闇の魔女と呼ばないで!

遙かなた

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5章

光と闇2

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 「くっ……このっ……暴れるなぁっ!」


 カモメの手の中で光と闇の魔法が暴れ狂う。
 お互いがお互いを反発しあうようにカモメの手の中で弾かれあうのだ。
 その魔力をカモメは掌の中でまるで竜巻のようにぐるぐると回転をさせながら徐々に混ぜ合わせていく。

 少しずつ、少しずつであるが光と闇の魔法は混ざり始めている……が。



 「これ以上っ……抑えられないっ!!」
 「カモメ、ここで力を抜けば暴発するわよ!!」
 「くぅううっ!」


 暴発なんてさせてたまるか!と再び魔力を抑え込むカモメ。
 もしここで暴発させてしまえば、間違いなく自分とディータ、それにエリンシアやクオン……いや、それだけではない、今、冒険者ギルドで王子たちに率いられてこの国を脱出している人たちまで巻き込んでしまうかもしれないのだ。


 「絶対、暴発なんてさせるもんか!」


 カモメは全魔力を集中させ、両魔法を合成し続ける。
 ゆっくりと、少しずつではあるがカモメの努力が報われ始めている………だが。



 「何をしようとしているのじゃ!」


 カモメの様子に白魔鬼が気づく……そして、カモメに向かい青い炎を放とうとするが、クオンがその腕を斬り飛ばす。


 「お前の相手は僕たちだ!!」


 だが、そんなものお構いないと言わんばかりに、もう一方の腕から炎を放とうとするが、そちらの腕はエリンシアの魔弾により消滅させられた。


 「つれませんわね!レディの誘いを無視するなんて!!」

 「まだじゃ!!!」
 「しまっ!?」


 口をパカリと開けた白魔鬼は開けた口から怪光線を放つ。
 そのスピードにクオンは剣を、エリンシアは魔弾を放っていたが、間に合わなかった。


 「カモメ!?」
 「カモメさん!?」


 魔力をコントロールすることに集中しているカモメは自分に近づく怪光線に気付かない。
 だが、怪光線はカモメに直撃する寸前に他の何かに当たり、炸裂した。


 「な、なにっ!?」


 その衝撃にカモメは顔を上げる、そして、ぽとりと地面に落ちる小さな影を見つけて、声を上げた。


 「ディータ!?」
 

 怪光線がカモメに直撃する寸前にディータがその身を挺してカモメを護ったのだ。


 「ディータ、大丈夫!?」
 「集中しなさい、カモメ!それから目を離すな!」


 地面に落ちたディータは、なんとかその小さな手足を使って立ち上がろうとするが、うまくいかずに崩れ落ちる。


 「風と闇の魔法を全開して、なんとか防いだわ……私は大丈夫だから、集中しなさい」
 「う、うん……」


 ディータの声を聴き、再び自分の掌の魔力に集中をするカモメ。
 そして、その魔力はあと一歩で完全に合成するところまで来た……が……。


 「え!?」


 カモメの両手の中でいきなり暴れ出す二つの魔法……そして、その魔力が膨れ上がった。



 「そんな……どうして!?」


 カモメは、膨れ上がる魔力を制御しようとするがその魔力を制御しきれない……このままでは暴発をする……。ここまで膨れ上がった魔力を制御し直すなんて出来ないそう思い絶望の顔に変わるカモメだが……。



 「カモメ、諦めるな!君なら出来る、自分を信じるんだ!」


 白魔鬼と刃を交えながらクオンはこちらを向かず声を掛けてくる。


 「そうですわよ!あなたはワタクシの親友ですわ!ワタクシの親友は最後の最後まであきらめませんわ!



 エリンシアも白魔鬼に拳を叩きつけながらもそう言った。
 二人の顔はカモメを信じてい疑わないそう思わせるほど自信に満ちていたのだ。


 「カモメ……闇の魔法は私の……光の魔法は妹のレナの魔法よ……私と妹の魔法が混ざり合えないなんてことはありえないわ……カモメ、あなたなら出来る」


 ディータは地面からなんとかその体を浮かせ、カモメの近くへとやってきていた。


 「くっ……こなくそおおおお!!」


 カモメは叫ぶ、自分の内側にある魔力、体力すべてを声と共に絞り出す……だが、膨れ上がった魔力は収縮するどころかその大きさを増していくのだった。


 「駄目……駄目……どうしたら……っ」
 「……光の魔法の出力を上げなさい」


 不意に、カモメの隣に聞き覚えのある声を放つ人物が現れた。


 「え……?」
 「光の魔法は治療や防御の魔法が優秀だと思われがちだけれど、実は結構、暴力的な魔法なのよ」


 確かに、メリアンナ法王が使った光の魔法などは魔族を倒すほどの威力を放つ魔法だ。
 防御の魔法にしても相手の攻撃を頑として通さないという言い方をすれば確かに……。


 「アネル……さん?」


 そう、隣に現れたのはアネルであった。ツァインで王様たちを護っている筈のアネルがどうしてここに?
カモメはそう疑問に思うのだが……その疑問を口する前にアネルは次の言葉を発する。


 「光の女神は我がままだったわ……そして、それに闇の女神はいつも付き合わされていた。暴力的に見える闇の魔法だけれど、実は闇の女神の力だけあって優しさに溢れた魔法なの……だから、合成させるのであれば暴れる光の魔法を闇の魔法で包むように合成してみなさい……そうすれば、うまくいくわ……だって、『私』は『姉様』にいつもそうやって守られてきたのだから」

 「……え?」


 驚きの声を上げたのはディータである。
 カモメは暴れる魔力をアネルの言った通りに光の魔法の出力を上げ、その周りに闇の魔法が包み込むように展開するように発動した。

 すると、魔力の暴走が先ほどまでが嘘のように静まる。
 そして、包み込んだ闇の魔法の内側で光と闇が一気に合成されたのだ。


 「できた……」
 「さすが、カモメちゃん♪」


 闇と光が混ざり合ったその魔法は鮮やかな光の玉となり、カモメの掌に収まっていた。



 「クオン!エリンシア!」


 カモメが叫ぶと、その意味を理解した二人は同時に白魔鬼の両足を吹き飛ばす、そして、白魔鬼が再生しきる前に、急いでカモメの後ろ側へと奔るのだった。

 二人が、自分より後ろに行ったのを確認すると、カモメは掌にあった鮮やかな球体を両手で包み込み、腰の位置まで沈める、そして、そのまま両手を前に突き出すと鮮やかな球体はまるで炎のように燃え上がり、白魔鬼に向かって襲い掛かった。


―――――――――轟音。


 グランルーンにその音が響き渡ったのだった。

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