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2部 2章
雷化
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「少し本気出す……だとぉ?舐めやがって!さっきみたいにマグレで止められると思うなよ!」
マストリスは再び体を雷化させると、一瞬でクオンの後ろへと回り込む。
そして、持っている斧を振り下ろすが……先ほどと同じようにクオンの剣によってそれを受け止められてしまった。
「馬鹿な……ちっ……冷静になりやがれ俺……俺の攻撃を受け止めたのはこいつが初めてじゃねぇ……確かにこんな餓鬼に受け止められたのはショックだが慌てるようなことじゃねぇはずだ……」
「へえ、小物みたいな見た目のわりに結構冷静だね」
(やっぱり手強そうだぜ)
「だね、そのまま自滅してくれれば楽だったんだけど……ねっ!」
言葉の終わりと同時にクオンが駆ける。
「は、速えぇ!?」
咄嗟に雷化し、持っていた斧を雷速で動かし、クオンの攻撃を受け止めるマストリス。
そして、そのまま雷速と打ち合いを始めたクオン。
「は……速い……何なのだあの少年は……雷化したマストリスと互角以上に……」
目の前で打ち合いが起こったと思えば次の瞬間には明後日の方向で打ち合いが起こる。
アンダールシアの兵士も近衛隊の兵士も唖然としてその光景に見入ってしまっていた。
「ちっ、これならどうだ!」
マストリスが地面に斧を振り下ろす。
すると、地面に叩きつけられた斧の威力で地面の砂が舞い上がり、目くらましとなった。
クオンがマストリスを見失った次の瞬間、雷速でクオンへ突撃するマストリス。
「この距離でも避けられるかよぉ!」
叫びながら斧を振るうマストリス……だが。
クオンはその攻撃を受け流し、すれ違い様にマストリスを斬った。
「がぁっ!」
脇を斬られたマストリスはそのまま地面に倒れ転がる。
「へぇ、雷って『斬れる』んだね」
(何言ってやがる相棒、俺様のお陰よ!)
普通の剣であれば、雷となったマストリスにダメージを与えることは出来ないのかもしれない。
だが、魔剣、聖剣と呼ばれる類であるクオンの剣、クレイジュであればたとえ実体のないものにでもダメージを与えられるのだ。そう、魔族にダメージを与えたように。
「く、くそっ……なんて奴だ。あの距離で俺の攻撃を受け流すなんて……」
「貴方の攻撃は一直線ですからね、受け流したり受け止めたりするだけなら簡単です」
「なんだとぉ!」
「どれだけスピードが速くても毎回一直線に突っ込んでくるんですから軌道が読みやすいんです。軌道がよめるのならそこに剣や体を合わせるだけですから」
「く、くそが……」
そう、マストリスの天啓スキルは雷化、そのスピードは速すぎてマストリスにはまだ扱いきれていないのである。雷のようにジグザグに移動できればあるいはクオンの体に届くかもしれなかったが、今のマストリスにはそれが出来ない。
いや、彼自身もその弱点を克服しようとしていたのだが、短い距離で雷化したたまま曲がるということが出来なかったのだ。それなりに距離があればまだできるのだが、クオンの後ろに回り込んだときはなどはかなり距離を走った後、くの字に曲がり、後ろにまで移動したのだ。
普通の相手であればそれですら目でとらえることは出来ない。
そのため、大抵の相手はその一撃で沈む……だが、クオンは違った。
その動きを捉えた上でさらに、短い距離を曲がることが出来ないと言うことをその一度目の行動で見抜いてしまったのだ。
つまり、完全にクオンの方が一枚上手なのである。
「負けねぇ……負けるわけにはいけねぇ……俺たち紅の傭兵団に失敗は許されねぇ!」
(来るぞ、相棒!)
「ああ」
再び雷化し、クオンに突っ込むマストリス……だが、クオンはそれを再び受け流し、すれ違いざまに斬り裂いた。
「がふっ……ちくしょう……」
「天啓スキルというのは便利だね……でも、そればかりに頼っている君たちに僕は負けないよ」
そう、もしマストリスに雷化以外の何かがあればクオンは危機に陥っていたかもしれない。
だが、マストリスは自分の天啓スキルに頼り切り、そのほかの技術をあまり磨いていなかった。
それでは、何年もカモメを護るために己のすべてをかけて磨いたクオンの剣術、体力、そして洞察力に打ち勝つことは出来ないのだ。
もし、雷化の能力で短距離で曲がれるようになっていたとしても、クオンに勝つことは出来なかっただろう。
「これで終わりだよ」
クオンがゆっくりとマストリスに近づく。
「クソっ……終われねえ、このまま終われるかよ!!」
再び、雷化する……そして……。
雷速で移動するマストリスが移動した先にいたのは……傷つき、動けなくなっているセリシアナだった。
「せめて、こいつだけは道連れにさせてもらうぜ!!」
「なっ!?」
突如目の前に現れたマストリスに、セリシアナは驚愕と絶望に顔を歪める。
自分の体は先ほどの戦いでボロボロだ……躱すことなど出来ない。
「死ねぇ!……あがっ……」
マストリスの動きが止まる……マストリスの視線が自分の胸の部分に移動する。
そこには、剣の刀身が突き出ていた。
クオンの剣、クレイジュである。
マストリスの狙いを一瞬で見抜いたクオンは風の魔法で自分の足元を破裂させ、その爆風で移動力を上げる。以前から使っているクオンの得意な移動方法である。
そして、一瞬にしてマストリスに追いついたクオンはマストリスの心臓を剣で貫いたのだ。
そのスピードは雷速よりも速かったかもしれない。
「く……そ……」
心臓を貫かれ、その場に倒れるマストリス。
その光景を見たい近衛の兵士たちが、歓声を上げた。
そして、リーダーを失ったアンダールシアの兵士はクオンの強さに恐怖し、我先にと砦から逃げ出していったのだった。
「マジっすか……ありゃぁ、副団長並みに強いんじゃあ……」
砦の隅でその戦いを見ていたアーケンは顔を歪めながらその少年を見つめていた。
そして、この場に留まるのは得策ではないと判断し、彼もまたこの戦場から逃げ出すのであった。
マストリスは再び体を雷化させると、一瞬でクオンの後ろへと回り込む。
そして、持っている斧を振り下ろすが……先ほどと同じようにクオンの剣によってそれを受け止められてしまった。
「馬鹿な……ちっ……冷静になりやがれ俺……俺の攻撃を受け止めたのはこいつが初めてじゃねぇ……確かにこんな餓鬼に受け止められたのはショックだが慌てるようなことじゃねぇはずだ……」
「へえ、小物みたいな見た目のわりに結構冷静だね」
(やっぱり手強そうだぜ)
「だね、そのまま自滅してくれれば楽だったんだけど……ねっ!」
言葉の終わりと同時にクオンが駆ける。
「は、速えぇ!?」
咄嗟に雷化し、持っていた斧を雷速で動かし、クオンの攻撃を受け止めるマストリス。
そして、そのまま雷速と打ち合いを始めたクオン。
「は……速い……何なのだあの少年は……雷化したマストリスと互角以上に……」
目の前で打ち合いが起こったと思えば次の瞬間には明後日の方向で打ち合いが起こる。
アンダールシアの兵士も近衛隊の兵士も唖然としてその光景に見入ってしまっていた。
「ちっ、これならどうだ!」
マストリスが地面に斧を振り下ろす。
すると、地面に叩きつけられた斧の威力で地面の砂が舞い上がり、目くらましとなった。
クオンがマストリスを見失った次の瞬間、雷速でクオンへ突撃するマストリス。
「この距離でも避けられるかよぉ!」
叫びながら斧を振るうマストリス……だが。
クオンはその攻撃を受け流し、すれ違い様にマストリスを斬った。
「がぁっ!」
脇を斬られたマストリスはそのまま地面に倒れ転がる。
「へぇ、雷って『斬れる』んだね」
(何言ってやがる相棒、俺様のお陰よ!)
普通の剣であれば、雷となったマストリスにダメージを与えることは出来ないのかもしれない。
だが、魔剣、聖剣と呼ばれる類であるクオンの剣、クレイジュであればたとえ実体のないものにでもダメージを与えられるのだ。そう、魔族にダメージを与えたように。
「く、くそっ……なんて奴だ。あの距離で俺の攻撃を受け流すなんて……」
「貴方の攻撃は一直線ですからね、受け流したり受け止めたりするだけなら簡単です」
「なんだとぉ!」
「どれだけスピードが速くても毎回一直線に突っ込んでくるんですから軌道が読みやすいんです。軌道がよめるのならそこに剣や体を合わせるだけですから」
「く、くそが……」
そう、マストリスの天啓スキルは雷化、そのスピードは速すぎてマストリスにはまだ扱いきれていないのである。雷のようにジグザグに移動できればあるいはクオンの体に届くかもしれなかったが、今のマストリスにはそれが出来ない。
いや、彼自身もその弱点を克服しようとしていたのだが、短い距離で雷化したたまま曲がるということが出来なかったのだ。それなりに距離があればまだできるのだが、クオンの後ろに回り込んだときはなどはかなり距離を走った後、くの字に曲がり、後ろにまで移動したのだ。
普通の相手であればそれですら目でとらえることは出来ない。
そのため、大抵の相手はその一撃で沈む……だが、クオンは違った。
その動きを捉えた上でさらに、短い距離を曲がることが出来ないと言うことをその一度目の行動で見抜いてしまったのだ。
つまり、完全にクオンの方が一枚上手なのである。
「負けねぇ……負けるわけにはいけねぇ……俺たち紅の傭兵団に失敗は許されねぇ!」
(来るぞ、相棒!)
「ああ」
再び雷化し、クオンに突っ込むマストリス……だが、クオンはそれを再び受け流し、すれ違いざまに斬り裂いた。
「がふっ……ちくしょう……」
「天啓スキルというのは便利だね……でも、そればかりに頼っている君たちに僕は負けないよ」
そう、もしマストリスに雷化以外の何かがあればクオンは危機に陥っていたかもしれない。
だが、マストリスは自分の天啓スキルに頼り切り、そのほかの技術をあまり磨いていなかった。
それでは、何年もカモメを護るために己のすべてをかけて磨いたクオンの剣術、体力、そして洞察力に打ち勝つことは出来ないのだ。
もし、雷化の能力で短距離で曲がれるようになっていたとしても、クオンに勝つことは出来なかっただろう。
「これで終わりだよ」
クオンがゆっくりとマストリスに近づく。
「クソっ……終われねえ、このまま終われるかよ!!」
再び、雷化する……そして……。
雷速で移動するマストリスが移動した先にいたのは……傷つき、動けなくなっているセリシアナだった。
「せめて、こいつだけは道連れにさせてもらうぜ!!」
「なっ!?」
突如目の前に現れたマストリスに、セリシアナは驚愕と絶望に顔を歪める。
自分の体は先ほどの戦いでボロボロだ……躱すことなど出来ない。
「死ねぇ!……あがっ……」
マストリスの動きが止まる……マストリスの視線が自分の胸の部分に移動する。
そこには、剣の刀身が突き出ていた。
クオンの剣、クレイジュである。
マストリスの狙いを一瞬で見抜いたクオンは風の魔法で自分の足元を破裂させ、その爆風で移動力を上げる。以前から使っているクオンの得意な移動方法である。
そして、一瞬にしてマストリスに追いついたクオンはマストリスの心臓を剣で貫いたのだ。
そのスピードは雷速よりも速かったかもしれない。
「く……そ……」
心臓を貫かれ、その場に倒れるマストリス。
その光景を見たい近衛の兵士たちが、歓声を上げた。
そして、リーダーを失ったアンダールシアの兵士はクオンの強さに恐怖し、我先にと砦から逃げ出していったのだった。
「マジっすか……ありゃぁ、副団長並みに強いんじゃあ……」
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