闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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2部 4章

第二幕 4章 35話 足止め

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「う、嘘……全然効いてないの!?」

 私の放った暴風轟炎ヴィンドフラムの直撃を受けても、敵の人形は傷一つ付いていない……いや、それどころか彼の来ている普通の布の服ですら焦げ目すら付いていないのだ……いくらなんでもおかしい。


「これならどうだ!魔水風圧弾アクアウィレス!」


 もう一度、今度は貫通性の高い魔水風圧弾アクアウィレスを打ち込んでみる。
 魔水風圧弾アクアウィレスは一直線に敵に突き進み、敵の中心を捉えている。
 敵は私の魔法に全く反応できておらず、避けることも防ぐことも出来ない……確実に捉えた……そう思ったのに、敵の身体に触れる直前に、まるでかき消されたかのように私の魔水風圧弾アクアウィレスは霧散してしまった。


「今の……」


 だが、さっきの暴風轟炎ヴィンドフラムとは違い、魔水風圧弾アクアウィレスがかき消される瞬間を私は見た……あれは……敵の周りに薄い膜のようなもがあり、それに触れた瞬間、魔法の源の魔力ごとかき消された……そんな感じであった。

 そうだ、ギャーゴとかいう人形も空間魔法を使っていた……ということは人形にも天啓スキルがある?……いや、人為的に天啓スキルをつけられていると言った方がいいのか……そんなことできるのだろうか……出来るのだとしたらよほどの天才……あれを作った奴はヤバいかもね……くう、城で見つけられなかったのが悔やまれる。


「一応、もう一度試してみよう……この魔法も打ち消せる?闇の刃オプスラミナ!」


 私は闇の刃を操り、一直線に敵に向かうと見せかけ、敵に接触する直前に闇の刃を急転換させる。
 そして、背後に飛ばし、敵の視認できない場所から攻撃を仕掛けた……だが、敵の死角を突いたはずなのだが、敵に当たる前にやはり、闇の刃はかき消されてしまった。


「やっぱり、魔法は効かない……ってことか」


 厄介である……それに魔法が得意な私の元に、この人形を送ってきたということはこちらの作戦は完全にバレているということだ……それも、その後の行動も読まれている。
 だが、逆に言えば、敵の狙いはやはりクオン達のいる場所ということで間違いないだろう……。


「私を魔法だけの女だなんて思わないでよね!」


 私はバトーネを構える……魔力を流せば風を纏い威力を上げられるが、恐らくこれも相手に当たる前に解除されてしまうだろう……それなら、完全に私の身体能力だけで行こう。


「はああああ!!」
「排除します」


 私がバトーネを構えて敵に向かって突っ込む、敵は左腕をこちらに掲げると、手の部分が変形しそこから銃弾が飛び出してきた。
 だが、私はそれをバトーネを回し前方へ持ってくることで弾き返す。
 そして、敵の間合いに潜り込んだ私は、全力でバトーネを薙いだ。
 人形は防ぐことも出来ず、今度は膜に邪魔されることもなくヒットする。
 やはり、あの膜は魔力に反応するのだろう。
 脇腹に私のバトーネがめり込み、その威力に耐え切れず、人形は吹き飛び、地面を転がった。
 うん、本人の戦闘能力はそれ程強くない……これなら……いや、今はクオン達の元に急ごう。
 合流できれば、クオンならこの敵を一瞬で倒せるはずだ……その方がいい。


「風よ!」


 私は風を纏い、空を飛び、今しがた吹き飛ばした敵を無視してクオン達の所へ向かおうとする。
 風を操り、移動しようとした途端、私は足首を掴まれた感覚に襲われる。
 いや、感覚だけじゃない、本当に掴まれている……空に飛んでるのにどうやって!?
 そう思い、私は視線を足首に向けると、人形の手が手首から先を切り離し、コードのようなものを伸ばし私の足首を掴んでいるではないか……そんなことも出来るの!?

 そして、恐らくコードを引き寄せているのだろう、すごい力で私は引っ張られ情けない声を上げながら人形の元へと引っ張られていった。


「もう、しつこいな!」


 私はバトーネを振るい、足首を掴んでいる手をぶん殴る。
 その衝撃で手は外れ、私は自由になるのだが、結構勢いよく引っ張られていた為、止まり切れず、地面にぐしゃりと落下した。


「い、痛い……」
「排除します」
「だぁああ、もう!さっきから同じことしか言ってないじゃん!解ったよ、ちゃんと戦うよ!」


 ギャーゴや城で戦った人形と違い、意思疎通はあまりできないようだ。
 人形にも出来の善し悪しがあるのかな?
 でも、そんなことは関係ない。とにかく私は急がないといけないのだ。
 こうしている間にもクオン達がピンチに陥っているのかもしれないのだから……。


「私の棒術捌き見せてあげる!」
「排除します」


 相変わらず同じことしか言わない人形を相手に、私はバトーネを構え突っ込む。
 敵がそれ程、強くなかったがそれでも、私のバトーネの威力では倒しきるの時間が掛かってしまった。

 十分くらい戦っていただろうか、ようやく敵の人形が動かなくなったのを確認し、私は一つ溜息を吐いた。


「かなり時間を食っちゃったよ……クオン達大丈夫かな」


 私は再び、空を飛び、クオン達の元へと向かうのだった。
 お願いだから無事でいてね……クオン。
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