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2部 4章
第二幕 4章 25話 彼女の過去
しおりを挟む暗い闇の中、私は意識を取り戻す。
真っ暗である……私……何してたっけ?
寝起きのせいか、先ほどまで自分が何をしていたか思い出すのにちょっと時間が掛かった。
そうだ、さっきまで白の傭兵団と戦っていたんだ……それで、アンナを庇って背中に傷を……って、あれ?
そんなことを考えていると、私の頬に風の当たる感じがする……室内にいたはずなのに何で風が?アンナ達が運んだ?でも、わざわざ外に運ぶ理由あるのかな?
混乱していると、今度は草の匂いが私の花に届いた。
………うん?草の匂い?もしかして町からも出てしまっている?
まさか、もう白の傭兵団との戦いが終わったなんてことは……。
私はどれだけの時間眠っていたのだろう……そう考えると、今度は焦りが私の中に溢れた。
目を空けなきゃ!そう思うのに私の瞼は思うように動いてくれない。
なんで!!
「ツバサ!」
誰かの声が聞こえる……聞いたことない声だ……声の感じから幼い少女だろうか?
その声の主が、私に近づいてくるのが感じてとれた。
「もー、ツバサ……またこんなところで寝て……風邪ひいちゃうよ?」
少女が私の頭の近くに来ると、ゆっさゆっさと私を揺する。
………どういうこと?
「ツーバーサ!!起きないと、落書きしちゃうよー!」
だぁああ!?落書きしないで!私はツバサって子じゃないよ!?
「うるさいわね……解ったわよ、起きるからそんなに揺らさないでよ」
……へ?
『誰か』がそう言うと、私の瞼が開く。
暗闇の中から解放された私に飛び込んできた景色は見渡す限りの青……綺麗な空だった。
そこに、青い髪の少女が割り込んでくる……この子がさっきからツバサって子を読んでいた少女だろうか。少女はニハハと元気な笑顔で笑いかけてきた。
「やっと起きたー、パルマおばさんが呼んでるよー。」
「お母さんが?何かしら……って、いつまで揺すってるのよココア」
「えへへー♪」
「えへへーじゃないわよ」
青髪の少女はココアというらしい……そして……私はツバサ?……ううん、違う、私はカモメだ。
だけど、私は今、ツバサって呼ばれた子の中にいる……ツバサが動くと私も動く……一体どういうこと?
「ツーバーサー、早く来ないと置いて行っちゃうよー♪」
「はいはい、解ったわよ……まったく」
口では悪態を吐くものの、ツバサはココアと呼ばれた少女に優しく微笑みかける。
仲がいいんだね……それにしても、ココアってどこかで聞いたことある名前な気がする……どこだっけ?
ツバサがしばらく歩くと、見覚えのある光景が広がってきた。
ローランシアの首都である。
いや、しかしおかしい……ここローランシアは白の傭兵団に襲われ、ほとんど生き残りがいないはず……だが、どうだろう……今見える光景には活気にあふれた町ではないか……町の形は同じだが、まるで別の場所へ来てしまったかのようであった。
これって、どういうこと?ここはローランシアじゃないの?
私は混乱する……もしかして、私は先ほどの傷で死んでしまったのだろうか?そして、ディータみたいに魂だけになって未来へ来てしまったとか?それならローランシアが復活していることも理解できる。
でもどうして?ディータが闇の魔法を引き継がせるためにそうしたとか?……でも、ディータは生きているんだからそうする必要もないような……。解らない。
いや、そもそもこれがただの夢って可能性も……ううん、夢にしてはリアルすぎるよね……こんなに細かく見ることの出来る夢なんてないよね……。
あー、もうっ、何が何だか分からない!
「ココア、お母さんはなんて言ってたの?」
「んー?知らなーい」
「知らないって用事の内容を聞いてないの?」
「そうかもー」
「そうかもって……もう、頼りにならないんだから……」
他愛のない話をしながらも二人はさらに進んでいく。
そして、一つの家屋に着くとココアと呼ばれた少女は扉の前に立って叫んだ。
「パルマおばさーん!呼んできたよー!」
「ありがとう、ココアちゃん。それじゃ、入ってきて」
中から女性の声が聞こえる。
その声の指示に従い、ココアはドアを開き、ツバサを中へと促す。
「お母さん、用って何?」
「お誕生日おめでとう!ツバサ!!」
ツバサが家に入った途端、クラッカーが鳴り響く。
それに驚き目を丸くするツバサ……そのツバサにココアは言葉を掛けた。
「えへへ、忘れてたでしょ!今日はツバサの12歳の誕生日だよー!はい、これプレゼント!」
「え、えっと……ありがとう……ふふ」
「開けて開けて!」
「うん……わあ、ペンダント?」
「そう!私のとお揃いなんだ!えへへー♪」
「ありがとう、ココア……大切にするね」
「うん!!」
ツバサの心の中が嬉しさでいっぱいになって行くのを感じる。
そんな充実した心まま、一日が過ぎていった。
ツバサの母親と父親は優しく、親友であるココアもツバサを大好きでそんなココアをツバサも大好きであった。
そして、ここまで私は一緒にいて思い出してしまった……親友のココアという言葉の響きを……。
そう……その言葉を発したのはあの人だ……エルフの森で私達を苦しめた女性……。
――――――――――――――災厄の魔女。
ということは……ここは彼女の過去ということなのだろうか……なんで彼女の過去を私が見ているのだろう……彼女の育った場所であるローランシアへ来たから?でも、それだけで?
それに、私は今どうなっているのだろう……気になることが多すぎる……だけど、私はどうすることも出来ない……見守るしかないのだ……この光景を……彼女の行く末を……。
私がそう思っていると、場面は変わったのだった。
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