引くというか、ちょっとからかうっていうか。そしたら手鏡割っちゃって。俺は悪くない!みたいな最悪な言い訳して……その日の帰りだった。俺が事故に遭ったのは」
グラスにまだ残っていたビールに注ぎ足しながら言った。
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