闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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5章

光と闇

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 「何をこそこそ話しておるのじゃ!」


 白魔鬼の手から青い炎がカモメとディータに向かって放たれる。
 カモメ達はその炎を左右に躱すと、それぞれ闇の刃で敵を牽制した。


 「学習能力が無いのう、いくら攻撃をしようとワシの体はすぐに再生してしまうというのに」
 


 カモメとディータの闇の刃で両腕を切り落とされるもすぐにその腕を再生してしまう白魔鬼。
 だが、白魔鬼が攻撃に移ろうとする前に、左右からエリンシアとクオンが追撃を放った。


 「無駄じゃ!」


 弱点である頭部への一撃であるが、傷はつけれど深くダメージを与えることが出来ない。
 クオンの剣は深く刺さらず止まり、エリンシアの銃はやけどを負わせる程度で終わってしまった。

 攻撃に失敗した二人はカモメ達の元へとさがる。


 「埒が飽きませんわね」
 「あの頭部の防御力を上回らないと……」
 「二人とも、カモメが強力な魔法を使うわ、二人は一旦グランルーンから逃げなさい」


 ディータのその言葉に二人は目を丸くする。
 強力な魔法を使うなら、その攻撃が当たるよう相手の動きを止める手伝いをするのが普通だ。
 それなのに、ディータは二人にこの場を離れろと言ったのだ、驚かないわけがない。


 「どういうことですの?」
 「それだけ、危険な魔法ということなのかい?」
 「そうよ、下手をすればこの城丸ごと……いえ、このグランルーンそのものが消えるわ」


 その言葉に再度二人は目を丸くする、グランルーンが消える、つまりそれだけの威力と言うのも驚くがそうではない……威力でいうのならばカモメの合成魔法である黒炎滅撃フレアザードもこのグランルーンを吹き飛ばすくらいの威力はある。
 だが、その魔法を使ったとしても、グランルーンが無くなるという事はないだろう、カモメがそうならないように撃つのだから。

 つまり、その魔法の下手をすればというのはカモメがその魔法の制御に失敗する可能性があるということだ。そして、そうなれば暴発だけでグランルーンが消えると……。


 「そんな隠し玉を持っていましたのね」
 「頼もしい限りだよ」
 「二人とも、ごめん、まだ制御できる自身の無い魔法なんだ……だから」


 だから、逃げて欲しい、カモメがそう言う前にエリンシアとクオンはお互いに笑いありカモメの頭の上に手を乗せた。


 「任せて、奴の動きは僕らが止めるよ」
 「ですから、カモメさんはその魔法の制御に集中してくださいまし」
 「……はあ、そう言うと思ったわよ」
 「皆……でも、本当に制御に失敗したら……」


 またしてもカモメが最後まで言う前にクオンとエリンシアは白魔鬼に向かって奔り出す。
 もちろん、相手の怪光線は最大限に警戒している為、左右に分かれながらである。


 「君なら大丈夫さ!君は魔法の天才だからね!」
 「お~っほっほっほ、闇の魔女の力見せてさし上げなさいですわ!」
 

 一片の不安の顔を見せずに、二人は白魔鬼へと攻撃を繰り返す。


 「……分かったよ、任せて二人とも!そして、任せた二人とも!」
 「任された!」
 「お任せくださいですわ!」


 そう言うと、クオンとエリンシアには先ほどまでの白魔鬼へ対する不安の表情が無くなっていた。
 その様子に白魔鬼は警戒をする。彼らが何かをやろうとしていることは理解できた、そして、それの中心がカモメであることも。


 「あの小娘何をするつもりじゃ」
 「おっと、貴方の相手は僕たちですよ!」
 (よそ見していると死んじまうぜ!)


 カモメに向き直ろうとする白魔鬼をクオンの斬撃が襲う。
 その攻撃はもちろん頭部へと行われる、そして、先ほどまでと同じように頭部の防御力を上回ることが出来ず、傷を付けるだけで終わってしまうがその攻撃は敵の注意をカモメからこちらに向けるには十分であった。なぜなら、今回傷つけたのは目の部分だったから、すぐに再生してしまうとはいえ、一瞬、視界を奪うことが出来る為、白魔鬼と言えど、その攻撃を無視は出来ない。続けてやられてしまえば、カモメを見失う可能性もあるのだから。


 「鬱陶しい!!」
 「あら、足元がお留守ですわよ!」


 クオンの方を向き直った白魔鬼に後ろからエリンシアの魔弾が左足を貫く。
 そして、左足を失ったことによりバランスを崩し、片膝を付いてしまう白魔鬼。
 その足もすぐに再生してしまうのだが、片膝を付いたことで己のプライドが傷つけられたのか、ここに来て初めてイラつかせた声を上げた。

 
 「羽虫どもが……ワシの邪魔をするな!!」
 「断る」
 (カッカッカ、怒ってる怒ってる)
 「お~っほっほっほ、いい声ですわ!!」


 まるで揶揄うように白魔鬼の注意を引く二人と一本、白魔鬼の怒りは確実に彼らに向きつつあった。


 「カモメ、今のうちに……」
 「うん……」


 カモメは頷くと自分の周囲から黒い魔力を迸らせる。
 そして、両手を前にし、その手の中から先ず、黒い闇の魔法を出現させる。


 「ふう……ここから……」


 真剣な面持ちで自分の手の中にある闇の魔法を皆がら、新たな魔法を混ぜ合わせる。
 そう、カモメが使おうとしているのは合成魔法だ、しかし、その表情はいつもよりも険しい。
 

 そして、徐々に、カモメの手の中にある闇の魔法に白い輝く魔法が混ぜ合わされていく。 
 ―――――――――光の魔法だ。

 カモメの行おうとしている魔法は光と闇の合成魔法。
 今まで、闇の魔法の火力を上げる為に火の魔法等と合成したことがある。それは純粋にお互いの魔法が混ざり合い、威力を相乗させたのだが。

 光と闇の魔法の場合、そうではないのだ。
 光と闇、お互いが対極にあるこの魔法は混ざり合うことが自然界では決してない。
 光のある所には闇が無く、闇のある所には光がない。
 だが、もし、その二つが合わされば、何が起こるのか?

 カモメはそう考え、この魔法を試したことがあった。その結果、魔法の制御に失敗し大けがを負ったことがあったのだ。
 あの時は、今ほど威力を出そうとはしておらず、ほんのちょっとの魔力で試してみようとしていたため、大怪我で済んだ……そして、それをカモメの中で見ていたディータはその魔法の使用を禁じたのだ。
 ―――――――カモメの身が危険であるが故。




 徐々に混ざり合う、闇と光……そして。


 「くうっ!!」
 「カモメ、魔力で抑え込みなさい!」


 カモメの両手の中にある光と闇が暴れ出した。
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