闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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4章

ガルディアンヴォルフ

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 まずい・・・このままだと・・・全滅だ・・・クオンさん。

 ――――――――――じゃないっ!
 いつまでクオンさんに頼っているつもりだ・・・俺はここに何をしに来た。
 魔族との戦いの時に、少しでもクオンさんやカモメさんの役に立ちたいから力を付ける為に来たんじゃないのか!

 負けそうになったらクオンさんを頼るんじゃ、いつまで経ってもレベルアップ出来ない。
 立て・・・立って戦うんだっ!


「ぐ・・・うおおおおお!」


 俺は力を振り絞って、節々が悲鳴を上げる体に喝を入れた。
 そのおかげか、なんとか立ち上がることに成功する。


「はあっ・・・はあっ・・・」


 さあ、どうする・・・立ち上がって終わりじゃ話にならない。
 何とかして、グリフォンを倒さないと・・・。

 幸い、ガーゴイルほどの防御力は無い、そのおかげで先程のリーナとの連携の攻撃で着いたグリフォンの傷(傷と呼べるか分からないほどのかすり傷だが)はグリフォン自身の放った風の弾と同じだけのダメージを与えているように見える。

 ということは、先ほどのリーナの魔法を防いだことも含めて、魔法防御が高いのか。
 なら、なんとしても物理で倒すしかない・・・しかし・・・。


強射ストリングショットであれじゃ・・・」


 そう、何を隠そう、先ほどリーナとの連携で放った強射ストリングショットは俺の技の中では最強の威力を誇るのだ。今のままじゃ駄目だ、なにか新しい攻撃を試さないと・・・。


 とはいえ、魔法を使えない俺にはクオンさんのように魔法で身体能力を上げたり、風の魔法で足元を爆発させてロケットみたいに飛んでいくなんて真似も出来ない。

 ほかに無いか?魔法みたいに自分の身体能力を上げる術は・・・。


「クァアアアアアア!!」


 グリフォンが大きな咆哮を上げる。
 見るとヒスイがグリフォン相手にその素早さを生かして奮闘していた。

 グリフォンの大ぶりの攻撃を躱しながら自分の爪を当てていくヒスイ・・・だが、ヒスイの攻撃は当たるもグリフォンには蚊に刺された程度のダメージしか与えることが出来ていない。

 いくら、コハク達と共に己の研鑽を積んできたヒスイとはいえ、元々がランクEの魔物である以上、ランクA―――その中でもA+とも言えるグリフォン相手では戦いにならないのだ。


 「グルルルル」


 ヒスイは自分の力不足を嘆いているのか悔しそうに低い唸り声を上げた。

 だが、それでもヒスイは諦めない、何度も何度も攻撃をする。
 自分の大好きな主人を護る為に、その主人の大切な仲間を護る為に、ヒスイは攻撃を繰り返した。

 その次の瞬間、ヒスイの体が光に包まれる。
 まるで、ヒスイの護りたいと言う気持ちに応えるかの様に眩いがとても暖かい、そして安心できる光がヒスイを包んだのだ。


「あれは・・・」


 そう、その光を俺は知っている。
 ヴァイスの森で、黄泉鴉に襲われたときにもホワイトウルフであるヒスイが放った光だ。
 そしてホワイトウルフであったヒスイはその光が収まるとホワイトファングに進化したのだ・・・つまり、今回もヒスイは進化する。


 暖かい光が消えると、そこには姿の変わったヒスイが悠然と立っていた。


「あれは・・・ガルディアンヴォルフ・・・」


 驚いた、ランクEであった、ヒスイが進化するのだ恐らくランクDになるだろうと予想していた。
 だが、ヒスイはそれを飛び越え、ランクBのガルディアンヴォルフへと進化したのだ。

 ガルディアンヴォルフ、狼系の魔物中では個体数が少なく、希少モンスターと呼ばれているモンスターでランクBではあるが伝説のモンスターと言われている。ガルディアンヴォルフは知性が高く、その爪と牙は鉄をも斬り裂くという。多少の魔法をも操り、その頭の良さから、普通の魔物ように戦うと痛い目を見ると言われている為、冒険者の中では出会ったら戦わず逃げろと言われているほどの強者である。

 ヒスイは今までよりさらに純白になった毛並みを輝かせ、悠然とグリフォンを睨みつけていた。


 その姿にグリフォンは危険を抱いたのか、先ほどまで余裕をなくしているようにも見える。
 姿を変えたヒスイがグリフォンに向かって走り出す、その速さはクオンさん並みの速さに見えた。

 実際はクオンさんの方が早いのだろうけど、ぶっちゃけ俺にはその姿を捕らえることが出来ないのでどっちも同じなのだ。

 ヒスイの姿が消えたと思うと、次の瞬間、グリフォンの悲鳴が聞こえる。
 ヒスイの爪がグリフォンの皮膚を抉ったのだ。


 初めて、ダメージらしいダメージを受けたグリフォンは怒りを覚えたのか、風の弾をヒスイに向けた乱発する。
 その風の弾を軽々と躱すヒスイの姿はどこか美しいと思ってしまった。

 

 「すごいな・・・」
 「ソフィーナさん・・・」

 
 いつの間にか起き上がりこちらに来ていたソフィーナさんがスピードでグリフォンを翻弄するヒスイの姿を見て感嘆の声を上げる。

 ヒスイは恐らく風の魔法で己の身体能力を上げているのだろう。
 風のないダンジョンなのにヒスイの白い毛が靡いているのように見えた。
 ヒスイは僕らを護りたいと思う気持ちで己を進化させた・・・すごい・・・俺も負けてはいられない。


「・・・・・あ」
「ん?どうしたコハク?」
「気持ち・・・気・・・そうだ」


 俺はヒスイの戦う姿とその心、護りたいと言う気持ちを見てあることを思い出した。
 ―――――――カモメさんと戦うラガナの姿である。


 そうだ、ラガナの使っていた気だ・・・たしか、気は魔法の使えないものが魔法を使う者との戦いに負けないように編み出されたものだと聞いたことがある。

 今の俺にぴったりじゃないか。
 俺は、その考えに心が躍った、ひたすら弓の腕を鍛えるかもしくは聖武具のような武器を手に入れるしかないのでは?と思っていたのだが、そうだ、気を使いこなすと言う術があった。


「ソフィーナさん、気ってどうやったら使えるんでしょう?」
「む・・・気か・・・」


 とはいえ、俺は気の使い方を知らない、いきなり使いたいと思ったから使えるようなものではないのだ。
だけど、もしかしたら、ソフィーナさんなら知っているかもと思い聞いてみた。


「気か・・・アネル殿に習ったことがあるのだが・・・」
「本当ですか!教えてください!」


 ソフィーナさんは気の使い方を知っているようだった。
 やった!これなら、成長する切っ掛けになるかも・・・そう思い心をさらに躍らせる俺。


「う、うむ、アネル殿言うには、こう・・・ガァーっとなった心の力を体中にズバーっと巡らせる・・・らしい」
「・・・・・・・・・・・・・え?」


 踊った俺の心は一瞬にして静かになってしまった・・・・。
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