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救えなかった者たち
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昨日のあいつ、美味いか不味いかで言えば不味かった。
まぁでもこれで1か月は生きられる。
日が沈むと、俺はバルコニーに出てギターを弾きながら考えていた。
こないだは無職と言ったが、実はギタリストでもある。
あの有名なロックバンドやアーティスト、あの人たちのサポートメンバーとして後ろでギターを弾いているのは、実は俺だったりする。
気になった人は探してみてくれ。
「相変わらず好きだね? そこでギター弾くの」
そう言って現れたのが例のユキだ。
年齢はおそらく俺と同じか少し下くらい。
よくは覚えてない。
気がつけばそばにいたからな。
「お疲れ。どうした? なんか用か?」
「用が無くちゃ、来ちゃいけないの?」
「そんなことはない。ここはお前の家も同然だしな」
「嬉しい! 僕が来たのは、ただアリスに会いたかっただけだよ。きっと今日は家にいると思ったから」
「そうか。ゆっくりしていけよ」
「うん。そうだ! 庭のバラ達、見てきてもいい?」
「どうぞご自由に」
うちの屋敷には昔、母が植えたバラの木がある。
今は俺が世話をしている。
もうあの人は居ないからな。
「綺麗に咲いてるね」
庭から戻ったユキが俺の隣に座って言った。
「唯一あの人が残したものだからな。枯らしはしないよ」
「うん。俺もあのバラ好きだよ」
「そうか」
「昨日は? どんな血を吸ったの?」
「ナンパばかりしてた、チャラい野郎の血だよ」
「はは。アリスってさ。冷たく見えるけど、何気にいい奴だよね?」
「は? そんなことはない。昨日はそいつのせいで夜市に人が来なくなると困ると思ったからだ」
「でもさ。どんなにお腹すいていても子供の血は吸わないじゃん? それに若い女の血が好きとか言って、選んだのは80代のガンで苦しんでるおばあちゃんだった時もあったよね?」
「どうせ死んでコミュニティで抜かれるなら、生きてる間に俺がいただいても良いだろう? それに80なら俺らより若い」
「いや、そりゃそうだけど……まぁそういうとこ嫌いじゃないよ!」
そう言いながら、ユキは俺の方にもたれかかった。
「人間は嫌いだ。お前も知ってるだろ?」
「うん……」
そうだ。俺は、俺たちは人間が嫌いだ。
あいつらのせいで、俺たちの親は殺された。
昔、魔女狩りというのがあっただろう?
あれと同じようなものだ。
俺の両親は人間に対して友好的だった。
どうにか人間を殺さず、ヴァンパイアにせず、血液を調達する方法はないかと考えていた。
人間を殺すことに胸を痛めた両親は、牛や豚、鶏の血などで代用することも考えた。
でもやはり人の血である必要があった。
それで亡くなった人の血をもらうという考えが浮かんだ。
今コミュニティで行われていることは、元々父が考えたことだったと記憶している。
そうやって少しでも犠牲を減らそうとしたんだ。
ユキの両親を含め、賛同してくれるヴァンパイアも少なくはなかった。
それなのに、魔術を使うだの、変な研究をしているだの、噂を信じ込んだ人間達が襲撃を仕掛けてきた。
両親を始め、その思想に賛同した他のヴァンパイアは小屋に捕らえられ、小屋ごと一気に燃やされた。
燃やされただけなら、なんてことはなかっただろう。
ただ、タイミングが悪かった。
夜明けが来たからだ。
そうしてみんなは灰になった。
「父さん達は、人間を恨んでいるかな?」
「だろうね」
「俺のことも恨んでいるかな? 大事な人を1人も救えなかったし」
「そんなことない。僕のことは救ってくれただろ?」
肩にもたれかかってそう言ったユキの頭を俺は撫でた。
まぁでもこれで1か月は生きられる。
日が沈むと、俺はバルコニーに出てギターを弾きながら考えていた。
こないだは無職と言ったが、実はギタリストでもある。
あの有名なロックバンドやアーティスト、あの人たちのサポートメンバーとして後ろでギターを弾いているのは、実は俺だったりする。
気になった人は探してみてくれ。
「相変わらず好きだね? そこでギター弾くの」
そう言って現れたのが例のユキだ。
年齢はおそらく俺と同じか少し下くらい。
よくは覚えてない。
気がつけばそばにいたからな。
「お疲れ。どうした? なんか用か?」
「用が無くちゃ、来ちゃいけないの?」
「そんなことはない。ここはお前の家も同然だしな」
「嬉しい! 僕が来たのは、ただアリスに会いたかっただけだよ。きっと今日は家にいると思ったから」
「そうか。ゆっくりしていけよ」
「うん。そうだ! 庭のバラ達、見てきてもいい?」
「どうぞご自由に」
うちの屋敷には昔、母が植えたバラの木がある。
今は俺が世話をしている。
もうあの人は居ないからな。
「綺麗に咲いてるね」
庭から戻ったユキが俺の隣に座って言った。
「唯一あの人が残したものだからな。枯らしはしないよ」
「うん。俺もあのバラ好きだよ」
「そうか」
「昨日は? どんな血を吸ったの?」
「ナンパばかりしてた、チャラい野郎の血だよ」
「はは。アリスってさ。冷たく見えるけど、何気にいい奴だよね?」
「は? そんなことはない。昨日はそいつのせいで夜市に人が来なくなると困ると思ったからだ」
「でもさ。どんなにお腹すいていても子供の血は吸わないじゃん? それに若い女の血が好きとか言って、選んだのは80代のガンで苦しんでるおばあちゃんだった時もあったよね?」
「どうせ死んでコミュニティで抜かれるなら、生きてる間に俺がいただいても良いだろう? それに80なら俺らより若い」
「いや、そりゃそうだけど……まぁそういうとこ嫌いじゃないよ!」
そう言いながら、ユキは俺の方にもたれかかった。
「人間は嫌いだ。お前も知ってるだろ?」
「うん……」
そうだ。俺は、俺たちは人間が嫌いだ。
あいつらのせいで、俺たちの親は殺された。
昔、魔女狩りというのがあっただろう?
あれと同じようなものだ。
俺の両親は人間に対して友好的だった。
どうにか人間を殺さず、ヴァンパイアにせず、血液を調達する方法はないかと考えていた。
人間を殺すことに胸を痛めた両親は、牛や豚、鶏の血などで代用することも考えた。
でもやはり人の血である必要があった。
それで亡くなった人の血をもらうという考えが浮かんだ。
今コミュニティで行われていることは、元々父が考えたことだったと記憶している。
そうやって少しでも犠牲を減らそうとしたんだ。
ユキの両親を含め、賛同してくれるヴァンパイアも少なくはなかった。
それなのに、魔術を使うだの、変な研究をしているだの、噂を信じ込んだ人間達が襲撃を仕掛けてきた。
両親を始め、その思想に賛同した他のヴァンパイアは小屋に捕らえられ、小屋ごと一気に燃やされた。
燃やされただけなら、なんてことはなかっただろう。
ただ、タイミングが悪かった。
夜明けが来たからだ。
そうしてみんなは灰になった。
「父さん達は、人間を恨んでいるかな?」
「だろうね」
「俺のことも恨んでいるかな? 大事な人を1人も救えなかったし」
「そんなことない。僕のことは救ってくれただろ?」
肩にもたれかかってそう言ったユキの頭を俺は撫でた。
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