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ハードル
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俺はドラマの撮影が始まり、少し忙しくなった。
新しいドラマの題材はシングルマザーとの恋で、実際に共演する女優さんもシングルマザーの有田美希さんだ。
まだ息子さんが小さいから、周りに世話を頼めない時は、撮影所に連れて来ていた。
「こんにちは」
「こんにちは!」
「お名前は?」
「たなかりゅうです!」
「りゅうくんかー!かっこいい名前だねー!いくつ?」
「まだ4さい!もうすぐ5さいです!」
「もうすぐ5歳かー!お兄ちゃんと遊ぶ?」
「あそぶ!」
旦那さんが亡くなって、専業主婦だった美希さんは女優業を再開させた。
有田は旧姓で、仕事は旧姓でしている。
実は、沙織さんが昔いた事務所に所属していて、後輩だったらしい。
昔はよくご飯に連れて行ってもらったと話していた。
俺の出番じゃない時は、りゅうくんと遊ぶのが習慣になっている。
美希さんの子供を演じる、子役の直人くんもすぐに仲良くなれた。
3人で遊んでいると、景子さんに、
「子供が3人いるみたい」
と言われる。
「可愛いですね!」
「いつも遊んでくれてありがと!」
「いえ。こっちも癒されてるんで、おあいこですよ!」
「子供好きなの?」
「そうですねー。兄弟いないから、甥っ子とか姪っ子もいないし、小さい子と遊ぶって中々ないんで楽しいです」
「自分で作っちゃえば?事務所恋愛NGとかじゃないんでしょ?今いくつ?」
「今年24です」
「ちょうどいいじゃない!彼女は?」
「いないですねー」
「紹介しようか?」
「いやー。今、気になってる人?がいるんです。というか、好きって言われたんですけど…」
「そうなの?じゃあ付き合って、結婚とかしちゃう?」
「なんか友達以上恋人未満みたいな感じで…俺は本当に好きかわからなくて…」
「そっかー」
「子供はたぶん無理そうな気がするし、結婚も厳しいなって。ちょっと色々ハードル高いんで、俺は今で十分な気もしてるんですけど…」
「相手は次の関係に進みたいって?」
「…はい」
「進んじゃえば?」
「え??」
「進んじゃえばいいじゃない!で、やっぱ違うなってなったら戻れば?若いんだし大丈夫でしょ」
「でもうまくいかなくなって、それこそ何もかもダメになって、元の関係にすら戻れなかったらと思うと…」
「大切な人なんだね!…誰かがね、言ってた。しない後悔より、する後悔だって。相手の子も、そう思ったかも。告白しない後悔より、うまくいかなくてもした方が、自分のためになるって…」
俺はそれを聞いて思い出していた。
“でもこのままお前が離れていくのも嫌だからちゃんと言う。俺は夏輝が好き。死ぬほど好き。や、たとえ死んだとしても、夏輝だけを好き”
そう言った那月のことを。
「子供のこととか、結婚への価値観とか、ファンのこととか、世間体とか、まーそんなものは誰にでもある悩みのタネだし、多少はしょうがないと思うよ?でもそれを言い訳に逃げてたら、その子に愛想尽かされて、それこそ気づいた時には失ってるかもよ?」
美希さんのその言葉が、すごく心に響いていた。
ある日、撮影終わりに楽屋で着替えていると、景子さんが血相を変えて部屋に入ってくる。
「夏さん!早く着替えてください!病院に行きますよ!」
「どうしたんですか?」
「なっちゃんが…」
「那月!?なんかあったの?」
「行きながら説明します」
どうやら那月は、雑誌の撮影中に倒れたらしい。
詳しくは聞いてないけど、生きてはいるって。
検査が終わらないとちゃんとしたことはわからないってことらしい。
どうしよう…不治の病とか、癌とかだったら…
心筋梗塞と脳梗塞とかだったら…
若いから大丈夫って思うけど、可能性はゼロじゃない…
もう、踊れなくなったら?歌えなくなったら?話せなくなったら?寝たきりとかになったら?
俺はどうしよう。
あいつの介護のために、仕事辞めるか?
いやそれだと収入が…
時間に融通のきくバイトを始めるか…
今より仕事量を抑えて、あいつの面倒見ながらこの世界でやってくか…
色んなことが頭をよぎる。
詳しい情報が入ってこないことが、俺を不安にさせた。
新しいドラマの題材はシングルマザーとの恋で、実際に共演する女優さんもシングルマザーの有田美希さんだ。
まだ息子さんが小さいから、周りに世話を頼めない時は、撮影所に連れて来ていた。
「こんにちは」
「こんにちは!」
「お名前は?」
「たなかりゅうです!」
「りゅうくんかー!かっこいい名前だねー!いくつ?」
「まだ4さい!もうすぐ5さいです!」
「もうすぐ5歳かー!お兄ちゃんと遊ぶ?」
「あそぶ!」
旦那さんが亡くなって、専業主婦だった美希さんは女優業を再開させた。
有田は旧姓で、仕事は旧姓でしている。
実は、沙織さんが昔いた事務所に所属していて、後輩だったらしい。
昔はよくご飯に連れて行ってもらったと話していた。
俺の出番じゃない時は、りゅうくんと遊ぶのが習慣になっている。
美希さんの子供を演じる、子役の直人くんもすぐに仲良くなれた。
3人で遊んでいると、景子さんに、
「子供が3人いるみたい」
と言われる。
「可愛いですね!」
「いつも遊んでくれてありがと!」
「いえ。こっちも癒されてるんで、おあいこですよ!」
「子供好きなの?」
「そうですねー。兄弟いないから、甥っ子とか姪っ子もいないし、小さい子と遊ぶって中々ないんで楽しいです」
「自分で作っちゃえば?事務所恋愛NGとかじゃないんでしょ?今いくつ?」
「今年24です」
「ちょうどいいじゃない!彼女は?」
「いないですねー」
「紹介しようか?」
「いやー。今、気になってる人?がいるんです。というか、好きって言われたんですけど…」
「そうなの?じゃあ付き合って、結婚とかしちゃう?」
「なんか友達以上恋人未満みたいな感じで…俺は本当に好きかわからなくて…」
「そっかー」
「子供はたぶん無理そうな気がするし、結婚も厳しいなって。ちょっと色々ハードル高いんで、俺は今で十分な気もしてるんですけど…」
「相手は次の関係に進みたいって?」
「…はい」
「進んじゃえば?」
「え??」
「進んじゃえばいいじゃない!で、やっぱ違うなってなったら戻れば?若いんだし大丈夫でしょ」
「でもうまくいかなくなって、それこそ何もかもダメになって、元の関係にすら戻れなかったらと思うと…」
「大切な人なんだね!…誰かがね、言ってた。しない後悔より、する後悔だって。相手の子も、そう思ったかも。告白しない後悔より、うまくいかなくてもした方が、自分のためになるって…」
俺はそれを聞いて思い出していた。
“でもこのままお前が離れていくのも嫌だからちゃんと言う。俺は夏輝が好き。死ぬほど好き。や、たとえ死んだとしても、夏輝だけを好き”
そう言った那月のことを。
「子供のこととか、結婚への価値観とか、ファンのこととか、世間体とか、まーそんなものは誰にでもある悩みのタネだし、多少はしょうがないと思うよ?でもそれを言い訳に逃げてたら、その子に愛想尽かされて、それこそ気づいた時には失ってるかもよ?」
美希さんのその言葉が、すごく心に響いていた。
ある日、撮影終わりに楽屋で着替えていると、景子さんが血相を変えて部屋に入ってくる。
「夏さん!早く着替えてください!病院に行きますよ!」
「どうしたんですか?」
「なっちゃんが…」
「那月!?なんかあったの?」
「行きながら説明します」
どうやら那月は、雑誌の撮影中に倒れたらしい。
詳しくは聞いてないけど、生きてはいるって。
検査が終わらないとちゃんとしたことはわからないってことらしい。
どうしよう…不治の病とか、癌とかだったら…
心筋梗塞と脳梗塞とかだったら…
若いから大丈夫って思うけど、可能性はゼロじゃない…
もう、踊れなくなったら?歌えなくなったら?話せなくなったら?寝たきりとかになったら?
俺はどうしよう。
あいつの介護のために、仕事辞めるか?
いやそれだと収入が…
時間に融通のきくバイトを始めるか…
今より仕事量を抑えて、あいつの面倒見ながらこの世界でやってくか…
色んなことが頭をよぎる。
詳しい情報が入ってこないことが、俺を不安にさせた。
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