命の雫

SHIZU

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あなたしかいない

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「……殺された? 血を吸われたのか?」

「そうみたい。しかも自分の目の前で」

そんなこと……

「それが俺だって?」

「わからない。セイラは隠れていたからちゃんと顔は見ていないらしい」

「そうか……」

「ソウもヴァンパイアなのか?って聞かれて違うよって言ったら、どうして一緒にいるの?って。俺たちは、あの人たちのエサでしかないのにって言われたから説明したんだ。他の人とは違う血を持っていて、それが理由で狙われていること。それをアリスが知って俺のボディガードをしてくれていること。そしたら俺が代わりに護ってあげるって。そう言ってくれた」

「でもただの人間にお前を護れるわけが……」

「じゃあアリスはどうなの?」

「え?」

「朝、陽が昇ってから沈むまでは一緒にいられないじゃん」

「それは……」

「結局俺たちは住む世界が違うんだよ。最初にそう言ってたじゃん」

「……だけど」

「だからこれでさよならってことに」

「本当にこれで終わりなのか?」

「……そうだよ。今までありがとう。じゃあまた後で」

そう言って電話を切った。

ただ護りたかった。

ただ一緒に歌いたかった。

ただ一緒に酒を飲んで、DVDを観て、夜市に行って、舞台に立つソウを見て、りんご飴を食べて……

ただキスをして、ソウの温かい体に触れると、嫌なこと全て忘れられる気がした。

そんななんでもないような時間が、こんなに特別なものだったなんて……


~~~~~~~~~~


「お疲れ」

先にテントを組み立ててくれていたソウに話しかけた。

「お疲れ! これ今日の分。よろしくね!」

と薔薇を指差して笑う。

「あぁ……」

俺はいつも通り前を通った人に眼で語りかけ、薔薇にキスをして次々と薔薇を売った。

最後の1本。

俺はそれだけは売らずに置いておいた。

串焼きを売ってるソウに近付く。

「これ。今までありがとう。お前のこと護れなくてごめん」

「え? 俺に?」

「あぁ。セイラと幸せになれよ」

「赤い薔薇、1本か。やっぱ知らないんだね」

「今、なんか言ったか?」

「ううん。なんでもない。ちょっと串焼き見ててくれる?」

「あぁ」

ソウは俺に屋台を任せて人気のない公園の方に走っていった。

しばらくして串焼きを売り切ってしまった俺は、ソウを探しに行く。

そこで俺が見たのは、セイラの腕の中にいるソウだった。

「大丈夫?」

「うん」

「俺が代わりに戻ろうか?」

「大丈夫。行ってくる」

「うん。頑張れ」

「ありがとう」

「ソウ。好きだよ」

「……俺も……」

やはりもう終わったんだな。

俺との関係は。

ソウが戻ってくる前に俺は屋台に戻り片付けていた。

「おかえり。全部売り切ったよ」

「ありがとう。じゃあこれ今日の分」

「ありがとう」

「こちらこそ今まで本当にありがとう」

ソウは俺を抱き締めて、

「屋台手伝ってくれたことも、夢を応援してくれたことも、護ってくれたことも、本当に感謝してる! だから幸せになってね」

と言った。

お前がいない世界に幸せなんかないよ。

"俺はアリスが人間でもヴァンパイアでも、アリスが好きだよ!"

そう言ってたお前に戻って来て欲しくて、赤い薔薇のを一輪渡した。

"あなたしかいない"

ソウならこの意味に気づくと思った。

でもソウは戻ってこなかった。




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