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7章
アルメルダ再び
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大きな部屋、特に何かが置いてあるわけでもなく唯々、広い部屋にクオンは一人いた。
クオンは周りを警戒しながら、その部屋からの出口を探す。
そして、出口らしき扉を見つけた瞬間、黒い針のようなものがクオンに目掛けて飛んできた。
クオンはそれをクレイジュを使い切り払い、黒い針を投擲した人物の方へと視線を向ける。
「やあ、すごいねえ……お兄さんの針をそうも簡単に弾いちゃうなんて」
「……魔族……ですね?」
部屋に一つだけ小さな机があった。
そこに魔族は座りながらクオンを見て拍手を送っている。
「もちろんそうさ……俺の名前は十二神将が一人、アルメルダ」
「アルメルダ……確か、カモメがツァインで戦った魔族がその名前でしたね」
「おお、魔女のお嬢ちゃんには世話になったねぇ……いやぁ、あのお嬢ちゃんは強かった」
「コハクとリーナも随分お世話になったみたいで……冒険者の先輩としてお礼をしたいと思っていたんですよ」
アルメルダがツァインを襲った時、丁度その場にいたコハクとリーナが戦う事となった。
だが、その力の差は大きく、コハクとリーナは危うく殺されかけていたのだ。
そのピンチを救ったのがカモメだった。
「ああ、あの時のエルフの坊ちゃんと嬢ちゃんか……いやぁ、お兄さんも仕事だったんでね、勘弁してくれいないかな?」
「そうですか、仕事なら仕方ありませんね」
「そうそう、そうだろう?」
「ええ、なので僕も仕事に専念させてもらいましょうか」
「げ……兄ちゃん……結構、頭堅いねぇ」
「そうでもありませんよ」
そう言い、クオンは一瞬でアルメルダに詰め寄り、クレイジュを振るう。
アルメルダはそれを咄嗟に躱し、大きく距離を取った。
「兄ちゃん……強いねぇ」
「それ程でも……あ、忘れていました、魔族の貴方に聞きたことがあったんです」
「ん、なんだい?」
「あなた達はリーンに騙されていることを解っていますか?」
「………それは難しい質問だねぇ」
その答えはクオンにとって予想外の答えであった。
カモメが見た過去の話を聞く限り、魔族たちはリーンに騙され、この世界を襲っているという事だった。
だが、今、目の前にいる魔族は騙されているという言葉にそれほどの驚きを見せていない。
いや、それどころか解っているかのような態度であった。
「他の連中は分からねぇけど、俺や一部の魔族はあの方を胡散臭いって思ってたねぇ」
「それなのになぜ、僕らの世界を襲うんですか?」
「俺らの世界が蝕まれているのは本当だったからねぇ……なら、この世界を放っておくわけにはいかないっしょ?」
「その蝕んでいる本人がリーンだとしても?」
「何?……そっか、それは考えてなかったねぇ……そっか、俺たちも魔王様も完全に騙されていたって訳かい」
どうやら、完全にリーンの事を見抜いていたわけではないようだ。
ただ、胡散臭いと思っていただけか……。
「なら、ここで退いてくれませんか?僕らの敵はお互いではなくリーンです」
「そりゃあ……無理だろ?」
「なぜです?」
「お互いに仲間を殺しあってんだ……今更、そのことを忘れてお手て繋いで仲良く生きましょうなんて出来っこねぇよ」
「………そうですね」
確かに、多くの魔族をクオン達は倒してきている。
いや、それだけではない千年前の戦いでもディータ達が多くの魔族を消滅させている筈だ。
そして、もちろんそれはこちらも同じ。
カモメの両親は魔族に殺されている……カモメだけではない、クーネル国の人や他の国の人々も……本当に数えきれないほどの人間が犠牲になっているのだ。
たとえ、ここでクオンとアルメルダ……いや、カモメやディータが相手を許し共に戦おうと言ったところで他の人達が黙っていないだろう……もう、お互いに許せるようなレベルでは無いのだ。
「だけど、情報は感謝するぜ、兄ちゃん……アンタらを倒したら次はあの方を殺さねぇとな」
「すみませんが、それは出来ませんね……ですので代わりにリーンは僕らが倒してあげますよ」
「……言うねぇ……やって見なさ!」
もう、交わす言葉は無い、そう言うかのように再び、戦いが始まる。
黒い針がクオンを襲うも、その悉くをクオンは払いのけ、アルメルダに接近する。
そして、一閃――――――クオンの一撃がアルメルダの腹部に掠った。
「……ちっ……やばいね」
自分との力の差を実感したのかアルメルダは先ほどまでの軽い口調が無くなる。
「使いたくは無かったんだけどねぇ……がっ!」
「何!?」
クオンはアルメルダの行動に驚いた。
なぜなら、彼は鉄棒くらい太さにした黒い針で自分の胸を貫いたのだ……そして。
ジェシーと同じく、アルメルダも魔鬼へと変貌を果たすのであった。
「あの方からもらった力……気に入らないんで使いたくなかったんだけどね……俺たちも負けるわけにはいかないんだよね……」
「魔族が……魔鬼に?」
「そう言う事……悪いけど兄ちゃん……死んでもらうよ?」
「がっ!?」
先ほどまでとまるで別人のような素早い動きにクオンは敵の蹴りをまともに受け吹き飛ぶ。
「くっ……簡単にはいかないか」
立ち上がりクレイジュを構えるクオンは鋭い眼を『敵』へと向けるのであった。
クオンは周りを警戒しながら、その部屋からの出口を探す。
そして、出口らしき扉を見つけた瞬間、黒い針のようなものがクオンに目掛けて飛んできた。
クオンはそれをクレイジュを使い切り払い、黒い針を投擲した人物の方へと視線を向ける。
「やあ、すごいねえ……お兄さんの針をそうも簡単に弾いちゃうなんて」
「……魔族……ですね?」
部屋に一つだけ小さな机があった。
そこに魔族は座りながらクオンを見て拍手を送っている。
「もちろんそうさ……俺の名前は十二神将が一人、アルメルダ」
「アルメルダ……確か、カモメがツァインで戦った魔族がその名前でしたね」
「おお、魔女のお嬢ちゃんには世話になったねぇ……いやぁ、あのお嬢ちゃんは強かった」
「コハクとリーナも随分お世話になったみたいで……冒険者の先輩としてお礼をしたいと思っていたんですよ」
アルメルダがツァインを襲った時、丁度その場にいたコハクとリーナが戦う事となった。
だが、その力の差は大きく、コハクとリーナは危うく殺されかけていたのだ。
そのピンチを救ったのがカモメだった。
「ああ、あの時のエルフの坊ちゃんと嬢ちゃんか……いやぁ、お兄さんも仕事だったんでね、勘弁してくれいないかな?」
「そうですか、仕事なら仕方ありませんね」
「そうそう、そうだろう?」
「ええ、なので僕も仕事に専念させてもらいましょうか」
「げ……兄ちゃん……結構、頭堅いねぇ」
「そうでもありませんよ」
そう言い、クオンは一瞬でアルメルダに詰め寄り、クレイジュを振るう。
アルメルダはそれを咄嗟に躱し、大きく距離を取った。
「兄ちゃん……強いねぇ」
「それ程でも……あ、忘れていました、魔族の貴方に聞きたことがあったんです」
「ん、なんだい?」
「あなた達はリーンに騙されていることを解っていますか?」
「………それは難しい質問だねぇ」
その答えはクオンにとって予想外の答えであった。
カモメが見た過去の話を聞く限り、魔族たちはリーンに騙され、この世界を襲っているという事だった。
だが、今、目の前にいる魔族は騙されているという言葉にそれほどの驚きを見せていない。
いや、それどころか解っているかのような態度であった。
「他の連中は分からねぇけど、俺や一部の魔族はあの方を胡散臭いって思ってたねぇ」
「それなのになぜ、僕らの世界を襲うんですか?」
「俺らの世界が蝕まれているのは本当だったからねぇ……なら、この世界を放っておくわけにはいかないっしょ?」
「その蝕んでいる本人がリーンだとしても?」
「何?……そっか、それは考えてなかったねぇ……そっか、俺たちも魔王様も完全に騙されていたって訳かい」
どうやら、完全にリーンの事を見抜いていたわけではないようだ。
ただ、胡散臭いと思っていただけか……。
「なら、ここで退いてくれませんか?僕らの敵はお互いではなくリーンです」
「そりゃあ……無理だろ?」
「なぜです?」
「お互いに仲間を殺しあってんだ……今更、そのことを忘れてお手て繋いで仲良く生きましょうなんて出来っこねぇよ」
「………そうですね」
確かに、多くの魔族をクオン達は倒してきている。
いや、それだけではない千年前の戦いでもディータ達が多くの魔族を消滅させている筈だ。
そして、もちろんそれはこちらも同じ。
カモメの両親は魔族に殺されている……カモメだけではない、クーネル国の人や他の国の人々も……本当に数えきれないほどの人間が犠牲になっているのだ。
たとえ、ここでクオンとアルメルダ……いや、カモメやディータが相手を許し共に戦おうと言ったところで他の人達が黙っていないだろう……もう、お互いに許せるようなレベルでは無いのだ。
「だけど、情報は感謝するぜ、兄ちゃん……アンタらを倒したら次はあの方を殺さねぇとな」
「すみませんが、それは出来ませんね……ですので代わりにリーンは僕らが倒してあげますよ」
「……言うねぇ……やって見なさ!」
もう、交わす言葉は無い、そう言うかのように再び、戦いが始まる。
黒い針がクオンを襲うも、その悉くをクオンは払いのけ、アルメルダに接近する。
そして、一閃――――――クオンの一撃がアルメルダの腹部に掠った。
「……ちっ……やばいね」
自分との力の差を実感したのかアルメルダは先ほどまでの軽い口調が無くなる。
「使いたくは無かったんだけどねぇ……がっ!」
「何!?」
クオンはアルメルダの行動に驚いた。
なぜなら、彼は鉄棒くらい太さにした黒い針で自分の胸を貫いたのだ……そして。
ジェシーと同じく、アルメルダも魔鬼へと変貌を果たすのであった。
「あの方からもらった力……気に入らないんで使いたくなかったんだけどね……俺たちも負けるわけにはいかないんだよね……」
「魔族が……魔鬼に?」
「そう言う事……悪いけど兄ちゃん……死んでもらうよ?」
「がっ!?」
先ほどまでとまるで別人のような素早い動きにクオンは敵の蹴りをまともに受け吹き飛ぶ。
「くっ……簡単にはいかないか」
立ち上がりクレイジュを構えるクオンは鋭い眼を『敵』へと向けるのであった。
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