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2章
フードの男
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「そぉ~れ、た~まや~!」
私は景気よくフレイムエクリスを黄泉鴉たちが集まっている場所のど真ん中に炸裂させた。
「うわあああああ!」
フレイムエクリスの爆発で吹き飛ぶ、黄泉鴉たち。
わけも分からず混乱する黄泉鴉たちにフードを被った男が静まれと制止する。
「こんな真似をするのは誰です!」
「あれー、自分たちはエルフの里を襲撃しておいて、まさか自分たちが襲撃されるとは思わなかったとか思ってるの?」
「あれ、この声?」
隣にいた少年が私の声に覚えがあるのかこちらを見た。
「正義の使者、闇の魔女参上!」
私は登場と共に右手の二本指をピースの状態でおでこに当て、左手は腰にしてさながらアイドルのような可愛いポーズをとる。
「ほら、クオンも!」
「え、僕もやるの!?」
「とーぜん!」
自分も名乗りを上げることに驚きながら、顔を赤くしながら私の斜め前に出るクオン、そして・・・。
「同じく、闇の魔女の使い魔・・・さ、参上!」
片膝を付きながら両腕を右側に伸ばし、手はピーンと伸ばしながらポーズを決めるクオン・・・あ、ちょっとダサい。
顔を真っ赤にしながらポーズをとるクオンにまだまだだね!なんて思いながら私は自分のポーズに酔っていた。
『カモメ!最高!かわいい!!』
頭の中ではこの可愛さがわかるディータが私をほめちぎる・・・とーぜんだね!
「ひくわぁ・・・」
少年が何か言ったような気がしたのでそっちを見てみると、私のかわいいポーズを見ながら、敵は私たちの可愛さにやられたのか、口の端を引く付かせながら笑顔になっていた。
「・・・って、闇の魔女!君はあの時の!ここであったが100年目だ!」
少年が私の方を指さして何やら喚いている・・・誰だろう?
「えっと・・・どちら様?」
「なっ!!!君は僕にあんな仕打ちをしておいて、忘れたって言うの!」
あんな仕打ちって・・・ええ・・・あんな子供に何かした覚えないよ?
うーん、なんかの時に巻き込んじゃったとかかな?・・・それならあり得るかも?
「カモメ、あんな子供に何をしたのさ?」
「いやー、覚えは全然ないんだけどね?」
「なにーーー!っていうかそっちのダサいポーズのおにーさんもその時いたんだから同罪だよ!!」
ダサいと言われてまるで100トンの重りでも頭に直撃したかのようにがっくりと落ち込むクオン・・・仕方ないね。
それにしてもクオンも一緒だった?それなら私たはともかくクオンは覚えていそうなんだけどなぁ。
「ごめん、全然思い出せないや」
「なにいいいい!」
私が、素直に言うと少年は憤慨した。
「ごめんね、でも今遊んでいる暇ないんだ。ちょっと暴れないといけないんだよね・・・ってことで風弾!」
今度は風の魔法で手近にいた、敵を纏めて吹っ飛ばした。
「くっ・・・ここで闇の魔女ですか・・・まだ儀式の時には早いというのに・・・ビルトデルトさん」
「解ってるよ・・・あのおねーさん達に嘗められたままじゃ、ヴァンパイアとしての僕の誇りが許さないからね・・・」
「え、ヴァンパイア?」
今、ヴァンパイアって聞こえたよーな?確かヴァンパイアってランクSの魔物だよね。
あの子がそうだって言うの?
「そーだよ、魔女のおねーさん。びっくりした?僕はヴァンパイアなんだ、魔女とはいえ人間なんかが勝てる相手じゃないんだよ・・・でも、後悔しても遅いよ、もう許さないからね!」
「うーん、ヴァンパイアに何かした覚えホントにないんだけどなぁ・・・クオンある?」
「いや、全然?」
「おねーさん達のその余裕・・・僕嫌いだなぁ」
額に青筋を立てながらヴァンパイアの少年がそう言った・・・あ、ヴァンパイアって長寿なんだっけ?ああ見えて私たちより全然年上なのかも。
「ヴァンパイアのおじいちゃん、私全然覚えないんだけど何をしたのかな?後ついでに、電爆撃」
「お、おじ!?・・・おねーさん、本当にいい度胸してるね・・・」
「いやー、それ程でもないよ。それと、氷柱弾」
「僕の眷属を何百匹も殺した上に、大事な魔導具も破壊されたんだ・・・忘れたとは言わせないよ!」
「眷属に魔導具?・・・ああ!?・・・おまけに、爆発炎弾」
「「物のついでみたいに同胞たちを攻撃するな!!!」」
私が会話をしながら魔法を放っていると、ヴァンパイアとフードの男が同時に怒鳴った。
あ、ごめん、つい?
「ビルトデルトさん!」
「解ってる!」
そう言うと、ヴァンパイアがこちらに翼を広げて突っ込んできた。
翼は収納できるんだ、便利だね。
ヴァンパイアの少年は腰につけていた剣を抜くと、猛然と怒りの形相で私に突っ込んでくる。
ヴァンパイアって剣を使うんだね・・・あの子が変わっているのかな?・・・あ、おじいちゃんか・・・どっちでもいっか。
等と思っていると、ヴァンパイアは目の前にまで来ていた、振り上げた剣を私めがけて憎しみをどれだけ込めてるの?というくらい思いっきり振り下ろしてくる。
金属と金属がぶつかり合う音がして、ヴァンパイアの剣はその勢いを止めた。
「なっ・・・」
自分の剣が止められるとは思わなかったのか驚愕するヴァンパイア。
その剣の勢いを止めたのは私ではなくクオンであった。
「カモメ、僕はこのヴァンパイアを相手するから、あのフードをお願いできるかな?」
「任せて♪」
そう言って、ヴァンパイアの横を通り過ぎる私に、ヴァンパイアは攻撃をしようとするがクオンによってそれも阻まれる。
「君の相手は僕だよ」
「おにーさん・・・一人で?出来るのかなぁ?」
ヴァンパイアのランクはS、冒険者としてのクオンのランクもS。
ランクで言えば同じランクである。
そうなると、クオンと言えども苦戦するだろう、でも、クオンならきっと大丈夫だよね。
私はクオンを信じて、そのまま歩みを止めなかった。
ランクで言えばSSである私だけど、近接戦闘でクオンに勝てる気はしない。
悪魔でランクは目安でしかないのだ。
あのヴァンパイアは剣を使うところを見るときっと近接戦闘が得意なんだろう、ならクオンに任せた方がいいよね。
私は他の黄泉鴉を全滅させてから援護に向かうとしよう。
「ってことで爆発炎弾!!」
私は、近くの黄泉鴉たちをまたもまとめて吹き飛ばす。
なぜわざわざ、黄泉鴉たちを吹き飛ばすかというと、一つは敵の注意を引き付けること、そしてもう一つはエリンシア達が隠れて移動している方向に誰も行かないようにすることだ。
そのため私は、エリンシア達がいる方向へ逃げようとしている黄泉鴉がいると魔法を放って蹴散らしている。
傍から見ればただ単に近くの敵を気まぐれに吹き飛ばしているように見えるかもしれないが、実はちゃんと理由があったのだ!
『カモメ、3人程また行くわ』
「爆発炎弾!」
まあ、教えてくれるのはディータなんだけどね。
「さて、フードの人。ツァインを滅ぼすなんて真似はさせないよ?」
「なぜです?なぜ私たちの邪魔をするのです?」
「そっちこそ、なんでツァインを滅ぼそうとするのさ!」
「貴方には関係ないでしょう?」
「なら、私の方も私の勝手だよ」
私が不敵に笑うと、まるで苦虫でも潰したかのようにフードの男は口元を歪めた。
「いいでしょう・・・どうあっても邪魔をするというのであれば貴方にはここで死んでいただきます」
「それは無理じゃないかな?・・・私、強いよ?」
「闇の魔女の力見せてもらいましょうか!旋風刃」
風の刃が私めがけて襲い掛かってくる。
「風結界!」
私は風の結界を周囲に出し、その魔法を防いだ。
「ちっ・・・ならば、これならどうです!螺旋風槍 !」
螺旋状の風が私目掛けてやってくる。
あの魔法は貫通力の高い魔法である、バリアや結界を破るにはもってこいの魔法だ。
「やるね・・・でも、変則合成魔法!」
私は風の結界に氷魔法を合成することでさらに強度を上げた。
螺旋風槍はその氷と風の合成結界を貫通することが出来ずに霧散する。
「馬鹿な・・・なんですか今のは!」
「秘密だよ!・・・炸裂炎弾!」
炎の魔法をフードの男、目掛けて放った。
バーストフレイムはフレイムエクリスの強化版といった魔法だ。
「くっ、風結界!」
『間抜けね、あんな結界でカモメの炸裂炎弾が防げるわけないじゃない』
ディータの言った通り、私の魔法はフードの風の結界を軽々破壊し炸裂した。
「ぐああああああ!」
どうやら、魔導士としての腕は私の方が上の様である。
ま、魔女なんて言われるくらいだしね♪
「観念したらどうかな?」
「ぐっ・・・」
私が言うと、フードの男は顔を歪める。
いや、私の魔法を喰らったことでフードはすでにその役目を果たしていない。
彼の素顔は曝け出されていた。
白髪の男性である。
白髪とはいえ、そこまで歳は行っていないのではないだろう40前半か行っていても後半くらいだ。
それなりの気品を出しているところを見ると貴族とかだったんじゃないだろうか?
「なんというか、普通の顔だね?」
「!!・・・あの男と同じことを言うんですね・・・。」
「あの男?」
「フィルディナンドですよ!私からすべてを奪ったあの男と!!」
「王様が全てを奪った?」
「ええ、そうです。あの男は私からすべてを奪った!だから、許せないんですよ!」
「だから、ツァイスを滅ぼそうとするの!ツァイスの国民は関係ないじゃない!」
「関係ありますよ!あの男を選び、私を裏切ったんですからね!!」
裏切った?どういうことだろう?
「私が・・・私が・・・国王になるはずだったんだ!あんな軽薄な男ではなく、この私が!」
『国王・・・なるほど、王位継承権で争って負けたといったところかしら?』
「ってことはあなたと王様の関係って」
「・・・・・・・・・・弟ですよ」
『兄弟なのね・・・あんまり似てないわね』
ディータの言う通り、見た目は殆ど似ていない。
髪の色も違うし、そう言われなければ兄弟とは思わないだろう。
それにしても、自分の育った国を滅ぼそうとするほどの事があったというのだろうか?
「自分の育った国ってことだよね、いくら弟が王様になったからって国ごと滅ぼうそうとする?」
「しますよ!私を裏切った国なんていらないでしょう!」
『憎しみで狂ったのかしら?』
「それを邪魔する者は全て・・・そう全てなくなってしまえばいいんです!」
彼は叫ぶと同時に風の魔法を私に放つ。
私は先ほどと同じように風の結界でその魔法を防いだ。
「無駄だよ」
「同胞のみなさん!!」
先ほどまで私の魔法で怯えていた黄泉鴉たちが私に襲い掛かってきた・・・え、どうして!?
「わっ、ちょっ!」
手に武器を持って襲い掛かってくる黄泉鴉たち、攻撃することしか考えていないのか私が避けるとそのまま地面に倒れこんだり近くの岩に突っ込んだりしている。
「な、なんなの?」
『様子が変ね』
うん、おかしい。
さっきまで怯えていた人間が今は恐怖なんてないかのように私と元フードの男の間に立ちはだかる。
『カモメ、あいつらの腕』
「腕?」
私が、黄泉鴉たちの腕に目をやると腕に何か紋章のようなものが光っている。
「なにあれ?」
『魔術的な呪いか何かかしらね・・・恐らくあれに操られているのでしょうよ』
「そんな・・・」
「おや、気づきましたか?」
男がニヤリと笑いながらそう言ってきた。
ってことは、やっぱりあれで操っているのか。
「なんで、仲間を操ったりしてるのさ!」
「ふふふふ、違いますよ?私が操っているわけではないんですよ?」
「どういうこと?」
『カモメ、あいつの腕にも』
「光ってる・・・」
「そうです、これはですね・・・魔人様に身も心も捧げた証なんですよ」
そういえば、魔人を復活させるとか言ってたね、その魔人が黄泉鴉を操っているって事?
ってことは、あの男も魔人に操られているの?
「おっと、勘違いしないでいただきたい、私も黄泉鴉も自分の意志でフィルディナンドを憎み、ツァインを滅ぼしたいのです。魔人様はその為に力を貸してくださってるんですよ」
「なんでそこまで・・・」
「私も彼らもフィルディナンドのせいで苦汁をなめさせられたのですよ・・・さあ、魔人の復活は近い!後は頼みましたよ皆さん!」
『まずいわ、洞窟の中へ逃げるわよ!』
いけない、中にはリーナを救うためにエリンシア達が!
私はすぐに追おうとするが操られた黄泉鴉たちが行く手を遮る・・・邪魔をしないで!
フードの男は洞窟の中へと消えていった。急がないと!
私は景気よくフレイムエクリスを黄泉鴉たちが集まっている場所のど真ん中に炸裂させた。
「うわあああああ!」
フレイムエクリスの爆発で吹き飛ぶ、黄泉鴉たち。
わけも分からず混乱する黄泉鴉たちにフードを被った男が静まれと制止する。
「こんな真似をするのは誰です!」
「あれー、自分たちはエルフの里を襲撃しておいて、まさか自分たちが襲撃されるとは思わなかったとか思ってるの?」
「あれ、この声?」
隣にいた少年が私の声に覚えがあるのかこちらを見た。
「正義の使者、闇の魔女参上!」
私は登場と共に右手の二本指をピースの状態でおでこに当て、左手は腰にしてさながらアイドルのような可愛いポーズをとる。
「ほら、クオンも!」
「え、僕もやるの!?」
「とーぜん!」
自分も名乗りを上げることに驚きながら、顔を赤くしながら私の斜め前に出るクオン、そして・・・。
「同じく、闇の魔女の使い魔・・・さ、参上!」
片膝を付きながら両腕を右側に伸ばし、手はピーンと伸ばしながらポーズを決めるクオン・・・あ、ちょっとダサい。
顔を真っ赤にしながらポーズをとるクオンにまだまだだね!なんて思いながら私は自分のポーズに酔っていた。
『カモメ!最高!かわいい!!』
頭の中ではこの可愛さがわかるディータが私をほめちぎる・・・とーぜんだね!
「ひくわぁ・・・」
少年が何か言ったような気がしたのでそっちを見てみると、私のかわいいポーズを見ながら、敵は私たちの可愛さにやられたのか、口の端を引く付かせながら笑顔になっていた。
「・・・って、闇の魔女!君はあの時の!ここであったが100年目だ!」
少年が私の方を指さして何やら喚いている・・・誰だろう?
「えっと・・・どちら様?」
「なっ!!!君は僕にあんな仕打ちをしておいて、忘れたって言うの!」
あんな仕打ちって・・・ええ・・・あんな子供に何かした覚えないよ?
うーん、なんかの時に巻き込んじゃったとかかな?・・・それならあり得るかも?
「カモメ、あんな子供に何をしたのさ?」
「いやー、覚えは全然ないんだけどね?」
「なにーーー!っていうかそっちのダサいポーズのおにーさんもその時いたんだから同罪だよ!!」
ダサいと言われてまるで100トンの重りでも頭に直撃したかのようにがっくりと落ち込むクオン・・・仕方ないね。
それにしてもクオンも一緒だった?それなら私たはともかくクオンは覚えていそうなんだけどなぁ。
「ごめん、全然思い出せないや」
「なにいいいい!」
私が、素直に言うと少年は憤慨した。
「ごめんね、でも今遊んでいる暇ないんだ。ちょっと暴れないといけないんだよね・・・ってことで風弾!」
今度は風の魔法で手近にいた、敵を纏めて吹っ飛ばした。
「くっ・・・ここで闇の魔女ですか・・・まだ儀式の時には早いというのに・・・ビルトデルトさん」
「解ってるよ・・・あのおねーさん達に嘗められたままじゃ、ヴァンパイアとしての僕の誇りが許さないからね・・・」
「え、ヴァンパイア?」
今、ヴァンパイアって聞こえたよーな?確かヴァンパイアってランクSの魔物だよね。
あの子がそうだって言うの?
「そーだよ、魔女のおねーさん。びっくりした?僕はヴァンパイアなんだ、魔女とはいえ人間なんかが勝てる相手じゃないんだよ・・・でも、後悔しても遅いよ、もう許さないからね!」
「うーん、ヴァンパイアに何かした覚えホントにないんだけどなぁ・・・クオンある?」
「いや、全然?」
「おねーさん達のその余裕・・・僕嫌いだなぁ」
額に青筋を立てながらヴァンパイアの少年がそう言った・・・あ、ヴァンパイアって長寿なんだっけ?ああ見えて私たちより全然年上なのかも。
「ヴァンパイアのおじいちゃん、私全然覚えないんだけど何をしたのかな?後ついでに、電爆撃」
「お、おじ!?・・・おねーさん、本当にいい度胸してるね・・・」
「いやー、それ程でもないよ。それと、氷柱弾」
「僕の眷属を何百匹も殺した上に、大事な魔導具も破壊されたんだ・・・忘れたとは言わせないよ!」
「眷属に魔導具?・・・ああ!?・・・おまけに、爆発炎弾」
「「物のついでみたいに同胞たちを攻撃するな!!!」」
私が会話をしながら魔法を放っていると、ヴァンパイアとフードの男が同時に怒鳴った。
あ、ごめん、つい?
「ビルトデルトさん!」
「解ってる!」
そう言うと、ヴァンパイアがこちらに翼を広げて突っ込んできた。
翼は収納できるんだ、便利だね。
ヴァンパイアの少年は腰につけていた剣を抜くと、猛然と怒りの形相で私に突っ込んでくる。
ヴァンパイアって剣を使うんだね・・・あの子が変わっているのかな?・・・あ、おじいちゃんか・・・どっちでもいっか。
等と思っていると、ヴァンパイアは目の前にまで来ていた、振り上げた剣を私めがけて憎しみをどれだけ込めてるの?というくらい思いっきり振り下ろしてくる。
金属と金属がぶつかり合う音がして、ヴァンパイアの剣はその勢いを止めた。
「なっ・・・」
自分の剣が止められるとは思わなかったのか驚愕するヴァンパイア。
その剣の勢いを止めたのは私ではなくクオンであった。
「カモメ、僕はこのヴァンパイアを相手するから、あのフードをお願いできるかな?」
「任せて♪」
そう言って、ヴァンパイアの横を通り過ぎる私に、ヴァンパイアは攻撃をしようとするがクオンによってそれも阻まれる。
「君の相手は僕だよ」
「おにーさん・・・一人で?出来るのかなぁ?」
ヴァンパイアのランクはS、冒険者としてのクオンのランクもS。
ランクで言えば同じランクである。
そうなると、クオンと言えども苦戦するだろう、でも、クオンならきっと大丈夫だよね。
私はクオンを信じて、そのまま歩みを止めなかった。
ランクで言えばSSである私だけど、近接戦闘でクオンに勝てる気はしない。
悪魔でランクは目安でしかないのだ。
あのヴァンパイアは剣を使うところを見るときっと近接戦闘が得意なんだろう、ならクオンに任せた方がいいよね。
私は他の黄泉鴉を全滅させてから援護に向かうとしよう。
「ってことで爆発炎弾!!」
私は、近くの黄泉鴉たちをまたもまとめて吹き飛ばす。
なぜわざわざ、黄泉鴉たちを吹き飛ばすかというと、一つは敵の注意を引き付けること、そしてもう一つはエリンシア達が隠れて移動している方向に誰も行かないようにすることだ。
そのため私は、エリンシア達がいる方向へ逃げようとしている黄泉鴉がいると魔法を放って蹴散らしている。
傍から見ればただ単に近くの敵を気まぐれに吹き飛ばしているように見えるかもしれないが、実はちゃんと理由があったのだ!
『カモメ、3人程また行くわ』
「爆発炎弾!」
まあ、教えてくれるのはディータなんだけどね。
「さて、フードの人。ツァインを滅ぼすなんて真似はさせないよ?」
「なぜです?なぜ私たちの邪魔をするのです?」
「そっちこそ、なんでツァインを滅ぼそうとするのさ!」
「貴方には関係ないでしょう?」
「なら、私の方も私の勝手だよ」
私が不敵に笑うと、まるで苦虫でも潰したかのようにフードの男は口元を歪めた。
「いいでしょう・・・どうあっても邪魔をするというのであれば貴方にはここで死んでいただきます」
「それは無理じゃないかな?・・・私、強いよ?」
「闇の魔女の力見せてもらいましょうか!旋風刃」
風の刃が私めがけて襲い掛かってくる。
「風結界!」
私は風の結界を周囲に出し、その魔法を防いだ。
「ちっ・・・ならば、これならどうです!螺旋風槍 !」
螺旋状の風が私目掛けてやってくる。
あの魔法は貫通力の高い魔法である、バリアや結界を破るにはもってこいの魔法だ。
「やるね・・・でも、変則合成魔法!」
私は風の結界に氷魔法を合成することでさらに強度を上げた。
螺旋風槍はその氷と風の合成結界を貫通することが出来ずに霧散する。
「馬鹿な・・・なんですか今のは!」
「秘密だよ!・・・炸裂炎弾!」
炎の魔法をフードの男、目掛けて放った。
バーストフレイムはフレイムエクリスの強化版といった魔法だ。
「くっ、風結界!」
『間抜けね、あんな結界でカモメの炸裂炎弾が防げるわけないじゃない』
ディータの言った通り、私の魔法はフードの風の結界を軽々破壊し炸裂した。
「ぐああああああ!」
どうやら、魔導士としての腕は私の方が上の様である。
ま、魔女なんて言われるくらいだしね♪
「観念したらどうかな?」
「ぐっ・・・」
私が言うと、フードの男は顔を歪める。
いや、私の魔法を喰らったことでフードはすでにその役目を果たしていない。
彼の素顔は曝け出されていた。
白髪の男性である。
白髪とはいえ、そこまで歳は行っていないのではないだろう40前半か行っていても後半くらいだ。
それなりの気品を出しているところを見ると貴族とかだったんじゃないだろうか?
「なんというか、普通の顔だね?」
「!!・・・あの男と同じことを言うんですね・・・。」
「あの男?」
「フィルディナンドですよ!私からすべてを奪ったあの男と!!」
「王様が全てを奪った?」
「ええ、そうです。あの男は私からすべてを奪った!だから、許せないんですよ!」
「だから、ツァイスを滅ぼそうとするの!ツァイスの国民は関係ないじゃない!」
「関係ありますよ!あの男を選び、私を裏切ったんですからね!!」
裏切った?どういうことだろう?
「私が・・・私が・・・国王になるはずだったんだ!あんな軽薄な男ではなく、この私が!」
『国王・・・なるほど、王位継承権で争って負けたといったところかしら?』
「ってことはあなたと王様の関係って」
「・・・・・・・・・・弟ですよ」
『兄弟なのね・・・あんまり似てないわね』
ディータの言う通り、見た目は殆ど似ていない。
髪の色も違うし、そう言われなければ兄弟とは思わないだろう。
それにしても、自分の育った国を滅ぼそうとするほどの事があったというのだろうか?
「自分の育った国ってことだよね、いくら弟が王様になったからって国ごと滅ぼうそうとする?」
「しますよ!私を裏切った国なんていらないでしょう!」
『憎しみで狂ったのかしら?』
「それを邪魔する者は全て・・・そう全てなくなってしまえばいいんです!」
彼は叫ぶと同時に風の魔法を私に放つ。
私は先ほどと同じように風の結界でその魔法を防いだ。
「無駄だよ」
「同胞のみなさん!!」
先ほどまで私の魔法で怯えていた黄泉鴉たちが私に襲い掛かってきた・・・え、どうして!?
「わっ、ちょっ!」
手に武器を持って襲い掛かってくる黄泉鴉たち、攻撃することしか考えていないのか私が避けるとそのまま地面に倒れこんだり近くの岩に突っ込んだりしている。
「な、なんなの?」
『様子が変ね』
うん、おかしい。
さっきまで怯えていた人間が今は恐怖なんてないかのように私と元フードの男の間に立ちはだかる。
『カモメ、あいつらの腕』
「腕?」
私が、黄泉鴉たちの腕に目をやると腕に何か紋章のようなものが光っている。
「なにあれ?」
『魔術的な呪いか何かかしらね・・・恐らくあれに操られているのでしょうよ』
「そんな・・・」
「おや、気づきましたか?」
男がニヤリと笑いながらそう言ってきた。
ってことは、やっぱりあれで操っているのか。
「なんで、仲間を操ったりしてるのさ!」
「ふふふふ、違いますよ?私が操っているわけではないんですよ?」
「どういうこと?」
『カモメ、あいつの腕にも』
「光ってる・・・」
「そうです、これはですね・・・魔人様に身も心も捧げた証なんですよ」
そういえば、魔人を復活させるとか言ってたね、その魔人が黄泉鴉を操っているって事?
ってことは、あの男も魔人に操られているの?
「おっと、勘違いしないでいただきたい、私も黄泉鴉も自分の意志でフィルディナンドを憎み、ツァインを滅ぼしたいのです。魔人様はその為に力を貸してくださってるんですよ」
「なんでそこまで・・・」
「私も彼らもフィルディナンドのせいで苦汁をなめさせられたのですよ・・・さあ、魔人の復活は近い!後は頼みましたよ皆さん!」
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いけない、中にはリーナを救うためにエリンシア達が!
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