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6章
世界
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アークミスラの案内に従い、奥の部屋へと訪れたカモメ達。
そこには台座に置かれた一つのオーブが置かれていた。
「あれがそうなの?」
「そうだ、闇の女神よ。あれが『世界の知恵』と呼ばれる、我が竜族の秘宝だ」
「『世界の知恵』!?」
ディータが驚きの声を上げる、いや、ディータだけではないアネルもまた、その言葉に信じられないという程の驚きの表情を表していた。
「なぜ、そんなものが?」
「この秘法はお主等、光と闇の女神が来る前からこの地にあったものだ」
「そう……でしょうね」
『世界』……それはこの星その物と言える。
『世界』とは女神よりさらに古く、長い年月を過ごしてきたものであり、その力は女神たちよりも強大である、女神たちですらその世界の決めた死からは簡単には逃れられない。肉体を持たず、魂だけの姿になった者はすべからく、世界へと取り込まれてしまう。ディータは異空間に魂を逃げさせ、カモメの中に入ることでその死から逃げた。レナはアネルの体を貰う事でその死から逃げる。
なら、適当なものを作って入れば良いのでは?とも思えるのだが……世界を謀るのは難しい。
元々の肉体に意思がないものは世界は死んでいる者として扱う、その為、ゾンビなどの魔物はすでに魂は無い。ただ、そういう物として存在するだけである。その為、ゾンビの体を奪ったとしても、その魂は世界に吸収されてしまうだろう。同じように、体だけを作ってその中に入ってもやはり世界からは逃げることはできない。その体は生きていないと世界に認識されるからだ。
ならば、ディータのソウルイーターはどうなのか?あれはソウルイーターという魔物の魂が元々定着していた為、世界からは生きている魔法生物として扱われていた。そして、その魂を打ち負かし体を乗っ取ったディータもその体の所有権を認められたという事だ。
なぜ、こんなにもアバウトな判定なのだろう、何処からが作りもので何処からが作りものじゃないのか女神たちが生を与えた人間たちも作りものと言えるのじゃないだろうか?
様々な疑問は浮かぶ……だが、その答えに女神たちは口をそろえてこう言うのだ『世界は気まぐれでわがままだから』……と。
そして、こう付け加えるのだ『だけど、世界は生きている者の意志の強さを大切にする』と。
「なんで、そんなものがこの世に存在するの?」
ディータの疑問はもっともだ、『世界の知恵』と呼ばれたその宝玉、つまり、女神たちですら叶わない世界の所有物ということである。
「お主達が来る前の話だ、この世界には別の女神がいた」
「それは、解るわ。魔物やあなた達ドラゴン、それらの生き物創った者がいるはずだもの」
「うむ、我らはその女神に作られたのだ……だが、その女神が世界に反旗を翻した」
「はあ?世界に?……反旗を翻すも何もどこにいるかもわからないような相手に?」
「いや、どこにいるかは解っている」
「どういうこと?」
先ほども言った通り、世界とはこの星そのものである。どこかにいるという概念すらないはずなのだが……そこまで考えて、ディータは一つの事に気付く。
「まさか……」
「そうだ、その女神はこの星そのものを破壊しようとした」
「待ちなさい、それじゃ、その女神に創造されたあなた達だって……」
「そう、我らは女神に捨てられたのだ……そして、我らは自らを作った者の手によって世界を倒すための道具とされた……意識を奪われ、唯々、戦う生きた戦闘の道具へと……。」
そして、それが世界の逆鱗に触れたというのだ。当然である、人の意思を大事にする世界が自分を倒すためにその意思を奪われた者たちを見てしまったのだから。
「そして、世界は我々を救った、女神の傀儡となった我々の正気を取り戻し、力を与えたのだ」
「それが、この『世界の知恵』というわけね」
「ああ、未だに現存しているものはな」
「他にもあったの?」
「ああ、世界が回収されたが、女神を倒すための武器を与えられたらしい」
「らしいって、あなたはそれを見ていたんじゃないの?」
「もう幾千年も昔の話よ、我とてそこまで長生きではない」
あくまで言い伝えだと竜王は言う。
だが、その言い伝えが嘘や作り話でなはいということを目の前のオーブの放つ異様な存在感がそれを証明していた。
「それで、結局あれはどういうものなの?真実を知らせるものと聞いていたのだけど?」
「その通りだ、あれは真実を知らせてくれる……ただし」
「ただし?」
「教えてくださるのは『世界』そのものだ」
「何ですって!?」
つまり、あの魔導具は世界と交信のできる魔導具という事だ。
女神たちですらそんなことは出来ないというのに、竜族は長年、世界の意思を聴いてきたのだという。
「それなら、確かに真実を知れるでしょうけど……」
「ただし、答えていただけるかは世界の気分次第ということになる」
「はは、世界は気分屋だというのは間違いではないのね」
「うむ、確かにあの方は気分屋だろうな」
つまり、カモメの魔力の暴走を抑えられるかどうかは世界の気分次第という事になるのだ。
果たして、世界はカモメの事を気にかけてくれているのか……。闇の女神であるディータにとってはカモメは自分を受け入れてくれたかけがえのない家族のようなものだ……だが、世界にとっては数多にいる人間の一人でしかないだろう……。
「カモメ次第か……」
カモメの方を見ると、クオンに捕まりながら不安そうな顔をしている。
カモメ達からすれば世界っていうのは何のこと?という状態なので話についてくることも出来ていない。
「カモメ、試してみましょう。運が良ければその魔力の暴走を治す方法を知ることができるかもしれない」
「うん……わかった、ちょっと怖いけどやってみる」
カモメはクオンに手を引かれながらオーブの元へと近づく……そして、オーブに手を触れると、その意識はオーブの中へと吸い込まれる。
そして、気づくとカモメは暗闇の中に一人で立っているのであった。
そこには台座に置かれた一つのオーブが置かれていた。
「あれがそうなの?」
「そうだ、闇の女神よ。あれが『世界の知恵』と呼ばれる、我が竜族の秘宝だ」
「『世界の知恵』!?」
ディータが驚きの声を上げる、いや、ディータだけではないアネルもまた、その言葉に信じられないという程の驚きの表情を表していた。
「なぜ、そんなものが?」
「この秘法はお主等、光と闇の女神が来る前からこの地にあったものだ」
「そう……でしょうね」
『世界』……それはこの星その物と言える。
『世界』とは女神よりさらに古く、長い年月を過ごしてきたものであり、その力は女神たちよりも強大である、女神たちですらその世界の決めた死からは簡単には逃れられない。肉体を持たず、魂だけの姿になった者はすべからく、世界へと取り込まれてしまう。ディータは異空間に魂を逃げさせ、カモメの中に入ることでその死から逃げた。レナはアネルの体を貰う事でその死から逃げる。
なら、適当なものを作って入れば良いのでは?とも思えるのだが……世界を謀るのは難しい。
元々の肉体に意思がないものは世界は死んでいる者として扱う、その為、ゾンビなどの魔物はすでに魂は無い。ただ、そういう物として存在するだけである。その為、ゾンビの体を奪ったとしても、その魂は世界に吸収されてしまうだろう。同じように、体だけを作ってその中に入ってもやはり世界からは逃げることはできない。その体は生きていないと世界に認識されるからだ。
ならば、ディータのソウルイーターはどうなのか?あれはソウルイーターという魔物の魂が元々定着していた為、世界からは生きている魔法生物として扱われていた。そして、その魂を打ち負かし体を乗っ取ったディータもその体の所有権を認められたという事だ。
なぜ、こんなにもアバウトな判定なのだろう、何処からが作りもので何処からが作りものじゃないのか女神たちが生を与えた人間たちも作りものと言えるのじゃないだろうか?
様々な疑問は浮かぶ……だが、その答えに女神たちは口をそろえてこう言うのだ『世界は気まぐれでわがままだから』……と。
そして、こう付け加えるのだ『だけど、世界は生きている者の意志の強さを大切にする』と。
「なんで、そんなものがこの世に存在するの?」
ディータの疑問はもっともだ、『世界の知恵』と呼ばれたその宝玉、つまり、女神たちですら叶わない世界の所有物ということである。
「お主達が来る前の話だ、この世界には別の女神がいた」
「それは、解るわ。魔物やあなた達ドラゴン、それらの生き物創った者がいるはずだもの」
「うむ、我らはその女神に作られたのだ……だが、その女神が世界に反旗を翻した」
「はあ?世界に?……反旗を翻すも何もどこにいるかもわからないような相手に?」
「いや、どこにいるかは解っている」
「どういうこと?」
先ほども言った通り、世界とはこの星そのものである。どこかにいるという概念すらないはずなのだが……そこまで考えて、ディータは一つの事に気付く。
「まさか……」
「そうだ、その女神はこの星そのものを破壊しようとした」
「待ちなさい、それじゃ、その女神に創造されたあなた達だって……」
「そう、我らは女神に捨てられたのだ……そして、我らは自らを作った者の手によって世界を倒すための道具とされた……意識を奪われ、唯々、戦う生きた戦闘の道具へと……。」
そして、それが世界の逆鱗に触れたというのだ。当然である、人の意思を大事にする世界が自分を倒すためにその意思を奪われた者たちを見てしまったのだから。
「そして、世界は我々を救った、女神の傀儡となった我々の正気を取り戻し、力を与えたのだ」
「それが、この『世界の知恵』というわけね」
「ああ、未だに現存しているものはな」
「他にもあったの?」
「ああ、世界が回収されたが、女神を倒すための武器を与えられたらしい」
「らしいって、あなたはそれを見ていたんじゃないの?」
「もう幾千年も昔の話よ、我とてそこまで長生きではない」
あくまで言い伝えだと竜王は言う。
だが、その言い伝えが嘘や作り話でなはいということを目の前のオーブの放つ異様な存在感がそれを証明していた。
「それで、結局あれはどういうものなの?真実を知らせるものと聞いていたのだけど?」
「その通りだ、あれは真実を知らせてくれる……ただし」
「ただし?」
「教えてくださるのは『世界』そのものだ」
「何ですって!?」
つまり、あの魔導具は世界と交信のできる魔導具という事だ。
女神たちですらそんなことは出来ないというのに、竜族は長年、世界の意思を聴いてきたのだという。
「それなら、確かに真実を知れるでしょうけど……」
「ただし、答えていただけるかは世界の気分次第ということになる」
「はは、世界は気分屋だというのは間違いではないのね」
「うむ、確かにあの方は気分屋だろうな」
つまり、カモメの魔力の暴走を抑えられるかどうかは世界の気分次第という事になるのだ。
果たして、世界はカモメの事を気にかけてくれているのか……。闇の女神であるディータにとってはカモメは自分を受け入れてくれたかけがえのない家族のようなものだ……だが、世界にとっては数多にいる人間の一人でしかないだろう……。
「カモメ次第か……」
カモメの方を見ると、クオンに捕まりながら不安そうな顔をしている。
カモメ達からすれば世界っていうのは何のこと?という状態なので話についてくることも出来ていない。
「カモメ、試してみましょう。運が良ければその魔力の暴走を治す方法を知ることができるかもしれない」
「うん……わかった、ちょっと怖いけどやってみる」
カモメはクオンに手を引かれながらオーブの元へと近づく……そして、オーブに手を触れると、その意識はオーブの中へと吸い込まれる。
そして、気づくとカモメは暗闇の中に一人で立っているのであった。
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