闇の魔女と呼ばないで!

成神クロワ

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3章

魔族の館

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「何か声が聞こえたけど、どうしたんだ?リーナ」


リーナに声を掛けながら部屋の中に入ってきたのはエルフの少年であるコハクだ。
コハクは私を見ると驚いた後、安堵の表情へと変えた。


「カモメさん、よかった、魂が戻ったんですね!」
「・・・・・・」


違うのだ、魂は戻っていない、まだ奪われたままだ。
そう、ここで寝ている訳にはいかない。


「あの魔族は南の森にいるんだったよね」
「え?ええ・・・でも、カモメさんの魂が戻ったということはクオンさん達が倒したんじゃ?」
「いくらクオン達でもそんなに早く倒せないよ」
「では、どうしてカモメ様は目が覚めたのですか?」
「説明すると長くなっちゃうけど、私の中には魂が二つあったの、そしてその一つが奪われた」
「ええ!?」


魂が二つある人間がいるなんて普通は思わないよね、二人がとっても驚いている。
説明してあげたいけど、今はクオンとエリンシア・・・なによりディータが心配だ。
私はベッドの横のテーブルの上に置いてあった筒状になっているバトーネを取ると、二人にここで待ってるように言って部屋を出た。

未だ、意味が解らないような顔をしている二人には悪いが、急がなければならない。
宿屋を出ると、風の魔法で空を飛び、一気に南の森へと向かうのだった



========================================



「はあ・・・まさかあんなぬいぐるみに食べられるなんて・・・屈辱だわ」


今は私は暗闇の空間にいる。
私はあの時、カモメがぬいぐるみに襲われそうになった時、カモメを助けたいと一心に願ったら、依然カモメの母親が殺されたときのようにカモメの心と入れ替わることが出来た。
まあ、その結果、変わった瞬間にぬいぐるみに吸い込まれたんだけど・・・もう少しこう、カッコよく防いだりとかしたかったわ・・・。

この暗闇の空間には私以外にも人がいて、皆、何かにおびえるようにしていた。

見てみると、見覚えのある顔ばかりである。
見覚えがあるとは言っても別に知り合いというわけではない。
カモメの中にいるときに見たことがあるのだ。
そう、今回依頼を受けたときに訪れた被害者たちである。


「ソウルイーターと言っても、すぐに魂を食べるわけではない・・・ということかしら?」


見ると一番最初の被害者である、ベンディエットがいた。
ふむ・・・と私は手を顎に当てて考える、昔からの私が考えるときにする癖である。


「あら・・・?」


そこで私は気が付いた・・・手があるのだ。
私はカモメの中にいるときはずっと光る人魂みたいな状態でいたので四肢がある感覚は久しぶりである。


「なるほど、ここは心のイメージが形になるのかしら」


今の私の体は小さなカモメの体ではない。
生前の私の体であった。
久しぶりの自分の体を懐かしく眺める、やはり体がるというのは良いものである。


「さて・・・」


久しぶりの自分の体を十分に堪能した後、私は辺りの様子を伺う。
膝を抱えて震えている人や、祈りを捧げている人など色々ではあるがほとんどの人間が何かにおびえている感じであった。
そして、一番最後の被害者であろう冒険者風の女性はそんな塞ぎ込んでいる人たちを励ましている。
その冒険者風の女性は私に気付くと声を掛けてきた。


「アンタもやられたのか・・・」
「ええ、そうみたいね」


彼女が私に話しかけてくると他の人たちも私に気付く。


「ああ・・・やっぱり、誰も気づいてないんだ」
「また被害者が・・・神よ、私たちを救いたまえ」


女神ならここにいるわよ?あなた達一緒で食べられたけど・・・。
しかし、被害者の人たちの様子が一人一人違うわね、話しかけてきた冒険者はまだ歩き回る元気があるみたいだけど、あっちで震えながら声を出しているのは二人。
それ以外の人たちは声すら出せないでいるわね・・・それに。
あそこで座っているベンディエットさんに限ってはもうほとんど反応がない。
虚ろな目で虚空を見つめているのだ。


「被害に遭った順番で消耗が違うといったところかしら?」
「ああ、よくわかったね。そうなんだよ、アイツに生気を吸われた回数が多い人はもうほとんど反応もしなくなってる」


やっぱり・・・しかし、今気になることを言ったわね。


「アイツ?」
「ああ、アンタはまだ見てないもんな、化け物さ、ここにいるあたしたちの生気を吸っているんだ」
「生気?」
「アイツが口を開くと私たちから何かが吸い出されるんだ、そしてその後、一気に疲れるからきっと生気を吸っているんだと思う」


なるほど、そして生気がなくなれば魂が完全に破壊されるというわけか・・・一気に魂を砕けないところを見ると魔法生物に低級の悪魔を入れたと言ったところかしら。
さて、どうするか・・・。


「・・・・・あ」


そこまで考えて思い出す、私なら異次元を渡ってここから出られるんじゃないかしら?
カモメの体に入る前は異次元にいたんだし・・・そう思って魔法を発動しようとするが、魔法は何かに邪魔されているのか発動しなかった。


「魔法を使おうとしたのか?アタシも試したけどここじゃあ、魔法は使えないみたいだよ」
「そうみたいね」


なるほど、獲物を逃がさない用意は万端という事か。
どうやら、この魔法生物には体内で魔法を使わせない処理がされているらしい。
面倒ね・・・異次元に渡れればこの子たちもすぐに助けられたんだけど・・・。
さて、どうしたものか・・・このままだと私もやられてしまうかもしれないわね。


そう思っていたとき、辺りから悲鳴が聞こえる。


「来やがった!」


悲鳴のした方を見ると、そこにはまる球体に口だけが付いた化け物が空中に浮いているのだった。



========================================




「着きましたわ、恐らくここですわね」
「うん、急ごう」
「ええ!」


ワタクシたちは目的である南の森にある魔族の住処らしきところに来ていた。
住処などと言ったが見た目は洋館のような外装をしており、まるで貴族でも住んでいそうな館であった。
ただし、ここが薄気味悪い森の中で洋館も誰も住んでいないとしか思えないほどボロボロでなければ・・・であるが。

雰囲気ありまくりですわ。
ここがホラーな世界であれば確実に化け物が潜んでいるであろう館である。
いや、魔族が住んでいるのだから似たようなものか。


ワタクシたちは館の扉を開け、中へと侵入する。
玄関を入ると中は明りも無く真っ暗だった。


「真っ暗ですわね・・・」


私が灯りの魔法を唱えようとすると辺りに癪に障る笑い声が響いた。


「きゃはは!もう来たんだ?はやーい」


なんというか今すぐにでも顔面を殴ってあげたくなる笑い声である。
魔族って言うのは真面なお人がおりませんの?


「カモメの魂を返せ!」


ふう・・・いつもは冷静で頼りになるクオンさんですが、こと今回に関してはあまり頼りにならないかもしれませんわね。
普段なら見せないような焦りと怒りの籠った表情を見てワタクシはそう思った。


「きゃはは!私の所まで辿り着いたらね!」


そう言うと、辺りに一瞬で光が灯る。
目の前には見たことも無い魔物が部屋を埋め尽くしていた。


「くっ!」
「酷いお出迎えですわね」


ここが貴族の館であったら落第点もいいところだ。
いきなり、化け物でお出迎えなのだから。


「その子たちは私が作った魔法生物の失敗作なんだよー、ぜーんぶ倒したら奥の扉が開くからがんばってねー」
「ゲーム感覚ですわね・・・」
「くそっ」
「落ち着きなさいクオンさん!カモメさんを助けたいのなら冷静さをかいてはなりませんわ!」
「解ってる!」


ぜーんぜん、わかっておりませんわよ!
今すぐにでもあの魔法生物を無視して扉を斬り裂いて中に入りたいという顔をしおりますわ・・・。


「そうそう、ズルしたら、魔女のおねーちゃんの魂は壊しちゃうからねー」
「ちっ」


あら、クオンさんでも舌打ちをしますのね、普段が温厚ですのでかなりレアですわ。
さて・・・。


炸裂弾エクスプロードブリッツ


私は炎の魔法を込めた弾丸で目の前の魔法生物を纏めて吹き飛ばす。


「あまり、のんびりとはしていられませんので派手に行きますわよ」


もしかしたら館が壊れるかもしれないが気にする必要はありませんわね、こんな館、取り壊してしまいましょう。
私は連続で炸裂弾を放ち、魔法生物を次々に壊していった。

クオンさんは剣を振りながら魔法生物を一体ずつ倒していく。
魔族の所に行く前に少し頭を冷やして欲しいですわね。
まあ、カモメさんの魂を取られたときよりはマシになっているみたいですけど・・・やっぱり、焦っておりますわ。


「でも・・・それはワタクシも一緒ですわね」


私の目の前にはたくさんの魔法生物がいるがその魔法生物を次々に粉砕してく。


「お~っほっほっほ!ワタクシの友達に手を出したこと後悔させてあげますわ!!」


友達の魂を奪われた怒りと、友達を悲しませた怒りを思う存分発散させる。
正直、この館ごと魔族を吹き飛ばしてしまいたいがそうするとカモメさんの魂が戻ってこないといけないので自重する。
今のワタクシたちに大事なのはカモメさんの魂を無事に取り戻すということなのだ。


私が20発目くらいの炸裂弾を撃ち終わると、魔法生物は全て破壊しきっていた。
館も爆発により穴だらけになり、すでに倒壊してもおかしくないのでは?と思う程である。
やりすぎたかしら?


「きゃはは!おめでとー、第一ステージクリアーだよー。第二ステージは扉の奥だから頑張ってねー」


そう言うと奥に続く扉が開かれた。


「いきましょう」


そう言ってワタクシとクオンさんは奥に続く扉をくぐるのであった。 
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