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7章
魔王との戦い⑤
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「あっちもヤバそうね……」
「はい、姉様……ですが、こちらも余裕がありません」
「やはり、弱くなったな闇の女神よ……千年前の貴様はこの程度ではなかったぞ?」
「くっ……」
先ほどから繰り出すディータの闇の魔法もレナの光の魔法も魔王には一切傷を与えられていない。
力、スピード、そして魔力に至るまで現時点では魔王の方が上なのだ。
「妹の方は多少、戦い方が変わったか?以前は姉の後ろに隠れているだけの臆病者だったが……」
「私が臆病なのは今も変わりませんよ……でも、臆病だからこそ大切なものを失いたくないから戦うんです」
姉を庇うように前に立つレナ。
その手には剣を持ち、アネルの力でもある気を開放させていた。
「ほう……それは人間の力か?貴様の魂の輝きが増したように見えるが?」
「そうです、私の命を救ってくれたこのアネルの力です……そして、この力で私は貴方を倒します!」
アネルが力強く踏み込むと一瞬で魔王の懐へと潜り込む。
そして、気を纏った剣を一突き、魔王の心の蔵に向けて放つ。
「なっ!?」
「ふんっ……この程度か?」
驚くことに魔王はその月を、人差し指と親指の二本の指だけで止めてしまった。
「そんなっ」
「なるほど、貴様もその体の持ち主も剣の腕は素人だったのか?……何の工夫も無く突きを放つとは……それでは我には届かぬぞ?」
「くっ!これならどうです!」
剣を一度引き、そしてまた突き出す……それも高速で……何度も。
レナの剣がまるで、何十本にも増えたように見える程のスピードで何度も何度も突きを放つ。
「その程度か?」
だが、その突きを魔王をすべて指二本だけで防いでしまった。
「嘘……」
そして、魔王が動く。
「貴様に剣は合わんな……」
魔王の手刀がレナの剣を真ん中ら真っ二つに叩き割る。
「あ……」
「レナ、避けなさい!」
「あぐっ」
そして、剣を失い動揺したレナのお腹に魔王の蹴りが炸裂した。
レナはその蹴りの威力でディータの近くまで吹き飛ばされる。
「がふっ」
「大丈夫!?」
「は、はい……」
ダメージは大きいのか、折れた剣を支えにしながらレナは立ち上がる。
「姉様……」
自分の力が、魔王と戦うためにアネルの力を借りて力を付けてきたのに魔王には全く通用しなかった。
そのことが堪えたのか、レナの表情は暗い。
「なんて、顔してるのよ?今の攻撃凄かったわよ?」
「ですが、魔王には全く通用しませんでした……」
「あんなのきっと、強がってるだけよ……よく見たら顔が引きつってるように見えない?……ああ、元々ブサイクなだけか」
ディータの言葉に蟀谷に青筋を立てる魔王。
だが、そんなの関係ないと言わんばかりにディータは言葉を続ける。
「よくも私の妹をいじめてくれたわね?泣いて謝りたくなるくらい後悔させてあげるわ!」
「気に入らん女よ……千年前もそうだ……貴様はどれほど追い込まれようが、心が折れん……」
「当然ね、最後に勝つのは私達なんだから」
「戯けが……」
(レナ、一つ作戦があるわ、耳を貸しなさい)
「え?」
ディータは、魔王を煽りながらもレナに耳打ちをした。
その作戦を聞くと、レナは目を丸くする。
「え、でも、それは……」
「ええ、成功するかどうかは分からないわ……でも、私達姉妹なら出来ると思わない?」
「………はい、出来ます!やって見せます!」
「良い返事ね……なら、行くわよ!」
「はい!」
ディータとレナが同時に走る。
二手に分かれる訳でもなく、フェイント交えながら横を取りに来るわけでもなく、一直線に魔王に向かって走った。
「捨て身か?」
「どーかしらね! 爆発炎弾!!」
「何のつもりだ?」
炎の爆発の魔法を魔王に向けて放つディータ、だが、闇の魔法と光の魔法以外は魔族にダメージを与えられない。それなのに、ここに来てディータはよりによって火の魔法の中でも最弱であるフレイムエクリスを魔王に放った。
「もう一発! 爆発炎弾!」
「私も行きます! 爆発炎弾!!」
ディータだけではなくレナまでもがフレイムエクリスを連発し始める。
この意味不明の行動にさしもの魔王も困惑の色を隠せなかった。
「何のつもりだ、何を企んでいる?」
何発も何発も魔王に向けてフレイムエクリスを放つ二人。
その爆発は魔王の周りで幾度となく起きる……そして。
「む……」
魔王の周りに爆発で起きた煙が充満し始めた。
「視界を奪うのが狙いか!」
充満してきた煙が、徐々に魔王の視界を奪う。
だが、それに気づいた魔王は羽織っていたマントを翻し、その煙を吹き飛ばした。
「いえ、狙いは貴方の動きを止めることよ」
マントを大きく翻したことで魔王の動きはその翻す行為に集中していた。
その為、その場から瞬時に動くことが出来ない。
「行くわよレナ!」
「はい、姉様!」
「ちっ、後ろか!」
二人の居場所に気付いた魔王がその場で後ろを振り向こうとする。
ディータがなぜ一番弱い呪文のフレイムエクリスを放ち続けたのかと言うと、魔王の油断を誘う為である。ダメージを受けない攻撃を受け続けたことで、魔王は二人の攻撃を甘く見る。
その場からすぐに移動すれば、二人の攻撃を躱すことも出来るかもしれない、だが、魔王はその場で振り返ろうとしているのだ、それはどんな攻撃が来ようとも自分には効かないという自信もあるだろう、そして今まではその通りであったのだ……それも油断となった。
「合わせるわよ!」
「はい!」
ディータが闇の魔法を、そしてレナが光の魔法をお互いが手を隣り合わせに突き出し、放つ。
「イメージは混ざり合う渦、二人の魔法が渦の中で混ざり合うイメージよ!」
「はい!」
「それと、両方が同じだけのエネルギーでないと成功しないわ!もっと光の力を上げて!」
「はい!」
二人の掌の魔法が二人の掌の真ん中で混ざり合う……これは合成魔法だ。
カモメの中で何度もカモメが合成魔法を使うところを見てきたディータは、当然、その感覚を覚えていた。
だが、ソウルイーターになったばかりのディータにはそれを扱えるだけの魔力が無く、女神の姿に戻れるほどに魔力が溜まったディータは、合成魔法を使うよりも闇の魔法を使った方が威力のある魔法を唱えられるため使っていなかった。
だが、光と闇の魔法の合成であれば話は別だ。
ディータ一人では使うことが出来ないが、同じ女神で姉妹でもあるレナと共に使うのであれば、恐るべき威力の魔法になるだろう……グランルーンでカモメが使った時のように。
後は、制御しきれるかどうかの問題である。
「根性で成功させるわよ、レナ!」
「はい!」
失敗すれば何が起こるか分からない、下手をすればこの場の皆を巻き込み大爆発……なんてこともあるかもしれない……だから失敗できない…‥でもこれしか魔王を倒せる方法が思いつかなかった。
「いいわよ……行ける!」
「なんだ、その魔法は……」
「今更遅いわ!三流魔王!!滅びなさい!!」
光と闇が合成される……ひとつになったその力は魔王に向かって放たれた。
油断し、そして驚きからその魔法を躱す余裕はなく、魔王は光と闇の合成魔法をその身に受けたのだった。
「はい、姉様……ですが、こちらも余裕がありません」
「やはり、弱くなったな闇の女神よ……千年前の貴様はこの程度ではなかったぞ?」
「くっ……」
先ほどから繰り出すディータの闇の魔法もレナの光の魔法も魔王には一切傷を与えられていない。
力、スピード、そして魔力に至るまで現時点では魔王の方が上なのだ。
「妹の方は多少、戦い方が変わったか?以前は姉の後ろに隠れているだけの臆病者だったが……」
「私が臆病なのは今も変わりませんよ……でも、臆病だからこそ大切なものを失いたくないから戦うんです」
姉を庇うように前に立つレナ。
その手には剣を持ち、アネルの力でもある気を開放させていた。
「ほう……それは人間の力か?貴様の魂の輝きが増したように見えるが?」
「そうです、私の命を救ってくれたこのアネルの力です……そして、この力で私は貴方を倒します!」
アネルが力強く踏み込むと一瞬で魔王の懐へと潜り込む。
そして、気を纏った剣を一突き、魔王の心の蔵に向けて放つ。
「なっ!?」
「ふんっ……この程度か?」
驚くことに魔王はその月を、人差し指と親指の二本の指だけで止めてしまった。
「そんなっ」
「なるほど、貴様もその体の持ち主も剣の腕は素人だったのか?……何の工夫も無く突きを放つとは……それでは我には届かぬぞ?」
「くっ!これならどうです!」
剣を一度引き、そしてまた突き出す……それも高速で……何度も。
レナの剣がまるで、何十本にも増えたように見える程のスピードで何度も何度も突きを放つ。
「その程度か?」
だが、その突きを魔王をすべて指二本だけで防いでしまった。
「嘘……」
そして、魔王が動く。
「貴様に剣は合わんな……」
魔王の手刀がレナの剣を真ん中ら真っ二つに叩き割る。
「あ……」
「レナ、避けなさい!」
「あぐっ」
そして、剣を失い動揺したレナのお腹に魔王の蹴りが炸裂した。
レナはその蹴りの威力でディータの近くまで吹き飛ばされる。
「がふっ」
「大丈夫!?」
「は、はい……」
ダメージは大きいのか、折れた剣を支えにしながらレナは立ち上がる。
「姉様……」
自分の力が、魔王と戦うためにアネルの力を借りて力を付けてきたのに魔王には全く通用しなかった。
そのことが堪えたのか、レナの表情は暗い。
「なんて、顔してるのよ?今の攻撃凄かったわよ?」
「ですが、魔王には全く通用しませんでした……」
「あんなのきっと、強がってるだけよ……よく見たら顔が引きつってるように見えない?……ああ、元々ブサイクなだけか」
ディータの言葉に蟀谷に青筋を立てる魔王。
だが、そんなの関係ないと言わんばかりにディータは言葉を続ける。
「よくも私の妹をいじめてくれたわね?泣いて謝りたくなるくらい後悔させてあげるわ!」
「気に入らん女よ……千年前もそうだ……貴様はどれほど追い込まれようが、心が折れん……」
「当然ね、最後に勝つのは私達なんだから」
「戯けが……」
(レナ、一つ作戦があるわ、耳を貸しなさい)
「え?」
ディータは、魔王を煽りながらもレナに耳打ちをした。
その作戦を聞くと、レナは目を丸くする。
「え、でも、それは……」
「ええ、成功するかどうかは分からないわ……でも、私達姉妹なら出来ると思わない?」
「………はい、出来ます!やって見せます!」
「良い返事ね……なら、行くわよ!」
「はい!」
ディータとレナが同時に走る。
二手に分かれる訳でもなく、フェイント交えながら横を取りに来るわけでもなく、一直線に魔王に向かって走った。
「捨て身か?」
「どーかしらね! 爆発炎弾!!」
「何のつもりだ?」
炎の爆発の魔法を魔王に向けて放つディータ、だが、闇の魔法と光の魔法以外は魔族にダメージを与えられない。それなのに、ここに来てディータはよりによって火の魔法の中でも最弱であるフレイムエクリスを魔王に放った。
「もう一発! 爆発炎弾!」
「私も行きます! 爆発炎弾!!」
ディータだけではなくレナまでもがフレイムエクリスを連発し始める。
この意味不明の行動にさしもの魔王も困惑の色を隠せなかった。
「何のつもりだ、何を企んでいる?」
何発も何発も魔王に向けてフレイムエクリスを放つ二人。
その爆発は魔王の周りで幾度となく起きる……そして。
「む……」
魔王の周りに爆発で起きた煙が充満し始めた。
「視界を奪うのが狙いか!」
充満してきた煙が、徐々に魔王の視界を奪う。
だが、それに気づいた魔王は羽織っていたマントを翻し、その煙を吹き飛ばした。
「いえ、狙いは貴方の動きを止めることよ」
マントを大きく翻したことで魔王の動きはその翻す行為に集中していた。
その為、その場から瞬時に動くことが出来ない。
「行くわよレナ!」
「はい、姉様!」
「ちっ、後ろか!」
二人の居場所に気付いた魔王がその場で後ろを振り向こうとする。
ディータがなぜ一番弱い呪文のフレイムエクリスを放ち続けたのかと言うと、魔王の油断を誘う為である。ダメージを受けない攻撃を受け続けたことで、魔王は二人の攻撃を甘く見る。
その場からすぐに移動すれば、二人の攻撃を躱すことも出来るかもしれない、だが、魔王はその場で振り返ろうとしているのだ、それはどんな攻撃が来ようとも自分には効かないという自信もあるだろう、そして今まではその通りであったのだ……それも油断となった。
「合わせるわよ!」
「はい!」
ディータが闇の魔法を、そしてレナが光の魔法をお互いが手を隣り合わせに突き出し、放つ。
「イメージは混ざり合う渦、二人の魔法が渦の中で混ざり合うイメージよ!」
「はい!」
「それと、両方が同じだけのエネルギーでないと成功しないわ!もっと光の力を上げて!」
「はい!」
二人の掌の魔法が二人の掌の真ん中で混ざり合う……これは合成魔法だ。
カモメの中で何度もカモメが合成魔法を使うところを見てきたディータは、当然、その感覚を覚えていた。
だが、ソウルイーターになったばかりのディータにはそれを扱えるだけの魔力が無く、女神の姿に戻れるほどに魔力が溜まったディータは、合成魔法を使うよりも闇の魔法を使った方が威力のある魔法を唱えられるため使っていなかった。
だが、光と闇の魔法の合成であれば話は別だ。
ディータ一人では使うことが出来ないが、同じ女神で姉妹でもあるレナと共に使うのであれば、恐るべき威力の魔法になるだろう……グランルーンでカモメが使った時のように。
後は、制御しきれるかどうかの問題である。
「根性で成功させるわよ、レナ!」
「はい!」
失敗すれば何が起こるか分からない、下手をすればこの場の皆を巻き込み大爆発……なんてこともあるかもしれない……だから失敗できない…‥でもこれしか魔王を倒せる方法が思いつかなかった。
「いいわよ……行ける!」
「なんだ、その魔法は……」
「今更遅いわ!三流魔王!!滅びなさい!!」
光と闇が合成される……ひとつになったその力は魔王に向かって放たれた。
油断し、そして驚きからその魔法を躱す余裕はなく、魔王は光と闇の合成魔法をその身に受けたのだった。
応援ありがとうございます!
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